• 更新日 : 2023年11月29日

整骨院経営は厳しい?平均年収・成功させるポイントも紹介

整骨院経営は厳しい?平均年収・成功させるポイントも紹介

あん摩、マッサージ、指圧、鍼灸、柔道整復などの施術は、それぞれ「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」の国家試験に合格し免許を受けた人が事業としてできるものです。

国家試験に合格し、免許を得たものの整骨院を一人で経営するのは厳しいのでしょうか?

この記事では、整骨院の経営について解説します。

整骨院経営が厳しいと言われている理由

整骨院などでは、「柔道整復師」が骨や関節など受けたケガに対し、切ったりするような手術ではなく、「非観血的療法(出血を伴わない治療)」によって、整復や固定を行い人間が本来持つ治癒力を発揮させる施術する方法を施しています。

整骨院は古くから見かける利用しやすい施設の一つですが、最近ではその経営が厳しいと言われます。その理由を見てみましょう。

柔道整復施術所は増加傾向

経営が厳しいと言われる理由の一つは、柔道整復施術所数の増加です。

柔道整復師の資格を持つ人は、国家試験に合格した後、自分で整骨院を開業することができます。しかし、開業には多くの費用や手続きが必要であり、また競争も激しいため、成功することは難しいと言われます。

近年では、柔道整復師の需要が高まっている一方で、供給が過剰になっているという状況が生まれています。それは都市部だけに留まらず全国的な傾向となっています。

下の表は、平成22年から令和2年までのあん摩、マッサージ及び指圧を行う施術所等数の年次推移を表したものであり、最下段では整骨院などの柔道整復の施術所数はやや増えているのがわかります。

平成22年から令和2年までのあん摩、マッサージ及び指圧を行う施術所等数の年次推移

引用:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省
就業あん摩、マッサージ及び指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所

また、中小企業基盤整備機構による市場調査データ「整骨院(2021年版)」によると、整骨院の利用頻度はそれほど高くはないものの、40代以降の世代の利用率が高いことがわかります。

超高齢社会においては病医院だけではなく整骨院にもシフトすることを見込んで、個人開業に踏み切るケースがあるようですが、その結果個人経営の整骨院は、集客や収益に苦労しているのが現況のようです。

保険請求の厳格化

整骨院経営の難しさは、保険請求の厳格化にもあります。

柔道整復師は、医師の同意書を得た場合に限り、健康保険を適用することができます。しかし、近年では、保険請求に関する規制や監査が強化されており、不正や過剰な請求が発覚すると、返還や罰則が科されることがあります。保険請求には慎重にならざるを得ません。

また、保険料率も下がっており、利益率も低下しています。このように、保険請求に関するリスクやコストが高まっているため、個人経営の整骨院は、経営を維持することが難しくなっているのです。

廃業数も少なくない

整骨院の近年の廃業数が少なくないことも整骨院経営の難しさを浮き彫りにしています。前述のように、個人経営の整骨院は集客や収益に困難を抱えており、また保険請求にも制約やリスクがあります。そのため、開業しても長続きせず、廃業に追い込まれるケースがあると言えます。

先ほどの柔道整復の施術所は2018年から2020年に287カ所増えているのですが、柔道整復師の数は、同じ2年間で2,769人も増えているのです。次の表は、就業あん摩マッサージ指圧師等数の年次推移を示したものです。

就業あん摩マッサージ指圧師等数の年次推移

引用:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省
就業あん摩、マッサージ及び指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所

つまり、柔道整復師の数は大きく増えているのに比べて、その施術所の増加数は非常に少ないのです。このことから、規模の大きな整骨院も増えているということも言えますが、柔道整復師の廃業数がかなりに上ることも予想されます。

整骨院経営者の平均年収

整骨院経営者の平均年収は様々な要素に影響されるため、一概には決められません。また、一人で経営する場合やある程度組織化する場合、さらにはいくつかの整骨院を経営する場合などその規模によっても収入は変わってきます。

ここでは具体的な年収値というよりも、それぞれの規模における年収の考え方について解説します。

1人整骨院の場合

1人で整骨院を経営する場合は、経営者は自分で施術も行うことになります。したがって、受付や精算などもすべて一人でするため施術件数は限られますが、収入は施術料に比例します。

地域や診療時間によってさまざまとしても、1回あたり平均3,000円程度と見積ったとして、1日に20人の施術を実施し、月に20日働くとすると、単純計算で月商は120万円、年商は1,440万円という計算になります。

これはあくまでも売上ベースであり、家賃や諸経費、さらには所得税、住民税となると実際の手取り額はかなり少なくなります。また、休みや病気などで働けない日が増えると収入が減るリスクはあります。

複数のスタッフを雇う場合

1つの施設において複数のスタッフを雇う場合、基本的にはスタッフの給料や社会保険なども支払わなければなりません。そのため、経費は増えますが、施術できる数も増えるため、結果として総収入が増える可能性があります。

例えば、単純に計算するとスタッフを2名雇い、自分を含めて3名の施術者がいれば、上記の3倍の売上となり、月収は360万円、年収は4,320万円となります。

しかし、この場合も家賃や給与、諸経費などがかかり、さらに税理士や社労士に業務の一部を委託すると税金などを合わせ、手取り額はかなり下がると考えられますが、1人整骨院の場合よりも多くなるでしょう。

スタッフの管理や教育なども経営者の責任になり、仕事量だけでなくストレスも増えるため、経営者の施術を減らすなど仕事のバランスを考える必要があります。

複数の整骨院を経営する場合

複数の整骨院を経営する場合、経営者は主として管理業務に傾注し、自分では施術を行うことは少なくなります。そのため、収入は各店舗の利益によって決まってきます。

それぞれの店舗の利益は規模や立地条件などによって異なり、同じポリシーで経営していたとしても、それぞれの店舗の特徴が出ることを理解しましょう。

例えば、3店舗を経営していて、それぞれが上記複数スタッフの店舗と同等として、月に1,000万円の売上としましょう。単純計算での年間売上高は1億2,000万円となります。

しかしながら、この場合も経費や人件費が相当かかりますので、利益はこのうち10%あればかなり成功しているといえるでしょう。また、この規模になると法人化するほうが節税になってきます。

複数の店舗の管理には労力だけでなく、経営者としての知見が必要となります。結局、規模が大きくなるにつれ、施術技術の高さよりも折衝力やマネジメント能力が問われるようになります。

結論としては、「1人整骨院」より「複数のスタッフを雇う」ほうが、「複数のスタッフを雇う」より「複数の整骨院を経営する」ほうが収入は高くなる傾向にはありますが、それに伴うリスクも高くなると言えます。

整骨院の平均的な利益率

見てきたように、ひと口に整骨院と言ってもさまざまな形態があり、利益率もさまざまです。同じ業態であっても、新規開店時と5年後とでは売上高も利益率も異なります。ここでは、平均的な利益率を求めるための手順と、利益率の目安の考え方について解説します。

一般に、利益率は利益を売上高で割ったものです。ただし、損益計算書においては5つの利益があり、どのような経費を含めるかによって異なります。

ここでは、主たる営業活動である整骨院事業のみを考えるため「営業利益率」を取り上げます。なぜなら整骨院は「仕入れ」よりも、家賃や人件費など販売費及び一般管理費に含まれる経費が多いためです。

営業利益率(売上高営業利益率)は次の算式で表します。

営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 ×100

理想的には営業利益率において10%程度が望まれるものの、現状ではその半分以下の厳しい状態が続いているようです。経営指標の平均値などは経済環境などによって大きく変わります。

営業利益を求めるにあたって、問題となる経費には次のようなものがあります。

これらが少なければ営業利益率は向上しますが、少ないからよいとは限りません。どの項目もその整骨院にとって適切であるか、効果があるのか、見直しの必要はあるかなどを常に意識しておかなければなりません。

整骨院経営を成功させるポイント

供給過多傾向が続き、厳しい状況下ではありますが、成功している整骨院ももちろんあります。ここで、整骨院の経営を成功に導くためのポイントをいくつか紹介します。

コンセプトやポジショニングを明確にする

整骨院を経営する者としてのゆるぎない信念はなんでしょうか?また、自分の整骨院がどんな価値を提供し、どのような顧客に向けてサービスを提供するのかをわかりやすく説明できるでしょうか?

これら、コンセプトやポジショニングを明確にすることで、自分の整骨院の強みや差別化する点を明確にし、競合との違いを認識できます。

また、コンセプトやポジショニングに沿ったサービスや施設、スタッフの教育などを通じて顧客に一貫した印象を与えることができます。

立地にこだわる

整骨院の立地は、集客や売上高に大きな影響を与える要素と言えます。開業にあたっては、整骨院のコンセプトやポジショニングに合った地域や場所を選びましょう。

例えば、子育て世代をターゲットにしたい整骨院であれば、商業施設や学校などが近くにある場所が望ましいと言えます。基本的には交通の便が良く、人通りが多い場所も集客に有利です。

整骨院のターゲット層の特徴やライフスタイル、エリア内の競合状況などをよく調査し、できる範囲で自分の店舗に最適な場所を見つける必要がある。

自費診療のメニューを導入する

保険診療ではカバーされない自費診療メニューを多く提供することも重要です。自費診療のメニューを導入することで、細かな部分へのケアができ、顧客の満足度やリピート率を高めることにつながります。

また、自費診療は保険診療よりも単価が高めであるため、売上高や利益に貢献します。自費診療のメニューを「保険診療と併用する」ことによって、相乗効果を生むことも可能となります。

集客・宣伝に力を入れる

整骨院の存在や魅力を広く知ってもらうことに注力しましょう。集客・宣伝に力を入れることで、新規顧客を獲得することができるとともに、リピーターの維持や増加にも効果的です。

例えば、インターネットやSNSなどによって、情報収集に積極的な読者にアピールすることができ、チラシやポスターなどによって、近隣のお客様や歩行者にアピールすることができます。

リピーター獲得に力を入れる

自分の整骨院に何度も通ってくれる顧客を一人でも多く獲得しましょう。これは、安定した売上や利益の確保につながります。

リピーター獲得のためには、顧客の満足度や信頼度を高めることが重要です。例えば、顧客の細かいニーズに応える施術やアドバイスを提供することや、顧客とのコミュニケーションを大切にすることです。

また、リピーター獲得のため、インセンティブや特典などの仕組みも有効ですので、回数券やポイントカードなどの割引制度などを取り入れるのもよいでしょう。

整骨院の経営にかかるコストを賢く削減

整骨院のコスト削減を行うことで、利益率を高めることができ、経営の安定性確保にもつなげることができます。整骨院の収支状況を少なくとも月単位で把握し、無駄を見つけてできるところから改善しましょう。

しかしながら、無理な削減によってスタッフ離れを起こしたり、清潔度合が減じたりするのは論外です。毎月発生する固定費の節約は大きな効果をもたらしますが、本当に必要な経費まで削減しないように、賢くコストカットすることを考えましょう。

整骨院を開業する際にまずすべきこと

厳しい経営環境といえる整骨院の開業を考えると、開業に必要な資格取得だけではなく、経営的な側面を考える必要があります。

ここでは、個人経営の事業として整骨院を開院するケースとしますが、整骨院だけに限らずほかの事業においても共通事項と言えます。

事業計画を立てる

事業計画とは、どんな事業をどのような形態で行うか、どんな市場や顧客があるか、どんな競争環境や法規制があるか、どんな収支やキャッシュフローを見込むかなど、事業の全体像を明確にしたものです。

事業計画を立てることで、抱いている構想を第三者に伝えることができるまで具体化しているのかどうかがよくわかります。自分の事業の強みや弱み、機会や脅威を把握し、目標や戦略を設定し、具体的な行動計画を作り込むことができて初めて、「開業の構想がある」と言えます。

そして、地に足の着いた事業計画であれば、開業資金を調達する際にも重要な資料となり得ます。

なお、事業計画を立てる際のフォーマットとしては、事業計画書 – マネーフォワード クラウド会社設立などもご参照ください。

開業資金の準備

事業を始めるために必要とする初期投資や運転資金などの総額はいくら必要なのかは、前項の事業計画から見えてきます。それをどのように調達するか考え、具体的に動くのが次の段階と言えます。

開業資金は、自己資金を始め、借入金、補助金や助成金などのさまざまな方法で調達する方法があります。その際には、事業計画に基づいて、必要な資金額や返済能力を示すことが求められます。したがって、事業計画と開業資金の準備は必ずかみ合っていないといけません。

なお、開業の際の融資制度についての詳細は、下記をご参照ください。

整骨院開業向けの事業計画書テンプレート(無料)

事業計画書のテンプレート・フォーマット

こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。

整骨院の事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例

整骨院の開業で夢を実現しよう

個人で事業を始めるということは、自分の夢や目標を実現するための大きな挑戦です。しかし、その挑戦には当然のことながら、多くのリスクや困難も伴います。

そこで、開業する前にはしっかりとした準備が必要ですが、開業後においても常に内外にアンテナを張って事業の見直しや改善を行うことが大切です。

顧客満足度を高め、地域になくてはならない事業のオーナーになるには、専門的な技術や知識だけでなく、明確な目標をもってそれに向かって常に努力することが必要であり、その厳しい環境に身を置ける人は案外少ないのかもしれません。


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