• 更新日 : 2025年2月14日

個人事業主が従業員を雇うには?雇用するメリットや社会保険手続きも解説!

仕事が忙しくなってきた個人事業主の中には、従業員を雇用しようと考えている人もいるのではないでしょうか。本記事では、従業員を雇用するために必要な手続きや、従業員を雇用するメリット・デメリットについて解説します。

個人事業主が従業員を雇用するために必要な手続きは?

個人事業主が従業員を雇用するためには、以下のような手続きが必要です。

個人事業主が従業員を雇用する手続き

労働条件の通知

従業員を雇用する際は、労働基準法により、賃金や労働時間等の労働条件を通知しなければなりません。そのため、従業員の採用が決まったら「労働条件通知書」を作成し、交付しましょう。

労働条件通知書に記載すべき内容は、以下の通りです。

労働条件通知書の記載内容
  • 契約期間
  • 就業の場所
  • 従事すべき業務の内容
  • 始業・終業の時刻、休憩時間、就業時転換、所定外労働の有無
  • 休日
  • 休暇
  • 賃金
  • 退職に関する事項
  • その他

労働条件通知書について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

労働保険の手続き

パート・アルバイトを含む従業員を1人でも雇用する場合は、業種や規模を問わず、事業主は労働保険の加入手続きを行い、労働保険料を負担しなければなりません。

労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。労働保険のうち雇用保険は、パート・アルバイトでも以下のすべてに該当する場合は、適用対象者となります。

雇用保険の被保険者
  • 1週間の所定労働日数が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある人

なお、2022年10月から雇用保険の適用範囲が拡大され、特に65歳以上の労働者にも適用されるようになりました。

労働保険について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

社会保険の手続き

個人事業主でも、一定の業種※で常時5人以上を雇用する事業所では、農林漁業、サービス業などの場合を除き、社会保険が強制適用されます。社会保険とは、健康保険や介護保険、厚生年金保険の総称です。

※製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、貨物積み下ろし業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信報道業、社会福祉業、弁護士業など

パート・アルバイトの場合も、1日または1週間の労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上であれば加入しなければなりません。保険料は、事業主と労働者が折半で負担します。この場合、日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)に所定の届出書を提出します。

税務署への届け出

従業員を雇用して給与を支払う場合は、給与から所得税をあらかじめ差し引き、源泉徴収を行うことが義務付けられています。従業員を初めて雇用した日から1カ月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を税務署へ提出しましょう。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

引用:A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

源泉徴収の準備

給与からあらかじめ差し引く源泉徴収税額を計算する場合は、国税庁が発行している「給与所得の源泉徴収税額表」を使用します。

令和7年分 給与所得の源泉徴収税額表

引用:令和7年分 源泉徴収税額表|国税庁、「給与所得の源泉徴収税額表(令和7年分)

従業員の家族構成などによって適用される税額が異なるため、あらかじめ従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいましょう。令和7年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

引用:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁、「令和7年分扶養控除等(異動)申告書

源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっていますが、給与を支払う従業員が10人未満であれば、特例として年2回(7月10日と翌年1月20日)の納付とすることができます。特例の申請を行う場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署へ提出してください。

参考:A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

個人事業主が従業員を雇うメリットは?

個人事業主が従業員を雇うメリットは、以下の通りです。

業務、事務作業などの仕事が任せられる

事務作業をする時間を省いて本業に集中したいと考えている人は、従業員を雇用して事務作業を任せてみてはいかがでしょうか。1人で活動しているとメールの返信や電話対応など、本業以外の事務作業も必要です。請求書などの書類作成や、経理処理を従業員に任せることで、本業に集中できるようになります。また、本業における業務でも補助作業などすぐに対応できる仕事を任せることができます。

業績が上がり事業拡大につながる

従業員を雇用することで、事業拡大の可能性があることもメリットです。人手が足りないほど忙しいような場合は、従業員を雇用すれば業務に充てられる人員が増えるため、業績が上がると考えられるからです。

雇用してすぐのうちは教育、熟練が必要になるでしょうが、仕事を覚えて一人前になれば、任せられる仕事も多くなるでしょう。

家族への給与は青色事業専従者給与として経費に算入できる

事業規模があまり大きくない場合は、家族を雇用する方法もあります。青色申告による確定申告を行えば「青色事業専従者給与」として、家族への給与を経費に計上できるようになるからです。この場合には、給与を経費に算入しようとしている年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。

また、青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除が適用されるほか、事業の赤字が生じた場合でも翌年以後3年間は赤字を繰り越すことができます。

ただし、青色申告を選択すると、複式簿記による正規の簿記による記帳が求められるため、簿記の知識に自信がない人は、会計ソフトの導入や税理士への依頼が必要になります。

青色事業専従者給与について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

個人事業主が従業員を雇うデメリットは?

一方で、個人事業主が従業員を雇うデメリットは、以下の通りです。

採用・雇用のために手続きが必要になる

従業員を雇用したいと考えても、なかなかいい人材に出会えないというのは、どの企業でも共通する悩みです。誰でも採用・雇用してしまうと、問題のある人材の場合でも簡単に辞めさせることはできません。

働きたいと応募してきた人が優秀な人材であるかを見極めるためには面接が必須になることや、採用が決まったら定められた手続きを行う必要があることは覚えておきましょう。

従業員を雇用すると保険料の負担が生じる

従業員を1人でも雇用すると労働保険料の負担義務が生じ、5人以上雇用する場合は社会保険料の半額を負担する義務が生じます。

保険料の負担が気になる人は、社会保険の加入義務が生じない範囲で働いてもらうことを検討してみてはいかがでしょうか。

従業員を雇うなら、法人として起業・会社設立した方がよい?

法人として起業または会社を設立する基準は、売り上げの金額で判断するケースなどが考えられます。法人は税率が固定のため、一定の所得を超える場合は個人事業主よりも節税効果が高いと言えます。

一方で会社を設立するためには数十万円の費用がかかることや、赤字でも税金の支払いが必要なことを考慮すると、個人事業主の方が有利なケースもあります。

個人事業主と法人でそれぞれにメリット・デメリットがあるため、売上が1,000万円を超え、黒字が継続し、さらに事業拡大を目指すタイミングで法人化を検討してみてはいかがでしょうか。税理士などの専門家に法人化した場合の税金のシミュレーションをしてもらうのもよいでしょう。

個人事業主でも社会保険や税金の手続きを忘れずに

従業員を雇用して給与を支払う場合は、個人事業主でも社会保険や税金の手続きが必要になります。法人化のタイミングについては、従業員を雇用するタイミングではなく、さらなる事業拡大を目指すときに検討することをおすすめします。そのためには事業計画をしっかり立てておきましょう。


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