- 更新日 : 2026年7月15日
ホテル・旅館開業の許認可や資格は?営業許可や届出、資金も解説
ホテル・旅館の開業には旅館業法の営業許可が必須で、飲食店業や消防法など複数の許認可が必要です。
- 旅館業法の営業許可(必須)
- 飲食店業・公衆浴場営業許可
- 防火管理者・食品衛生責任者
Q. 開業資金の目安はいくら?
A. 小規模な簡易宿所でも数百万円以上、改装規模により数千万円以上が必要です。
日本ではインバウンド需要が拡大しており、ホテルや旅館をこれから開業しようと検討している方もいるでしょう。宿泊業を営むには、旅館業法の営業許可や飲食店業の許可など、さまざまな許認可を得る必要があります。
本記事では、ホテル・旅館に関連する法律、開業に必要な許認可、必要な資金の目安を解説します。
目次
ホテルや旅館の開業に必要な法律とは?
ホテルを開業するにあたり、旅館業法や消防法などが定める要件をクリアする必要があります。
旅館業法
旅館業法とは、宿泊料を徴収して人を宿泊させる営業形態を「旅館業」と定義している法律です。旅館業法では、ホテルや旅館などについて、一定の基準を満たすように規定しています。
具体的には客室面積、客室の基準(窓からの採光など)、浴室などに関しての基準があります。また、検査する担当者によって、現場で判断が異なることもあるため注意が必要です。
参考:旅館業法|e-GOV
消防法
宿泊業の施設では、火災や地震などの災害に備え、宿泊客の安全を確保するために、消防法によって一定の基準が設けられています。消火設備・避難設備・警報装置など、収容人数や床面積により、必要な設備が決まっているため確認しましょう。
小規模のホテルなら消火器や消火栓の設置でよい場合もありますが、広いホテルではスプリンクラーの設置が求められることもあります。
参考:消防法|e-GOV
建築基準法
建築基準法によって「特殊建築物」に分類されるホテルは、建築基準法の定める制限にも対応が必要です。特定建築物は不特定多数の人が利用する建物であり、より厳しい制限がかけられます。
たとえば3階以上のホテル・旅館は「耐火建築物」としての基準が設定されています。延焼や倒壊の防止のため、耐火性のある建材や構造にすることが必要です。
参考:建築基準法|e-GOV
食品衛生法
ホテル内でレストランを営業する場合、またレストランがなくても朝食などを提供する場合は食品衛生法をクリアする必要があります。規制対象となる食品は、医薬品・医薬部外品を除くすべての飲食物です。
具体的には食品・添加物のほか、食器、調理器具、包装などに規制が及びます。乳児用おもちゃも、乳児が口に入れる可能性があるため、規制の対象です。
参考:食品衛生法|e-GOV
風営法
ラブホテルは、宿泊料金を徴収して人を宿泊させるため、旅館業法の規制対象です。また、風営法の規定に抵触する場合は、ラブホテルとして特別に規制されます。風営法でラブホテルとされるためには、以下の条件が必要です。
- 専ら異性を同伴する客が宿泊する(休憩も含む)ことが主な目的
- 「専ら」とは、宿泊客の70%から80%程度がカップルであることを指す
つまり、多くの客が特定の目的を持ったカップルであるホテルや旅館がラブホテルです。
参考:風営法|e-GOV
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ホテルや旅館の開業に必要な許認可とは?
宿泊業を営むため、受ける必要のある許認可を解説します。
ホテル・旅館の営業許可
宿泊施設を営業するには、申請書類を自治体に提出し、都道府県知事あるいは市区町村長に許認可を受けることが必要です。まず、建物の建設前に自治体の旅館業法の窓口を訪問して、開業の可否を相談します。
開業予定の場所、建物の図面などを確認されるケースもあるため、計画をしっかり立てておきましょう。なお、管轄の保健所が担当するケースもあります。
飲食店業の許可
レストランやルームサービスといった料理を提供するホテル・旅館では、飲食店営業許可の申請が必要で、以下の手順で進めます。
- 保健所に事前相談をする
- 飲食店営業許可の申請をする
- 日程調整のうえ、保健所の立ち入り検査を受ける
- 営業許可証が交付される
申請から許可証の交付までは約2~3週間で、申請費用として16,000円~19,000円がかかります。
公衆浴場営業の許可
宿泊客以外も利用できる浴場を宿泊施設に設ける場合、公衆浴場許可も得る必要があります。飲食店営業許可と同様、保健所に事前相談のうえ、申請をする流れです。
公衆浴場営業の許可を得るまでに、申請から2ヶ月程度かかります。申請費用は20,000円程度ですが、自治体によって異なるため、ホームページなどで調べておきましょう。
酒類販売業免許
レストランやルームサービスで酒類を提供するだけであれば酒類販売業免許は不要です。しかし、土産用として未開栓の酒類を販売する場合などに酒類販売業免許が必要となります。酒類販売許可を取得するための手順は以下のとおりです。
- 酒類指導官が設定されている税務署で事前相談をする
- 必要書類を揃えて、税務署で申請をする
- 必要な場合は現地調査を受ける
- 免許が交付される
申請から許可を得るまでは約2ヶ月で、申請の際に登録免許税として30,000円がかかります(1審査あたり)。
ホテルの種類による営業許可の適用範囲とは?
旅館業の許認可は、客室数や床面積などによって以下のように4種類あります。
| 許可の種類 | 対象 | 具体例 |
|---|---|---|
| 旅館・ホテル営業許可 | 観光ホテル、ビジネスホテル、温泉旅館、観光旅館など | 最低客室数(洋室10室、和室5室など)の制限は撤廃され、1室の床面積が原則9平方メートル以上(寝台を置く場合は7平方メートル以上)などの基準があります。 |
| 簡易宿所営業許可 | カプセルホテル、民宿、ペンション、ゲストハウスなど | 宿泊場所を多数人で共用する施設です。客室の延床面積は原則33平方メートル以上(※宿泊定員が10人未満の場合は「3.3平方メートル×定員数」に緩和)とされています。 |
| 旅館業(下宿)営業許可 | 従業員が住み込みをする宿泊施設など | 1ヶ月以上の滞在が主な目的として営業する施設 |
なおネットカフェは「娯楽業」であり、宿泊業には分類されません。このため、ネットカフェを開業する場合、旅館業の許認可を得る必要はありません。
ホテル・旅館の開業や期間従業員の住み込み施設など、1ヶ月以上の連続した滞在を主な目的として営業する施設に関わる資格は?
ここからは、ホテルの開業で必須となる資格、あるとよい資格を紹介します。
防火管理者
防火管理者は、設備における火災などの被害を防止するため、防火管理で必要な業務を行う責任者です。ホテルは不特定多数の人に利用される建物であり、収用人数が30人以上の場合は「乙種」、50人以上(または30人以上かつ300㎡以上)の場合は「甲種」の防火管理者を設置しなければなりません。
防火管理者の資格は、講習会に出席し、受講が完了すれば取得できます。講習時間は甲種が10時間、乙種は5時間です。
消防設備士
消防設備士は、ホテルや旅館にある消防用設備の工事、点検・整備が可能な資格です。具体的には消火器、避難用のはしご、火災警報器などを取り扱うことになり、これらは規模の大きいホテルや旅館では必須となる設備です。
消防設備士も甲種と乙種があり、甲種は消防用設備の工事・設備に加え、点検までできます。これに対して乙種は、設備の整備や点検のみが認められます。
危険物取扱者(乙種4類)
ホテルや旅館の施設管理では、熱源となるボイラーの燃料に、重油などの危険物を使用します。危険物取扱者は、重油やガソリンなどの危険物を扱える資格です。
重油などの危険物を一定数量以上貯蔵・取り扱う施設では、危険物取扱者の選任が必要になる場合があります。小規模の施設で、専門の従業員を雇うのが難しい場合、オーナー自身が資格を保有するのもよいでしょう。
ボイラー技士(二級)
ボイラー技士とは、ボイラーの管理や点検、修繕などを行う国家資格です。危険物取扱責任者が燃料を扱うのに対し、ボイラー技士はボイラーそのものを扱います。
大規模なホテルでは空調、大浴場、温水プールなどの運営のため、比較的大きなボイラー設備が必要です。ボイラー技士(二級)は、ボイラーの保守点検や操作、修繕などが認められます。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、食材の衛生管理、従業員に対する衛生管理や体調管理の指導などができる資格です。レストランやルームサービスなどを通じて食事を提供する場合、食品衛生責任者の有資格者の配置が必須です。
都道府県で開催される講座を受講することで取得できます。場合によっては修了試験に合格する必要があるため、自治体のホームページをチェックしましょう。
語学系の資格
インバウンド需要が伸びており、外国人観光客は増加傾向です。コミュニケーションをスムーズに取るため、接客スタッフは語学系の資格の取得が必要です。
具体的には「英検」「TOEIC」「中国語検定」などがあります。基本的な日常会話に加え、ホテルのサービス、周辺の観光名所なども外国語で説明できるようにすることが必要です。
サービス・マナー系の資格
接客レベルの向上やスキル習得のために、サービス・マナーに関する資格もおすすめです。具体的には「サービス接遇検定」「ユニバーサルマナー検定」といった資格があります。
より丁寧で適切な接客ができれば宿泊客の満足度が向上し、リピーターになってもらえる可能性が高まるため、経営状況の改善や向上につなげることも可能です。
ホテル経営に関わる資格
経営層は、マネジメントに関する資格の取得が推奨されます。中小企業診断士は経営コンサルタントの国家資格で、経営に関する幅広い知識を習得可能です。
社労士は人事労務・社会保険の手続きを行えるエキスパートで、多くの従業員を雇う場合に役立ちます。ホテルも会計や財務状況のチェックは常に重要なため、日商簿記など会計について学べる資格もよいでしょう。
ホテル・旅館の開業に必要な届出・手続きの流れは?
ホテルや旅館を開業するには、旅館業法にもとづく営業許可を中心に、消防、建築、税務、労務など複数の手続きが必要です。物件を契約してから基準を満たせないと追加工事が発生するため、開業前に保健所や消防署へ相談しておきましょう。
1. 保健所に相談し旅館業営業許可を申請する
ホテル・旅館を営業するには、原則として旅館業法にもとづく営業許可が必要です。許可を得るには、施設所在地を管轄する保健所に申請し、客室、玄関帳場、換気、採光、衛生設備などの構造設備基準を満たす必要があります。自治体によって事前相談や標識設置、近隣説明が必要な場合もあるため、設計段階で確認しましょう。
2. 消防署に工事・使用開始に関する届出を行う
ホテル・旅館は宿泊者の安全確保が重要なため、消防法上の手続きも必要です。建物や一部を工事する場合は、工事開始の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を提出する必要があります。また、使用開始時には「防火対象物使用開始届出書」を使用開始の7日前までに管轄消防署へ届け出ます。
3. 開業届・法人設立届など税務手続きを行う
個人事業主として開業する場合は、税務署に個人事業の開業届出書を提出します。また、最大65万円の青色申告特別控除などの税制メリットを受けるためには、原則として開業日から2月以内に「所得税の青色申告承認申請書」もあわせて提出する必要があります。
法人でホテル・旅館を経営する場合は、設立登記後、原則として2カ月以内に法人設立届出書を提出します。法人についても、欠損金の繰越控除などの優遇措置の適用を受けるため、設立第1期目から「法人の青色申告承認申請書」を(原則として設立の日以後3カ月を経過した日と最初の事業年度の末日とのうち、いずれか早い日の前日までに)提出するのが一般的です。従業員を雇う場合は、給与支払事務所等の開設届出書や源泉所得税関係の届出も必要です。
4. 従業員を雇う場合は労務・社会保険の手続きを行う
フロント、清掃、調理、管理スタッフなどを雇用する場合は、労働保険や社会保険の手続きも確認します。労働者を雇うと、労災保険や雇用保険の手続きが必要になる場合があります。また、法人は原則として社会保険の適用事業所になります。採用後に手続き漏れが起きないよう、開業前から労務管理体制を整えておきましょう。
ホテル・旅館の開業資金の目安は?
ホテル・旅館の開業資金は、物件を新築するのか、既存物件を購入・改装するのか、賃貸物件を活用するのかによって大きく変わります。公的資料でホテル・旅館だけの平均開業資金を示すデータは限られるため、全業種の開業費用や融資制度を参考にしつつ、個別に見積もることが重要です。
新規開業全体では平均975万円が一つの参考値
日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」によると、新規開業企業全体の開業費用は平均値975万円、中央値600万円です。ただし、これはホテル・旅館に限定した数値ではありません。ホテル・旅館は客室、浴室、空調、防災設備、予約システムなどが必要になり、物件の状態によって費用が大きく変動します。
小規模な簡易宿所でも数百万円以上、改装規模が大きい場合は数千万円以上を見込む必要があります。
参考:2025年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所
旅館業は設備資金が大きくなりやすい
日本政策金融公庫の生活衛生貸付では、旅館業の設備資金の融資限度額が4億円とされています。融資限度額は必要資金の平均ではありませんが、旅館業が大きな設備投資を伴いやすい業種であることを示す参考になります。特に、新築や大規模改装、温浴設備、飲食施設、宴会場を備える施設では、建築費や設備費が膨らみやすくなります。自己資金だけで不足する場合は、金融機関や日本政策金融公庫の融資を検討しましょう。
許可基準を満たすための改装費も見込む
ホテル・旅館を営業するには、旅館業法にもとづく許可が必要です。厚生労働省は、旅館業の許可について、旅館業法施行令で定める構造設備基準に従う必要があると説明しています。客室、換気、採光、照明、防湿、清潔保持、防災設備などの基準を満たすため、物件によっては追加工事が必要です。開業資金を見積もる際は、物件取得費や内装費だけでなく、保健所や消防署の指摘に対応するための予備費も確保しておきましょう。
ホテル・旅館の資金調達方法は?
ホテル・旅館の開業には、物件取得費、改装費、客室設備費、防災設備費、広告費、開業後の運転資金など多額の資金が必要です。自己資金だけでまかなうのが難しい場合は、日本政策金融公庫や金融機関の融資、自治体の制度融資、補助金を組み合わせて資金計画を立てましょう。
日本政策金融公庫の融資を活用する
ホテル・旅館の開業では、日本政策金融公庫の融資が有力な選択肢です。「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、設備資金と運転資金に利用できます。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内です。
生活衛生貸付で設備資金を調達する
旅館業は生活衛生関係営業に該当するため、日本政策金融公庫の生活衛生貸付も検討できます。一般貸付では、旅館業の設備資金の融資限度額が4億円とされています。客室改装、浴室設備、空調、防災設備など、施設整備に大きな資金が必要な場合に活用しやすい制度です。
制度融資や補助金を組み合わせる
自治体によっては、創業者向けの制度融資や利子補給、信用保証料補助を用意している場合があります。金融機関、自治体、信用保証協会が連携する制度のため、出店予定地の制度を確認しましょう。また、省人化設備や予約管理システムを導入する場合は、中小企業省力化投資補助金などが使える可能性があります。
ホテル・旅館は儲かる?開業後の年収の目安
ホテル経営者の年収は、小規模な場合は600万~800万円程度で、大規模なホテルでは1,000万円を超えるケースもあります。小規模なホテルでも、複数を開業することで、さらに年収アップを狙えます。
経営者は自らの給与を役員報酬として自分で決定できるため、売上や利益を伸ばせばさらなる高収入も獲得可能です。
ホテル・旅館の開業に活用できる助成金・補助金は?
ホテル・旅館の開業では、客室設備や予約管理システム、省力化設備、販路開拓に使える補助金を確認しておくとよいでしょう。ただし、補助金は原則として後払いであり、採択前に契約・購入した費用は対象外になる場合があります。開業資金の中心ではなく、設備投資や集客施策を補う手段として考えることが重要です。
【中小企業省力化投資補助金】自動精算機や清掃ロボットの導入
ホテル・旅館で人手不足対策を進める場合は、中小企業省力化投資補助金を検討できます。カタログ注文型は、登録された省力化製品を選んで導入する仕組みで、公式サイトでは「交付申請随時受付中」とされています。自動精算機、清掃ロボット、配膳ロボットなど、宿泊施設の業務効率化につながる設備を導入したい場合に活用しやすい制度です。
参考:中小企業省力化投資補助金
【デジタル化・AI導入補助金2026】予約管理や会計システムの導入
予約管理システム、PMS、会計ソフト、顧客管理、インボイス対応ツールなどを導入する場合は、デジタル化・AI導入補助金2026が候補になります。中小企業庁は、同補助金について、AIを含むITツールの導入を支援する制度で、2026年3月30日から申請受付を開始すると公表しています。ホテル・旅館では、予約・会計・顧客対応のデジタル化に活用しやすい制度です。
新事業進出補助金は宿泊以外の新サービス展開に使える
既存のホテル・旅館が、宿泊事業と異なる新たな事業に挑戦する場合は、新事業進出補助金も選択肢になります。たとえば、ワーケーション施設、地域体験サービス、長期滞在向け事業、飲食・物販、サウナ・温浴施設など、既存事業と異なる新市場への進出を計画するケースが考えられます。
ホテル・旅館の開業に役立つひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、ホテル・旅館の開業(会社設立)に役立つひな形やテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
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ホテルの許認可を適切に取得して開業しよう
ホテルや旅館を開業するには、旅館業法における営業許可が必須です。営業許可を得るには、都道府県の旅館業法の窓口に相談し、申請書を提出します。
場合によっては、飲食店業の許可や公衆浴場営業の許可なども必要です。それぞれ手続きが必要で時間もかかるため、開業に間に合うように進めることが大切です。
ホテルの開業で必要な許認可をスムーズに取得し、ホテル経営を成功させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
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