- 更新日 : 2024年6月19日
運送業の事業計画書の書き方は?テンプレートを基に記入例を解説
事業計画書とは、事業の目的、内容、戦略、収支計画などを具体的に書き記した書類で、これから始める事業の全体像を整理し、対応すべき課題やリスクを明らかにしたものです。金融機関や投資家などへの出資依頼の際には事業の概要と将来性を伝える資料となります。
この記事では貨物についての運送業の事業計画書の記入要領を解説します。
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・運送業向けの事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例のダウンロード方法
目次
運送業を開業するための事業計画書とは?
運送業の事業計画書を作成する前に、なぜ運送業を始めるのか、将来的な規模を見込んだ具体的な目標値やその達成期限を設定しておきましょう。
貨物の運送業は、正式には「貨物自動車運送事業」と言い、経済・社会活動を支える重要なインフラの役割を果たしています。モノを思い描いたとおりに運ぶことによって、生産活動や消費活動が活発化し、経済の発展につながる重要な役割を担っています。
運送業には3つの区分があります。どれもある場所から別の場所に有償で自動車等を使用して貨物を運ぶ事業ですが、主な違いは次のとおりです。
1)一般貨物自動車運送事業
自動車は3輪以上の軽自動車及び2輪の自動車を除く
2)特定貨物自動車運送事業
自動車は1)に同じであり、需要元が「特定の者」であること
3)貨物軽自動車運送事業
自動車は3輪以上の軽自動車及び2輪の自動車に限る
運送事業開業の条件
上記3つの区分のうち、「一般貨物自動車運送事業」および「特定貨物自動車運送事業」を始めるには国土交通大臣または運輸局長の許可が必要です。事業許可を得るためには、事業所を管轄する運輸支局へ「一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書」などの提出が必要となります。
この申請書の中に、「事業計画」を記載する欄がありますが、後述する金融機関や投資家などへ提出する事業計画書とは異なるため注意してください。
許可後には法令試験があり、事業を実施するにあたって必要な法令知識の確認が行われます。また、許可後においては、登録免許税の納付を納めます。なお、毎年、事業報告書を提出することになっていることにもご留意下さい。
参考:一般貨物自動車運送事業 |国土交通省、「一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書」
運送業の事業計画書のひな形、テンプレート
事業計画書について一定の書式を提示された場合は、その内容にしたがって作成します。決まった書式がない場合には、業界ならではの特徴を活かしつつ事業計画を記載するとよいでしょう。
記載にあたっては、項目の漏れを防ぐためにもテンプレートを利用することをおすすめします。無料登録後のページにある「会社設立ナビ」にて、70種類以上の事業計画書をダウンロードしていただけますので、ぜひお気軽にご利用ください。
運送業の事業計画書の書き方・記入例
ここでは、テンプレートの一般貨物運送業の事業計画書を例にとり、書き方を見ていきましょう。この例では、運送業での管理業務を経験した人が、トラックや店舗など初期投資費用として1,200万円の融資計画を策定しています。
創業の動機・目的
事業に対する熱意やビジョンを相手に伝える重要な部分です。具体的なエピソードや経験に基づき、開業に至った経緯を明らかにし、その事業を通して何を成し遂げたいのかが分かるように記載します。自己紹介で終わるのではなく、起業動機と事業内容が結びついていることを明確にしましょう。すでに店舗物件や車両についての予定があれば積極的にアピールしましょう。
強い動機や確たる目的意識によって、開業に至った必然性や事業の持続性が裏打ちされるものです。融資担当者に事業を継続する動機が弱いと判断されることのないよう、「継続性」が読み取れるような工夫が望まれます。
職歴・事業実績
経営者の経歴、資格などについて記入します。開業する事業と関連性のないものについても順に記載し、関係する業界での経験は数値や功績などで分かりやすく記入するとよいでしょう。
取扱商品・サービス
取り扱う主な商品やサービス、セールスポイント、ターゲットなどは事業が成功するかどうかを左右する重要な要素となります。まず、自社サービスの強みを具体的に挙げ、競合他社との差別化ポイントを明確にしましょう。例えば、精密機械の輸送、危険物の取り扱いなど特定の分野に精通しており、専門的な知識や経験があれば強調すべきでしょう。
次に、他の運送業者にはないような、自社独自のサービスや技術があれば積極的にアピールできます。運送業のため、独自のネットワークやノウハウを利用した効率的な輸送体制があれば自社の強みとして記載しましょう。
事業戦略として、顧客満足度向上への具体的な取り組みについて構想があれば記載しましょう。サービス価格は競争力のあるもので、かつ、品質の高いサービスが確保できるように設定します。
取引先・取引関係
当初の取引の基盤となる販売先や仕入先を記載します。開業前からある程度、販売先が見えているかと思いますので、回収条件などを聞いておき、資金繰りに反映させます。
仕入先については、運送業では給油や車両のメンテナンスなど各種経費の支払先についての記載が中心となるでしょう。従業員の給与等についても、給与処理を含めてどのように考えているかを明らかにします。
従業員
従業員は主としてドライバーとなるでしょう。事業計画書に記載するのは人数のみですが、事業計画書策定時に具体的なアサインをしていない場合には、リスクを見ておかなければなりません。
借入の状況
事業主の具体的な借入金について記載します。プライベートでの借入金も含めて正しく記載します。他の要件が満たされていても、過去の借入金の返済額が多すぎると事業計画にも影響します。借入金返済額を上回る事業計画を立てているかは要チェックです。
なお、すでにリースで取得している車両等があれば記載するかどうかは、リース物件にもよるため事業報告書の提出先に照会したほうがよいでしょう。
必要な資金と調達方法
必要資金は、設備投資と運転資金に分けて記載します。
運転資金とは事業を継続するために必要となる資金のことで、狭義には「売上が回収されるまでに発生する経費支払いを賄うための資金」を指します。したがって、事業計画例における運転資金は最初の売掛金回収までに必要なお金ということになります。運転資金が不足すると経営が破綻しますので、計算根拠は作っておきましょう。
次に資金の調達方法を記載します。資金をどこから、いくら資金を調達するのか記入します。親族等からの借入であっても明確になっているものを記載します。必要資金の合計額と調達資金の合計額が一致するように作成します。
事業の見通し
まず、事業開始直後数か月の月平均の売上高や必要経費を損益計算書の形で表します。季節性のあるサービスなども考慮して計算しましょう。車両の減価償却費や租税公課、保険料以外に、車両に関係する各種経費をよく考えましょう。
次に、「1年後または軌道に乗った後」についての月平均の損益も記載します。一般貨物自動車運送事業においては、事業報告書や事業実績報告書が求められるため、勘定科目などは下記の損益明細表などを参考にしてもよいでしょう。
軌道に乗る前後の変化について説明できるようにしておきましょう。
運送業の事業計画書作成のポイント
事業計画書の中でも事業の見通しについては、売上高、売上原価、人件費、車両費などの収益・費用の根拠を詳細に算出しておきましょう。例えば、車両でも新車購入と中古車では減価償却の考え方は異なりますし、特にドライバー不足を考慮すると、リスク分を考えておくべきでしょう。
必要に応じて専門家の意見を求め、事業見通しについての考え方を明らかにしておきましょう。
なお、事業計画書についての関連情報は次の記事をご参照下さい。
基盤産業としての運送業を支えるアイデアを!
運送業者においては、「物流の2024年問題*」により輸送能力の確保が難しくなります。これにより売上高への影響も予想されますが、IT技術を活用した物流の効率化等により、他のコスト削減やサービス向上を目指す道も考えられます。
運送業は経済活動を支える重要な基盤産業であり、課題克服への取り組みを進め、持続的な発展が期待されています。新たなアイデアで産業の基盤を支える運送業の事業計画書を作成しましょう。
*働き方改革関連法による2024年4月から始まるドライバーの拘束時間減少
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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