- 更新日 : 2023年6月29日
国際経営とは?国内経営との違いや学ぶ際のポイント
グローバルサプライチェーンの拡張や越境ECの拡大などにより、経営の国際化・ボーダーレス化が進んでいます。またCPTPPなどの自由経済ブロック圏の台頭が、資本と経営の自由な移動を促し、実際にヒト、モノ、金、情報が自由に往来する時代を迎えています。本記事は国際経営について、国内経営との違いや学ぶ際のポイントなどを解説します。
目次
国際経営とは?
国際経営についての一般的な定義はありませんが、国内での経営を超越した、国際的な経営活動全般を表す言葉であるといって良いでしょう。ここでいう国際的な経営活動とは、海外での営業、製造、マーケティング、人事、カスタマサポートなどで構成され、海外各地における事業主体による一連の事業活動が含まれます。
なお、海外における事業主体には、①駐在員事務所、②現地支店、③現地法人などがあります。①駐在員事務所と②現地支店については、日本からスタッフが派遣されて各種の業務を行うケースが多いですが、③現地法人については、役員などの幹部スタッフを日本スタッフが務める一方、社員などのスタッフは現地で採用するケースが少なくありません。
国際経営と国内経営の違い
国際経営と国内経営の最大の違いは、事業を展開する場所または市場です。日本国内に事業拠点があり、日本国内市場において製品やサービスを日本に居住する消費者に販売するケースは完全に国内経営です。一方、事業拠点が日本国内にあったとしても、海外市場で製品やサービスを販売すると国際経営の範囲に入ります。また、当然ながら海外の現地に法人を設立し、事業を展開すると完全に国際経営になります。
適用される法律
国際経営と国内経営は、適用される法律が異なります。国内経営では、日本の会社法や商法、あるいは労働法などに従いますが、国際経営においては、拠点がある国や地域の法律に従わなくてはなりません。例えば、国内に本店を置く法人が米国カリフォルニア州に支店を開設し、現地でスタッフを採用する場合、当然ながらカリフォルニア州と米連邦政府が定める法律にし従わなくてはなりません。
税法・会計基準
また、適用される税法や会計基準も国際経営と国内経営では違ってきます。例えば、米国デラウェア州で設立された法人がカリフォルニア州で事業を展開する場合、デラウェア州およびカリフォルニア州の税法に従う必要があります。また、アメリカで事業を展開するに際しては、US GAAP(Generally Accepted Accounting Principles, 米国会計基準)に則って会計処理を行い、さらにアメリカ国内で州をまたいでビジネスを展開する場合は、それぞれの州が定める税法に従う流れとなります。
商慣習・ビジネススタイル
国際経営と国内経営の2つは、商習慣やビジネススタイルも大きく異なります。例えば、日本では黙認されがちなサービス残業は、アメリカやヨーロッパ諸国などの先進国においては原則として認められていません。また、先進諸国の多くにおいては、社員に残業させるための細かい手続きを必要とします。また、ビジネスのやり方も、多くの先進諸国においては率直なスタイルが好まれ、日本のように「根回し」をする商慣習がありません。さらに、日本の会社で好まれる「飲み会」といった習慣も、多くの先進諸国においては行われていません。
国際経営を行うためには何を学べば良いか?
では、実際に国際経営を行うためには何を学べば良いでのしょうか。ビジネスマナーなどを含む商習慣を学ぶことは重要ですが、特に現地に法人などを設立し、現地の人間をスタッフとして採用して事業を展開するといったケースにおいては、以下のことを深く学びましょう。
労働法や会社法などの現地の法律
まずは労働法や会社法などの現地の法律に基づいて対応します。特にスタッフの採用や解雇の仕方については、各国各自治体の法律が細かくルールを定めています。アメリカやヨーロッパ諸国においては、特に従業員を解雇するための手続きが煩雑です。各地の労働法に従うとともに、医療保険、労災保険、年金制度といった各種の社会保障制度に関するルールや慣習についても知っておく必要があります。また、アメリカにおいては会社法が州ごとに違うので、事業の拠点を置く州のルールに対応しなくてはなりません。
現地の税務・会計基準
また、事業を展開する現地の税務や会計基準も学びます。特にアメリカで事業を展開する際は、事業の拠点を置く州のみならず、売上が発生する各州の税法に従わなくてはなりません。例えば、デラウェア州に本店がある法人がカリフォルニア州に事業の拠点を置き、カリフォルニア州に加えてオレゴン州とテキサス州の消費者を相手にビジネスを行う場合、デラウェア州、カリフォルニア州、オレゴン州、テキサス州の4つの州の税法に従う必要が生じます。なお、オレゴン州は売上税が、テキサス州は所得税がそれぞれ課せられません。
現地の言語
国際経営を遂行する上で必ず学ばなければならないものが、現地の言語です。特に現地に法人などを設立し、現地の人間をスタッフとして採用して事業を展開する場合、現地の言葉を使ったコミュニケーションは必須です。現地のコミュニケーションスキルを学ばずして現地スタッフと意思を疎通するのは困難です。コミュニケーションスキルを獲得して初めてリーダーシップを発揮できるようになり、組織を勝つ方向へ導くことが可能になります。
国際的な経営活動を始める方法
一口に国際的な経営活動を始めるといっても、本拠地を日本国内に置きながら越境ECで海外へ向けて商品を販売するといったスキームもあれば、海外に法人を設立して現地スタッフを採用し、現地で自己完結するといったスキームもあります。いずれのスキームを採るにせよ、以下の3つのポイントを満たすことが求められます。
現地の状況を把握・理解する
国際的な経営活動を始める際にしておきたいのが、現地の状況を把握および理解することです。特に現地における消費者ニーズや市場の状況、競合などの情報については事前に十分な情報収集を行います。現地の状況を把握せずに、単に思いつきで販売したり、闇雲に事業を開始したりすることがないようしましょう。特にBtoBの製品については、単価が相応に高くなるため、現地の状況を踏まえた適切な対応が必要です。
現地での事業展開方法を慎重に検討する
現地での事業展開方法を慎重に検討することも大切です。日本企業の海外事業展開方法としてありがちなのが、現地に突如法人を設立し、そのまま事業活動を始めてしまうことです。特に現地での販売実績がないケースにおいては、事業展開方法を慎重に検討しましょう。まずは商品販売を一任できるセールスレップなどの現地の販売代理店を利用して、売れ行きなどを確認しながら販売を広げてゆくといったスキームも考えられます。
スモールスタートで事業を開始する
スモールスタートで事業を開始することも知っておきたいポイントです。例えば、アメリカで法人を設立して事業を開始する場合、バーチャルオフィスやバーチャルアドレスなどを利用すれば、スタートアップのコストを削減できます。また、アメリカでは在宅勤務やハイブリッド勤務が普及し、人材の確保もより柔軟にできるようになっているので、スタート当初は社員を採用せず、必要な人員はアウトソーシングで調達するといった手もあります。
海外へ目を向け、国際経営を目指そう
国際経営における国内経営との違いや学ぶ際のポイントなども含めた基本を解説しました。ECプラットフォームの普及などにより、最近は日本にいながらにしてEC事業を展開できるようになり、実際に多くの日本人が越境ECをビジネスとして始めています。また、最初から海外での事業展開を見据え、海外に単身乗り込んで事業を立ち上げる人もいます。国内市場が縮小傾向にある中、海外へ目を向ける人は確実に増加しています。特に若い人は、ボーダーレスなマインドを持って国際経営を目指してください。
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