• 更新日 : 2023年9月21日

商業登記とは?法人登記との違いや必要書類、申請・変更の方法を解説!

法人登記(会社登記)とは?法人設立時のポイントや商業登記との違いまで解説!

定款などの認証が終わり、資本金の払い込みも完了したら、設立時の取締役や監査役の就任を経て、いよいよ法務局への登記申請という流れになります。登記そのものには、費用として登録免許税の支払いがありますが、司法書士に依頼した場合にはその報酬も考えなければなりません。この記事では、株式会社設立における登記申請の手続きについて解説します。

商業登記(会社登記)とは?

商業登記は、商法、会社法などの法律により登記すべき事項を公示することによって、商号、会社等に係る信用を維持し、かつ、取引の安全と円滑に資するための制度です。商法には、登記申請によって商業登記簿に登記することが明記されており、登記の後でなければ第三者に対抗できないことが記されています。また、会社法の第49条には、「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」とあるように、商業登記の手続きを経ないと株式会社は成立しません。
引用:会社法 | e-Gov法令検索

商業登記を行うと、登記した法務局から登記事項証明書が発行されます。この登記事項証明書(いわゆる登記簿)は、会社が正式に登記を行ったという証拠になるものです。

商業登記の目的は?

商業登記は、法律上、株式会社を成立させるために必要ですが、実務上は、この手続きを経て得られる登記事項証明書がさまざまな手続きにおいて必要となります。

例えば、会社として取引を開始するにあたっては、法人口座が必要です。一般に金融機関においては、法人口座開設の際に、その法人の登記事項証明書や印鑑証明書などの確認が必要となります。金融機関で融資を受ける場合や国の補助金を申請する場合、許認可や入札の手続きなどには、登記事項証明書の添付が必要となるケースが多々あります。また、大きな取引や新規の取引を開始するときにも登記事項証明書が求められることもあります。

取引先が登記事項証明書で公示されている会社の重要事項を把握することは、その後の取引を円滑に行うための第一段階と言えます。

法人登記との違いは?

商業登記と会社登記はほぼ同じような意味で使われます。設立した「会社」を登記するという意味で、商業登記ではなく、慣習的に「会社登記」と呼ぶことがあります。

商業登記は、商法の規定により商業登記簿に行う登記のことで、商人に関する取引上の重要事項を公示するための制度であり、登記によって取引の安全性と円滑化を図るものです。

これに対し、法人登記とは会社以外の「法人」を対象としますが、商業登記と同じような意味で使われているケースも見受けられます。

ここで整理しておくと、商業登記は、下記のような会社等について、法人登記はこれら会社以外の法人について、それぞれその名称や所在地、役員の氏名等を公示するための制度のことを言います。

したがって、次のように商業登記と法人登記は対象が異なります。

登記の種類対象となるもの
商業登記株式会社、合名会社、合資会社、合同会社
法人登記会社以外の一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人等

しかしながら、このような分別をせずに商業登記と法人登記を同じような意味で使っているケースがよく見受けられます。

商業登記を行うまでの手続きの流れは?

では、商業登記を行うまでの手続きの流れについて説明します。商業登記は、以下の手順で行います。

1. 会社の設立方法を決める

会社の設立方法には、発起設立と募集設立の2種類があります。
発起設立とは、会社設立に際し、発行する株式の全部を発起人が引き受ける方法です。
これに対し、募集設立とは、設立に際して、発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りは他から引受人を募る方法です。一般的には、比較的簡単に会社設立が可能な発起設立のケースが多いです。

2. 定款を作成して認証を受ける

定款の「款」とは、法律の条文の条項や箇条書きを意味するものです。定款とは会社の根本の規則、つまり会社のプロフィールにあたります。定款には、絶対的記載事項といって、必ず記載しなければならない事項が次のように決められています。

定款に最低限定めなければならない事項(絶対的記載事項)

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価値又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

引用:会社法第二七条|e-Gov法令検索

この絶対的記載事項以外に、相対的記載事項、任意的記載事項などがありますが、絶対的記載事項の記載がなければ定款自体が無効となります。
株式会社の場合には、作成した定款は公証人の認証を受けることで初めてその効力が生じます。

3. 出資金(資本金)の払い込み

出資金の払い込みについては、次の順で実施し、その次の登記に備えます。

  1. 払い込み預金口座を決定する
    会社成立前のため、払い込み口座は発起人の個人口座を利用します。会社成立後には、そのお金を会社の法人口座に振り替える必要がありますので、会社成立後に取引を継続しようとする金融機関の口座がやりやすいでしょう。
  2. 出資金の振り込みをする
    出資はあくまで「振り込み」によるものとします。いくら残高があったとしても、一度引き出して「振り込み」の形跡がわかるようにします。
  3. 払い込みがあったことを証する書面を作成する
    振り込みが完了すると、その通帳は出資金を払い込んだ証明に使用します。通帳の所定部分をコピーし、「払い込みがあったことを証する書面」を作成し、登記申請の添付資料とします。

4. 法務局で登記申請を行う

ここまでの手順をすべて行った後に、商業登記の申請を行うことになります。商業登記の申請を行った日が、会社の「設立年月日」となりますので、申請日に吉日を選ぶ人もいます。

商業登記の必要書類・申請方法は?

商業登記を行う際に必要な書類は、その会社の種類や状況によって変わってきますが、基本的には以下のような書類が必要です。

株式会社設立登記申請書

様式は、発起設立か募集設立か、取締役会を設置するかしないかなどで変わってきますが、作成はとても簡単です。書式は、法務省のサイトからダウンロードするか、法務局の窓口で直接入手できます。

登録免許税納付用台紙

登録免許税に相当する収入印紙は登記申請書内への貼付でもよいとされますが、登録免許税納付用台紙に領収証書又は収入印紙を貼り付けておきます。この「登録免許税納付用台紙」は、A4タテの白紙で代用できます。

登録免許税は現金で納付し、金融機関から領収証書を受け、台紙に貼付したものを法務局に提出することになります。この登録免許税額ですが、30,000円以下は収入印紙での納付が認められる取扱いになっていますが、実務上、30,000円を超えても収入印紙で納付するケースはよくあります。

収入印紙を貼り付けるときは用紙の右側に寄せて貼り付け、収入印紙は割印をせずに貼ります。

定款

商業登記において、設立申請時には会社の定款の添付が必要です。

会社の設立においては、書面での定款の場合、定款認証のための公証役場提出用、登記申請のための法務局提出用、会社設立後において会社での保管用と少なくとも3通の定款が必要になります。書面保存の定款であっても、パソコンで作成した場合は元データも保管しておきましょう。

印鑑届出書

会社の実印を登録するための書類です。個人にも実印が必要なように、一般的には法人にも実印が必要になります。(登記申請をオンラインで行うときは印鑑の提出は任意です)
印鑑届出書についての詳細は、印鑑届出書とは?提出時の書き方や必要な印鑑の種類について | 契約の基礎知識を参照願います。

代表取締役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の代表取締役を選定したことを証する書面が必要となります。発起設立の場合には発起人が設立時取締役を選任し、募集設立の場合には創立総会の決議によって設立時取締役を選任します。

代表取締役は、これら選任された取締役の中から選任され、就任を承諾する旨の「代表者取締役就任承諾書」を作成します。

取締役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の取締役を選定したことを証する書面が必要となります。就任承諾書の形式を取らなくても、創立総会などによる選任の決議書の記載をもって就任承諾書の添付に代えることができることもあります。その場合、「就任承諾書は設立時取締役選任決議書の記載を援用する。」などと記載して提出します。

監査役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の監査役を選定したことを証する書面が必要となります。取締役の就任承諾書と同様、就任承諾書の形式を取らなくても、創立総会などによる選任の決議書の記載をもって監査役の就任承諾書の添付に代えることができることもあります。

役員の印鑑証明書

設立時取締役個人の印鑑証明書が必要となります。印鑑証明書とは、印鑑が市役所などに登録されている実印であることを証明するための書類です。実印とは、市役所などに申請をして受理をされている印鑑のことを言います。ただ、印鑑証明書の有効期限は3カ月間なので、有効期限が切れていないかを事前に確認しておきましょう。

出資金(資本金)の払込証明書

先述のように、出資金を振り込んだ証明書(通帳のコピー)を作成して出資金の払込証明書として、添付します。これらの必要書類を作成し、法務局に申請を行うことにより、審査を経て登記事項証明書の発行が可能になります。

登記事項に変更が生じたときも商業登記が必要!

法人を設立するとき以外にも、様々な場合に登記が必要です。具体的には以下のような場合に必要になります。

1. 目的変更や住所変更

会社の事業目的に変更があった場合や、会社の本店が移転したため、住所が変更になった場合には登記をし直します。

2. 役員変更

役員が辞任してしまった場合や新しく役員が就任した場合など役員に変更があったときには変更登記を行います。

3. 法人の解散時

会社の設立時にも登記が必要であったように、会社の解散時にも登記が必要になります。漏れがないよう確実に対応するようにしましょう。

商業登記にかかる費用は?

株式会社が誕生するまでにはいろいろな手続きがあり、定款の作成に始まり、認証、そして設立登記のための登録免許税などで出費があります。

株式会社の主たる出費としては、次の費用を見込んでおけばよいでしょう。

株式会社の登記までの費用費用内訳概算額
定款の認証公証人への手数料
50,000円※1
(書面の場合)定款貼付※2収入印紙代
40,000円
設立登記登録免許税
(資本金の7/1,000)
最低150,000円

※1 資本金の額に応じて、100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円であり、その他の場合は5万円となります。
※2 電子定款の場合には収入印紙は不要です。

このほか、募集設立の場合には払込保管証明書として、およそ25,000円が必要となります。

商業登記にかかる詳細は、法人設立で最低限必要な費用と、株式会社・合同会社の違いをご参照願います。

商業登記は司法書士に依頼できる?

司法書士に登記申請を依頼するケースは多々あります。登記だけでなく、定款の作成から司法書士に相談に乗ってもらうことができます。司法書士に相談に乗ってもらうことによって、その会社に合った形の手続きを誘導してもらえます。

定款の作成や認証にも係わるかなど、どのような形で司法書士が登記に係わるかによって、また、会社の規模などによっても費用が変わってきます。したがって、事前に司法書士に相談して、見積りを依頼しておきましょう。

商業登記は意外と簡単にできる!

商業登記は、難しいイメージがあるかもしれませんが、一つずつ確認しながら進めていけば、簡単に思われるかもしれません。法務局の担当者に相談しながら、時間に余裕をもって着手すれば準備物は少しずつ整いますし、登記審査中に補正等があれば連絡があります。費用をかけて専門家に依頼する前に、自分でチャレンジするのも貴重な経験になるでしょう。

よくある質問

商業登記とはなんですか?

商業登記は、商法、会社法などの法律により登記すべき事項を公示することによって、商号、会社等に係る信用を維持し、かつ、取引の安全と円滑に資するための制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

商業登記と法人登記はどう違う?

商業登記は、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社等を対象として、法人登記はこれら会社以外の法人を対象として、それぞれ商号や所在地、役員の氏名などを公示する制度のことを言います。詳しくはこちらをご覧ください。

商業登記にかかる費用とは?

細かな費用を除き、登記費用として主なものは登録免許税(最低150,000円)であり、司法書士に依頼した場合は別途、報酬が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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