- 更新日 : 2024年9月3日
株主総会議事録とは?ひな形を基に記載事項や書き方、押印について解説
株主総会の開催にあたって、株式会社には株主総会議事録の作成と備え置きが義務付けられます。法的な内容を満たしたうえで株主総会議事録を作成するには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。株主総会議事録の作成で押さえておきたい法的に記載が必要な事項や具体的な書き方、押印や電子化などについて解説していきます。
目次
株主総会議事録とは?
株主総会議事録とは、株主総会で決議された事項を記載した書類のことをいいます。株主総会議事録に記載される内容の責任は取締役が負うことになりますので、取締役である誰かが作成者にならなければなりません。作成者が取締役であれば、複数の取締役が作成者になることも、代表取締役が作成者になることも可能です。
株主総会の役割
株主総会とは、株主が存在する株式会社において、会社の最高意思決定権をもつ機関です。会社法により、株主総会では株式会社に関わる一切の事項を決議できると定められています。
株主とは、その会社の株式を所有し、株主総会に出席して決議に参加したり、経営者に意思を伝えたりする権利がある会社の所有者のことです。経営者よりも株主の権利が優先されるため、すべての株主が参加できる株主総会は会社の意思決定の最高峰に位置付けられています。
ただし、取締役会設置会社は、所有と経営の分離により取締役会に経営が委ねられることから、株主総会で決定する事項は、会社法や定款で定める重大な事項(役員の選任・解任や定款の変更、事業譲渡など)に限定できます。
株主総会議事録の必要性
株主総会議事録は、会社法により作成が義務付けられています。また、作成した株主総会議事録は、株主や債権者の請求に応じて閲覧等できるようにしておく義務もあります。
また、株主や債権者、あるいは登記や税務調査の際に提出を求められる可能性もあるため、株主総会終了後は速やかに作成し保管しておくことが必要です。
議事録の作成や保存を怠った場合は?
株主総会議事録は、作成が義務付けられているだけでなく、作成後、本店に10年間、支店では写しを5年間備えおくことが義務付けられます。ただし、株主総会議事録が電磁的記録である場合には、支店の請求に応じることが可能であれば支店への据え置きは不要です。作成や備え置きの義務に違反すると、100万円以下の過料が科されることがあります。
株主総会議事録の記載事項
株主総会議事録に記載しなければならない事項は、会社法施行規則第72条第3項により以下の定めがあります。
一 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。第四号において同じ。)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
二 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
三 次に掲げる規定により株主総会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
〔中略〕※
四 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
五 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
六 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
引用:会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)|e-GOV
〔中略〕※概略は以下のとおりです。
- 監査役の選任等についての監査役の意見
- 辞任した監査役による辞任の旨等
- 取締役が株主総会に提出しようとする議案等についての監査役による調査結果報告
- 監査役の報酬等についての監査役の意見 など
それぞれの記載事項を簡単に説明します。
開催日時および場所
株主総会が開催された場所や日時を記載します。なお、会社法施行規則では、株主総会が開催された場所にいなかった取締役などの出席方法の記載についても定めがあり、テレビ会議など現地以外から参加があったときは参加方法についても記載しなければなりません。出席方法記載の規定は、取締役や監査役など経営層だけでなく、株主が現地以外から参加した場合も含まれます。
議事の経過の要領および最終的な決議内容
株主総会で行われた報告や質疑応答、議案や審議、採決など、議事の経過を記載する項目です。「議事の経過の要領及びその結果」と明記されていますので、すべての内容を記載していなくても、要点や結果がわかれば株主総会議事録の記載事項を満たしていることになります。
一般に審議方法には、「個別上程・個別審議方式」と「一括上程・一括審議方式」があります。
それぞれの方式によって、「議事の経過の要領及び結果」の記載方法も異なってきます。
会社法規定に基づく意見または発言の内容
会社法に定める一定の事項について株主総会で意見や発言があったときは、その内容を記載することが求められます。会社法に定める一定の事項とは、次のような事項です。
- 監査役や会計参与などによる選任、解任、辞任に関する意見
- 計算書類の作成で会計参与と取締役の意見が相違するときの会計参与の意見
- 監査役の報酬などに関する監査役の意見
- 計算書類の法令・定款適合性に関して会計監査人と監査役の意見が相違するときの会計監査人の意見
- 監査範囲を会計に限定された監査役の、議案や書類などの調査結果の報告 など
出席した取締役などの氏名や名称
株主総会に出席したすべての、取締役、執行役、監査役、会計参与、会計監査人の氏名または名称を記載します。
株主総会の議長の氏名
株主総会での議長の選任は会社法に定められていません。議長を置いて株主総会を行ったときは、議長の氏名を記載します。
作成に関わる取締役の氏名
先に説明したように、株主総会議事録の作成者は取締役であることが求められます。作成に関わる職務を行った取締役や代表取締役は、株主総会議事録に作成者として氏名を記載します。
そのほかの記載事項について
ここまでは会社法施行規則に定められた記載事項ですが、ほかの事項を任意で記載することもあります。任意の記載事項として、株式総数や発行済株式数、議決権を有する株主数などがあります。
株主総会議事録のひな形、テンプレート
マネーフォワード クラウド会社設立では、ダウンロードして利用できる「株主総会議事録」のテンプレートを提供しています。(このひな形は、先ほど説明した「個別上程・個別審議方式」のひな形となります。)
一般的に記載される事項が網羅されたテンプレートになるため、自社に合わせて内容を変更するだけで簡単に株主総会議事録を作成できます。作成や備え置きの義務に対応するためにも、株主総会開催後は速やかな作成が求められるので、必要に応じて活用ください。
株主総会議事録の書き方
株主総会議事録はどのように作成するべきか、先に紹介したテンプレートを例に、記載例を取り上げながら作成方法を解説していきます。
開催日時や場所
株主総会議事録では、株主総会が行われた場所と日時を明記する必要があります。テンプレートでの記載例は、以下の通りです。
【記載例1】
開催日時:2023(令和5)年11月30日 13時00分~15時00分
開催場所:株式会社●●●● 本社会議室
記載方法に規定はありませんので、次のように文章で記載することもできます。
【記載例2】
また、記載する場所に規定はありませんが、株主総会議事録の上部に記載されるのが一般的です。
株式や株主の状況
株式の状況や株主の議決権の状況などは、会社法施行規則に定める株主総会議事録の記載事項に含まれません。任意の記載事項になりますが、開催当時の株式の保有状況や出席した株主の割合などがわかるため、記載されることが多いでしょう。以下は、テンプレートを例にした記載例です。各項目について簡単に説明します。
【記載例】
発行済株式総数:10,000株
自己株式総数:1,000株
議決権を有する総株主数/議決権数:100名/100個
本人出席株主/議決権数:85名/85個
委任状出席株主/議決権数:12名/12個
株式会社の定款には、発行可能株式総数の定めがあり、会社が発行できる株式総数を株主総会議事録に記載することがあります。会社が定款で発行可能株式総数を定めるのは、取締役会の職権乱用を防止することなどが目的です。
発行済株式総数は、自己株式を含めてこれまでに発行した株式の数で、自己株式総数は発行済株式のうち自社で保有する自社の株式の数を表します。
議決権を有する総株主数や議決権数は、発行した株式のうち議決権を有する株主や議決権の数のことです。会社で任意に設定できますが、1単元株(上場株式では1単元=100株であるものの、1単元10株など任意で設定可能)につき1議決権とするのが一般的です。
また、発行する株式すべてに議決権を与える必要はなく、会社は議決権制限株式といって議決権の行使を制限する株式を発行することもできます。
本人出席株主や議決権数は、株主総会に出席した株主や議決権の数のことです。
先述のように、委任状出席株主や議決権数は、委任状により株主の権利を行使した株主の数や議決権の数を表します。当日その場にいなかった人の参加方法は記載しなければならないため、ほかの方法で参加したときは、記載例のように参加方法がわかる形で記載しなければなりません。また、株主だけでなく、取締役なども同様です。
出席取締役など
出席した取締役などの氏名(または名称)は記載が必要な事項です。記載例のように、株主総会当日に出席した取締役や監査役などの氏名(または名称)を記載します。また、作成に関わる取締役の氏名、議長の氏名も義務付けられているため、記載例のように誰が議長や作成者を務めたのかわかるように記載します。
【記載例】
- ●●●
- ●●●
出席監査役:●●●●
会議の決議事項
株主総会の経過や結果も記載事項として求められますので、記載例のように、経過は要点を示して簡潔に、また、会議の決議事項や議案に対する結果を示します。
【記載例】
会議の決議事項
第1号議案 ●●に関する件
〔中略〕
総会は、別途の異議なく、満場一致をもって承認可決した。
株主から意見があった場合には、次のように記載するとよいかと思います。
これに対して株主からxxxx旨の質問があり、議長がYYYY旨を回答した。 」
また、閉会宣言についても合わせて記載するとよいかと思います。
例として、
株主総会議事録についてのよくある質問
株主総会議事録の作成にあたって疑問が生じやすい部分、特に押印や電子化について解説します。
株主総会議事録に押印は必要?
株主総会議事録の作成にあたって、出席した取締役などの押印の義務はありません。しかし、以下に該当する場合は押印が必要です。
- 定款に、議事録の作成にあたり出席した取締役などが記名押印する旨が定められている場合
- 取締役会がない会社が代表取締役選定の決議をするとき
株主総会議事録は電子化できる?
株主総会議事録は、電磁的記録による作成や保存が認められます。電磁的記録とは、ハードディスクやUSBメモリーのような電子媒体などに記録することです。クラウドサービスを利用した場合の電子保存も電磁的記録に含まれます。
なお、株主総会議事録は、書面として出力した書類をスキャナーで保存する方法、電磁的記録により作成した書類をそのまま電子保存する方法の両方が認められます。
いずれの場合であっても、電子化する場合はe-文書法の要件を満たした保存が必要です。具体的には見読性(明瞭な状態であること)、完全性(改ざんや消去がないことの確認ができること)、検索性(すぐにデータを引き出せること)、機密性(第三者への情報漏洩防止)が求められますので、注意して電子保存しましょう。
株主総会議事録は記載すべき事項を押さえて作成しよう
株主総会議事録は、株式会社において作成や備え置きの義務が定められている書類です。記載すべき事項についても、会社法施行規則で定めがあり、一定の記載事項を満たした議事録を作成する必要があります。
株主総会議事録の作成で記載すべき事項を取りこぼさないためにも、この記事でも紹介したテンプレートを利用して作成するのがおすすめです。
また、株主総会議事録は一定期間の備え置きも規定されていますので、問い合わせがあったときに特定の株主総会議事録をすぐに取り出せるように電子化しておくと便利です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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