- 更新日 : 2023年9月27日
個人事業主は派遣社員を掛け持ちできる?メリット・デメリットも解説!
個人事業主・フリーランスの方は派遣会社に登録して派遣社員として掛け持ちで働くことが可能です。派遣社員として仕事をすると失業保険を含む社会保険に加入できる、節税できる可能性があるなどのメリットがありますが、両立が難しいというデメリットも存在します。また、契約によっては違法になってしまう可能性があります。掛け持ちで働く際の確定申告の方法とあわせて解説していきます。
目次
個人事業主・フリーランスも派遣会社に登録して働ける?
個人事業主・フリーランスは派遣会社に登録し派遣社員として働くことが可能ですが、個人事業主としての出向契約は法的に問題となる可能性があります。
個人事業主と派遣社員の就業形態の違いは?
個人事業主とは個人で事業を営む者を指し、職種としては飲食店の経営者やWebデザイナー、エンジニア、ライター、運送業者などが一般的です。中には顧客と業務委託契約・請負契約を結び働く人もいます。
一方、派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の会社を紹介され双方で合意が得られた際には派遣先企業に勤務するという就業形態です。
個人事業主は業務委託契約を結んでいる場合、定められた期間、業務を遂行すると契約が終了し指定された期日までに報酬が支払われます(双方の合意によって継続されることもあります)。
派遣社員は定められた時間に職場で仕事をすることで給与を得られます。
個人事業主は派遣社員と違い、契約した業務を遂行しないと報酬がもらえません。ただ、Webライターやデザイナーなど一部の職種では成果物を提出することが業務ですので、時間と場所を自身で選び仕事することが可能です。
個人事業主が派遣社員として働くと違法になるケースは?
基本的に個人事業主が派遣社員として働くことに法的な問題はありません。ただ、医療機関における医療関係の業務や警備業務、建設業務など労働者を派遣することが認められていない業務もあります。
加えて、個人事業主として「出向契約」を交わし別の企業に出向する形態は法的に問題となるという指摘があります。出向とは出向元の企業(派遣会社)と出向先の企業が出向契約を結び、労働者は出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、出向先企業に継続して勤務することです。
個人事業主は法人格がなく雇用契約も存在しない「経営者」であるため、雇用契約が成立せず法的に問題となる可能性があります。そのため、個人事業主が派遣として働く場合は出向元と雇用契約を結ぶことになります。
個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリットとは?
個人事業主と派遣社員を掛け持ちすることで、収入の安定が期待できる、社会保険に加入できるなどのメリットがあります。
収入の安定が期待できる
個人事業主は派遣社員と掛け持ちすることによって、安定した収入が期待できます。事業による収入は、繁忙期と閑散期で収入が安定しないケースが多いですが、派遣社員は一定期間継続して勤務する場合、期間内は定められた給与を受け取ることができます。
給与所得控除で節税できることがある
月給や日給などの給与・賞与などを得ている人は、給与収入の金額に応じて給与所得控除が受けられます。給与所得は、事業所得などと異なり必要経費を差し引くことができないことから所得税法で給与所得控除額が定められています。
また、給与所得者が通勤費や転居費、資格取得費などの費用のうち、一定の要件を満たす特定支出をしたケースで、特定支出の額の合計額が定められた金額を超える場合は、確定申告により超えた部分の金額を給与所得控除後の金額から差し引くことが可能です。
社会保険に加入できることがある
社会保険とは健康保険(40歳以上は介護保険も含む)・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の4つを指し、一定の要件を満たすと派遣社員でも加入できます。
給与所得者が社会保険に加入する場合、健康保険料と厚生年金保険料は企業と給与所得者との折半です。
労災保険は基本的に労働者を使用する事業全てに適用され、雇用保険は「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる」という2点を満たす際に加入できます。
健康保険・厚生年金はフルタイムで働く方に加え、週の所定労働時間もしくは月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の方、さらにパートやアルバイトで以下4つの条件を満たし、従業員数501人以上の企業(2022年8月時点)に勤務する方が加入の対象です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同様)
- 学生ではない
厚生労働省の「社会保険適用拡大事業」により、現行の制度では従業員数501人以上の企業が対象ですが、2022年10月からは従業員数101人以上の企業、2024年からは従業員数51人以上の企業と適用が拡大されます。
なお、個人事業主として事業をしている方は、派遣社員として雇用保険に加入した後に派遣の仕事を退職しても、雇用保険の基本手当給付の対象外です。
個人事業主が派遣社員を掛け持ちするデメリットとは?
個人事業主が派遣社員と掛け持ちするデメリットには、時間・体調の管理が難しい、事業に時間を割けず計画通りに進まないといったことが挙げられます。
時間と体調の管理が難しい
派遣社員は一定の時間を拘束されますので、個人事業主が掛け持ちする際には時間の管理に注意しましょう。業種によっては事業が運営できる日時が限られますので、派遣社員としての労働時間とうまく調節することが重要です。
また、派遣社員としての労働時間と事業運営に時間を割くことでオーバーワークになり体調を崩してしまうケースもあります。「週に1回は休みを確保する」「1日の稼働時間は〇時間まで」と自身の体力に合わせたルールを決めて体調管理を行いましょう。
派遣の仕事で事業が進まないことも
「事業を始めたけどまだ収入が少ないから派遣社員としての給料で補てんをする」という個人事業主は少なくありません。生活のために始めた派遣社員としての仕事で、事業への時間が取れず「事業が計画通りに進まない」という方もいます。
将来的に個人事業主として生計を立てていきたいという方は、派遣社員としての労働時間をセーブし、一定時間を事業に充てることをおすすめします。
個人事業主と派遣社員を掛け持ちする際の確定申告の方法は?
個人事業主と派遣社員を掛け持ちする際の、確定申告の方法を解説します。
給与所得の源泉徴収票をもらう
まずは、所属している人材派遣会社から源泉徴収票をもらいましょう。2019年から、確定申告で源泉徴収票を添付する必要はなくなりましたが、派遣社員としての給与収入を確認するために必要です。
源泉徴収票には給与の支払金額、給与所得控除後の金額、社会保険料控除額や配偶者控除など所得控除額、源泉徴収税額などが記載されています。
必要書類を準備する
確定申告に必要となる書類を準備します。白色申告では主に確定申告書B・収支内訳書・所得控除の添付書類が必要となり、青色申告では確定申告書B・青色申告決算書・所得控除の添付書類を提出します。確定申告書にはA(会社員・年金受給者が使うもの)とB(個人事業主などが使うもの)があり、事業収入がある方が利用するのは申告書Bです。
個人事業が事業所得に該当する方は申告書Bの「事業(営業等)」の欄に収入を記入し、所得の金額等の欄に経費を差し引いた額を記載します。同様に、源泉徴収票を参考に「収入金額等」の給与の欄に源泉徴収票の「支払金額」を「所得金額等」の給与の欄に「給与所得控除の金額」を書きましょう。
税金の計算の「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」欄に源泉徴収税額を記入します。事業で源泉徴収している場合には事業での源泉徴収税額も入れてください。年間の所得税の額からすでに納めた源泉徴収税を差し引いた額が所得税の納付額です。マイナスの場合には還付されます。
白色申告を行う方は収支内訳書を作成し、青色申告を行う方は青色申告決算書を作成します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出せず年末調整がされていない方の場合、源泉徴収税額が多めに天引きされており、確定申告で還付される可能性があります。
期間内に申告を行う
必要書類を所轄の税務署に郵送又は持参する、もしくはe-Tax(オンライン申告)で送信し申告します。納税が必要な方は金融機関の①口座からの振替、②窓口で現金を支払う、③e-Taxを用いた電子納税のいずれかを選ぶことが可能です。源泉徴収税額が多い場合には、還付金が指定した口座に振り込まれます。
個人事業主と派遣社員の仕事を上手に両立するコツは?
個人事業主と派遣社員の仕事を両立するコツを解説します。
将来的に専業と兼業どちらにするか決めておく
5年後、10年後と将来的に個人事業主と派遣社員で兼業を続けるか、いずれは個人事業主として生計を立てていくか、キャリアプランを考えておきましょう。
派遣社員として兼業で働くことで事業を進めるスピードが遅くなり「なかなか事業で生活費を稼げない」という事態に陥る可能性があります。将来的に個人事業主として働きたい方は、あくまで事業がメインの仕事であることを踏まえて事業計画を立てていきましょう。
また、派遣社員として安定した収入を得る、社会保険に加入することで改めて給与所得者としての利点に気づき「このまま兼業で続ける」「会社員に戻りたい」という方も少なくありません。いずれにせよ、自身で将来のキャリアプランを立てておく必要があります。
体調管理に気をつける
兼業ワーカーはオーバーワークになりがちで「気がついたら体調を崩してしまった」というケースもあります。派遣社員として有給休暇が利用できる可能性はありますが、個人事業主としての事業収入は体調を崩すと少なくなってしまいます。
労働者は身体が資本となりますので、睡眠時間を十分に確保し適度な運動、栄養バランスの取れた食事を心がけていきましょう。派遣社員としての仕事量は自身でコントロールすることが難しいケースが多いため、事業を優先したい方は短時間勤務にするという方法もあります。
兼業で働き続ける予定の方は、個人事業の仕事量を調節しながらワークライフバランスを取っていきましょう。
契約内容を確認した上で派遣会社に登録しましょう!
個人事業主が派遣会社に登録して派遣社員として働くことは法的に問題ありませんが、個人事業主として出向契約を交わすことは問題となる可能性があります。契約書の内容を確認した上で契約を交わしましょう。
個人事業主と派遣社員の仕事を両立させるために、体調管理に気をつけて自身で将来のキャリアプランを立てておくことを心がけてください。
よくある質問
個人事業主と派遣社員は掛け持ちできる?
掛け持ちは可能ですが、契約内容をよく確認しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主と派遣社員を掛け持ちするメリットとは?
安定した収入が期待できる、社会保険に加入できることがあるなどの点です。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主と派遣社員を掛け持ちする上での注意点とは?
体調管理に気をつけ、将来のキャリアプランを立てておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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