- 更新日 : 2024年9月27日
お好み焼き屋を開業するには – 必要な資金や許可、資格も解説!
古くから庶民に広く愛されてきたお好み焼き。最近は訪日観光客にもその名と存在が知られ、今や日本を代表する日本食の一つとなっています。そんなお好み焼きを客に提供するお好み焼き屋を開業したいと考えている人は少なくないでしょう。それでは、実際にお好み焼き屋を開業するにはどうすればいいでしょうか。本記事ではお好み焼き屋の開業資金の調達方法や必要な設備、開業に必要な資格・営業許可、確定申告などについて解説します。
目次
お好み焼き屋を開業する方法
お好み焼き屋を始めるには、個人事業として開業する方法と、フランチャイズに加盟して開業する方法の2つがあります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、自分のこれまでの経験やスキル、あるいは事業計画の実現可能性や資金繰り計画などを踏まえて、より適した開業方法を選びましょう。
個人開業
個人開業とは、文字通り個人事業として開業する方法です。自分で店のコンセプトを作り、メニューを考え、店の全体像を作り上げます。そして、その全体像を実現できそうな店舗物件を探し、店を造り、開店します。個人開業では、ゼロからスタートして全て自分自身の力で店をオープンさせます。
個人開業のメリットは自由度が高いことです。基本的に自分の好きな店を造り、自由に経営できます。デメリットは、フランチャイズよりも失敗するリスクが高いことです。特に初めてお好み焼き屋を開業するケースでは、経営ノウハウの欠如から失敗する可能性があります。
フランチャイズ
フランチャイズによる開業は、他者のフランチャイズに加盟し、フランチャイジーとして開業する方法です。フランチャイズによる開業では、経営ノウハウがなくても開業・経営ができるというメリットがあります。さらに、知名度があるフランチャイズに加盟することで、集客などのマーケティング効果が得られる点もメリットです
一方、フランチャイズによる開業では、フランチャイズ加盟金や一定のロイヤリティなどの費用を負担しなければなりません。また、個人開業のように経営の自由度がなく、メニューなどについても自分のアイデアを反映させることができません。
お好み焼き屋の開業資金の目安
お好み焼き屋の開業資金はどのくらいかかるのでしょうか。店の立地や大きさ、提供するメニューなどで大きく前後しますが、少なくとも500万円程度、都市部の繁華街などに出店する場合や大きめの店の場合、1,000万円を超えるケースも出てくるでしょう。開業資金は、主に初期費用と当面のランニングコストの2つです。
初期費用
初期費用は、物件取得費用、内外装工事費用、厨房設備購入費用などの、店を作るための一切の費用のことです。物件取得費用は保証金、礼金、仲介手数料、前家賃などで、物件の条件により金額が大きく変動します。また、内外装工事費用も内容により金額が変動します。都市部の繁華街などに出店し、内外装工事もそれなりに行う場合、初期費用は大きくなるのが一般的です。
ランニングコスト
ランニングコストは、お好み焼き屋を開業してから当面の間のオペレーションを賄うためのコストです。一般的には食材の仕入コスト、従業員の人件費と社会保険料、家賃、水道光熱費、通信費、宣伝広告費などが含まれます。開業時のランニングコストは、多ければ多いに越したことはありませんが、少なくとも開業から3カ月分程度のランニングコストがあると良いでしょう。開業してすぐに現金が足りなくなるといった事態は避けなければなりません。
お好み焼き屋の開業資金の調達方法
お好み焼き屋を開業するには初期費用やランニングコストなどの相応の開業資金が必要です。それでは、その開業資金はどのように調達すれば良いのでしょうか。自己資金や日本政策金融公庫をはじめとする金融機関からの借入が主な方法です。ここではそうした資金調達方法に加えて、お好み焼き屋の開業資金に使える補助金や助成金についても解説します。
自己資金
お好み焼き屋の開業資金の調達方法として、まず考えられるのが自己資金です。自己資金を開業資金に投じるケースの多くは、開業者は開業前から相当期間、貯金をするなどして計画的に資金を確保しています。一方、一定の期間貯金をして資金を確保するやり方は、時間がかかってしまいます。そのため、一定額の自己資金と金融機関からの借入を組み合わせるのが一般的です。
日本政策金融公庫から借りる
お好み焼き屋の開業資金の調達方法として、次に考えられるのが日本政策金融公庫からの借入です。日本政策金融公庫からの借入の中でも、「創業融資」と呼ばれる制度融資をおすすめします。自己資金が少なくても借入できる、申し込みから融資までの時間が短いなどのメリットがあるからです。さらに、新たに事業を始める人または事業開始後税務申告を2期終えていない人が無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」も利用可能です。なお、日本政策金融公庫からの借入では一定の自己資金が求められます。例えば「新創業融資制度」では、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。
※(追記)日本政策金融公庫の新創業融資制度は、令和6年3月31日をもってお取扱いを終了しています。
令和6年4月1日からは、新創業融資制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度をご利用いただけます。詳しくは「日本政策金融公庫」のホームページを参考にしてください。
銀行や信用金庫などの金融機関から借りる
日本政策金融公庫からの借入に加えて、銀行や信用金庫などの金融機関から借りる方法もあります。特に信用金庫は地域密着型の経営を行っているところが多く、創業融資にも積極的です。信用金庫から開業資金を借り入れる場合、多くのケースにおいて信用保証協会の「創業保証」が付けられます。信用保証協会の「創業保証」を付けることで信用金庫のリスクが下がり、融資が出やすくなります。開業前で取引している信用金庫がないといった場合は、先に保証協会に相談に行き、適切な信用金庫を紹介してもらうと良いでしょう。
補助金や助成金の活用もおすすめ!
起業時に使える補助金や助成金は多くありますが、それらのほとんどが返済する必要がないお金です。例えば、公益財団法人東京都中小企業振興公社は、都内で営業を予定している人または創業して5年未満の人に、従業員人件費、賃借料、広告費などの、創業初期に必要な経費の一部を助成しています。お好み焼き屋を開業するに際しては、人件費や家賃はかならずかかるコストですので、そうした助成金を活用しない手はないでしょう。なお、補助金や助成金は後払いであるという点には注意してください。
お好み焼き屋の開業に必要な設備
多くのお好み焼き屋では、カウンターに横長の鉄板焼きグリルを設置したり、あるいはテーブルごとに鉄板焼きグリルを設置したりしています。また、一般的な飲食店と同様に、調理は厨房で行い、お好み焼きが出来上がったらフロアスタッフがテーブルに運ぶ店舗も少なくありません。どういったスタイルを選ぶにせよ、お好み焼き屋の開業には最低限、以下の設備が必要です。
物件
お好み焼き屋の開業に必要な設備の第一は物件です。物件なくして店を開くことはできません。店のコンセプトやスタイル、大きさに合わせて最適な物件を見つけましょう。
なお、最近は店を持たないデリバリー専門の「飲食店」が増えてきています。「ゴーストキッチン」と呼ばれる施設を使って事実上の「店」をオープンするという形態です。特にデリバリーに特化したお好み焼き屋を開業する場合は、ゴーストキッチンを活用するのも一つの手でしょう。
食器家具類などの各種備品
店を出して営業をする場合、食器家具類などの各種備品が必要です。お好み焼き屋は、店の営業スタイルによって必要な食器や備品などが違います。お客さんが自分でテーブルの鉄板焼き機でお好み焼きを作るスタイルでは、お好み焼きカップやヘラなどの食器、「お好み焼きテーブル」と呼ばれるテーブルが必要になります。
一方、調理は厨房で行い、お好み焼きが出来上がったらフロアスタッフがテーブルに運ぶスタイルでは、そうした食器やテーブルは必要ありません。用意する食器家具類を明確にするには、自分の店のコンセプトとスタイルを明確にする必要があります。
調理設備
食器家具類などの各種備品と同様に、店のスタイルにより必要となる調理設備が違います。例えば、カウンターのみの店で広島風お好み焼きを提供する場合、強制排気方式のガス式鉄板焼き機が必要です。また、そばを茹でるための茹で麺機や、お湯を切るためのシンクも必要になります。
一方、調理は厨房で行い、お好み焼きが出来上がったらフロアスタッフがテーブルに運ぶスタイルでは、そうした調理設備は必要ありません。まずは自分の店のコンセプトとスタイルを明確にし、その上で必要となる調理設備を洗い出しましょう。
レジ周りの各種端末
現金払いのみのお好み焼き屋を開業するのでなければ、POSレジなどのレジ周りの端末を用意することをおすすめします。コロナの影響もあってか、最近は客と店員が接触せずに支払いを済ます「コンタクトレス決済」が世界的な主流になっています。最近のコンタクトレス決済では、Apple PayやGoogle Payなどのスマホ決済に加え、MastercardやJCBなどのクレジットカードも対応できるようになっているからです。
コンタクトレス決済端末の多くは、POSシステムとも連動可能で、マーケティングに活用できる様々なデータが取得できるというメリットもあります。
お好み焼き屋は儲かるのか?
お好み焼き屋の開業を検討している人、特に初めてお好み焼き屋の開業を検討している人が最も知りたいことが「お好み焼き屋は儲かるのか?」でしょう。お好み焼きやたこ焼き、あるいはたい焼きなどのいわゆる「粉もの」は原価率が低く、一般的に儲けが出やすいとされています。一方で、「粉もの低原価率説は都市伝説である」とする反対意見も聞かれます。お好み焼き屋は儲かるのか、そうではないのか、実際のところはどうなのでしょうか。
お好み焼き屋の平均年収
お好み焼き屋の平均年収を示す公的な数字はないため、推測するほかありません。なお、お好み焼き屋のFLコスト(材料費や人件費)は45~50%程度で、他の飲食業態よりも低いのは事実です。
仮に客単価が1,000円の店で1日の客数が50人、月に25日営業した場合、月の売上高は125万円です。一方、費用は、FLコストが56万2,500円、家賃10万円、水道光熱費7万5,000円、諸経費6万2,500円、減価償却費5万円の、合わせて85万円と仮定します。1月あたりの利益が40万円のため、この仮定では年収は480万円ということになります。なお、これはあくまでも仮のシミュレーションですので、参考程度にしてください。
お好み焼き屋として成功する(失敗しない)ためのポイント
お好み焼き屋として成功する(失敗しない)ための一番のポイントはFLコストを可能な限り下げることです。FLコストのうち、できればF(材料費)よりもL(人件費)のコストを下げるのがポイントです。いたずらにアルバイトを雇うのではなく、オーナーシェフを自分がやって、家族に接客を手伝ってもらうなどしたら理想的ではないでしょうか。
一方、材料費のコストは下げすぎないように注意する必要があります。材料費のコストを下げすぎるとお好み焼きのクオリティが低下し、お客さんが離れるリスクが高まるからです。
お好み焼き屋の開業に必要な資格・営業許可
お好み焼き屋の開業には資格や営業許可などは必要なのでしょうか。また、お好み焼き屋は飲食店ですが、調理師免許は必要なのでしょうか。結論からいえば、お好み焼き屋の開業には、調理師免許は必要ありません。お好み焼き屋の開業に必要な唯一の資格が「食品衛生責任者」です。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、食品の衛生的な製造や販売の自主管理を行えるようになることを目的とし、厚生労働省の「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針」に基づいて各都道府県の条例で設置が義務づけられた資格者です。各都道府県の食品衛生協会が開催する「食品衛生責任者養成講習会」を受講して取得します。
なお、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、栄養士、管理栄養士、調理師、船舶料理士、製菓衛生師、ふぐ調理師などの資格取得者は、食品衛生責任者養成講習会を受講しなくても食品衛生責任者であると見なされます。
飲食店営業許可
食品衛生責任者を最低1名は配置するとともに、保健所から飲食店営業許可を取得する必要もあります。飲食店営業許可がないとお好み焼き屋を開業できませんので、開業する前に飲食店営業許可を取得しましょう。
申請書類の提出から飲食店営業許可の交付までには、数週間程度かかります。東京都では、施設完成予定日の10日くらい前に申請書類を保健所に提出するよう促しています。お好み焼き屋の開業の日程が具体的になったら、なるべく早く保健所に相談に行きましょう。
防火管理者
お好み焼き屋の収容人数(席数と従業員数の合計)が30人以上の場合、防火管理者を最低1名は配置する必要があります。防火管理者とは、多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理にかかる消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者のことです。
防火管理者は、店舗の床面積によって乙種防火管理者と甲種防火管理者に別れ、いずれも講習を受けて資格を取得します。該当する場合は、開業するまでに資格者を配置できるようにしてください。
お好み焼き屋の確定申告
お好み焼き屋を開業して売上が上がるようになったら、確定申告を行わなければならないのでしょうか。
お好み焼き屋で確定申告が必要な場合とは?
お好み焼き屋が一定の売上を上げていて、それから所得控除を引いてなお残額がある場合確定申告が必要です。反対に、逆に売上が所得控除以下の場合、確定申告はする必要がありません。
確定申告の方法
確定申告書に必要事項を記載して税務署に提出します。税務署に直接持参する以外に、郵送や電子申告(e-Tax)、さらには税務署の時間外収集箱へ投函などの方法で提出することも可能です。なお、青色申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けるには、e-Taxによる申告が必要です。
確定申告の方法などについてはこちらの記事で詳細に解説しているので、ぜひご覧になってみてください。
設備や確定申告についてしっかり理解した上で、お好み焼き屋を開業しよう!
お好み焼き屋の開業に際しては、必要な設備や確定申告などについてしっかりと理解することが重要です。そして、必要な設備を明確にするには、自分のお好み焼き屋がどのようなコンセプトやスタイルで営業するかを明確にする必要があります。「自分のお好み焼き屋とは、一体どのようなお好み焼き屋なのか」という問いに答えることが、求められています。
よくある質問
お好み焼き屋を開業する方法は?
お好み焼き屋を開業するには個人事業として開業する方法と、フランチャイズに加盟して開業する方法があります。自分のこれまでの経験やスキル、事業計画などを踏まえて、より適した方を選びましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
お好み焼き屋の開業資金はいくら?
店の立地や大きさ、提供するメニューなどで大きく前後しますが、少なくとも500万円程度、都市部の繁華街などに出店する場合や大きめの店を出す場合、1,000万円を超えるケースも出てくるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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