- 更新日 : 2024年3月12日
タイで起業・会社設立する方法は?資本金や登記・ビザ取得にかかる費用も解説
王宮をはじめ寺院や遺跡などの歴史的建造物が数多くあり、トムヤムクンやパッタイなどの料理もおいしく、海外旅行の行き先として人気のタイ。急速な経済発展を遂げていることから、タイで起業する方も増えてきています。
タイは、同じアジア圏であり、日本からの距離も比較的近いためビジネスを行うには最適な立地です。一方で、やはり海外であるため、会社を設立する際には定款の作成や登記手続き、ビザ取得や資本金などの費用が必要になるなど、さまざまな壁が立ちはだかります。この記事ではタイで起業・会社設立する方法や注意点についてご説明します。
※マネーフォワード クラウド会社設立では、日本在住かつ日本国内に住民票がある方の会社設立を想定しています。そのため、海外居住者が役員や発起人となる場合の会社設立には対応していません。(参考)
目次
タイでの起業・会社設立は難しい?
結論から言えば、タイでの起業・会社設立は簡単なことではありません。そもそも国内においても会社を作って事業を軌道に乗せるのは大変なこと。それが文化や言語が異なるタイであればなおさらです。日本とも手続きが異なり、在留資格も取得しなければなりません。
加えて、近年は新型コロナウイルス感染症の影響で海外に行くことすらハードルが高くなっています。世界的なインフレで物価が上昇し、起業・会社設立にかかるコストも高騰しています。タイでの起業・会社設立は簡単ではないのが実情です。
タイで設立できる会社の種類は?
タイでの起業・会社設立は簡単なことではありませんが、決して不可能なことでもありません。実際に、タイでビジネスをされている方も数多くいます。
タイでは主に「現地法人」「支店」「駐在員事務所」「地域統括事務所・地域統括会社(IHQ)」という4つの形態のいずれかで会社を設立することになります。
「現地法人」とはタイ国内で法人を設立する方法です。日本人がタイで起業する際には、現地法人での株式会社設立を選択することが一般的です。現地法人の設立には、日本で起業していない場合でも法人を設立することが可能で、規制が少ないなどのメリットがあります。
すでに日本で起業・会社設立をしている場合はタイ国内で支店や駐在員事務所を構えて進出することができます。支店は営利活動ができますが、駐在員事務所は営利活動が制限されているのが大きな違いです。
地域統括事務所・地域統括会社(IHQ)とはアジア圏のハブとなる拠点をタイ国内に置ける制度です。例えば、タイも含め東南アジアの国々でビジネス展開をする場合はIHQの設立も視野に入ってくることもあるでしょう。
タイで起業・会社設立する方法は?
ここからはタイで株式会社を設立する方法や流れについて解説します。
定款作成
まずは、商号(会社名)を管轄当局に予約します。禁止されている商号に該当せずかつ類似する商号がなければ、予約した商号の使用許可が下ります。その後30日以内に基本定款を登記しなければなりません。
定款には以下のような項目を記載します。
- 商号(会社名)
- 登記資本金、発行株式数、1株あたりの額面価額
- 設立目的
- 発起人の氏名、住所、職業、国籍、署名および各人が出資する株式数
- 登記した会社の事務所が所在する県名
- 取締役が負う責任
なお、定款は設立取締役会において採択されたものでなければなりません。
登記申請
設立総会を開催し、株式の払い込みを行ったら、登記局に対して会社設立の登記を申請します。登記申請の手続きでは次のような事項を記載します。
- 株主の氏名、住所、職業、国籍、持株数(株主は常時3人以上)
- 取締役および代表取締役の氏名、住所、職業
- 代表取締役の代表権の形態および署名
- 本社および会社の各支所の住所
- 付属定款(株主総会、取締役会などに関する会社規則)
- 株式により受領した初回資本金払込総額
タイで起業・会社設立するときに必要な費用は?
タイで起業・会社設立する際には大きく「資本金」と「ビザ取得費用」の2つの費用がかかります。それぞれについて詳しく見てきましょう。なお、レートは1バーツあたり3.9円で計算しています。
資本金
タイで会社を設立する場合、資本金が必要となります。現地法人は100万バーツ(約390万円)、支店や駐在員事務所の場合は300万バーツ(約1,170万円)が必要です。株式会社の場合は日本人(外国人)1人あたり資本金200万バーツ(約780万円)が必要です。今は円安が進んでいるので、タイで会社設立の際に必要となる資本金の額も上がっています。
ビザの取得費用
タイで働くためには「ノンイミグラントビザ・カテゴリーB(就労ビザ、Bビザとも呼ばれる)」を取得しなければなりません。滞在可能期間が90日間で1回しか入国できない「シングル」と、複数回入国できる「マルチプル」があります。また、労働許可証も取得する必要があります。合計で10万円程度必要です。
就労ビザを延長する際に提出する会計年度報告時には会社資産額が100万バーツ(約390万円)以上あることが求められます。
タイで起業・会社設立するときの注意点は?
タイで起業・会社設立するまでには、さまざまなハードルがありますが、本当のスタートはビジネスを開始したあとです。ここからはタイで起業・会社設立する際に気を付けたいポイントをご紹介します。
資金繰り
国内においても会社経営を続けていくためには資金繰りが非常に重要ですが、タイでの起業・会社設立も同様です。会社を設立する際にはさまざまな費用がかかります。もちろん開業後も人件費や賃料、光熱費、販管費などのコストがかかり続けるのです。
円安の影響でタイにおいても物価がどんどん上昇しており、経済成長に伴い人件費も上がっています。もちろん日本よりは物価も賃金水準も安いですが、以前よりは格段にハードルが上がっているのが実情です。
市場の違い
ビジネスを成功させるためには市場を把握しておくことが重要です。「タイのトレンドはどうなっているのか」「どのような商品やサービスに需要があるのか」「市場の規模はどれくらいか」ということをしっかりと調査しておく必要があります。いきなりタイで起業・会社設立をするのではなく、十分に情報を仕入れ、必要に応じて現地に足を運んでリサーチするなど、綿密に準備を進めましょう。
また、タイ人相手ではなく現地に滞在している、あるいは観光に訪れる日本人相手にビジネスをすることもできますが、やはりその場合でも綿密な市場調査は必須です。
文化や言語の違い
海外で働く上で一番の障壁となるのは言語や文化の違いです。日本と同じようにタイは英語が母国語ではありません。英語が通じないケースや訛りが強くて聞き取れないケースも多々あります。特にタイ人従業員を雇って長くタイでビジネスする場合、あるいはタイ人を顧客とする場合は、タイ語もある程度マスターしておいた方がよいでしょう。
また、日本では通用していた指導方法やコミュニケーション方法が、タイでは通用しない場合もあります。反対に、タイ人の言動や就業態度などに対してストレスを感じることもあるかもしれません。タイの文化とタイ人の気質を理解し、お互いに尊重するよう心がけましょう。
滞在資格
滞在資格にも十分注意しましょう。就労ビザは90日間が限度です。これを超えるとオーバーステイとなり罰金刑に課せられる、国外退去させられる、再入国を禁じられるなどのペナルティが科せられます。滞在する際には滞在資格の有効期限についてもしっかりと把握しておきましょう。
また、タイ国内で外国人が就労することが禁じられている仕事があります。例えば、タイ国内では日本人を含めた外国人が理容師や美容師、タイ式マッサージ、秘書などを業務で行うことはできません。
日本でもたびたび外国人が不法滞在や不法就労で摘発されていますが、タイでは日本人が知らず知らずのうちに海外で法律違反を犯してしまうケースも少なくありません。タイの法律、特に外国人の滞在や就業に関わるものについてはしっかりと理解を深めておきましょう。
ほほ笑みの国タイでの起業・会社設立を検討してみてはいかが?
タイで起業・会社設立をするためにはさまざまなハードルを乗り越えなければなりません。しかし、経済的に成長をし続けているタイでビジネスを行うことで、ご自身の成長にもつながる可能性が大いにあります。
「ほほ笑みの国」と呼ばれているタイ。おおらかで親切なタイの人々と接することで、新たな発見があるかもしれません。エネルギッシュで観光名所も多く、オフの日も楽しめます。海外での起業・会社設立に興味があるなら、タイも選択肢の一つに入れる価値は十分にあります。
よくある質問
タイで起業・会社設立する方法は?
商号(会社名)を決めて予約し、定款を作成します。その後設立取締役会を開催し、株式の払い込みを行ったら登記局で会社設立登記を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
タイで起業・会社設立するときに必要な費用は?
株式会社を設立する場合、日本人1人あたり資本金200万バーツ(約780万円)を用意しなければなりません。また、ビザの申請費用や人件費、賃料、光熱費、販管費などの経費も必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
定年後に起業するシニア起業が人気?成功させる方法や注意点を解説!
これまで勤めてきた職場で再雇用してもらって働き続ける、別の会社に再就職する、完全にリタイアして余暇を楽しむなど、定年後の過ごし方はさまざまです。そうした中、最近では定年後に起業をする「シニア起業」をされる方が増えてきました。シニアの方が起業…
詳しくみる自己資金ゼロで起業するなら融資制度を活用すべき!資金調達方法を解説
開業・創業を計画しているものの、資金ゼロの場合は一体どうしたらよいのでしょうか?資金調達としては、日本政策金融公庫の融資制度を利用する、家族からサポートを受ける、クラウドファンディングで支援を呼びかけるなどの方法があります。 事業計画を作成…
詳しくみるバッティングセンター経営で起業するには?必要な手続きや注意点を解説
バッティングセンターは、野球の試合にむけて練習をする人だけでなく、一般の人も気軽に運動を楽しむ場所としても利用される施設です。日本の野球人気は根強いですが、バッティングセンターで開業、経営するためにはどんな点に気をつければよいでしょうか。市…
詳しくみるスタートアップの資金調達方法は?6つの段階や注意点を解説
スタートアップ企業の資金調達として、ベンチャーキャピタルによる出資や銀行からの融資など、さまざまな方法があります。資金調達を成功させるには、スタートアップ企業の成長段階を考慮することが重要です。この記事では、スタートアップ企業に向いた資金調…
詳しくみる田舎で起業するメリット・デメリットは?向いている業種や成功例も解説!
田舎での起業を考えている方もいることでしょう。 田舎での起業は、コストを抑えて開業できる、固定費を抑えられる、助成金・補助金を活用できるなど、さまざまなメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。メリットを最大に活かせるビジネスの…
詳しくみる英会話教室で起業するには?必要な手続きや注意すべきポイントを解説
英会話教室の経営とは、英会話や英語の文法などを生徒に教える場を営むことです。幼児からビジネスや旅行などで英語を習得したい社会人まで、英会話教室は幅広い年齢層において需要が高まってきています。 この記事では英会話教室の主なビジネスモデルや起業…
詳しくみる