• 更新日 : 2023年7月27日

経営難・経営不振とは?原因や立て直し策を解説

経営難・経営不振とは?原因や立て直し策を解説

順調に成長してきた会社でも、さまざまな内的・外的な要因により突然、経営難や経営不振に陥ることがあります。特に新型コロナの感染拡大は、多くの会社が経営難に陥るきっかけとなりました。経営難に陥ったら速やかに原因を分析し、立て直すための対策を講じることが必要です。この記事では、経営難や経営不振の原因と対策を詳しく解説します。

経営難とは?

経営難の定義は様々ですが、売上や利益が無くてもゴーイングコンサーンを確保している会社も存在します(例:NASDAQ上場のベンチャー企業など)。一般論としては資金繰りが厳しい状態が経営難の基本条件でしょう。

つまり経営難とは、会社の継続に必要な売上高や利益などが確保できず、資金繰りに窮してゴーイングコンサーン確保が危うい状態を指します。会社の成長の源泉は、売上を上げることにより確保される利益です。利益が目減りすれば再投資ができなくなるため成長が困難になり、さらには利益がマイナスになってしまえば資産が減少し、最悪の場合、倒産の可能性も出てきます。

それまでは順調に成長してきた会社でも、突然、経営難に陥ることは珍しくありません。経営難に陥ったら、負の連鎖を引き起こして状態が悪化する前にそれを認識し、効果的な対策をできるだけ早期に実行することが必要です。

経営不振との違い

利益が減少して会社の経営状態が悪くなることを意味する言葉として、経営難とは別に経営不振もあります。両者の意味はほぼ同じです。ただし、経営難は「赤字などにより会社の運営が続けられなくなる」というニュアンスが含まれ、経営不振と比べると倒産リスクが高い状態を示しています。

経営難に陥る主な理由

経営難に陥った場合には、まずその理由を明らかにすることが重要です。経営難の理由が明らかでなければ、対策のしようがありません。ここでは、企業が経営難に陥る主な理由を紹介します。

販売不振

経営難に陥る主な理由としてまず挙げられるのは、販売不振です。販売不振に陥れば、売上が減少するため、必然的に経営難に陥ります。

販売不振に陥る理由はさまざまなものが挙げられます。外的要因として挙げられるのは、競合に顧客を奪われている、あるいは消費者のニーズが変化している、などでしょう。また、内的要因としては開発や製造、営業、販売などのいずれかの部門が人員不足に陥っている、あるいは業務効率が低下しているなどが考えられます。

資金繰りの悪化

資金繰りの悪化も経営難につながります。預貯金の流入出のバランスが崩れ、キャッシュフローに余裕がなくなってきた場合には、即座に原因を分析して対策を講じることが必要です。

ただし、その対策は、資産の売却のようなその場しのぎの方法では、抜本的な改善はできません。資金繰り悪化の根本原因を明らかにし、その原因を解消するための対策をしっかりと検討する必要があるでしょう。資金繰りの悪化による倒産は、収支が黒字でも起きることがあるため、厳重な注意が必要です。

コロナ禍やAI活用などを経た需要の減少

新型コロナの感染拡大により人々の生活スタイルが変化したこと、あるいは近年目覚ましく発展しているAIの活用で業務スタイルが変わったことが原因で需要が減少し、経営難に陥ることがあります。新型コロナの影響で、業種によっては一時期8割近くも売上が低下しました。また、公認会計士や弁理士、司法書士などの業務は、将来的にAIに代替される可能性が8割以上ともいわれています。

過剰な投資

過剰な投資も経営難につながります。もちろん、設備や人材などへの投資は、会社の成長のために欠かすことができません。しかし、一時的に調子が良かったからといって将来的な売上の予測を誤り、過剰な投資をすれば、その投資が重荷になって累積損失が資本の金額を上回り、債務超過に陥ります。

取引先の倒産

大口の取引先が倒産すると、その取引先から売掛金の回収ができなくなるため、連鎖的に資金繰りが苦しくなることがあります。連鎖倒産を防ぐためには、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)などのセーフティネット制度を利用して、あらかじめ対策を講じておく必要があるでしょう。

また、特定の取引先への依存度が高い場合には、連鎖的な経営難が起きやすくなります。取引先は複数を確保し、取引のバランスが1社に偏らないようにしておくことが重要です。

従業員不足によるサービス品質の低下

従業員の不足によりサービス品質が低下し、経営難に陥ることがあります。従業員不足が起きるのは、求人難のため採用活動を行っても成果が上がらず、必要な人材を確保できないことが原因の一つです。

運輸業や建設業などでは人手不足で会社が倒産しています。サービス品質が低下する以前に、労働力が確保できずに倒産しています。

参考:2023年上半期の「人手不足」倒産 過去2番目の67件 賃上げに追いつかず、「人件費高騰」が急増|東京商工リサーチ

また、社員の退職によっても従業員不足が発生します。一部の社員に重要な仕事が集中している企業では、中堅社員の転職や幹部社員の独立などが重なると、一気に仕事が回らなくなることがあります。

風評被害

風評被害も経営難に陥る理由の一つです。近年ではSNSの普及により、以前なら企業のお客様相談室にクレームとして上げられていたような用件が、SNSに書き込まれるようにもなっています。従業員による不祥事や不適切動画の拡散、マスコミの誤報道、商品・サービスに対するデマがSNSで拡大すると、企業のブランドイメージが毀損されます。毀損されたイメージを回復するのは困難であるため、そのまま経営難に陥るケースも少なくないのです。

経営者の慢心

経営者の慢心も、経営難の大きな理由として挙げられます。経営者に管理・運営能力がなく、企業経営を混乱させるケースは、ワンマン体制の会社で起きがちです。トップの指示が「全て」という社風が定着すれば、従業員がいくら改善のための計画を立てても、採用されることはありません。景気が良いときは問題がないように見えても、景気が悪化するとそれでは通用しなくなり、経営難に陥ります。

経営難から抜け出すための対策例

経営難に陥ったら、対策を速やかに講じることが必要です。対策の具体例を紹介します。

コスト削減

経営難から抜け出すための対策としてまず必要なのは、コスト削減を行って収益を改善することです。コスト削減の方法として、以下のものが考えられます。

  • 事業・サービスの見直し
    赤字が続いている事業や需要が少ないサービスを洗い出し、不要なものは撤退・カットする。
  • 業務フローの見直し
    全社の業務を洗い出し、それぞれの業務にどのくらいのコストがかかっているかを分析の上、コストが削減されるよう業務フローを再設計する。
  • 人件費の見直し
    正社員がやっていた業務をアルバイトや外注へ依頼するなど。
  • 一般経費の見直し
    交通費や出張費、通信費、光熱費などの細かな経費を見直す。

財務対策

経営難から抜け出すためには財務対策も必要です。会社の経営資金を見直して、どの程度の投資が可能かを把握しましょう。事業投資は収益拡大のため必要ですが、自社で可能な範囲を超えないことが大切です。

資金調達の手段についても、複数の選択肢を持つようにするのがよいでしょう。金融機関からの借り入れだけでなく、国や自治体の補助金・助成金を活用するのもおすすめです。

以上のコスト削減・財務対策を行ってもキャッシュフローが悪化してしまった場合には、返済金のリスケジュール(返済条件変更)・金額の調整も必要となってきます。

社外人材の招致

経営難を抜け出す方法として、社外人材の招致も有効です。経営難の対策を自社内だけで検討しても、既存事業や成功体験への執着や、業務のルーチン化などが障害となり、良いアイデアが浮かびにくいことがあります。社外から取締役を招致したり、経営コンサルタントのアドバイスを聞いたりすれば、社内だけでは気づけなかった視点に着眼し、新たな方向性を見いだせる可能性があるでしょう。

経営難で従業員を解雇する場合の注意点

経営難を打破するためには従業員を解雇して、人員整理する必要が出てくる場合もあるでしょう。しかし、経営者の都合で行う整理解雇は、日本では厳しく制限されています。整理解雇が法的に認められるためには、以下の4要件を満たすことが必要です。

人員削減の必要性

まず、人員の削減に十分な必要性があることが求められます。必要性の程度としては、単に「赤字」というだけではなく、人員削減しなければ企業の存続が危ぶまれるほどの経営危機が存在しなければなりません。コスト削減や遊休資産の売却などの経営合理化を行っても、打破できないほどの経営危機であるということです。

解雇回避努力義務

次に、解雇を回避するため、取りうる他の方法を十分に尽くすことが必要です。回避の方法には、新規採用の抑制や役員報酬の減額、残業・労働時間の削減、配転・出向、一時帰休、雇用調整助成金の活用、希望退職募集などがあります。

被解雇者選定基準の合理性

以上の2要件で整理解雇自体の正当性が認められても、誰を解雇するかの選定が客観的・合理的な基準に基づき、公正に行われなければなりません。基準として認められるのは、例えば、勤務成績や勤続年数、労働者の生活への配慮などが挙げられます。

労働者側に対する説明・協議

さらには、整理解雇にあたっては、労働者や労働組合に対する説明・協議が必要です。経営状態や整理解雇の必要性、時期、規模、基準、方法などについて、納得が得られるよう十分に説明し、誠意を持って協議しなくてはなりません。

原因に応じた万全の策を講じて経営難を乗り切ろう

経営難は販売不振や資金繰りの悪化、コロナ禍やAI活用などを経た需要の減少、過剰な投資などさまざまな原因により起こります。経営難に陥ったら、コスト削減や財務対策、社外人材の招致などの対策を講じなければなりません。自社の経営難の原因を分析し、それに基づいた万全な対策を講じて、経営難を乗り切りましょう。


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