• 更新日 : 2023年6月22日

サラリーマンが副業で起業して会社設立するやり方と節税のメリットを解説

大企業を中心に、副業を容認する会社が増加しています。今や、サラリーマンで副業をしている人も珍しくありません。副業による所得は、基本的には個人の所得として申告しますが、節税対策として会社を設立し法人の収益として申告することも可能です。

サラリーマンが副業のための会社を設立するには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。この記事では、副業サラリーマンの会社設立の方法と節税のポイント、メリットやデメリットについて解説していきます。

サラリーマンが副業で起業して会社設立する方法とは?

サラリーマンの副業には、他社でのアルバイト、スキルを活かした業務委託、不動産や株式投資、動画配信などによる広告収入など、さまざまなパターンが考えられます。

副業で会社を設立するケースは、副業による所得(収入-必要経費)が大きく見込まれる場合です。まず、副業サラリーマンが会社設立するにあたり把握しておきたいことを簡単に解説していきます。

サラリーマンが起業して会社設立するタイミング

副業サラリーマンが会社設立を考える理由はさまざまですが、税負担の軽減を理由にした会社設立が多くを占めています。個人事業主と法人では負担する税額が変わるため、ある程度の収益への到達を機に、会社設立を検討するのが一般的です。

【平成27年以降分の所得税速算表】
平成27年以降分の所得税速算表
出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

【平成31年以降の普通法人の法人税率】
法人税の税率
出典:No.5759 法人税の税率|国税庁(普通法人の部分を一部抜粋)

いつ法人にしたら良いかについては、さまざまな考え方があります。ひとつは、上記の所得税の税率が法人税の税率を上回ったとき(表中は所得330万円)に会社設立を検討するというものです。

所得330万円を目安にする根拠は、個人の所得税、住民税、事業税と、法人の実効税率(法人税に法人住民税と法人事業税を加味した全体的な税率)を用いた税金の額にあります。以下は、個人と法人のおおよその税金の額を計算したものです。

【所得300万円の場合】
法 300万円×21%=63万円
個 (300万×10%-97,500)+300万円×10%+(300万円-290万円)×5%=50.75万円

【所得350万円の場合】
法 350万円×21%=73.5万円
個 (350万×20%-427,500)+350万円×10%+(350万円-290万円)×5%=65.25万円

【所得400万円の場合】
法 400万円×21%=84万円
個 (400万×20%-427,500)+400万円×10%+(400万円-290万円)×5%=82.75万円

【所得500万円の場合】
法 400万×21%+(500万-400万)×23%=107万
個 (500万×20%-427,500)+500万円×10%+(500万円-290万円)×5%=117.75万円

【所得800万円の場合】
法 400万×21%+(800万-400万)×23%=176万
個 (800万×23%-636,000)+800万円×10%+(800万円-290万円)×5%=225.9万円

<計算に関する注意点>

  • 法人の税金の計算(中小企業の適用事業者の場合)
    所得~400万円:実効税率約21%
    所得400~800万円:実効税率約23%
    所得800万円超:実効税率約33.5%
  • 個人の税金の計算
    所得税+住民税+個人事業税(個人事業税は青色申告特別控除前の金額で計算)
  • 所得控除等細かな計算は抜きに簡易計算で税額を出しています

 

上の計算だと、所得350~400万円あたりで、個人で確定申告した場合の税負担が法人の税負担を超えます。法人の場合は、基本的に個人よりも経費の範囲が広くなるため、そのような点も加味して所得330万円あたりがラインになるといわれているのです。

ただ、会社を設立すると事務負担や手続きが増えます。会社を運営する場合は、専門家と顧問契約を結ぶことも多いです。顧問契約を結んだり、必要に応じて専門家などに依頼を行ったりすると、その分、費用もかかります。

会社設立のタイミングについて考えるなら、税負担だけでなく、社会保険の加入や会社運営に必要な費用が、個人で事業を行った場合と比べてどのくらい増えるのかも加味する必要があるでしょう。税金だけでなく、そのほかの費用なども考慮すると、所得900万円前後で法人化を考えた方が良い場合もありますし、個々のケースで法人化すべきタイミングはさまざまです。

会社を設立するべきか悩んだら、税理士をはじめ、個人で続けた場合と会社を設立した場合でどのくらい負担額が異なるかなど、助言してくれるような専門家への相談をおすすめします。

なお、会社の設立に関しては、以下の記事で詳しく説明していますので併せて参考にしてみてください。

サラリーマンが起業して会社設立するまでの流れ

会社設立は個人事業と異なり、さまざまな手続きが必要です。会社設立に必要な一連の流れは以下のとおりです。

  1. 定款を作成する
  2. 公証役場で定款の認証を受ける
  3. 会社設立登記申請書などを準備する
  4. 法務局で登記申請を行う
  5. 登記完了後に登記事項証明書を取得する
  6. 法人の印鑑証明書を取得する
  7. 法人設立届出書など税務署関連の手続きを行う
  8. 社会保険関連の手続きを行う

手続きの具体的な内容は以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください

サラリーマンが起業して会社設立する際に必要な書類

サラリーマンが副業のための会社を設立する際には、一般的な会社設立と同様の手続きが必要です。会社設立にあたっては、法務局での登記を行うため、すべての会社に共通して、以下の書類が必要になります。

  • 登記申請書
  • 登録免許税の収入印紙を貼り付けた台紙
  • 登記すべき事項を保存したCD-R
  • 定款
  • 取締役の就任承諾書
  • 印鑑届出書
  • 払込証明書(資本金や出資金の払い込みを証明するもの)

ほかにも、取締役会を置かない場合は取締役全員の印鑑証明書が必要、合同会社設立時は合同会社設立登記申請書が必要など、法人の形態や定款の内容によって、追加書類が必要なこともあります。

会社設立で必要な書類と、各書類の詳細は以下の記事で解説していますので、こちらをご覧ください。

サラリーマンの起業・会社設立で節税するには?

サラリーマンが起業して会社設立するタイミングでも触れましたが、個人の所得にかかる所得税と、法人の所得にかかる法人税とでは税率が異なります。所得額が大きければ大きいほど、法人化による節税が効果的です。副業でコンスタントに大きな利益を上げているなら、会社を設立して法人で確定申告するだけで節税につながります。

法人化が節税になる大きな理由に、経費に参入できる支出の範囲が広がる点があります。代表的なものが、事業主に支払われる役員報酬です。

個人事業主として得た副業の収入は、すべて個人の所得として課税対象とされます。仮にこの収入を法人からの役員報酬とした場合、法人にとっては事業に必要な支出と見なされ、法人税を抑えることができます。

支払われていた役員報酬は個人の所得として扱われ、所得税の課税対象となります。しかし役員報酬は給与所得と同様に、給与所得控除の適用対象です。役員報酬の額面金額すべてが課税対象とはならず、法人税よりも低い税額に抑えることもできますので、総合的に大きな節税効果が期待できるのです。

ほかにも、会社設立による節税にはさまざまなものがあります。以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。

サラリーマンが起業して会社設立する際の注意点

サラリーマンが副業を法人化する場合に注意したいのは、会社設立が必ずしも得にはならない点です。法人は個人事業主よりも、税率や経費参入範囲の違いで、節税面でのメリットがありますが、すべてのケースで必ず節税できるとは限らないです。

所得税は所得額が大きくなるほど税率は上がります。逆をいえば、所得額が小さいほど税率は低くなるということです。低い所得税率が適用される利益が少ないうちは、法人にする意味がほとんどありません。

かえって、法人にすることで税負担が重くなる可能性があるほか、税務の専門家などに支払う報酬などのランニングコストがかさみ、赤字になることもあります。

サラリーマンの副業は会社設立しない方が良いケースもありますので、現状を整理して、法人化のメリットが多い場合に前向きに検討しましょう。

副業で起業して会社設立するメリット・デメリット

副業サラリーマンが会社設立を行うことでどのようなメリット、デメリットがあるか、簡単に解説していきます。

サラリーマンが起業して会社設立するメリット

前述した通り、サラリーマンが会社設立する主な目的は節税です。所得税額が大きいほど、節税効果が期待できます。一方、節税以外にも会社設立には以下のようなメリットがあり、こちらを目的に法人化するケースもあります。

  • 社会的信用を得やすい
  • 資金調達をしやすい
  • 助成金を利用しやすい
  • 最長10年赤字を繰越控除できる
  • 法人の財産は直接的には相続税の対象にならない

サラリーマンが起業して会社設立するデメリット

一方、会社設立のデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 会社の設立や解散にはコストがかかる
  • 社会保険の加入が必要
  • 赤字でも法人住民税の均等割りは負担しなければならない
  • 事務的な負担が増える

サラリーマンの場合、特にネックになるのが事務負担の増加です。
個人よりも厳密な処理が求められる税務、社会保険の手続きなど、会社を運営するにあたって必要な事務手続きを滞りなく行わなくてはなりません。本業もある中、すべてを自身で行うのは難しいでしょう。この場合、専門家に依頼するのが通常ですが、個人で依頼するよりもコストがかかります。

なお、会社設立のメリットとデメリットについては以下の記事でも解説していますので、こちらもご覧ください。


副業での起業・会社設立が会社にばれないためには?

副業を容認する会社も増えましたが、会社の慣習上、あるいは労務管理の関係上などの理由で、副業を制限または認めていない会社もあります。基本的には会社のやり方に従うべきですが、副業での会社設立を内緒にしたい、ばれないようにしたいと考える人も多いです。

副業での会社設立がばれる可能性として高いのは、会社が給与から天引きする住民税の額が前年と比べ高額になった場合です。住民税は個人の課税所得全体に対して課せられる税金です。副業の会社から支払われた役員報酬分も上乗せして税額が計算されるため、本業の会社の給料から天引きされる税額が変わり、副業が発覚する可能性があります。

対策として、設立した会社から支払われた役員報酬分は、確定申告時に普通徴収を選択して、本業の会社の給与から天引きされないようにしましょう。ただし、自治体によっては普通徴収を選択できない場合もありますので、心配な方は必ず自治体への確認が必要です。

また、可能性としては少ないものの、会社の登記情報からばれる恐れがあります。登記された会社の情報は、誰でも閲覧可能です。たまたま関係者が登記情報を調査している中で発覚する可能性もゼロではありません。

さらに、複数の会社から給与がある場合には、年金事務所へ届出が必要になりますので、そこで副業がばれる可能性があります。

自分で副業収入を受け取れば、必ず何かしらの手続きが必要です。また手続きを行っても、本業の会社にばれるリスクはゼロにはできません。そのため会社の代表者を配偶者などの家族に任せ、会社住所をレンタルオフィスなどの自宅外にするなど、自分の収入から切り離すのも有効な方法でしょう。

サラリーマンの起業・会社設立について理解できましたか?

サラリーマンが会社を設立することで、副業の収入にかかる税金を節税できる場合があります。しかし、法人化にともなう事務負担や管理コストの増加の影響は大きく、一概に副業を法人化すべきとはいえません。法人にするかどうかは、税金面でどうか、管理の手間はどうか、本業の会社の副業の受け止め方はどうかなど、多角的に考えて決断しましょう。

よくある質問

副業サラリーマンでも起業して会社設立できる?

サラリーマンの副業でも、会社設立に必要な手順を踏めば会社を設立できます。詳しくはこちらをご覧ください。

副業サラリーマンの起業・会社設立で注意することは?

副業による利益が少ないと、副業サラリーマンの会社設立は節税どころか、かえって税負担や金銭負担が増すことがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

副業の起業・会社設立は会社にばれる?

給与から天引きされる住民税額の大幅な増加や、誰でも閲覧可能な登記事項から、副業の会社設立が発覚することがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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