• 更新日 : 2024年1月9日

公共経営・公共施設経営とは?成功事例4つも

公共経営・公共施設経営とは?成功事例4つも

近年、あらゆる地方自治体において公共経営・公共施設経営の取り組みが推進されつつあります。公共経営とは利益獲得を目的としない公共的組織にビジネス・マーケティングといった経営の概念や手法を取り入れるという考え方です。そして、公共施設経営は公共施設を総合的かつ統括的に管理・運営するという仕組みを指します。

当記事では、公共経営・公共施設経営の概要と具体的な取組事例を詳しく説明します。公共経営に興味のある方はもちろん、社会的企業やNPO法人の経営に興味のある方はぜひ参考にしてください。

公共経営とは?

公共経営とは、利益の獲得を目的としない非営利組織や行政に民間企業の経営理念・手法を導入するという考え方です。英語では「Public Management(パブリック・マネジメント)」と呼ばれ、非営利組織や行政の活性化・効率化を図ることが目的となっています。

公共経営による概念や手法は、イギリスやニュージーランド、さらにアメリカを中心に、1980年から2000年にかけて広く取り組まれてきました。当時、公共経営は新たな試みであったことから「新公共経営(New Public Management:ニュー・パブリック・マネジメント)」と呼ばれ、「NPM」と略称されていたことも特徴です。

NPMが世界各国で取り組まれてから40年余りが経った近年、新たな試みではなくなったことから「公共経営」や「Public Management」という名称も浸透しつつあります。現在でも「NPM」「新公共経営」といった用語はたびたび目や耳にするものの、双方において基本的に大きな意味の違いはありません。

公共施設経営とは?

公共経営における1つの経営手法として、日本でもよく知られているのが「公共施設経営」です。公共施設経営とは、地方公共団体が保有または借り上げる公共施設を、自治体経営の視点で総合的かつ統括的に管理・運営・利活用するという仕組みのことであり、「公共施設マネジメント」とも呼ばれます。

各自治体においては、高度経済成長期に集中投資された公共施設の老朽化が進みつつあります。加えて、少子高齢化や人口減少をはじめとした社会環境の変化による新たなニーズへの対応など、公共施設のあり方も徐々に変化しています。こうした社会課題を解決するとともに安定した財政運営も両立させるために、多数の自治体で公共施設経営の導入が急がれています。

公共経営学科や公共経営コースでは何を学ぶ?

政治経済学部・経済学部・法学部・商学部・経営学部のある大学や大学院では、「公共経営学科」または「公共経営コース」が設けられているところも多々あります。いずれにおいても、卒業後の一般的な活動フィールドは行政組織・社会的企業・各種非営利法人などが挙げられます。

公共経営学科や公共経営コースにおける概要・科目は、下記の通りです。

公共経営学科

公共組織のマネジメントを担える人材の輩出を目的とした学科です。

【公共経営学科の主な科目】

  • 経営総論
  • 近代経済学
  • 経営心理学
  • 生活文化論
  • 非営利組織論
  • 公益事業論
  • 行政経営戦略論
  • 地方財政論 など

出典:明治大学|公共経営学科

公共経営コース

経済界や地域で活躍する人材の輩出を目的とした学科です。

【公共経営コースの主な科目】

  • 公会計論
  • 地域経営論
  • 地域再生論
  • 税務会計
  • 地域マーケティング論
  • ベンチャー・マーケティング論
  • 観光論
  • 産業立地論 など

出典:大阪公立大学|公共経営学科

いずれにおいても、1年次では公共経営の基礎を学び、2年次からは目指したい分野に合わせて専門的な授業を受けることとなります。例えば、スポーツ分野における公共経営に携わりたい学生は、2年次からスポーツ・ウエルネスマネジメント論や福祉マネジメント論といった内容を学びます。

公共経営や公共施設経営の成功事例

国内ではすでに多くの自治体で公共経営・公共施設経営が導入されており、実際に何らかの成果をあげたケースも多々あります。国内におけるいくつかの事例を把握することで、公共経営・公共施設経営の具体的な取り組みやその重要性をより理解できるでしょう。

ここからは、浜松市・さいたま市・習志野市・大田区における成功事例を紹介します。

浜松市の事例

旧称「佐久間町役場・ホール」として、主に市役所・役場の役割を果たしていた静岡県浜松市にある「佐久間協働センター」は、同市にある「さくま郷土遺産保存館」と「佐久間就業改善センター」と統合・機能集約しました。

旧さくま郷土遺産保存館の施設は解体後借地を返還し、佐久間就業改善センターは協働センターへの統合とともに民営化を図り、旧施設を自治会に貸与しました。さらに、新たな佐久間協働センターでは金融機関や民間保険会社、さらにNPO団体といった民間貸付も行います。

施設廃止による維持費の削減・施設貸与や民間貸付による賃料収入といった財政効果が発生し、事業後30年間において約10億円の費用削減効果が見込まれています。

出典:鳥取市|公共施設経営に関する取り組み事例
出典:内閣府|第3章 第3節 資産の有効活用と管理の効率化

さいたま市の事例

埼玉県さいたま市では、行財政改革の取り組みの1つとして、2009年に公共施設マネジメントをスタートしました。

公共施設マネジメント計画の全体目標設定にあたっては、市民利用施設・行政施設に関する「ハコモノ三原則」と都市関連施設・企業会計施設に関する「インフラ三原則」に大別しています。

ハコモノでは、新規整備の抑制・施設の複合化推進による施設送料の縮減、そしてインフラでは、一定の新規整備の継続・新規整備と更新や改修を合わせた投資額のコントロールが重視されています。

ハコモノ・インフラの目標値は毎年設定されており、1年に一度進捗状況も確認しています。今後もアクションプランの定期的な見直しを行いながら、長期にわたる公共施設マネジメントに取り組む予定です。

出典:地域総合整備財団<ふるさと財団>|令和2年度 公共施設マネジメント調査研究会 報告書
出典:さいたま市|令和4年度さいたま市公共施設マネジメント白書(令和3年度の現況)

習志野市の事例

千葉県習志野市では、2003年ごろから各公的施設の老朽化が目立ち、各所管課から大規模修繕や建て替えの要望が出ていました。しかし当時の行財政改革目標に地方債残高の削減を掲げていたため、建設投資の抑制が優先され老朽化がさらに進行します。これにより、2006年度における行政改革大網の実施計画として公共施設マネジメントへの取り組みが策定されます。

習志野市の公共施設マネジメントでは、公共施設の総量圧縮よりも市民サービスの充実に向けた全体の最適化を目的に、公共施設のあり方が検討されました。あらゆる改善策の検討から公共施設再生計画が策定され、2014年以降にして初めて具体的な事業に着手します。

2014年から2019年までの6年間(1期目)においては、合計25施設の「統廃合を含む改修・建て替え」を計画通り実施できています。現在はコロナ禍によって一部計画が先送りになっているものの、今後も長期的に公共施設マネジメントの取り組みが続く予定です。

出典:地域総合整備財団<ふるさと財団>|令和2年度 公共施設マネジメント調査研究会 報告書

大田区の事例

東京都大田区では、公共経営に関する中長期的な取り組みとして「大田区公共施設等総合管理計画」に取り組んでいます。そのうち、「公共施設マネジメントシステムの推進」では、大田区が保有する公共施設情報を一元管理し、今後の施設のあり方や複合化についても検討されています。

今後の展開としては、4地域18地区における課題・ニーズの明確化に加え、効果やメリットを明らかにしたうえで地域の実情に適した公共施設の整備・地域産業活動が進められる予定です。

出典:大田区|大田区公共施設等総合管理計画(令和4年度~令和23年度)

公共経営・公共施設経営は地域の活性化につながる取り組み

公共経営とは、利益の獲得を目的としない非営利組織や行政に民間企業の経営理念・手法を導入するという考え方であり、「Public Management(パブリック・マネジメント)」とも呼ばれています。

非営利組織や行政の活性化・効率化が目的となる公共経営において、よく知られる具体的な取り組みの1つが「公共施設経営」です。実際に公共施設経営は全国さまざまな自治体でもすでに導入されており、10億円もの費用削減効果が見込まれた成功事例も存在します。

全国的な地域ニーズの変化や建物の老朽化により、今後もさらに多くの自治体で公共経営・公共施設経営の取り組みが進められるでしょう。


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