- 更新日 : 2024年12月13日
許認可とは?許可・認可との違いや開業に許認可が必要な業種を解説
脱サラをして自分で事業を始めたいと思っている方は少なくありません。中には、個人事業ではなく、会社など法人の立ち上げを考えている方もいるのではないでしょうか。思い立ってすぐに起業できるビジネスもあれば、行政機関の許認可が必要なものもあります。
そこで今回は、会社設立の手続きを始める前に許認可が必要な業種を見ていきましょう。
会社設立サービスを使えば、設立に必要な書類を3ステップで簡単に作成できます。
目次
許認可とは
起業する場合、法律で特に規制がないビジネスであれば自由に始めることができますが、一定の業種については行政機関の許認可を受けることが前提条件です。市民と行政機関との関係をルール化する法律を総称して行政法と言いますが、学問分野としては難解な法律として知られています。
その一つである行政手続法では、行政手続きの申請に対する処分について定義しています(法第2条)。ここで言う処分とは、「行政庁の処分その他公権力の行使」と定義されており、申請に対して行政機関が諾否の応答をする「行政行為(行政処分)」と言われています。
行政行為は、食品衛生法であれば飲食店の営業許可など、個々の法律によって具体的な種類は異なります。許可、認可、免許などの許認可は、行政行為のうち法律的行政行為に該当します。
許認可が必要な事業は、その法律で定める審査基準の要件を満たしていなければ、申請は認められません。許認可を受けずに行った場合、刑事罰の対象になるものもあります。
許認可の5つの種類と違い
法律的行政行為である許認可には、さまざまな種類があります。ここでは届出、許可、認可、登録、免許について取り上げます。
届出
実は、届出は行政行為ではありません。許可、認可など行政行為を求めるための行為を指しますが、届出は応答を求めるものではなく、市民が決められた事項を行政機関に通知する行為です。
基本的に、単に所定の届出の通知をすれば手続きとしては完結します。ビジネスでは、開業届出書や設立届出書などの届出をすれば事業の開始が可能です。
許可
本来、市民が持っている自由を、公共の安全や秩序の維持など公益上の理由から法令によって一旦禁止し、個別の申請によって禁止を解除する行政行為です。飲食店や質屋の営業許可などが該当します。
認可
特定の事実や法律関係の存在を公に証明することを意味します。選挙人名簿への登録や行政書士の登録などが該当します。なお、警備業や自動車運転業は「認可」ではなく認定(許可)です。
登録
申請によって行政機関が一定の事項を公簿に記載する行政行為です。登録によって公の証拠力のほか、法律効果が生じます。旅行業やペットショップなどは登録制です。
免許
免許は、行政法では前述の許可の一つに該当します。自動車の免許なども本来、市民には運転する自由ですが、公共の安全などの理由から一旦禁止とし、一定の要件を満たした場合に禁止を解除するものです。
開業に許認可が必要な業態と窓口一覧
主な許認可事業に以下のようなものがあります。
手続区分 | 業態 | 申請先 | 特徴 |
---|---|---|---|
登録 | 旅行業 | 都道府県または国土交通省 | 旅行業法に定められた登録制度で、形のないサービスから旅行者を保護する目的があります。旅行業者に該当する場合は、営業保証金や基準資産などの要件を満たしたうえで登録が必要。 |
登録 | 貸金業 | 都道府県または財務局 | 貸金業者とは、消費者金融や手形割引会社、信販会社などの金銭の貸付けや媒介を業として行っている事業者のこと。多重債務問題やヤミ金融対策など、貸金業の適正化を目的として登録制度が設けられています。登録にあたり、5,000万円以上の純資産額などの要件を満たさなければなりません。 |
登録 | 倉庫業 | 運輸局 | 倉庫業者は、一時的に施設内に物品を保管する事業を行う事業者のことです。保管するものによっては周囲を危険にさらしたり、災害により消費者や取引先に影響を与えたりすることもあります。そのため、土地や施設設備基準を満たしたうえで登録することが求められます。 |
許可 | 飲食店 | 保健所 | 飲食店の許可は、食品衛生法に定められた制度です。飲食店は不特定多数の食品を提供する事業者で、消費者の衛生に関わることになります。飲食店開業の許可を得るには、施設設備の基準を満たすことや食品衛生責任者を設置することなどが求められます。 |
許可 | 建設業 | 都道府県 | 建設業の許可とは、建設工事に区分される29の業種のいずれかを業とする場合に必要な許可です。適正な施工が行われるよう、発注者保護の目的で設けられています。許可を取得するには、一定以上の技術や資本があることなどが求められます。 |
許可 | 運送業 | 運輸局 | 運送業は、一般貨物自動車を使って委託された荷物を輸送する事業のことです。他者の荷物を運ぶことになるため、発注者や消費者保護の目的で許可制度が設けられています。許可を受けるには、車両や駐車場などの要件を満たさなければなりません。 |
許可 | 介護事業 | 都道府県または市町村 | 介護事業とは、デイサービスやグループホーム、訪問介護など介護サービスを提供する事業のことです。利用者に適切な介護を提供する目的で、介護保険法に基づく許可制度が設けられています。事業者は、施設基準や人員基準などの要件を満たさなければなりません。 |
許可 | 警備業 | 警察署 | 警備業とは、事故や犯罪などのリスクに備えて、施設や貴重品の運搬、人などを警備する事業のことです。定められた護身用具などの範囲で適切な警備を行うよう、許可制度が置かれています。 |
許可 | 自動車運転代行業 | 警察署 | 自動車運転代行業は、顧客に代わって他人の所有する車を運転することを業とする事業のことです。安全運転管理などの目的から許可制度が設けられています。代行運転により生じる損害賠償の基準などの要件を満たさなければなりません。 |
免許 | 不動産業 | 都道府県 | 不動産の売買や交換、賃借の代理や媒介を業とする場合は、宅地建物取引業の免許が必要です。情報量の差などにより不動産取引に不利益が生じないよう、契約者を保護する目的で免許制度が設けられています。 |
免許 | 酒類の販売など | 税務署 | 飲食店などの酒類を販売する事業者は、酒類販売業免許が必要です。お酒には酒税がかかり、酒税を確実に徴収する目的で免許制度が設けられています。 |
飲食業
飲食業は許可制であり、事業をスタートするには保健所の営業許可が必要です。
建設業
建設業は、軽微な建設工事だけを請け負う場合を除いて、土木工事、建築工事、左官工事などの業種ごとに建設業許可を受けなければなりません。同一都道府県内だけで営業する場合、都道府県知事許可、複数の都道府県で事業を行う場合は国土交通大臣の許可になります。
宿泊業
いわゆる旅館業においては、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業および下宿営業の4種類があります。事業を行うには、都道府県知事の許可を受けることが必要です。
不動産業
不動産業とは、自社の宅地・建物の売買、交換のほか、他人の宅地・建物の売買、交換、賃貸の代理・媒介を行う宅地建物取引業のことであり、免許制となっています。同一都道府県内だけで営業する場合は都道府県知事の免許、複数の都道府県で事業を行う場合は国土交通大臣の免許が必要です。
人材紹介業
人材紹介業は、有料・無料を問わず、許可制です。法律的には職業紹介事業と呼ばれており、有料職業紹介事業を行おうとする場合は、都道府県労働局を経由して厚生労働大臣に申請しなければなりません。
美容業
美容室を開業するには、厚生労働大臣の指定を受けた美容師養成施設を卒業し、国家試験に合格して美容師免許を取得しなければなりません。また、美容師である経営者本人以外に美容師を雇用する場合は、管理美容師資格も必要となります。
開業に許認可が不要な業態
許認可が必要な業種には、代表例として紹介した業種のほかに、旅館業や古物営業、医薬品や医療機器の販売、医薬品や医療機器の製造、産業廃棄物処理、揮発油販売、病院・診療所、家畜商、浴場業、興行場などがあります。いずれも不特定多数の健康や衛生、環境などに関連する業種や適正な監視が必要とされる業種です。
一方、許認可が不要なのは、消費者が任意で利用するサービスで、利用者の健康や衛生などに大きく影響を与えない業種です。例えば、以下のような業種は、許認可がなくても開業できます。
- 駐車場経営
- 不動産賃貸業(大家)
- コンサルティング
- 学習塾
- ネイルサロン
- レンタル業 など
不動産業については、許認可が必要な業種でも取り上げました。ただし、免許が必要なのは、宅建業法上の取引である自社所有の不動産の賃貸以外の売買、交換、または賃貸の代理・媒介を行う場合に限られます。自社が所有する不動産の家主・地主となる場合は規制対象とはなりません。
許認可について相談できる窓口
許認可についての相談先として、専門家である行政書士や各種省庁の相談窓口が考えられます。
行政書士
行政書士は、官公庁に提出する書類の作成、その内容の相談や官公署に提出する手続について代理することなどを業とする専門家です。行政書士の主な業務として、許認可申請の代行があります。非常に多数の業種の許認可の申請を扱っているため、どのような許認可が必要なのかなどの相談に応じてもらえます。相談だけでなく、実際の手続きを代行してもらうことも可能です。
各種省庁の相談窓口
各省庁には、申請や届出の問い合わせができる窓口を設けています。例えば、経済産業省では消費生活用製品安全法やガス事業法などに関する相談窓口、国土交通省では建設業許可などに関する相談窓口があります。申請手続きを行っている各省庁の相談窓口に問い合わせれば、許認可に関して的確な回答をしてもらえる可能性が高いでしょう。ただし、問い合わせ先について、把握できていることが前提です。許認可が都道府県など、省庁が管轄でない場合もあるため、許認可が必要な業種に応じて相談できる窓口を確認しておく必要があります。
許認可の申請方法
許認可の申請は、それぞれの事業によって具体的な手続きが異なります。個人事業でスタートできるものもあれば、法人として設立登記が必要となるものもあります。法人の場合、一般的に、設立登記の完了後に行政庁での許認可申請を行います。
なお、定款に記載した事業目的は、そのまま履歴事項全部証明書に記載されます。大まかな流れとしては、申請すると許認可庁の審査が行われ、許可・不許可が決まります。例えば、警備業の場合、許認可申請先は警察署で、公安委員会の認定を得る必要があります。法人申請の場合、警備員指導教育責任者や役員全員のものが必要な書類など多々ありますが、「定款」「履歴事項全部証明書」などの書類が必要です。他の要件を満たしていたとしても、警備に関する事業目的が入っていないと、認定を得ることはできません。実際に「警備業法で定義される警備業」などの文言が定款の事業目的に入っていることが求められます。その他の事項については、警視庁(東京都)のWebサイトをご参照ください。
詳しい手続きや必要な書類に関しては、あらかじめ申請先のWebサイトや窓口で確認しておきましょう。
参考:旅行業の登録(東京都産業労働局)、飲食店営業の申請・届出様式一覧(東京都福祉保健局)
以下、旅行業、飲食業の場合の手続きについて見ていきましょう。
国務大臣または都道府県知事への申請手順
旅行業は、すべての国内海外の旅行業務を取り扱うことができる第1種旅行業のほか、一部取扱業務が限定されている第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業、そして旅行業者代理業の5つの種別があります。
第1種旅行業は、観光庁長官に登録申請が必要です。それ以外の旅行業は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に登録申請することになります。手続きの流れは、種別によって若干の相違はありますが、所定の登録行政庁に申請書類を提出します。その際、審査があり、ヒアリングが行われ、審査に通れば、登録通知書を受領し、申請手数料(第1種は登録免許税)を納付することになります。
第2種、第3種、地域限定旅行業であれば、営業保証金の供託などを経て、登録票・旅行業約款・料金表などの整備後、営業スタートという流れになります。
保健所への申請手順
飲食店の営業許可申請書類は、出店地を管轄する保健所に提出します。申請には、営業許可申請書だけでなく、営業設備の大要・配置図が必要となり、実際に調理場・製造場の詳細と客席の概要を表記します。
また、店舗ごとに食品衛生責任者を選ばなくてはなりません。調理師などの食品衛生に関する有資格者、あるいは食品衛生責任者養成講習会を受講完了者が必要です。営業許可申請では、これらを証明する書類を提示します。書類審査が通れば、保健所の担当者が店舗に出向いて施設検査を実施することになります。保健所によって細々した検査基準がありますが、これに通れば営業許可証が交付されるのです。
開業に必要な許認可を取得しないリスク
許認可が必要な業種については、許認可を得たうえで営業することが求められます。それでは、許認可を得ずに営業した場合はどうなるのでしょうか。ここでは許認可を取得しないことによる主なリスクを4つ取り上げます。
取引に制限を受けるリスク
許認可が必要な業種には、営業自体を制限しない業種もあります。しかし、営業に制限はなくても、取引には制限が設けられているものです。許認可を得ないことで、取引金額などに制限を受け、自由に取引できないリスクが想定されます。
営業停止のリスク
許認可が下りないと営業できない業種に関しては、必要な許認可がないまま営業している状態になります。そのため、許認可を取得していないことがわかると、営業停止の処分を受け、営業できなくなるリスクがあります。
刑事罰のリスク
許認可が必要な業種で、許認可を取得せずに営業した場合は、刑事罰を受ける可能性もあります。例えば、建設業の許可が必要な事業を無許可で営業した場合、建設業法違反で、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される可能性があります。
一定期間許認可を受けられないリスク
許認可が必要な業種で許認可を取得せずに営業し、刑事罰を受けた場合には、一定期間許認可を申請することができなくなります。例えば、建設業では、執行から5年経過しないと建設業の許可を申請することができません。
行政書士などの専門家も活用して賢く準備しよう
事業によっては行政機関の許認可が必要なケースがあります。それぞれ根拠法令があり、許認可を受けるには所定の手続きを行わなければなりません。
また、許認可が必要な業種で、許認可を取得せずに営業した場合、故意でなくても営業停止や刑事罰などの処分を受けることがあるので、開業前に許認可について十分に把握しておくことが重要です。
しかし、煩雑で難しい手続きもあるため、スムーズに許認可を得てビジネスを開始するには、行政書士などの専門家の手を借りることが賢明でしょう。
よくある質問
許認可とは何でしょうか?
申請に対して行政機関が諾否の応答をする行政行為(行政処分)です。詳しくはこちらをご覧ください。
許認可の種類はどんなものがありますか?
許可、認可、免許、登録などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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