- 更新日 : 2021年5月6日
有限会社から株式会社へ移行するメリットとデメリット
2006年5月の会社法施行にともない、有限会社制度は廃止となりました。しかし、それ以降も、従来の「有限会社」を継続して名乗る会社が存在し続けています。有限会社を維持し続けるのは得策でしょうか?
ここでは、有限会社から株式会社へ移行させる良し悪しを検証します。
有限会社について
有限会社とは、資本金が300万円以上、出資する社員が50名以内、取締役1人以上の会社形態のことを言い、株式会社に比べると会社を始めるのが容易なため、多くの会社がこの形態を利用してきました。
しかし、2005年に会社法が成立(2006年施行)した結果、有限会社という制度はなくなり、有限会社法も廃止されることとなりました。新たな会社法の施行後、すでにある有限会社は特例有限会社と呼ばれ、株式会社の一形態として会社を継続することが認められています。
会社法によって何が変わったか?
会社法施行後に特例有限会社となった場合には、新たに登記することなく、それまで通りの商号を維持しながら運営を続けることができます。
会社法成立により大きく変わった点は、株式会社の設立が容易になったことです。以前であれば、有限会社や株式会社の設立にはそれぞれ最低額の資本金として、300万円・1,000万円が設定されており、さらに株式会社の設立には取締役3名が必要でした。
現会社法のもとでは、最低資本金制度と取締役の人数制限がなくなったため、たとえ資本金が1円でも、取締役が1名でも、会社設立が可能なのです。
有限会社を維持するメリット・デメリット
特例有限会社は、「有限会社」を必ず商号中に含めなければなりません。特例有限会社は株式会社の一形態とみなされますが、要求事項には幾分違いがあります。
例えば、特例有限会社の場合、役員の任期は定められておらず、大会社であっても会計の監査や決算公告をする必要もありません。しかし、株式会社では、取締役は2年以内、監査役は4年と任期が決められており、(非公開の会社では、 取締役と監査役の任期を最長10年まで定款に定めることが可能) 改選で同じ役員が選出されたとしても、数年おきに役員変更の登記をしなければなりません。もちろん、大会社の場合、会計監査を受けることや決算公告も義務づけられています。
さらに、株式会社との相違点には、公開会社になれないという点があります。その反面取締役会や株主総会の承認を得ずに株主間で株式の譲渡が自由に行えるため、株主による支配関係が劇的に変わることもありえます。
加えて、特例有限会社には取締役会の設置が認められておらず、監査役の設置も任意で、監査役を置いたとしても会計監査の役目のみに限定されています。
有限会社から株式会社へ変えるべき?
前述した通り、株式会社には決算公告や、大会社の場合、会計監査が義務づけられています。そのため、有限会社から株式会社に変えると、対外的な信用度は上がるかもしれません。
最低資本金制度が撤廃されているため増資は不要ですが、移行にともなう申請代金や印鑑の調整、名刺の変更などにコストがかかります。注意点として、一度株式会社に変えると有限会社には戻せず、有限会社特有のメリットを生かした会社の運営は終わりをむかえることとなります。
有限会社から株式会社への移行手続き
特例有限会社を株式会社に変えるなら、まず、株式会社へ商号を変更することが必要です。そのためには、株主総会を開いて定款の変更を決議し、「特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記申請書」と「特例有限会社の商号変更による解散登記申請書」を最寄りの法務局に提出しなければなりません。申請の際、登録免許税が合計で6万円以上かかります。
まとめ
有限会社を続ける利点には、取締役や監査役の任期がないこと、決算公告や会計監査しなくてもよいことなどがあります。一方、株式会社の場合には、役員に任期があり、数年おきに改選して登記しなければなりません。
有限会社の継続か株式会社への移行かという選択は、それぞれのメリットやデメリット、会社の事情を総合的に考慮して判断することが必要です。
関連記事
会社設立費用と新会社法のメリットとは
合同会社の資本金はいくら必要なのか
定款の認証を初めての方でもスムーズに進める手順まとめ
よくある質問
有限会社とは?
有限会社とは、資本金が300万円以上、出資する社員が50名以内、取締役1人以上の会社形態のことです。会社法が成立し、有限会社の制度はなくなりました。詳しくはこちらをご覧ください。
有限会社を維持するメリットは?
特例有限会社の場合、役員の任期は定められておらず、大会社であっても会計の監査や決算公告をする必要もありません。詳しくはこちらをご覧ください。
有限会社を維持するデメリットは?
有限会社は。株式会社と違い公開会社になれないという特徴があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
株式会社の関連記事
新着記事
事業承継で活用できる保険とは?種類やメリット、注意点まで解説
事業承継では、保険の活用が可能です。しかし保険といっても種類が多く、どのような保険に加入すべきか悩んでいる方も多いでしょう。 保険は企業ごとの課題に合わせて、必要な保険に加入することが重要です。今回の記事では事業承継での保険の活用方法や、メ…
詳しくみる助成金とは?支給までの流れや活用するメリット・デメリットを紹介
助成金とは、労働環境改善などの企業の取り組みに対して払われるお金です。しかし助成金にはどのような制度があって、どう申請すればよいかわからない方も多いでしょう。 助成金の支給を受けるためには、支給要件を満たす必要があります。今回の記事では助成…
詳しくみる事業承継対策のポイントは?よくある課題や対策の具体例を解説
事業承継対策は、企業の存続や発展を左右するために欠かせないものです。日本の経済を支える中小企業の多くが抱える事業承継問題への対策は、急務といえます。 本記事では、中小企業の事業承継対策について、その重要性や課題、具体的な対策例を解説します。…
詳しくみる事業承継税制とは?要件や申請期限、改正内容をわかりやすく解説
事業承継税制は、中小企業が事業を次世代に引き継ぐ際の相続税や贈与税の負担を軽減する制度です。この制度により、後継者は経済的な負担が軽減され、円滑な事業承継が可能になります。 本記事では、事業承継税制の種類や要件、申請時期などについて詳しく解…
詳しくみる事業承継税制のデメリットは?考慮すべきポイントや活用すべきケースを解説
事業承継税制のデメリットとしては、免税になるまで時間がかかる、利子税発生のリスクなどが挙げられます。中小企業の円滑な事業承継を支援する税制措置ですが、デメリットを考慮し自社の状況に適しているかを慎重に検討する必要があります。 本記事では、事…
詳しくみる事業承継・引継ぎ補助金とは?要件や申請方法、募集時期を解説
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の円滑な事業承継を支援する施策のひとつです。経営革新、専門家活用、廃業・再チャレンジの3つの枠で構成され、最大800万円の補助金が交付されます。 本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要や申請方法、注意点な…
詳しくみる