• 更新日 : 2023年8月29日

経営分析で注目のROEって何?算出根拠とそのメリット・デメリット

経営分析で注目のROEって何?算出根拠とそのメリット・デメリット

企業の多くが経営指標として用いているROEは、自己資本を使ってどれだけ効率的に利益を上げているかを意味します。ただし、ROEだけに頼って経営状態を判断することはできません。この記事では、ROEの意味と算出方法、メリットとデメリット、および併せて使用されることが多いROAについて解説します。

ROEとは何か?

それでは最初にROEの意味と計算式、数値の目安、およびメリットを見ていきましょう。

Return On Equityの略、日本語では「自己資本利益率」

ROEとは「Return On Equity」の略で、日本語では「自己資本利益率」と呼ばれます。株主の持ち分である自己資本を使って、企業がどれだけの利益を上げているかを示す指標です。

会社の資本は大きくわけて、自己資本と他人資本の2つがあります。自己資本とは資本金と法定準備金、剰余金などの合計で、株主から調達した資金や会社の事業で得られた利益など、返済の必要がない資本です。一方、他人資本とは金融機関などからの借り入れや社債などによって調達した資本を意味します。

ROEとは投資家から見れば、自分が拠出した資によってどれだけのリターンが得られるかを見るための指標だといえるでしょう。

ROEの計算式と数値の目安

ROEの計算式は以下の通りです。

ROE(%)=当期純利益÷自己資本 ×100

 

自己資本に対して当期純利益が何%に相当するかを示します。

一般に、ROEが10%以上なら投資価値があると判断されます。5%以上なら合格点、15%以上なら優良企業といわれています。

また、国別平均のROEでは、2019年11月に経済産業省政策局公表した事務局説明資料において、日本、米国、欧州の2018年時点でのROEは以下の通りとなっています。

日本:9.4%

米国:18.4%

欧州:11.9%

業種によってROEの平均は変わる

ROEの平均は業種によっても異なります。主な業種のROE(2021年における実績値)を、2022年経済産業省企業活動基本調査速報から抜粋して以下に載せます。

業種ROE
石油製品・石炭製品製造業23.8
情報処理・提供サービス業14.3
卸売業13.1
情報通信業12.6
鉄鋼業11.5
製造業9.8
食料品製造業8.5
小売業7.5
自動車・自転車小売業6.8
クレジットカード業、割賦金融業6.4
飲食サービス業5.1
電気・ガス業1.9

上の表を見てわかる通り、ROEは業種により大幅に異なります。自社のROEを比較する場合には、全体の平均ではなく、同業種の平均を用いるのが良いでしょう。

なお、業種により産業の構造は異なります。ROEの平均値が高いから、その業種が優れているというわけではないことに注意しましょう。

ROEが高いことによるメリット

ROEが高いことによるメリットは、投資家による投資を呼び込みやすいことです。

ROEは株主が投資した資本をどれだけ効率的に活用しているかの指標です。したがって、ROEが高ければ経営効率が良く、投資家から見れば投資価値が高いと判断されます。

投資家は企業に対して、効率の良い経営を実践して利益を上げるよう要求するため、企業もROEを意識せざるを得なくなっているのです。

ROEの問題点

以上のように投資を呼び込みやすくなるメリットがあるROEですが、問題点もあります。どのような問題点があるのかを見ていきましょう。

財務レバレッジの向上でも数値が好転してしまう

ROEの第1の問題点として、財務レバレッジが高くなっても数値が好転してしまうことが挙げられます。財務レバレッジは、自己資本に対して総資本が何倍になるかを示す数値で、負債(他人資本)を多く抱えるほど相対的に高まるため、ROEだけで経営の良し悪しを判断するのは難しいのです。

ROEと財務レバレッジの関係を式で示せば、以下のようになります。

まず、ROEは以下のように分解できます。

ROE=当期純利益÷自己資本

=(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資本)×(総資本÷自己資本)

 

ここで、(当期純利益÷売上高)は売上高利益率、(売上高÷総資本)は総資本回転率、(総資本÷自己資本)は財務レバレッジとなるので、上記の式は以下のように書き換えられます。

ROE=売上高利益率×総資本回転率×財務レバレッジ

 

上記の式からわかるとおり、ROEと財務レバレッジは比例しており、財務レバレッジが大きな数値になるほどROEも大きくなります。

財務レバレッジは、負債を多くするほど高まります。もちろん、負債によって大きなビジネス展開を可能にするのは、ある意味で効率的な経営ということもできるでしょう。しかし、過度な負債の利用が倒産リスクを高めることも事実です。そのため、ROEを見る際には他人資本の内訳も確認する必要があるでしょう。

株価高騰の目的に使われてしまう

ROEの問題点として、株価高騰の目的に使われてしまうことも挙げられます。企業が自社株買いを行うとROEが上昇するため、株価上昇につながりやすいからです。

自社株買いを行うとROEが上昇する理由は、自己株式は自己資本から除かれるため、自社株買いのために使った資金の分だけ自己資本が減るからです。前述のとおりROEは、

ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100

 

なので、分母である自己資本が減少すれば上昇します。ROEの上昇で「収益性が高まった」と思った投資家が株式を買い求めると、株価の上昇が見込めます。

しかし、経営努力による収益性の向上は、本来は当期純利益の増加により示されます。この自社株買いによる株価の上昇は、実際の経営努力によって当期純利益が増え、結果としてROEが高まったことによるのではなく、単に数字をつけ替えただけに過ぎません。むしろ、自己資本の減少で設備投資や研究開発投資などが滞り、長期的な成長が阻まれる可能性もあります。

海外で重視している企業は多くない

日本と異なり、海外ではROEを重視している企業は多くないことも、ROEの問題点といえるでしょう。

日本ではROEを重要業績評価指標(以下、KPI;Key Performance Indicator)とする企業が多くあります。そして、ファンドなどからの圧力で株価を上昇させるため、前述の通り自社株買いを行う企業も多いのが実情です。しかし、米国などではROEをKPIとする大手事業会社は多くありません。実際、ROEがマイナス、あるいは大幅減でも、大きな利益を上げ、株価を上昇させている米国の大手企業はたくさんあります。

ROEを重視しすぎると、短期的なROE上昇のために自社株買いを繰り返すことになりがちです。それにより、設備投資や研究開発投資などが小さくなって長期的な成長力が低下すれば、国際競争力が低下することになりかねません。ROEは重要な指標ですが、あくまでも企業の一つの側面を表しただけのものです。企業経営は、さまざまな指標を見ながら、時価総額を長期的に増大させていく戦略が必要でしょう。

併せて知りたいROAとは?

ROEと共通し、セットで使われることが多い指標にROAがあります。最後にROAの意味と、使い方について見ていきましょう。

ROA=Return On Asset、総資産利益率を指す

ROAとは「Return On Asset」の略で、日本語では「総資産利益率」と呼ばれます。ROEが自己資本に対する利益率だったのに対して、ROAは、他人資本も含めた全ての資産に対する利益率を意味します。

ROAの計算式と数値の目安

ROAの計算式は以下のとおりです。

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

 

ROEの計算式と比較すると、分母が自己資本ではなく、総資産となっています。

ROAは、総資産を使って、どれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。数値の目安としては、ROAが5%以上なら、投資価値があると判断されます。

ROEとROAを比べる意味は?

さらに、ROEとROAを比較すると、以下のようなことが判断できます。

  • ROEが高くROAが低い場合:
    大きな負債を抱えているため、倒産リスクに留意する必要がある
  • ROEが低くROAが高い場合:
    負債を使って大きな事業展開を行う、財務レバレッジが活用できていない可能性がある

ROEだけでなく、ROAを併せて見ることで、企業の経営状態をより的確に知ることが可能です。

さまざまな指標を経営判断に取り入れよう

自己資本を使ってどれだけ効率的に利益を上げているかを判断できるROE。企業の投資価値を判断する際の指標として用いられます。ROEと併せてROAを用いることにより、企業の経営状態のさらに的確な判断も可能です。さまざまな指標を経営判断に採り入れていきましょう。


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