- 更新日 : 2024年4月30日
起業の方法・手順・手続き完全ガイドでビジネス開始までの流れが丸わかり
起業するには、どのような手順で進めるのでしょうか?この記事では、起業したいと考える方に開業までの流れをわかりやすく解説しています。
まわりを見渡せば、経営ノウハウの無料相談や、創業支援のサービス、マーケティングサービスなどが溢れていますが、まずは全体の流れを押さえておきましょう。
そもそも起業とは?
そもそも起業とはなんでしょうか?
起業とは、一般に自分でビジネスを始めることを指しますが、そのためには「個人事業主」となるか、「法人を設立」するか選択することになります。ちなみに英語ではいくつか表現の仕方がありますが、代表的なものに「starting a business」があります。
起業の担い手を起業家と呼びます。したがって、起業家は「自分で事業を始める」人であり、すでに存在する法人や、二代目、三代目といった事業の承継者は当てはまりません。
したがって、新たに事業を始め個人事業主となること、及び、新たに法人を設立し代表者となることが起業することとなります。
一方、「フリーランスとして独立する」という表現もよく目にします。厚生労働省のガイドラインによると、フリーランスの定義は次のとおりです。
実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者
引用:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ|厚生労働省
ここでいう自営業主は個人事業主であり、一人社長は法人の代表者です。よって、フリーランスは個人事業主も法人の代表者も含まれる「働き方」を示す言葉と言えます。
なお、個人事業主とフリーランスとの違いについての詳細は、フリーランスと起業の違いは?以下の記事をご参照ください。
起業の方法と手続き
では、まず起業の方法や手続きから見てみましょう。
起業の方法には、個人事業主になる方法と法人を設立する方法があります。それぞれの方法のメリットやデメリットに加えて、煩雑な法人設立の手続きをスムーズに進めるためのコツをまとめました。
個人事業主と法人設立のメリット・デメリット
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個人事業主のメリット・デメリット
起業方法に個人事業主を選ぶメリットとして、手続きは法人に比べると簡便なことが挙げられます。個人事業主として起業するためには税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出すれば、最低限の設立手続きは完了です。
もうひとつのメリットとして、税金の計算が法人より簡便なことが挙げられます。個人事業主の税金は所得税の確定申告にて納めることとなりますが、確定申告の方法のひとつである青色申告は条件を満たすことで、最高65万円の青色申告特別控除が受けられるためぜひ狙いたいところです。
ただし、この特別控除を受けるためには原則として複式簿記で記帳し、損益計算書だけでなく貸借対照表の添付が必要となります。「マネーフォワード クラウド確定申告」のような金融機関との連携機能がついたクラウド型確定申告ソフトを使用すれば確定申告もスムーズに行えるでしょう。
個人事業主のデメリットは社会的信用が法人に比べると低いことが挙げられます。クライアントによっては法人のみを取引対象とするところもあるため注意が必要です。
法人設立のメリット・デメリット
次に、法人設立のメリットを説明します。
法人は一定の社会的信用が得られる点が大きなメリットです。社会的信用に起因するクライアントとの取引の垣根が低くなり、銀行からの借り入れ審査も個人事業主に比べてスムーズに進むケースが増えます。
また、金銭的なメリットとして赤字を最長9年間繰り越せる点があります。個人事業主の場合は最長3年間の繰り越しですから、法人のほうが節税の面で考えると圧倒的に有利だと言えます。
法人設立にはデメリットもあり、ひとつは設立手続きがとても煩雑なことが挙げられます。
税務署への届出書類だけでも少なくとも次の3つの書類が必要です。
なお法人設立届出書には定款の写しなどの添付書類が求められ、必要に応じて各種届出書の提出をしなければなりません。手続きは個人事業主に比べると煩雑だと言えるでしょう。
もうひとつのデメリットは、法人は税務が非常に煩雑なことです。法令遵守の観点からも細心の注意を払う必要があり、税務や経理は大変難しい業務となります。本業と並行してこれらの業務を行うことは困難だと考えるのが自然でしょう。
実際のところ起業方法として法人設立を選ぶ方の多くはすべての手続きや税務を自力で行っているわけではなく、起業を支援するサービスや司法書士や税理士、行政書士などを利用しています。これから法人設立を目指す方はぜひ活用してください。
個人事業から法人へのステップアップ
起業にあたって簡便な手続きで始めたいのであれば、個人事業としてスタートし、事業が軌道に乗ってきたところで会社組織を立ち上げることをおすすめします。
個人事業から会社組織に変更することを「法人成り」といいます。法人成りのタイミングは個々人の判断によるものの、納税額の面から考えると一定の目安が存在します。個人事業主は所得税を納めますが、会社組織の事業主は、会社の所得については法人税を納め、事業主個人の所得については所得税を納めます。所得税と法人税の税率構造が異なるため、所得が一定額を超えた場合には、所得を法人と個人に分散させることで、トータルの納税額を低くできます。
一般に、売上から経費を引いた後の利益が500万円を超えると法人成りする方が有利であるとされていますが、金額は個別のケースによって上下します。
起業するための手順・ステップ
起業するには、個人事業主になる場合と法人を設立する場合があると述べましたが、ここではそれぞれについてどのような手続きがあるのかを見ていきましょう。
【個人事業主の場合】税務署に開業を届け出る
個人事業の起業の手続きは、まずは税務署に開業届を出すことです。開業後1か月以内に住所を管轄する税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。ただし、会計帳簿を複式簿記で記帳することを条件に税制上の優遇が受けられる青色申告を適用する場合や、従業員を雇って給与を支払う場合にも、税務署への届け出が必要になります。開業届と同時に手続きをしておくとよいでしょう。
2016年1月以降に税務署に提出する書類には、個人番号(マイナンバー)を記載する必要があります。さらに、提出するときに本人確認が求められるので、マイナンバーカードを持参する必要があります。マイナンバーの通知カードの場合は本人確認のために顔写真のある身分証明書(運転免許証やパスポートなど)も必要になります。
【法人の場合】①定款の作成及び認証
定款とは、会社の基本的な規則を記したもので、会社の目的、商号、所在地、資本金などを記載した会社運営の基盤となるものです。自ら定款を作成するときは、法務局のHPなどから様式をダウンロードして作成できます。作成した定款は、公証人による認証を受けなければなりません。公証人による認証は3~5万円の手数料がかかります。
紙に印刷した定款の原本には印紙税として4万円分の収入印紙を貼る必要がありますが、電子定款であれば印紙税はかかりません。しかし、電子定款にはさまざまな手間がかかることから、電子定款にする場合は司法書士などの専門家に依頼するのが早道でしょう。
【法人の場合】②法務局で登記
次に、法務局で設立登記の手続きをします。手続きには、設立登記申請書、定款のほか、登録免許税(資本金の0.7%。ただし最低15万円)、出資金の払込を証明する書類などが必要になります。
【法人の場合】③税務署へ届け出
登記が完了すれば、税務署に「法人設立届出書」を提出します。期限は設立の日から2か月以内です。添付書類としては、基本的に定款の提出が求められます。
法人設立届出書には、13桁の法人番号を記載する必要があります。ただし、提出までに法人番号が指定されていない場合は、記載しなくても構いません。
【法人の場合】④社会保険に関する手続き
従業員を1人でも雇えば、労働保険に加入しなければなりません。加入手続きは、労働基準監督署または公共職業安定所で行います。また、法人は、事業規模の大小にかかわらず、社会保険(健康保険、厚生年金保険など)への加入義務があります。加入するには、会社設立から5日以内に年金事務所へ届け出ます。
起業の準備で欠かせないポイント
起業準備で欠かせないのは「事業計画書」「起業資金」「家族の理解」の3点です。
起業準備は事業計画書から
事業計画書とは、今後の事業展開について、具体的に売上高や損益の目安をまとめたものです。事業計画書の作成は、決して簡単な作業ではありませんし、事業自体は計画書がなくても始めることは可能です。しかし、事業計画書を作成することは、起業に対する考えを整理し、将来の事業をシミュレーションするためには非常に有効な手段です。頭の中では考えがまとまっているつもりでも、書面に書き出すと意外にあいまいであることに気がつくものです。思い描いていた事業戦略から事業の目標をさだめ、事業計画に落とし込むのです。
事業計画書の書き方がわからない場合は、専門家に相談するほうがよいでしょう。地域によっては、市区町村と創業支援事業者(商工会議所など)が連携して相談窓口を設けているので相談してみるとよいでしょう。経営ノウハウからマーケティングまで、無料相談できる機会が得られるかもしれません。
起業資金の準備を始める
起業の具体的な構想ができたら、起業資金の準備を始めましょう。事業計画書をもとに資金がいくら必要かを検討し、資金の準備を始めます。起業という目標ができたので、資金を貯めることも苦にならないのではないでしょうか。
起業資金を準備する方法としては、銀行の預金がおすすめです。銀行で預金する目的は、資金を貯めることだけではありません。今後融資を受ける可能性も考慮して、金融機関にパイプを作っておく役割もあります。一定の貯蓄があることもアピールできるので、信用を高められます。
起業資金を準備するために預金口座を開くのであれば、信用金庫など地域に密着した金融機関をおすすめします。地域金融機関であれば、起業した後に融資が得られやすいというメリットがあります。すでに大手銀行に口座を持っている人であれば、その口座を使えばよいと考えがちですが、起業したばかりの小規模な事業者が大手銀行から融資を受けるのは非常に難しいのが実情です。
一気に資金を増やすために株式やFX(為替証拠金取引)など、元本割れの可能性がある金融商品を利用することはおすすめできません。また、クレジットカードや携帯電話の代金の滞納は避けるべきです。滞納の履歴は信用情報として一定期間蓄積されます。融資を受けたいときに過去の滞納履歴が影響することもあるので注意しましょう。
事業の規模によっては、自己資金だけでは起業できないこともあります。そのような場合は、金融機関から融資を受けるか、補助金や助成金を受けることを検討します。金融機関は事業計画書の内容をもとに融資するか否かを判断するので、事業計画書を作成しておくことは資金調達の面でも有効です。
起業について家族の理解を得ておく
よい起業を思い立ったとしても、生活を共にする家族がいた場合、彼らの理解や協力なしでは起業後の生活は成り立ちません。経営的な基盤の確保ができ、取引先の目途が立ったとしても、家族の理解が得られないままで進めている場合には思わぬところで足をすくわれることにもなりかねません。
起業を始める場合、一緒に暮らす家族もステークホルダーと言えます。ステークホルダーとは利害関係者を意味し、企業が経営を継続する上で、直接、間接に影響を受ける人たちのことです。
起業については、事前に家族と十分に話し合う機会を作り、説得するのではなく、理解し協力者となってもらわなければなりません。
説得とは、説き伏せることです。家族を説き伏せようとすることは、その根底に「自分の我を通す」「服従してもらう」といった気持ちが含まれていると言えます。
そうではなく、家族の存在をステークホルダーのひとつとして、理解と協力を得られるように、情熱だけではなく、具体的な事業計画や生活への影響を冷静に語れる経営者であるべきでしょう。また、経営のヒントやよいアイデアが得られるかもしれません。
起業に必要なもの
登記などの手続き以外にも、起業する際には必要なものがたくさんあります。次に、会社設立関連以外に必要なものについて説明します。
起業前に必要なもの~起業を知らせる広告活動~
起業したら、最初に取り組んでいくのが会社や事業のPR活動です。そのために必要なものは、ロゴ、名刺、ホームページ、挨拶状、DMなどになります。
ものを売る、サービスを提供する際には、最低限の広告が必要です。広告なしに事業を展開することはほとんど無理と言ってもいいほどで、広告費は最低限必要な経費になります。
ロゴマーク
ロゴマークは、その企業の理念や想いを図案化したものです。企業のブランディングのひとつとして、自分の決めた商品やサービスに対する想いが凝縮されたロゴは、信頼度アップに貢献するはずですので、ぜひ作ることをおすすめします。社員がいる場合は、ロゴを作成することで、社員全体の志気を高めるのにも一役買ってくれます。
名刺
名刺は、ビジネス上、基本的な自己紹介ツールとなります。「取引の入口」とも言われますので、ぜひ準備しておきましょう。
名刺は家庭用プリンターなどでも自作できますが、できればきちんとした印刷会社に依頼して作成しましょう。名刺の品質は、信頼度に影響する部分もあります。
ホームページ
最近では、インターネットが多くのビジネスチャンスを創出しており、インターネット上の名刺のような役割を果たしています。また、会社名を検索するクライアントも多いので、「ホームページがない=信頼度が低い」という印象を与える可能性もゼロではありません。
ホームページ作成代行のサービスは、安価なものから高価なものまで幅広くありますが、必ず、ランニングコストも比較しておきましょう。作成費用が安い代わりに、運営費用が高いサービスなどもあるので、注意が必要です。
挨拶状、会社概要チラシ
挨拶状、会社概要チラシを用いてビジネスを始めたことを「知らせる」のは、起業した際に必要なもののひとつになります。ビジネスなどで関わりのあった人などには、挨拶状を送って会社の存在を知ってもらいましょう。
また、会社開設のチラシは、顧客来店のきっかけともなり、「必要があれば利用しよう」という潜在的な顧客獲得にもつながります。メールは一度に送信でき簡単、安価ですが、誰しも販促用のメールなどを日常よく受け取っているため、インパクトとしてはチラシの方が大きいでしょう。
営業関連資料
会社案内のようなまとまった営業資料を、取引先などに自社を紹介する目的で少し厚めの紙などで作ることがあります。比較的会社規模が大きくなってから作成することが多いですが、対外的に企業を説明するためのパンフレットとして有用です。
デザインやレイアウトにも力を入れ、会社案内と主力商品やサービスの案内を別刷りにし、ポケットフォルダ型にして名刺が入るようにするなど凝ったものもあります。起業当初は1枚のリーフレットであっても、名刺より盛り込める情報も多いため広告効果は見込めます。
起業する前に必要なもの~営業戦略とキャッシュフロー~
起業したら、どんな戦略で顧客を獲得するのか、それを考えることは重要な営業ツールのひとつです。また、キャッシュフローに無理はないかなどシミュレーションすることも重要になります。
営業戦略を考える上で必要なもの
起業にあたっては、まず事業戦略を練り、その事業目標に基づいて事業計画を立てます。
そして、営業戦略を立てる際には、以下のような項目を中心に据えることで、最適な営業戦略を練ることができるでしょう。常に具体的に自社の商品やサービスについて考えましょう。
- 顧客は誰なのか、どんなニーズがあるのか
- 商品やサービスが他社商品と差別化できる点はどこか
- 市場規模はどれくらいか
- 商品やサービスはどのように成長していくか
- 商品やサービスの競争力はどうすれば維持できるか
チラシなどを配布する際にも、ターゲットは誰なのか、どんなニーズを狙っているのかわからなければ、より良い広告は作れません。上手い広告が作れなければ、事業全体の売上は上がらないでしょう。
他社商品などもリサーチし、自社の商品やサービスが優れている点などを訴えかけていくことも大切です。競合相手を小さく見積もれば、後々、痛手を被る可能性も出てきます。競合がどんな戦略を練っているのか考えることも必要なことですが、最も向き合うべきは自己の目標です。
キャッシュフローで考えたい必要なもの
起業したら資金繰りも大切な課題のひとつです。いざ、資金が底をついてしまったら、その後、何もできなくなってしまいます。計画的に資金繰りを調整することは大切なことですが、資金が必要となった際には、資金調達先をいくつか確保しておくと安心です。
キャッシュフローを滞らせないために、資金調達は早めに行う必要があります。まずは、企業が事業を維持していくために必要な運転資金を計算します。運転資金確保のため仕入先と交渉して支払い期限を延ばしてもらう、売掛金を早くに回収するなどで、ある程度資金繰りが改善できます。サービスによっては、前払制とするなども考えられます。
資金調達先が複数あり、いざというとき、すぐに行動に移せることは有利です。銀行、ベンチャーキャピタル、助成金や補助金など、考えられる資金調達先はすべて挙げておき、選択肢を広げておくことが重要です。
起業する前に必要なもの~人材を集めること~
人を雇う場合は、そのための準備も必要です。就業規則、人材教育マニュアルの作成、雇用する上での法律を知っておくことも重要です。人を雇うためには、求人広告や採用活動を行うなどの点で、思わぬ費用がかかってくるものです。さらに、雇用する上では、労働基準法を熟知しておく必要もあります。
求人をするには、広告費が無料になるハローワークに求人票を出すのがおすすめですが、人材の見極めは会社側の責任です。最近では、特に若い世代はネット上で求人を探します。そのため、集めたい世代、職業などによっては、ネット上の求人広告サイトなどで人を募集するのがいいでしょう。転職エージェントなどを利用すれば、ある程度マッチした人材を紹介してくれますが、大きな費用がかかりますので、起業直後はあまりおすすめできません。
起業にかかる費用
次に起業にかかる費用についてまとめます。
起業する前に用意しておくべき費用
会社を設立する場合には、起業する前にも費用が必要になります。最低限起業で必要になる費用は以下のとおりです。
会社設立登記にかかる費用
株式会社を設立する際には、設立登記をします。実際に法人設立届出書を提出するまでには、定款を作成・認証し、登記書類を作成するという流れになります。
登記申請には、オンラインと書面の2種類があり、法務局の申請用総合ソフトを使えればオンライン申請が便利です。
具体的にかかる費用は、以下のようなものです。
- 定款に貼付する収入印紙代(電子定款は不要) 4万円
- 定款の認証手数料 5万円
- 定款の謄本手数料 約2,000円(1枚250円で8枚程度必要)
これらを踏まえると、起業する際にかかる費用は、登録免許税が最低の15万円としても、合計で約25万円は必要ということになります。
会社設立を代行業者に依頼する費用
起業する際には、上記の登記手続きなどを、代行業者に依頼する場合もあります。代行業者に依頼すれば、自身で作成から認証までを行うよりも3万円ほど、上記の費用から安くできます。
自分で電子定款を作成することも可能ですが、ICカードリーダーや電子署名するためのAdobe Acrobat DC や Adobe Acrobat Reader DCなどのソフトが必要となり、手間もかかるのであまりおすすめではありません。設立作業は専門家に依頼し、起業直後の貴重な時間は事業のために使うことをおすすめします。
代行業者によっては、会社印鑑作成も同時に行い料金を請求される場合もあります。法人の印鑑登録は設立登記のタイミングで必要となりますので、設立登記の時点で用意しておくと便利です。印鑑は素材や形状により価格はさまざまです。
起業した後に必要になる費用
設立登記を終えたら、スムーズに事業に入れるようにしたいもの。そのためにはオフィスが必要です。オフィスといっても、選択肢はいくつかあります。
賃貸オフィス
ひとつは賃貸オフィスです。一般的に多く見られるオフィス形態のひとつで、賃貸住宅と同じく、賃貸契約を交わしてオフィスとします。住宅と同じく大きさによって費用はまちまちです。仲介手数料や敷金、保証金、礼金や前払家賃など、住宅を借りるときと同じような費用が必要になります。
レンタルオフィス
起業直後は、資金繰りが大変ですので、固定費であるオフィスの費用は安いに越したことはありません。
初期費用が抑えられるレンタルオフィスは、短期間であれば比較的安い家賃で借りられます。物件にもよりますが、家賃以外に、仲介手数料、敷金や礼金などが必要になるため、家賃6か月分程度の資金は確保しておきましょう。仕事に必要な会議室やコピー機などの設備も借りられる点はレンタルオフィスの強みです。しかしながら、レンタルオフィスによっては法人の登記が不可となるところもあるため、事前の確認が必要です。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスは、登記するときに必要となる住所だけを借りるというものです。実際にその住所にオフィスを開くのではなく、住所だけをレンタルすることになります。東京都内など、オフィス街のバーチャルオフィスを利用するには、月に1〜5万円程度が相場です。
バーチャルオフィスは、使用料を払えば、会議室を一定時間借りられるケースも多くあります。常に会議室が必要というわけでなければ、バーチャルオフィスを借りて、必要なときだけ会議室を借りるほうが、コストが抑えられる可能性もあります。ただし、事業内容によっては許認可に影響が出たり、融資の際に問題視されたりするケースもあるので事前に確認しましょう。
自宅
会社を設立した当初は、自宅をオフィスにする人も多いと思います。この場合は、すでに借りている、または持っている自宅ですので、費用があまりかかるということはありません。
ただし、バーチャルオフィスや自宅での開業は、銀行口座開設時に不利になったり、取引先からの信頼を得づらかったりなどのデメリットもありますので、注意が必要です。
事務用品関連費用
上記のオフィス家賃費用などの他にも、事務用品関連費用がかかります。事務机や椅子、パソコン、パソコンソフト、プリンター、文房具、ビジネスに利用する固定電話や携帯電話などその事業に必要な備品などが必要になります。
広告関連費
起業したら、仕事をもらうために最低限の広告関連費が必要になります。企業ロゴを作成したり、名刺を印刷したりすることは、最低限必要になる広告費用です。また、ホームページを持つことも重要です。
これらの費用は会社のブランディングにかかる費用として、予算を組んでから検討することをおすすめします。デザインや盛り込む内容などにより大幅に価格が異なってくるからです。外注に出す場合には最初に予算を明確にしてから依頼しましょう。
起業に関する費用、まとめるといくら?
上記の費用をすべて勘案すると、会社設立、企業にかかる費用は最低でも200万円程度は必要と考えておいたほうがよいでしょう。さらに事業内容によっては、上記に触れたものの他にも、設備が必要となる場合もあるでしょう。
日本政策金融公庫の2021年度新規開業実態調査によれば、個人が開業するにあたって開業費用500万円未満が約42%です。また、開業費用の平均は941万円とのことですので、業種や立地、起業の考え方によって大きなバラつきがあると心得ましょう。今回紹介した種々の費用を参考に、自分が想定する起業において他にどんな費用が必要になるのか、試算してみるといいでしょう。
参考:2021年新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所
起業の資金調達方法
次に、各資金調達方法の特徴とメリット・デメリットなどに触れていきます。
起業に関する資金調達
起業に関する資金調達には、まず資本金をどうするかということを考える必要があります。出資してもらう額が集まれば集まるほど事業にはよいわけですが、株主の意見も聞かなくてはなりません。出資者が想定される場合には、自己資金との兼ね合いも考えましょう。
自己資金
自己資金は、起業家自身が出資するものです。メリットとしては、出資の配分にもよりますが、企業オーナーとして采配がふるえて、自らの判断で使えることでしょう。金利の負担もないため、安心して使えます。
しかし、自己資金には限りがあります。万が一事業を清算すれば、自分の財産も失うことになります。
他企業からの出資
株式を他企業から出資をしてもらうというケースもあります。他企業の出資比率が50%を超えてしまうと、事実上、経営権を渡したことになりますので、注意してください。また、他企業の出資比率が3分の1以上となれば、重要な経営判断は、その企業の了解なくは進められなくなります。ただし、出資者である企業の協力を得られるという点では、メリットにもなります。
ベンチャーキャピタルからの出資
上場の可能性がある将来有望な企業であれば、ベンチャーキャピタルのような金融機関からの出資も視野に入れると良いかもしれません。ベンチャーキャピタルからの出資を受ければ、顧客を見つけたり、経営のアドバイスをもらったりすることもできます。
ただし、起業家の保有株比率は他企業から出資を受ける場合と同様に下がりますので、注意が必要です。
クラウドファンディング
最近は、クラウドファンディングによる資金集めも資金調達のひとつとして数えられるようになりました。クラウドファンディングとは、「Cloud(群衆)」と「funding(資金調達)」を組み合わせた言葉で、消費者庁では次のように定義しています。
インターネット上で公開した資金募集案件に対して投資者や寄付金を募る仕組み
引用:平成29年度版消費者白書 第1部 第2章 第1節(3)フィンテック(FinTech) | 消費者庁
資金を調達するには、資金調達のためのプロジェクトを立ち上げ、商品やサービスの内容、自社のアピール、事業実施計画をわかりやすく説明し、必要となる資金を割り出し、出資の募集をします。
クラウドファンディングにおいて最も重要なことは、インターネットを見た不特定多数の人からどれだけ共感を得られるかということです。掲載サイトの特性を考え、発信(PR)のしかたを熟慮する必要はありますが、新たな調達方法として有力視できるでしょう。
起業に関する資金調達~融資を受ける~
資金調達と聞いて、まず金融機関からの融資を考える経営者も多いでしょう。どのような借入先があるのか見ていきましょう。
家族や知人からの借り入れ
家族や知人などから借り入れるメリットは、経営権を保持しやすい点にあります。資金融資を第三者から受ける際、事実上、その第三者に経営権を奪われる事態に発展することがあります。
親しい間柄であれば、足をすくわれるような事態には発展しにくいと言えますが、あくまでもビジネスライクに事を進めるほうが無難です。あまりにもこちらに有利な条件で融資してもらうことが税法上不利に働く場合もありますので要注意です。
また、身内にリスクを与えることにもなりかねません。多くは融資の専門家ではありませんので、きちんと経営状態を把握していないと、無計画な借り入れをしてしまう可能性もあります。事業の失敗が、個人的な関係にまで影響してしまう可能性もあるので注意が必要です。
銀行、信用金庫から融資を受ける
大手銀行は会社を設立したばかりだと、会社の社会的信用度が低いため、まず融資が難しいケースが多いです。一方、地方銀行、信用金庫、信用組合などの場合は、大手銀行よりは融資の条件は厳しくないケースもあります。
これらの地域金融機関は、地域に密着して、顧客や協力業者を紹介してくれるケースもあり、会社を経営し始めてしばらくしたら、検討してみても良いかもしれません。
起業に関する資金調達~補助金制度を利用する~
起業の際の資金調達については、借入の保証をしてくれる融資制度、財務省が所管する日本政策金融公庫からの借入、マル経融資、補助金制度なども力強い味方です。概要を見てみましょう。
制度融資
民間金融機関が貸しつける際に、信用保証協会が「信用保証」をつけることで、借り入れやすくなります。
融資制度とは、このように企業者に対し、地方自治体や金融機関と信用保証協会などが連携する融資のことです。行政が支払利息や保証料を一部負担してくれる「利子補給」をしてくれるところもあり、一度検討する価値はあるでしょう。
制度融資の場合、立ち上げ直後の資金に充てることもできます。行政が支払利息などを補助してくれますし、相談制度なども利用できるので、経営相談をしたい経営者にもおすすめです。ただし、申し込みから融資実行までには時間がかかることがあります。1か月はかかりますので、注意して計画を立てましょう。また、支払利息とは別に保証料の負担も発生します。
公庫融資(日本政策金融公庫)
国民生活事業や中小企業事業があるのが日本政策金融公庫です。国民生活事業の「新創業融資制度」で融資を受けることができます。新規開業資金制度もありますが、実際はこの制度は審査の難易度が高いため、新創業融資制度を利用するのがおすすめです。運転資金としての借入上限は1,500万円です。借入上限の金額は事業計画や自己資金などから決定します。制度融資に比べると比較的早く、「融資実行」の結論が出ます。
開業資金の全額を融資してくれるわけではないことや、一度返済が遅れるとその後の新規融資に応じてもらえないといった点は注意が必要ですが、きちんとした返済計画や事業計画が提出できていれば、デメリットにはあたらないでしょう。
※日本政策金融公庫の新創業融資制度は、令和6年3月31日をもってお取扱いを終了しています。
令和6年4月1日からは、新創業融資制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度をご利用いただけます。詳しくは「日本政策金融公庫」のホームページを参考にしてください。
マル経融資
商工会議所や商工会などで経営指導を経て、推薦された商工業者が受けられる融資で、金利が低いのが特徴です。利息が低く、無担保無保証なのがメリットであり、デメリットである点は、創業後1年の経過が必要という点などになります。
補助金、助成金
補助金は、返済の必要がない一方、常に募集してないことや、後払いになるため実際に支払うための資金は必要であることなどの使いづらさもあります。助成金を得たい場合は、まずは自治体独自の助成金制度にあたってみましょう。産業振興の一環で、助成金制度を設けている自治体があります。
融資の利子を補給してくれるものや、信用保証料を補助してくれる助成金、店舗の家賃補助やホームページ作成費用補助、展示会出店時の費用を補助してくれるものなど、さまざまな補助金制度があります。該当するものがないか、一度起業する地域の自治体に確認してみることをおすすめします。補助金・助成金をはじめ各種資金調達については専門家への相談がおすすめです。
起業したい人は事業計画書の作成から始めてみましょう
起業を考える人は、自分の意気込みだけでなく、客観的にその起業を見ることを心掛けましょう。事業計画書が客観的な視点で描け、かつ、提供したい商品やサービスへの熱い想いが伝われば、融資だけでなく、その先でも周りを動かすことができるのではないでしょうか?
したがって、起業したい人はまず、その想いを事業計画書にどのように落とし込むかに傾注し、第三者目線でチェックしてみましょう。
よくある質問
起業にはどんな方法がありますか?
個人事業主になる方法と、会社を設立する方法があります。会社設立には費用も手続きもかかりますが、社会的信用は個人に比べて高く、取引の幅も広がります。詳しくはこちらをご覧ください。
起業準備で欠かせないポイントとは?
起業準備で欠かせない3要素は、「事業計画書」「起業資金」「家族の理解」です。詳しくはこちらをご覧ください。
起業において融資以外の資金調達にはどんなものがありますか?
自己資金を貯める、他企業からの出資を募る、ベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディングの利用などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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