- 更新日 : 2024年4月30日
開業準備に必要なこととは?オープン前までにすることリスト
創業は個人・法人関係なく用いられる言葉であるのに対し、開業は主に個人事業主が事業を始める際に用いられます。開業にあたり、創業融資や助成金を利用した資金調達、店舗物件選定、印鑑の作成、開業届などの書類提出などが必要です。
本記事では、開業準備までに必要なリストを提示します。開業準備にかかった費用を経費にできるかという疑問や開業費の仕訳方法についても解説しているため、個人事業主で開業を検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
開業準備に必要なことリスト
開業とは、新しく事業や商売を始めることです。「開業」は主に個人事業主が事業を始めた際に使われるのに対し、同様の意味を持つ「創業」や「起業」は法人に対しても使われます。
個人事業主が開業するにあたり、さまざまな準備が必要です。開業準備に必要なリストを以下に作成しました。
- 店舗のコンセプトやターゲットを決める
- 開業資金を調達する
- 店舗物件を選定する
- 印鑑を作成する
- 開業届などの必要書類を提出する
各作業について理解し、開業に備えましょう。
店舗のコンセプトやターゲットを決める
まず、開業を決断したら家族の同意を得た上で、退職の準備を進めます。開業後も付き合いが続く可能性もあるため、できるだけ円満退社できるように上司に丁寧に退社の意思を伝えましょう。
続いて、「誰に」「何を」「いつ」「どこで」「どのように」提供する店なのかというコンセプトを決めます。「カフェを始める」というだけでなく、10〜20代の高校生・大学生向けに(誰に)、SNSで話題になるおしゃれな飲み物を(何を)、平日の日中や放課後の時間帯に(いつ)、中心市街地で(どこで)、店内やテイクアウトで(どのように)提供することまで決めておけば、これから何をしなければならないかが具体的に見えてくるでしょう。
「誰に」が決まれば、ターゲット層に合わせたマーケティングもできます。ターゲット層を惹きつけやすい広告媒体は何かを考えることも、マーケティングのひとつです。
開業資金を調達する
開業にあたり、仕入れ・人件費・準備費用で資金が必要になります。日本政策金融公庫が実施した「2021年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均は941万円(調査開始以来最小値)でした。また、開業費用が「500万円未満」の割合が42.1%と最も多くの割合を占めています。
参考:日本政策金融公庫 2021年度新規開業実態調査(4 開業費用と資金調達)
個人事業主が開業するにあたってかかる具体的な費用については、以下の記事も参考にしてください。
開業資金の調達方法は、出資や個人借入、融資・補助金・助成金などさまざまです。ここから、創業融資や補助金・助成金について詳しく解説します。
創業融資
創業融資とは、新規にビジネスを始める事業者に資金を融資する制度です。創業融資を利用するメリットとして、金利が比較的低い点や創業直後でも借りやすい点が挙げられます。
創業融資の代表例のひとつが、政府が100%出資する日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。新創業融資制度を利用すれば、原則無担保無保証人で融資を受けられます。
ただし、利用にあたって主に以下の要件を満たすことが必要です。
- 新規で事業を始める、もしくは事業開始後税務申告を2期終えていない
- 新規で事業を始める、もしくは事業開始後税務申告を1期終えていない場合、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる
参考:日本政策金融公庫 新創業融資制度(新創業融資制度の概要)
新創業融資制度については、以下の記事も参考にしてください。
※日本政策金融公庫の新創業融資制度は、令和6年3月31日をもってお取扱いを終了しています。
令和6年4月1日からは、新創業融資制度の適用なく、無担保・無保証人で各種融資制度をご利用いただけます。詳しくは「日本政策金融公庫」のホームページを参考にしてください。
なお、日本政策金融公庫のみならず、各自治体による「制度融資」でも創業融資があります。
補助金・助成金
創業融資と異なり、国や地方自治体による補助金や助成金を利用すれば基本的に返済不要で資金を調達できます。
補助金とは、募集期間内に応募し、採択されれば支給されるものです。ただし、予算の都合上、金額や件数が上限に達すれば要件を満たしていても受給できない可能性があります。
一方、助成金は申請した内容が要件を満たし、不備がなければ支給されるお金です。補助金は他の事業者との競争を勝ち抜かなければ支給されないのに対し、助成金は要件さえ満たせば基本的に受給できる点が両者の違いとして挙げられます。
2022年の場合、創業時に利用できる補助金・助成金の一つが経済産業省の「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」です。利用できる助成金・補助金は、地域や時期によっても異なるため、随時各自治体サイトなどから確認するようにしましょう。
参考:経済産業省 令和4年度「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」の公募について
参考:地域・企業共生型ビジネス導入補助金事務局 令和4年度補助事業について
そのほかの資金調達方法については、以下の記事も参考にしてください。
店舗物件を選定する
続いて、店舗物件を選定します。飲食店の場合、店舗物件を選定してから契約するまでの流れは以下の通りです。
- どのようなお店であれば集客できそうか、自分の考えをまとめる
- ネットで該当しそうな物件を検索してみる
- 不動産会社を訪問する
- 内見する
- 希望に沿う物件であれば申し込み、入居審査を受ける
- 入居審査に通れば、賃貸借契約を締結する
店舗を選定する際、ポイントとなるのが物件の立地や面積、賃料などです。立地は、集客できそうな場所に注目します。
面積は広ければ広いほど売上規模拡大が期待できる反面、人件費や光熱費などのコストも上昇する点に注意しましょう。賃料は、各コストを踏まえ、事業を継続できそうな範囲で選ぶようにしてください。
印鑑を作成する
開業して自分でビジネスをするようになると、さまざまな場面で印鑑が必要となります。そのため、開業前に印鑑を作成しておくことが大切です。
印鑑には、さまざまな種類が存在します。各印鑑の名前と、主な特徴は以下の通りです。
特徴 | |
---|---|
届出をしていない個人の印鑑 | |
市町村役場で届出している印鑑 | |
屋号の入った印鑑 | |
銀行に届け出て使用する印鑑 | |
四角で見積書や請求書発行時に使用する印鑑 | |
住所・屋号・名前・電話番号・URLなどが入った印鑑 |
いずれの印鑑も、あるとビジネス上便利です。特に、開業届提出時に認印、不動産契約やローン契約で実印が必要となります。シャチハタは使用できないため注意しましょう。
個人事業主に必要な印鑑の種類については、以下の種類も参考にしてください。
また、以下の記事を読めば印鑑登録の手続き方法がわかります。
開業届などの必要書類を提出する
開業した個人事業主は、事業開始の事実があった1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しなければなりません。また、確定申告を白色申告ではなく青色申告でする場合は、「青色申告承認申請書」の提出もあわせて必要です。青色申告にすれば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
参考:国税庁 [手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続
参考:国税庁 No.2072 青色申告特別控除
個人事業主が開業するにあたって必要な書類については、以下の記事も参考にしてください。
ちなみに、業種や規模によって、食品関係営業許可申請や防火管理者選任届といった書類提出が必要となることもあります。例えば、調理業・製造業・処理業・販売業に該当する場合、営業許可が必要です。また、収容人数が30人以上の店舗・飲食店などでは防火管理者を選任しなければなりません。
参考:東京都福祉保健局・保健所 新たに食品に関する営業を始められる皆さんへ
参考:東京消防庁 防火管理者が必要な防火対象物と資格
開業準備にかかった費用は経費にできる?
開業する前の準備段階から、さまざまな費用がかかります。開業準備にかかる費用の呼び方は「開業費」です。開業費の代表例として、以下の項目が挙げられます。
事業を開始していないため、帳簿上開業費を経費にすることはできません。「繰延資産」として資産に計上してから、毎年少しづつ経費として計上(償却)していきます。
ちなみに、株式会社を設立するにあたってかかる費用は「創立費」に分類されます。創立費については、以下の記事も参考にしてください。
また、今回紹介した項目以外で開業費に該当する項目については、以下の記事から確認できます。
開業費の仕訳方法は?
4月1日に開業する個人事業主が、開業一週間前の3月25日に事業にあたって必要な消耗品(文房具)を3,000円分購入していた場合、開業費と元入金を用いて仕訳をおこないます。仕訳方法は、以下の通りです。
また、繰延資産である開業費は、60か月の均等償却又は任意償却のいずれかの方法で償却費を計算できます。
そのため、黒字の年に大幅に償却したり、赤字になりそうな年に償却を0円にすることも可能です。初年度に全額償却する場合、以下のように仕訳をおこないます。
株式会社の創立費の仕訳については、以下の記事を参考にしてください。
開業までに個人事業主として準備すべきことを確認しましょう
開業までに店舗のコンセプトやターゲット決め、開業資金調達や店舗物件選定、印鑑作成、必要書類といった作業を進めることが必要です。必要なことリストを作成し、少しずつ解決していきましょう。
また打ち合わせ費用や消耗品購入費用など、開業準備にかかった費用は経費にできない分、繰延資産に分類されます。繰延資産に計上した金額は均等償却か任意償却で償却することになるため、どのタイミングが自分にとって良いのか考えておくことが大切です。
よくある質問
開業時には何が必要?
店舗のコンセプト決め、開業資金調達、店舗物件選定、印鑑の作成、書類の提出準備などが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
開業準備にかかった費用は経費にできる?
開業準備のために特別に支出した費用(開業費)は「繰延資産」として資産に計上されるため、翌期以降状況に応じて費用化できます。詳しくはこちらをご覧ください。
開業費の仕訳方法とは?
個人事業主の場合、借方勘定科目に「開業費」、貸方勘定科目に「元入金」を用いて開業費を仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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