- 更新日 : 2026年7月15日
パン屋経営の基礎知識!必要資金や年収も紹介
パン屋経営は2025年に倒産件数が減少し、7割が黒字を確保しましたが、コスト管理と差別化が成功の鍵です。
- 開業資金700万〜2,000万円必要
- 経営者年収300万〜600万円が目安
- 廃棄ロスと原価管理が利益を左右
Q. パン屋の開業に必要な許可は?
A. パンを製造して販売する場合は、食品衛生責任者の設置と菓子製造業許可が必要です。店内で飲食提供を行う場合は、別途飲食店営業許可が必要となる場合があります。
パン屋の開業は、パン作りの技術や商品へのこだわりだけで成功できるものではありません。原材料費・人件費・光熱費の高騰、競合店の増加、廃棄ロスなどにより、経営面では厳しい課題もあります。
本記事では、パン屋経営の現状、経営者の年収、開業資金や必要な許可などを解説します。
目次
パン屋経営は厳しい?
パン屋経営は、原材料費・人件費・エネルギーコストの高騰により厳しい面があります。一方で、2025年以降は米価格の高騰を背景にパン需要が見直され、倒産件数が減少する動きも見られます。パン屋経営は一律に厳しいというより、価格転嫁、商品力、立地、販路づくりができるかどうかで明暗が分かれる状況です。
パン屋の倒産は2025年に減少へ転じている
帝国データバンクの「『パン屋』の倒産動向(2025年1-10月)」によると、パン屋の倒産は2025年1〜10月に15件発生し、2024年の26件から4割減となりました。原材料費、人件費、エネルギーコスト高の「三重苦」は続いているものの、米価格の高騰によるパン食への需要シフト、インバウンド需要、SNSを活用した集客などが追い風になっています。2024年度の業績についても、7割近くのパン屋が黒字を確保したとされています。
参考:帝国データバンク「『パン屋』の倒産動向(2025年1-10月)
2024年までは高級パンブームの反動とコスト高が重荷だった
東京商工リサーチの調査では、パン屋の倒産は2019年に34件と急増し、2024年には過去20年間で2番目に多い31件に達したとされています。背景には、高級食パンブームの反動、小麦価格の上昇、電気・ガス・水道代などの物価高があります。特に、価格転嫁が遅れた店舗や、ブームに依存した店舗は収益が悪化しやすくなりました。パン屋は日常需要がある一方、競合が多く、値上げや差別化を誤ると経営が厳しくなります。
参考:東京商工リサーチ「パン屋の倒産が急減、コメ高騰でパンに注目」
パン屋経営では利益率と固定費の管理が重要である
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」では、2023年度調査として卸売・小売業、飲食店・宿泊業などの経営指標が公表されています。パン屋は、製造設備、人件費、光熱費、廃棄ロスが発生しやすく、売上が伸びても利益が残りにくい場合があります。売れ筋商品の見極め、製造量の調整、予約販売、カフェ併設、ギフト需要、SNS集客などによって、客単価と利益率を高めることが重要です。
パン屋経営者の年収は?
パン屋経営者の年収は、店舗の売上規模、利益率、家賃、人件費、原材料費、借入返済の有無によって大きく変わります。公的統計で「パン屋経営者の平均年収」を直接示す資料は確認しにくいため、従業員賃金やパン屋の業績動向を参考にしながら考える必要があります。
パン製造・パン職人の年収は396.7万円が参考値
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、「パン製造、パン職人」の賃金年収は全国で396.7万円とされています。これは令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成されたデータで、パン屋経営者ではなく、パン製造・パン職人として働く人の賃金です。そのため、経営者年収をそのまま示すものではありませんが、パン業界で働く場合の収入水準を把握する参考になります。
小規模パン屋の経営者年収は300万〜600万円程度が一つの目安
個人経営や小規模店舗のパン屋では、経営者年収は300万〜600万円程度が一つの目安です。パン屋は、原材料費、人件費、家賃、光熱費、設備維持費、廃棄ロスがかかり、売上があっても利益が残りにくい場合があります。帝国データバンクの調査では、2024年度のパン屋は7割近くが黒字を確保した一方、原材料・人件費・エネルギーコスト高の「三重苦」に直面しているとされています。
参考:帝国データバンク「『パン屋』の倒産動向(2025年1-10月)
年収1,000万円を目指すには高単価化と多店舗化が必要
パン屋経営で年収1,000万円を目指すことは不可能ではありませんが、一般的な小規模店では簡単ではありません。高単価の食パンや惣菜パン、焼き菓子、ギフト商品、カフェ併設、法人向け販売、EC販売などで客単価と利益率を高める必要があります。また、1店舗だけで限界がある場合は、複数店舗展開や卸売、催事販売を組み合わせる方法もあります。ただし、売上拡大に伴って人件費や廃棄ロスも増えるため、単に販売数を増やすだけでなく、利益が残る経営設計が重要です。
パン屋の開業・経営に必要な資金は?
パン屋の開業資金は、物件取得費、内装工事費、製パン設備費、販売設備費、材料仕入れ費、広告費などで構成されます。パン屋はオーブンやミキサーなどの設備投資が大きくなりやすく、開業後も材料費、人件費、光熱費が継続して発生するため、初期費用と運転資金を分けて計画しましょう。
初期費用は700万〜2,000万円程度が目安
パン屋の初期費用は、小規模店舗で700万〜2,000万円程度が一つの目安です。居抜き物件を活用できる場合は700万〜1,000万円程度に抑えられることもありますが、スケルトン物件から厨房・売場を整える場合や、大型オーブンを導入する場合は2,000万円を超えることもあります。
主な内訳は、以下のとおりです。
- 物件取得費:100万〜300万円程度
- 内装・厨房工事費:200万〜700万円程度
- オーブン、ミキサー、発酵機、冷蔵庫などの製パン設備費:300万〜800万円程度
- ショーケース、陳列棚、レジなどの販売設備費:50万〜200万円程度
- 天板、型、作業台、調理器具などの備品費:30万〜150万円程度
- 小麦粉、酵母、バター、砂糖、具材などの初期仕入れ費:30万〜100万円程度
- 袋、ラベル、包装資材費:20万〜80万円程度
- 看板、Webサイト、SNS広告などの広告宣伝費:20万〜100万円程度
- 営業許可申請などの手続き費用:数万円〜数十万円程度
ランニングコストは月100万〜300万円程度を見込む
開業後のランニングコストは、店舗規模や製造量、スタッフ数によって変わりますが、月100万〜300万円程度を見込んでおくとよいでしょう。パン屋は早朝から仕込みを行うことが多く、人件費と光熱費がかかりやすい業態です。また、小麦粉、バター、卵、乳製品などの価格変動も利益に影響します。
主な内訳は、以下のとおりです。
パン屋は単価が低い商品も多いため、販売数が不足すると固定費を回収しにくくなります。客単価、1日の販売個数、廃棄ロスを含めて収支を試算することが重要です。
開業資金とは別に3〜6か月分の運転資金を用意する
パン屋は、開業直後から安定して来店客を確保できるとは限りません。そのため、初期費用とは別に3〜6か月分の運転資金を用意しておくことが重要です。
運転資金の目安は、以下のように考えます。
- 月のランニングコストが100万円の場合:300万〜600万円程度
- 月のランニングコストが150万円の場合:450万〜900万円程度
- 月のランニングコストが200万円の場合:600万〜1,200万円程度
開業時にオーブンや内装へ資金を使いすぎると、開業後の家賃、材料費、人件費の支払いに困る可能性があります。資金計画では、初期費用、毎月の固定費、材料費、廃棄ロス、借入返済額を分けて試算しましょう。
パン屋経営に必要な資格は?
パン屋の経営には食品衛生責任者の資格と、飲食店営業許可、菓子製造業許可が必要です。それぞれの資格・許可について見ていきましょう。
食品衛生責任者
食品衛生責任者の選任は、パン屋などの食品を取り扱う店舗では必要不可欠です。都道府県が講習会を行っているので、それに参加すれば取得できます。講習会の日程は丸1日程度、費用は1万円程度です。ただし、調理師や管理栄養士の資格があれば、講習を受けずに食品衛生責任者の資格が与えられます。
飲食店営業許可
飲食店営業許可は、店内で飲食を提供するお店に必要となる許可です。パン屋の場合、イートインスペースを設けて店内で飲食を提供する場合は、飲食店営業許可が必要となります。
また、店内に飲食スペースがない場合でも、ハムや卵などを使用した調理パンやサンドイッチ類を製造・販売する際は、飲食店営業許可や惣菜製造業許可などが必要となる場合があります。2021年の食品衛生法改正により営業許可制度が整理されましたが、必要な許可は製造方法や販売形態によって異なるため、事前に管轄保健所へ確認しましょう。
飲食店営業許可を取得するためには、食品衛生責任者を設置した上で、保健所で手続きを行います。施設基準に適合した店舗を作る必要があるため、内装工事が始まる前に設計図面を持参し、保健所へ事前相談することをおすすめします。
工事完了後には保健所の担当者による立会検査が行われ、問題がなければ許可証が交付されます。相談から取得まで半月〜1か月程度かかることが多いため、開業日程には余裕を持って準備を進めましょう。
参考:営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報|厚生労働省
菓子製造業許可
菓子製造業許可とは、パンや菓子を製造・販売するために必要となる許可です。テイクアウト専門のパン屋を開業する場合は、食品衛生責任者を設置し、この菓子製造業許可を取得します。
2021年の食品衛生法改正により営業許可制度が見直され、購入したパンや菓子を店内で食べてもらうためのイートインスペースを設ける場合でも、営業内容によっては菓子製造業許可のみで営業できるケースがあります。ただし、提供する飲食物の内容によっては飲食店営業許可が必要となる場合もあるため、事前に管轄保健所へ確認しましょう。また、店内でパン以外の料理を調理・提供する場合は、別途飲食店営業許可が必要となることがあります。
菓子製造業許可を取得するためには、保健所の定める施設基準を満たした厨房を整備する必要があります。そのため、店舗の内装工事が始まる前に設計図面を持参し、保健所へ事前相談することをおすすめします。
工事完了後には保健所による施設検査が行われ、合格すれば許可証が交付されます。相談から取得まで半月〜1か月程度かかることが多いため、開業日程には余裕を持って準備を進めましょう。
パン屋の開業に必要な機材や設備は?
パン屋を開業するには、パンを製造するための機材と、商品を販売するための設備の両方が必要です。製造量や販売スタイルによって必要な設備は変わるため、最初にメニュー数、1日の製造量、カフェ併設の有無を決めたうえで準備しましょう。
オーブン・発酵機・ミキサー
パン屋に欠かせないのが、オーブン、発酵機、ミキサーです。オーブンはパンの焼き上がりを左右する中心設備で、販売するパンの種類や製造量に合ったものを選ぶ必要があります。発酵機は温度や湿度を管理し、生地の品質を安定させるために使います。ミキサーは生地を大量にこねるための機材で、手作業よりも効率よく仕込みができます。設備が小さすぎると販売機会を逃し、大きすぎると初期費用や光熱費が重くなります。
冷蔵・冷凍設備と作業台
小麦粉、バター、卵、乳製品、具材、クリームなどを管理するために、冷蔵庫や冷凍庫も必要です。パン屋では、前日仕込みや冷凍生地を使う場合もあるため、保管スペースを十分に確保しましょう。また、生地の成形や具材の準備を行う作業台、ラック、天板、番重なども必要です。作業動線が悪いと製造効率が落ちるため、厨房の広さに合わせて配置を考えることが重要です。
シンク・手洗い設備・換気設備
パン屋を営業するには、保健所の施設基準を満たす厨房設備も必要です。シンク、手洗い設備、給湯設備、換気設備、排水設備などを整え、衛生的に製造できる環境を作ります。物件によっては、給排水や電気容量、ガス設備の追加工事が必要になることもあります。物件契約前に図面を持って保健所へ相談し、営業許可に必要な設備を確認しておきましょう。
ショーケース・陳列棚・レジ設備
製造設備だけでなく、販売スペースの設備も重要です。焼きたてパンを並べる陳列棚、冷蔵商品を置くショーケース、トレー、トング、包装台、レジ、キャッシュレス決済端末などを準備します。商品の見せ方は購買意欲に影響するため、店内の導線や照明も含めて設計しましょう。売れ筋商品を見やすい位置に置き、会計までスムーズに流れる配置にすることが大切です。
パン屋を開業する際の手順は?
パン屋を開業するには、商品づくりだけでなく、コンセプト設計、資金計画、物件選び、設備準備、営業許可、集客準備まで段階的に進める必要があります。パン屋は製パン設備や厨房基準が重要になるため、物件契約前に保健所へ相談しておきましょう。
1. コンセプトと販売するパンを決める
まず、どのようなパン屋にするのかを明確にします。食パン専門、惣菜パン中心、ハード系パン、菓子パン、焼き菓子併売、カフェ併設など、方向性によって必要な設備や客層が変わります。あわせて、住宅街の家族向け、駅前の通勤客向け、観光客向け、ギフト需要向けなど、ターゲットも決めましょう。売りたいパンだけでなく、立地や価格帯に合う商品構成にすることが重要です。
2. 事業計画と資金計画を作成する
開業費用と毎月の運営費を見積もります。パン屋では、物件取得費、内装工事費、オーブン、ミキサー、発酵機、冷蔵庫、ショーケース、陳列棚、材料費、包装資材費、広告費などが必要です。開業後は、家賃、人件費、材料費、水道光熱費、廃棄ロスも発生します。融資を利用する場合は、販売個数、客単価、原価率、月商、返済計画を事業計画書にまとめておきましょう。
3. 物件を探し、保健所に事前相談する
パン屋は、製造スペースと販売スペースの両方が必要です。駅前、住宅街、商店街、学校周辺など、ターゲットが来店しやすい立地を選びましょう。物件契約前には、菓子製造業許可や飲食店営業許可に必要な設備基準を満たせるか確認します。厨房区画、シンク、手洗い設備、換気、給排水、電気容量などを図面で確認し、管轄の保健所に相談することが大切です。
4. 製パン設備・内装・仕入れ先を準備する
物件が決まったら、内装工事と設備導入を進めます。オーブン、ミキサー、発酵機、冷蔵庫、冷凍庫、作業台、天板、型、ショーケース、レジ、陳列棚などを準備しましょう。あわせて、小麦粉、酵母、バター、砂糖、卵、具材、包装資材の仕入れ先を決めます。製造量に対して設備が小さいと機会損失につながり、大きすぎると初期投資が重くなるため、販売計画に合う設備を選ぶことが重要です。
5. 営業許可を取得し、開業告知を行う
設備が整ったら、保健所へ営業許可を申請し、施設検査を受けます。パンや菓子類を製造販売する場合は、菓子製造業許可が必要になることが多く、カフェ営業を行う場合は飲食店営業許可が必要になる場合もあります。許可取得後は、Googleビジネスプロフィール、Instagram、チラシ、ショップカード、Webサイトなどで開業を告知しましょう。開業後は、売れ筋商品、時間帯別販売数、廃棄ロス、客単価を確認し、商品構成や製造量を改善していくことが大切です。
パン屋経営を成功させるポイントは?
パン屋は日常需要がある一方で、原材料費、人件費、光熱費、廃棄ロスが利益を圧迫しやすい業態です。長く経営を続けるには、商品力だけでなく、製造量、立地、価格設定、販路、リピーターづくりを総合的に管理する必要があります。
看板商品と利益が残る商品を分けて設計する
パン屋では、食パン、クロワッサン、惣菜パン、菓子パンなど、集客の軸になる看板商品を作ることが重要です。ただし、原価や手間がかかる商品ばかりに偏ると利益が残りにくくなります。高単価商品、日持ちしやすい焼き菓子、セット販売、予約販売なども組み合わせ、集客商品と利益商品を分けて設計しましょう。
製造量を調整して廃棄ロスを減らす
パン屋で失敗しやすい原因の一つが、作りすぎによる廃棄ロスです。パンは焼きたてが魅力ですが、売れ残ると材料費と人件費が無駄になります。曜日、天候、時間帯、イベント、季節ごとの販売数を記録し、製造量を調整しましょう。取り置き予約や事前注文を受け付けると、売れ残りを減らしやすくなります。
立地に合う販売方法を選ぶ
住宅街なら朝食用の食パンや家族向け商品、駅前なら通勤客向けの惣菜パンやコーヒー、観光地なら手土産向けの商品など、立地によって売れる商品は変わります。店舗販売だけで売上が安定しない場合は、催事販売、法人向け注文、学校・施設への納品、EC販売なども検討しましょう。
SNSと口コミでリピーターを増やす
パン屋は、見た目や焼き上がり時間を伝えやすく、SNSとの相性が良い業態です。InstagramやGoogleビジネスプロフィールで、新商品、焼き上がり時間、売り切れ情報、季節限定商品を発信しましょう。ポイントカードやLINE公式アカウントを活用し、再来店のきっかけを作ることも大切です。
パン屋経営は資金計画と利益管理を徹底して継続できる店づくりをしよう
パン屋経営は、日常需要がある一方で、原材料費・人件費・光熱費・廃棄ロスが利益を圧迫しやすい業態です。開業時には、初期費用だけでなく3〜6か月分の運転資金を確保し、菓子製造業許可や飲食店営業許可など必要な手続きも早めに確認しましょう。開業後は、看板商品づくり、製造量の調整、立地に合った販売方法、SNSや口コミを活用したリピーターづくりが重要です。売上を増やすだけでなく、原価や固定費を管理し、利益が残る経営を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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