• 作成日 : 2024年9月20日

フリーランスの資金調達方法は?融資や助成金などの選び方を解説

フリーランスの資金調達方法には、日本政策金融公庫の融資や信用金庫からの融資など複数の選択肢があります。さまざまな資金調達方法の中から自分に合った方法を選択するにはどうすればよいのでしょうか。この記事では、フリーランスが利用できる主な資金調達方法の特徴や選び方を解説します。

フリーランスが資金調達を考えるべきタイミングは?

フリーランスが資金調達を考えるタイミングとしてイメージしやすいのは、開業前後です。他にも以下のケースも資金調達のタイミングと言えるでしょう。

  • 開業直前の開業資金の調達のため
  • 開業直後の運転資金の確保のため
  • 一時的に収益が下がったとき
  • 仕入コストの高騰で資金が不足したとき
  • 災害などで一時的に事業を継続できないとき
  • 取引先の倒産で債権の貸倒れが発生したとき
  • 事業拡大により設備投資をしたいとき
  • 法人化のための資金が必要なとき など

フリーランス向けの主な資金調達方法は?

フリーランス向けの資金調達方法として、主なものの特徴や利用場面などを紹介します。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。開業する人、事業承継に取り組む人、事業再建を図る人、災害により損失を受けた人、業況が一時的に悪化している人など幅広く融資を行っています。セーフティネットの役割を担う面もあり、業績などがない段階でも申請できるのが特徴です。

特徴メリット・開業した人向けの融資制度がある

・担保や保証人がいなくても利用できる制度がある

・業況が一時的に悪化した人向けの制度がある

デメリット・制度によって利用条件に違いがある

・融資を受けられるまでに時間がかかる可能性がある

利用場面・開業したばかりの資金調達

・災害で被害を受けた場合

・経営が一時的に悪化している場合

・事業再建を図る場合

・事業拡大を図る場合  など

手数料など融資の利息は状況による

(※2024年時点でおおむね年率0.55~3.90%)

返済必要
入金までの日数申請の状況などによる

(おおむね数週間~数カ月)

審査の条件申請する制度による
審査の通りやすさ低~中
限度額申請する制度による

(融資残高の平均は約900万円)

申請方法インターネットなどからの申込みをした後に面談

信用金庫の融資

信用金庫は、信用金庫法をもとに会員の出資によって運営されている非営利法人です。営利を目的とした銀行とは異なり、大衆の金融の円滑化などを設立の目的としています。信用金庫は地域密着型で、営業エリアに居住する個人や立地する企業を対象に融資を行っているのが特徴です。

特徴メリット・地域密着型で対応してもらえる

・会員向けの優遇金利などが設定されていることがある

デメリット・基本的に融資は会員が対象

・対応エリアが限定されている

利用場面少額の融資を受けたい場合など
手数料など融資の利息は信用金庫によって異なる
返済必要
入金までの日数信用金庫によって異なる
審査の条件信用金庫によって異なる
審査の通りやすさ低~中
限度額信用金庫によって異なる
申請方法信用金庫によって異なる

地方自治体の補助金、助成金

補助金や助成金は、国や地方自治体に申請を行い、採択された場合に受給できる公的な制度です。IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金のほか、地方自治体が行っている補助金や助成金の制度もあります。地方自治体の助成金や補助金は、一般的に国の制度と比較すると補助額は下がるものの、国にはない制度を設けている可能性がある点が特徴です。

特徴メリット・基本的に返済が不要

・自治体によってさまざまな制度がある

デメリット・手続きが複雑

・採択されない(受給できない)可能性がある

利用場面設備投資に力を入れたいとき

生産性向上を図りたいとき  など

手数料など基本的になし
返済基本的に不要
入金までの日数制度の対象となる経費負担の確認後など
審査の条件制度によって異なる
審査の通りやすさ低~中
限度額制度によって異なる

(補助金は対象経費の一部について給付されるのが一般的)

申請方法制度によって異なる

ビジネスローン

ビジネスローンは、事業資金専用のローンです。事業者でないと利用できないため、個人事業主として開業しているフリーランスが対象になります。一般的な金融機関の融資と比較して利用しやすいことから、少額の融資を受けたい場合などに向いているでしょう。

特徴メリット・フリーランスでも利用しやすい

・用途の制限が緩め(事業用に限る)

・基本的にネット上で完結できる

デメリット・多額の借入れに向かない

・個人事業主として開業している必要がある

利用場面一時的な資金繰り悪化の防止

少額の設備投資の資金調達  など

手数料など利息は金融機関の通常の融資と比較して高め

(目安は1%~18%)

返済必要
入金までの日数一般的な金融機関の融資と比較して早め

(即日融資に対応するサービスもある)

審査の条件金融機関の審査内容による
審査の通りやすさ
限度額一般的な金融機関の融資と比較して低め

(目安は1万~2,000万円)

申請方法金融機関による

(インターネット完結のサービスもある)

ファクタリング

ファクタリングとは、主にフリーランスが保有する売上債権(売掛金など)を業者に売却することで現金化する方法を指します。債権の現金化のため、フリーランス個人の信用力ではなく、債権の発行元である企業の信用力が重視されるのが特徴です。債権を早期に現金化する方法のため、基本的に返済の必要はありません。

特徴メリット・基本的に担保や保証人がいらない

・フリーランス個人の信用はほとんど影響しない

デメリット・売上債権(売掛金など)がないと利用できない

・個人間取引の売上債権の現金化は難しい

利用場面資金繰りをよくしたい場合

一時的に資金が必要になったとき  など

手数料など目安は売上債権の額面の1%~18%
返済基本的に不要

(償還請求権ありの場合は貸倒れになったときに返済が必要)

入金までの日数業者による

(最短即日入金のサービスもある)

審査の条件業者による

(主に債権の与信を重視)

審査の通りやすさ
限度額債権の額による
申請方法ファクタリング業者に申込み

手持ち資産の売却

フリーランス個人が所有している資産や事業用の資産を売却して資金調達をする方法です。所有する資産の売却になるため、審査や返済の必要がなく、誰でも取り組みやすいメリットがあります。ただし、売却できる資産やお金になる資産がないと、資金調達がうまくいかない可能性もあります。

特徴メリット・状況によってすぐに現金化できる

・返済の必要がない

デメリット・売却できる資産が必要

・売却分の資金調達しかできない

利用場面資金繰りが一時的に悪化しているとき など
手数料などなし
返済不要
入金までの日数売却方法による
審査の条件なし
審査の通りやすさ審査はなし
限度額売却する資産による
申請方法・買取業者に買取ってもらう

・オークションやフリマに出品する  など

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、クラウドファンディング事業者を通して、プロジェクトに必要な資金の募集を行い、個人などの支援者から資金調達をする仕組みです。支援金に対して商品やサービスなどのリターンが発生する購入型、基本的にリターンがない寄付型など、さまざまな種類のクラウドファンディングが存在します。

特徴メリット・新規事業にチャレンジしやすい

・マーケティングにも活用できる

デメリット・目標金額に達しない可能性がある

・プロジェクトの拡散などが必要

利用場面新規プロジェクトを立ち上げるとき

新商品開発を始めたいとき     など

手数料など目安は10%~20%

(※社会的課題に取り組む場合などは手数料が無料のサービスもある)

返済基本的に不要

(※融資型のクラウドファンディングは返済が必要)

入金までの日数募集期間などによる
審査の条件クラウドファンディングの事業者による
審査の通りやすさ
限度額募集する金額による
申請方法クラウドファンディングサイトに掲載依頼をする

適切な資金調達の方法を選ぶには

資金調達方法について、ケース別に選び方を紹介します。

負担を抑えたい場合

手数料や利息などの負担を抑えて資金調達をしたい場合は、手数料などがほとんどかからない方法が向いています。例えば、売却できる資産がある場合は、個人や事業用の資産の売却が検討できるでしょう。また、設備投資など経費の一部を給付金として受け取れる助成金や補助金も候補に考えられます。自治体などでフリーランスが利用できる助成金や補助金がないか確認してみましょう。

すぐに現金を調達したい場合

一時的な資金繰りの悪化などですぐに現金を用意したい場合は、入金までのスピードが早い方法を選択することをおすすめします。例えば、即日または申込みから数日の入金に対応しているビジネスローンやファクタリングなどが候補として考えられます。

なお、日本政策金融公庫や信用金庫などからの融資はまとまった金額を用意できる可能性がある一方で、スピーディーな入金は期待できません。状況に応じて、資金調達方法を選択するようにしましょう。

フリーランスの資金調達に税金はかかる?

資金調達の方法によって、税金がかかる方法と税金がかからない方法があります。資金調達を検討する際に税金関係についても確認しておきましょう。

税金がかからない資金調達方法

税金がかからない資金調達方法には、日本政策金融公庫からの融資やビジネスローンなどがあります。いずれも借入金であって返済義務があることから、融資を受けた額に対して課税はありません。ファクタリングについても、売上債権の売却によって利益が得られるわけではないため、課税はなしとなります。

手持ちの資産の売却は、どのような資産を売却するかによって課税関係が異なります。例えば、個人が所有する家具や什器など生活用動産を売却して事業資金に充てる場合は、売却によって得られた利益は課税対象にはなりません。

税金がかかる資金調達方法

国や地方自治体から受給する補助金や助成金は、課税対象です(消費税非課税)。ただし、圧縮記帳などによって税金の繰り延べをすることは認められます。

個人が事業用の資産を売却する場合にも注意が必要です。事業用の車両や機械などを売却した際に売却益(売却額から譲渡費用と取得費の合計額を差し引いた利益の額)があるときは、売却益は譲渡所得に区分され、所得税の課税対象となることがあります。

また、クラウドファンディングの利用にも注意しましょう。出資や融資とみなされない、購入型や寄付型のクラウドファンディングは、所得税や贈与税の課税対象となります。

フリーランスが資金調達する際の注意点

フリーランスが資金調達をする際に注意しておくべきポイントを3つ紹介します。

利用条件を確認しておく

資金調達の方法によって利用条件が異なります。資金調達方法を選ぶ際は、利用対象に含まれているか、利用要件を満たしているか、確認してから申請や申込みをするようにしましょう。フリーランスが利用できる資金調達方法の中でも補助金や助成金については、申請要件が細かく決められているため注意が必要です。

事業用資金を明確に区別する

融資やカードローンなど、資金調達の方法によっては用途が制限されます。個人的な用途に流用すると契約違反となるため、借入先からの指摘を受けないように、フリーランスでも、事業用の資金と個人用の資金は明確に区別しておきましょう。可能であれば、銀行口座は事業用として別に開設しておくことをおすすめします。

事業の財政状況を確認しておく

決算書の開示義務がないフリーランスでも、定期的に事業の状況を確認しておくことは重要です。財政状況を把握できるようにしておくことで、資金不足に早めに気づくことができ、効率よく資金調達ができます。

また、金融機関が返済の可能性などを審査するため、金融機関などからの融資では、確定申告で提出する貸借対照表損益計算書の提出が求められます。会計ソフトなどで財政状況を定期的に確認しておけば、収支の悪化などに素早く対応しやすくなります。

状況に応じて資金調達方法を使い分けよう

日本政策金融公庫の融資制度や助成金・補助金など、フリーランスでも利用できる資金調達方法はあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、特徴をよく把握し、状況に応じて資金調達方法を使い分けることをおすすめします。


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