- 作成日 : 2024年9月6日
賃貸経営とは?利回りや収支計算、失敗を防ぐコツを解説
ご自身の不動産を活用して、あるいはこれから物件を購入して賃貸経営を始めようと考えられている方もいらっしゃるかと思います。この記事ではマンションやアパートなどの賃貸経営の始め方やビジネスとして賃貸経営を選ぶメリット・デメリット、注意点についてご紹介します。
目次
賃貸経営とは?
賃貸経営とはマンションやアパート、一戸建ての住宅などを貸し出して入居者から家賃収入を得るというビジネスモデルです。これらの賃貸物件は不動産会社が運営しているケースもありますが、個人で所有されている物件を貸し出しているケースもよく見られます。いわゆる「大家さん」と呼ばれる人は、個人で賃貸経営をしている人を指します。
賃貸経営の管理内容
賃貸経営の仕事内容は非常に多岐にわたります。清掃やメンテナンス、不具合箇所の修繕などの物件の維持から、入居者からの物件に関する問い合わせや相談、クレーム対応、家賃の集金、入居者の募集、条件交渉、賃貸借契約の締結、退去時の手続きや原状回復工事の手配などを行います。
賃貸経営の主な物件
賃貸経営に用いられる物件は主にマンション、アパート、戸建ての3種類です。マンションは1棟まるまる所有するケースもあれば、1室のみを所有して貸し出す「区分マンション」という形態もあります。アパートに関しては1棟まるまる所有するケースが主流です。アパートのほうが建物の規模は小さいため、1棟所有するハードルは比較的低いといえます。
一軒家は賃貸物件用として建築するあるいは購入するケースもあれば、普段は居住していない実家や別荘などを貸し出す場合もあります。
他にもオフィスビルを所有して企業や個人事業主などに賃貸するという方法もありますが、今回は住居を目的とした賃貸経営にスポットを当ててご紹介していきます。
賃貸経営の管理方法
賃貸物件を管理・運営する方法としては大きく「自主管理」「管理会社に委託」「サブリース管理」という3つのパターンがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
自主管理
自主管理とは賃貸物件をご自身で管理する方法を指します。先ほどご紹介した物件の維持・管理や入居者への対応、入退去に関わる業務をすべて物件の所有者が行います。
後述する管理会社やサブリースと比較して得られる利益は多いものの、すべての管理業務を自ら行わなければならないため、非常に手間がかかるのがデメリットです。また、自主管理であっても入居者の募集なら不動産仲介会社、清掃なら清掃業者というように、一部の業務を外部に委託する方法もありますが、その場合もご自身で手配をしなければなりません。
管理会社に委託
物件を所有し管理業務を管理会社に委託するという方法もあります。管理会社に依頼すれば物件の維持・管理や入居者への対応、入退去に関わる業務などを代行してくれますので、手間がかかりません。特に賃貸経営を始めたばかりの方でノウハウがなくて不安を感じられている方、本業を持っていて副業で賃貸経営をしたい方、あるいは逆に物件を何軒も所有していて管理に負担を感じられている方におすすめです。
一方で委託費用を支払わなければならず、自主管理の場合と比べると利益が減ってしまうのがデメリットといえます。
サブリース管理
サブリースとは物件をまるごと不動産会社などのサブリース業者が借り上げ、その会社から賃料が支払われる方式です。入居者との賃貸借契約は不動産会社やサブリース業者が締結します。
管理会社と同様、物件の管理業務を外部に委託できて手間がかからないというメリットがあります。また、賃料は不動産会社やサブリース会社から支払われるため、入居者が少なかったとしても一定の収入を得られるという部分も大きな利点です。
一方で、やはり入居者から直接家賃を受け取るよりも利益が減ってしまうという点がデメリットとなります。また、基本的に不動産会社やサブリース業者が入居者を募集して契約を締結するため、入居者を選ぶことができずトラブルが発生するリスクがある点にも注意が必要です。
賃貸経営をするメリット
ここまで賃貸経営の概要についてご紹介してきました。賃貸経営を行うことでさまざまなメリットが得られます。以下で詳しく見ていきましょう。
家賃収入が入る
やはり家賃収入が得られるのが賃貸経営の一番のメリットといえます。特にすでに不動産を所有している場合、それを貸し出すことで毎月安定的な収入を長期間得ることが可能です。会社員として働かれている方、他に事業をされている方の副業、あるいは老後の収入源としても適しています。
節税効果が得られる
住宅用の土地は最大1/6まで固定資産税や都市計画税が安くなる軽減措置の対象となります。土地を更地のまま所有しているよりも、賃貸住宅を建てたほうが税金が安くなるのも大きなメリットです。また、「貸家建付地」の場合評価額が下がり、その分、相続税が安くなります。
インフレに強い
現金や預金などの貨幣資産はインフレになると相対的にその価値が下がってしまいます。一方、不動産などの現物資産の価値は物価の上昇に影響されて上がる傾向にあります。特に近年では世界的にインフレが進んでいるため、賃貸経営もその対策の一つとして検討する価値はあるでしょう。
融資が受けられる
賃貸経営の場合は他のビジネスモデルと比較して融資が受けやすい点が特徴です。購入した不動産を担保として資金の借り入れができ、家賃収入が得られればそこから返済することができます。融資を利用して少額から始められるのも賃貸経営の魅力です。
生命保険の代わりになる
融資を利用し、団体信用生命保険に加入した場合、仮に債務者が亡くなってしまった際には団体信用生命保険が適用され、借入金は保険金から支払われます。借金は家族に引き継ぐことなく家賃収入はそのまま得られるため、生命保険の代わりとして賃貸経営を始められる方もいらっしゃいます。
賃貸経営をするデメリット・リスク
以上のように賃貸経営をするメリットはさまざまありますが、一方でデメリットやリスクも存在します。以下のようなことを念頭に置いたうえで賃貸経営を始めるかどうか検討しましょう。
空室のリスク
賃貸経営は入居者がいて初めて家賃収入を得ることができます。空室の場合は収入が得られず税金や維持費だけがかかり続けて赤字になる可能性もあります。入居者が集まるよう立地がよい物件を選定する、間取りや設備などが魅力的な物件にする、入居者が集まりやすいよう物件をアピールするなどの工夫が必要です。
賃料が下がるリスク
賃貸経営は長期間にわたって安定的な収入が得られるビジネスモデルですが、場合によっては家賃が下がってしまうリスクがあります。例えば入居者がなかなか集まらない場合は家賃を下げるという選択肢を取らざるを得なくなるケースも想定されます。また、近隣の商業施設や企業、学校などが閉鎖されて利便性が低下し、やはり家賃が下がってしまう事態もあり得ます。
建物の管理・維持費用がかかる
賃貸経営では建物の管理、維持に関する費用が経費としてかかります。不具合が発生した場合は都度修理しなければなりません。また、定期的な清掃、メンテナンスや大規模修繕も必要となります。家賃収入が得られていたとしても、建物の管理・維持費用がかかりすぎて赤字になってしまうこともあり得ます。
金利上昇のリスク
融資の際には利率が据え置きになる固定金利か、利率が変わる変動金利のどちらかを選択することになります。変動金利の場合は金利が上昇するとそれに合わせて利子も高くなってしまうので要注意です。一方、固定金利であれば金利変動のリスクはありませんが、変動金利よりも利率が高くなります。
借入金の返済ができないリスク
上記のように空室になってしまった、家賃が下がってしまった、経費がかかりすぎてしまった、金利が上昇したなどの結果、十分な利益が得られず融資の返済ができなくなってしまうリスクもあります。最悪の場合、自己破産という結果にもなりかねません。融資を受けて賃貸経営を行う場合は、しっかりと事業計画と資金繰り計画を立てて、無理のない範囲で借り入れる必要があります。
賃貸経営の収入と支出
賃貸経営の主な収入源は家賃と売却益の2つです。家賃は前述の通り入居者から毎月支払われる家賃のことを指します。売却益とは物件を売却した際に得られる利益のことです。前者はインカムゲイン、後者はキャピタルゲインといいます。賃貸経営は基本的にインカムゲインで収益をコツコツと上げるビジネスモデルですが、中には不動産の売買を繰り返してキャピタルゲインで稼ぐ投資家もいます。
賃貸経営にかかる支出としては物件の維持管理費、税金、不動産会社に支払う仲介手数料などが挙げられます。また、管理を管理会社に委託した場合は毎月管理費を支払う必要があります。
賃貸経営の利回り
賃貸経営を行う場合、実質利回り5%を目安にしていきましょう。実質利回りとは物件の購入にかかった費用に対して、年間の家賃収入から必要経費を差し引いた実際の利益がどれくらい得られるのかを示す指標で、「(年間の家賃収入-必要経費)÷アパート購入費用」という計算式で求めることが可能です。
実質利回りは最低でも3%以上は確保できるようにしましょう。実質利回りが3%を切ると十分な収益が得られず返済が厳しくなってしまうリスクが高くなるからです。
賃貸経営に関わる税金
賃貸経営を行ううえでは以下のような税金の支払い義務が生じます。
所得税
賃貸経営で利益を得たら国に所得税を支払う必要があります。家賃収入は「不動産所得」に該当し、所得(収入から経費を差し引いたもの)金額に応じて税率が高くなる累進課税となっており、税率は5~45%です。
住民税
住民税は都道府県や市区町村に支払います。こちらもやはり所得に応じて税額が変わってきます。税率は所得の10%程度です。
個人事業税
物件の規模などから事業として認められた場合、課税対象となります。その場合でも所得が290万円以内であれば、事業主控除によって実質的に税金がかかりません。不動産所得が290万円を超えた場合に課税対象となり、税率は5%となります。
固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対しては固定資産税が課せられます。さらに、原則として都市計画区域のうち「市街化区域内」に所在する土地および家屋を所有している人には、都市計画税が追加されます。不動産の評価額に応じて税額が決められ、固定資産税の税率は課税標準(固定資産税評価額)×1.4%、都市計画税の税率は課税標準(固定資産税評価額)×0.3%です。なお、前述の通り所有している土地が住宅用である場合は、軽減措置が適用されます。具体的には固定資産税は1/6~1/3に、都市計画税は1/3~2/3に圧縮されます。
消費税
居住用物件で発生する家賃や礼金に関して、消費税は非課税となります。ただし、物件を貸し出してから1か月未満の場合などは課税に。オフィスや倉庫などとして利用される事業用物件の場合は、一部条件を除き、原則課税対象となります。家賃に関しては消費税がかかりませんが、駐車場料金には消費税10%が課税されます。ただし、アスファルト舗装などで整備されている駐車場は消費税が課税されますが、青空駐車場のように整備されていない単なる土地としての貸付の場合、消費税は非課税となります。
賃貸経営の始め方
物件を購入して賃貸経営を始める際には大まかに以下のようなステップがあります。
1.事業計画・資金繰り計画の策定
事業の目的や内容、収支の予測、融資の返済計画などを策定します。
2.情報収集
賃貸経営を行う候補地や物件に関する情報を収集します。
3.不動産会社に相談
候補となる物件が見つかったら不動産会社に問い合わせて詳しい物件情報を入手します。また、不動産会社に相談することでさまざまな物件を紹介してくれます。
4.物件の選定・調査
候補となる物件の情報を収集し、現地での調査も行いながら最終的に購入する物件を選定します。
5.買付申込書の提出
物件が定まったら不動産会社を通じて売り主に買付申込書を提出して購入の意思を示します。
6.融資の申し込み
銀行などの金融機関に対して融資を申し込み、審査を受けます。
7.売買契約の締結
不動産会社を通じて売り主と物件の売買契約を締結します。
8.金銭消費貸借契約の締結
融資の審査に通過後、金融機関と金銭消費貸借契約を締結し物件の購入資金を借り入れます。
9.登記手続きを行う
物件の引き渡しを受け、所有者を変更するために法務局で登記手続きを行います。
10.入居者を募集する
物件の引き渡しが完了して入居者を受け入れる体制が整ったら、不動産会社を通じて物件の入居者を募集します。
賃貸経営に失敗しないコツ
前述の通り、賃貸経営には失敗するリスクがどうしてもつきまといます。それを可能な限り軽減するため、以下のようなことを意識しておきましょう。
物件選び
賃貸経営の成否は物件にかかっています。物件の立地や生活環境、築年数や間取りなど、さまざまな面を考慮して選びましょう。不動産会社やコンサルタントなどのプロの意見も参考に、ご自身でも候補となる物件に足を運んでしっかりと調査したうえで判断することが大切です。
一方で立地がよくても物件が魅力的でない場合、なかなか入居者は集まりません。逆に多少立地が悪くても、あるいは築年数が古くても、物件に魅力があれば空室を防げる可能性があります。物件を購入したら必要に応じてリフォームする、最新の設備を導入する、セキュリティを強化するなどの物件の価値を高めるような工夫もしましょう。
資金計画とリスク管理
賃貸経営はただ物件を購入して貸し出すだけという単純なものではありません。どこで、どのような人をターゲットとして、どのような物件を貸し出すのか、収入や支出はどれくらい発生して融資をどのように返済していくかという計画を綿密に立てましょう。
また、前述の通り空室になってしまったり、外的な要因によって家賃が下がってしまったりするケースもあります。もちろん1棟あるいは1区分からのスタートにはなるかと思いますが、収益が安定的に得られるようになったら他の物件も購入してリスクを分散させるといった戦略も検討しましょう。
適切な賃料設定
賃貸経営をするうえでは賃料の設定も非常に重要となってきます。家賃が高すぎると入居者が集まりにくくなってしまい、逆に低すぎると利回りが悪化してしまいます。周辺の相場も参考にしながら賃料を設定しましょう。家賃を値上げするとなると入居者からの反発も予想されます。最初に少し高めに設定して入居者が集まりにくい状況になったら値下げをするという方法もあります。
入居者の管理
入居者の管理も重要です。例えば騒音やゴミの放置などの迷惑行為、規約違反行為を繰り返す入居者がいると、他の入居者にも影響を及ぼしかねません。また、家賃を滞納されてしまうと利益が得られず融資の返済にも影響が生じることがあります。
賃貸経営で起こり得るトラブルを詳細まで想定して規約を作成しておく、問題がある入居者には早めに注意する、迷惑行為や家賃滞納に対しては毅然(きぜん)と対応するなどの対策も重要です。
メリット・デメリット、リスクを押さえたうえで賃貸経営を始めよう
賃貸経営は安定的に収益が得られる非常に魅力的なビジネスです。実際に家賃収入だけで生計を立てている大家さんも少なくありません。一方でさまざまなリスクもあります。初期費用もかかるので、失敗は極力避けたいところです。
賃貸経営を始めるかどうかを検討する際には、メリットだけではなくデメリット(リスク)を考慮したうえで判断し、今回ご紹介したような注意点を意識して準備を進めましょう。
なお、賃貸経営の中では特に入居者と契約を締結する際に交わす契約書の内容が重要となってきます。賃貸借契約書の書き方についてはこちらの記事でさらに詳しくご紹介しています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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