• 作成日 : 2025年1月10日

合同会社の法人登記とは?手続きの流れや必要書類、費用を安くする方法

合同会社の法人登記とは、新たに設立する合同会社の基本情報を法務局に登録し、法人格を取得するための手続きです。

本記事では、合同会社の法人登記に必要な手続きの流れや準備書類、費用、さらには費用を抑えるポイントまで、実務に基づいて詳しく解説します。

合同会社の法人登記とは?

合同会社の法人登記は、商号(会社名)や事業目的、本店所在地、資本金額などの会社の基本情報を法務局に登録する法的手続きです。法人登記により、合同会社は正式な法人格を取得し、法人として活動が可能になります。

法人登記を行う主な目的としては、以下の点が挙げられます。

  • 法人としての実在性の証明
  • 取引時に必要な情報の開示
  • 会社の信用力の担保

登記完了後は、法務局から「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得できます。これは法人口座の開設や各種行政手続きの際に必要になる、重要な書類です。

なお、合同会社の設立登記は株式会社と比べて手続きが簡素化されており、定款の作成は必要ではあるものの、公証人認証が不要であるためより迅速かつ低コストでの会社設立が可能です。

合同会社の法人登記に必要な準備・流れ

合同会社の設立登記は、定款の作成から法務局への申請まで、順を追って進めていく必要があります。

以下で、詳しく見ていきましょう。

定款を作成する

定款は会社の基本規則を定めた書面で、合同会社設立の第一歩です。株式会社と異なり、合同会社の定款作成では公証人による認証が不要なため、自身で作成できます。

定款には、以下の絶対的記載事項を含めなくてはなりません。

  • 商号
  • 本店の所在地
  • 事業目的
  • 社員の出資に関する事項
  • 社員の氏名・住所

特に事業目的は、将来の事業展開も見据えて記載することが重要です。ただし「その他これに付帯する一切の事業」といった包括的な記載は認められず、具体的に記載する必要があります。

なお、定款は電子定款として作成することも可能で、その場合は印紙税が不要となるため、コスト削減につながります。電子定款の作成には電子証明書が必要となりますが、マイナンバーカードの電子証明書も利用可能です。

必要書類を準備する

合同会社の設立登記には、以下の書類が必要です。

  • 合同会社設立登記申請書:会社の基本情報や登記事項を記載した申請書です。登記の種類や登記すべき事項を漏れなく記載します。
  • 定款2部:会社の基本規則を定めた書類です。電子定款で作成すれば印紙税4万円が不要になります。
  • 登記用紙と同一の用紙またはCD-R:登記簿に記載される会社情報を収めた書類で、電子媒体での提出も可能です。
  • 代表社員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内):出資金の払込みを証明する書類です。代表社員が作成し、出資金額と払込みが完了したことを明記します。
  • 印鑑届書:会社の実印を法務局に届け出る書類です。届け出た印鑑は、今後の登記申請時に使用します。
  • 代表社員就任承諾書:代表社員が就任を承諾したことを証明する書類です。定款に実名記載がない場合に必要になります。
  • 代表社員、本店所在地及び資本金決定書:定款に詳細な記載がない場合に必要な書類です。それぞれの事項を明確に特定します。

必要書類は、法務局に提出する前に記載内容の整合性・正確性を十分確認することが大切です。一つでも不備があると補正が必要となり、登記完了までに時間がかかる可能性があります。

法人用の実印を作成する

人用の実印は、契約書などの重要書類への押印に使用されます。実印の規格については商業登記規則第9条第3項により、印鑑の大きさは一辺1〜3cmの正方形に収まらなければならないと定められています。

形状については丸型や角型など特に制限はありませんが、一般的には二重の円の外側に会社の商号を、内側に「代表社員之印」などと刻印するデザインが多く採用されています。内側に代表者個人の名前を入れないことで、代表者が変更になった際にも同じ印鑑を継続して使用可能です。

2021年2月の商業登記法改正において、オンラインで登記した場合に限り法人設立時の登記所への印鑑届出は任意になりました。ただし実務上は取引や契約時に必要となる場面が多いため、会社設立時に作成することが推奨されています。なお、印鑑届出の際には、代表者の個人印鑑証明書の添付が必要です。

参考:e-Gov法令検索 商業登記規則法務省 商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)

出資金(資本金)の準備

合同会社の資本金において、最低金額の定めはありませんが、経営者となる社員の出資自体は義務付けられています。

出資の方法には現金出資と現物出資があり、現金出資の場合は金融機関で専用の口座を開設し、出資金を払込みます。払込みが完了したら、代表社員が払込証明書を作成します。

一方、現物出資は不動産や有価証券などの現金以外で出資する方法です。この場合、500万円以下であれば定款に評価額と現物の内容を記載するだけで済みますが、500万円を超える場合は弁護士などの検査役による調査が必要になります。

参考:法務局 現物出資について

法務局に登記申請・法人格の取得

合同会社の登記申請は、管轄の法務局への書面申請か電子申請で行います。電子申請の場合は「申請用総合ソフト」と電子証明書が必要です。

申請書には商号、本店所在地、登記の事由、登記すべき事項などを記載し、必要書類と共に提出します。申請から登記完了までにかかる期間は最低3日ですが、繁忙期などはそれ以上かかるケースもあるため余裕を見ておきましょう。

法人登記の完了で合同会社の設立となり、その後登記事項証明書の取得によって法人格を得たことが証明されます。

合同会社の定款のひな形・無料テンプレート

定款は法的要件を満たした適切な内容で作成する必要があるため、専門家監修のテンプレートを活用するのが効率的でおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、合同会社の定款作成をサポートする無料のテンプレートをご用意しています。業種別の定款テンプレートをWordまたはExcel形式でダウンロード可能で、自社の状況に合わせて必要事項を入力するだけで作成いただけます。

また、マネーフォワード クラウド会社設立でも、合同会社の電子定款の作成が可能です。

 

合同会社の法人登記後に必要な手続き

合同会社の設立登記が完了したら、次は各種行政機関への届け出や手続きが必要となります。税務署、都道府県税事務所、市区町村役場、年金事務所など、複数の機関に対して期限内に手続きを行わなければなりません。

以下で詳しく紹介します。

税務について税務署への届け出

法人設立後、2ヶ月以内に管轄の税務署に法人設立届出書を提出する必要があります。この届出書には、会社の基本情報、事業年度、事業目的などを記載し、「定款の写し等」とともに提出しなければなりません。提出が遅れても罰則はありませんが、税務署からの書類が送付されないなどの問題が生じる可能性があるため、期限内の提出が原則です。

併せて、青色申告の承認申請書も提出することで、さまざまな税務上の特典を受けられます。青色申告の承認申請書の提出期限は、設立の日以後3ヶ月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までです。

地方税について地方自治体への届け出

合同会社設立後は、都道府県税事務所や市区町村役場に届け出が必要です。都道府県税事務所には税務署とはまた別に「法人設立届出書」を定款の写し等を添えて提出し、事業税や地方法人特別税などの手続きを行います。

提出期限は自治体によって異なるため、確認しておきましょう。なお、東京23区の場合は都税事務所への提出のみですが、市区町村役場への届け出が必要かどうかは自治体によって異なります。

社会保険について年金事務所への届け出

従業員を雇用する場合、法人設立から5日以内に年金事務所へ「新規適用届」を提出しなければなりません。この届出の受理をもって、健康保険と厚生年金保険の適用事業所として登録されます。従業員が常時5名以上いる場合は、一部業種を除き強制適用事業所になります。

提出書類には「新規適用届」の他に「保険料口座振替納付(変更)申出書」「被保険者資格取得届」なども必要です。

労働保険関係の手続き

労働保険の加入手続きも必要です。まず労働基準監督署で「労働保険の保険関係成立届」と「労働保険概算・保険料申告書」を提出します。保険関係成立届は従業員雇用日の翌日から10日以内、概算保険料申告書は50日以内が期限です。

その後、労働保険番号の交付を受け、ハローワークで「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」などを提出します。雇用保険の手続きは、労働者を雇用した翌日からの10日以内に行わなければなりません。

法人用の銀行口座の開設

法人設立後は、法人名義の銀行口座を開設しておきましょう。法人口座開設には登記事項全部証明書や定款、法人の印鑑証明書、代表者の印鑑証明書などが必要です。

なお、個人口座での取引も法律上は可能ですが、取引先から違和感を持たれるなどのリスクが考えられるため、できるだけ法人口座を開設することをおすすめします。ただし、合同会社の場合、株式会社と比較すると審査難易度が高い傾向があります。

合同会社の法人登記に必要な費用

合同会社の設立登記には、電子定款を利用した場合は6万〜7万円程度、紙の定款を使用した場合は10万〜11万円程度の費用が必要です。

固定でかかる法定費用としては定款の印紙代、免許登録税があります。紙の定款を作成する場合は印紙代として4万円が必要ですが、電子定款を利用すれば印紙代が不要のため、その分の費用が抑えられます。

登録免許税は資本金の0.7%または最低額の6万円のいずれか高い方を納付しなければなりません。

このほか、実印の作成費用として1万〜2万円程度、印鑑証明書や登記簿謄本の発行手数料としてそれぞれ数百円程度が必要です。なお、合同会社は株式会社と異なり、公証人による定款認証が不要なため認証手数料がかからないほか、役員の任期に制限がないため、重任登記費用も発生しません。

なお、手続きを専門家に依頼する場合は、これらの法定費用に加えて別途手数料が発生します。

合同会社の法人登記費用を安くするには?

合同会社の設立費用を抑えるための最も効果的な方法は、電子定款の活用です。紙の定款では収入印紙代として4万円が必要ですが、電子定款を利用すれば、この費用が不要となります。

また、特定創業支援事業による支援を受けることで、登録免許税を半額にできます。通常6万円かかる登録免許税が3万円になり、コストを大きく削減できるでしょう。

なお、登記手続きを専門家に依頼せず自分で手続きを行うことでもコストを抑えられますが、その場合は書類作成や手続きに時間と手間がかかり、不備が発生しやすいリスクも否定できません。

クラウドソフトなどを活用すれば、電子定款にも対応しているほかサポートも受けられることが多く、コストを抑えながらもスムーズな法人登記が可能になります。

参考:中小企業庁 (参考)産業競争力強化法に基づく創業支援について

合同会社の設立前後に使える補助金・助成金

合同会社の設立時には、さまざまな補助金・助成金制度を活用することで、初期費用の負担を軽減できます。主な制度を紹介します。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。補助上限額は通常枠で50万円、賃金引上げ枠などの特別枠で200万円となっており、補助率は2/3(赤字事業者は3/4)です。

2024年からは「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」が新設され、インボイス特例を活用すると補助上限額が50万円上乗せされます。申請には商工会・商工会議所の支援を受けながら経営計画書を作成する必要があり、電子申請での手続きが必要です。

参考:全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金中小企業庁 持続化補助金の概要

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ型)

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ型)は、中小機構と都道府県、金融機関等が共同で造成したファンドの運用益により、創業や販路開拓を支援する制度です。

全国約23都道府県で実施されており、地域の資源を活用した商品開発や販路開拓が対象になります。主な対象者は中小企業者・創業者、支援機関、NPO法人などで、農商工連携型では中小企業者やNPO法人と農林漁業者の連携体が対象です。ただし、企業所在地の都道府県に該当ファンドがない場合は利用できません。

参考:中小機構 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、新製品・サービスの開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する目的の補助金です。2024年度は新制度となり、補助上限額は省力化枠で最大8,000万円、製品・サービス高付加価値化枠通常類型で最大1,250万円、グローバル枠で3,000万円となりました。

補助率は中小企業が1/2、小規模事業者が2/3で、大幅な賃上げに取り組む事業者には最大2,000万円の上乗せ支援があります。四半期ごとに公募が行われ、不採択でも複数回の再申請が可能です。

参考:中小企業庁 ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進補助金について ( Ver.1,1)

事前に準備を整え、スムーズな法人登記を

合同会社の設立は株式会社よりもハードルが低いとはいえ、多数の手順があり手間がかかります。定款の作成や印鑑の準備、出資金の払込みなど、必要な手続きを把握したうえで順序立てて進めていくことが大切です。

手続きの過程で不明な点があれば、専門家に相談するほか、クラウドソフトなどを利用するのもひとつの方法です。一つひとつの手続きを確実に行い、スムーズな合同会社設立を実現しましょう。


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