• 作成日 : 2023年6月16日

PLとBSは経営の基礎!見方や押さえる項目を知り利益を正しく把握

PLとBSは経営の基礎!見方や押さえる項目を知り利益を正しく把握

財務諸表として、損益計算書(PL:Plofit and Loss Statement)や貸借対照表(BS::Balance Sheet)はその決算における重要な報告書です。

この記事では、PLやBSの読み方についてわかりやすく説明します。あまり詳細までこだわらずこれらの報告書は何を訴えているかを見てみましょう。

PLやBSとは

まず、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)の位置づけを確認しておきましょう。基本中の基本とも言えますが、案外この基盤部分が理解できると、安心して次のステップに進めます。

なお、この記事では、主として法人について述べることとし、個人事業主決算書についてはまた別の機会とします。

決算書を構成する重要なもの

そもそも決算書とは、なんのためにあるのでしょうか?

決算書には、一会計期間経営成績(PL)や、決算時点の企業の財政状態(BS)が記載されています。決算書には他にもいろいろな計算書がありますが、その中で最も重要な位置づけにあるのがこの2つの表です。

ここで、会計期間というのは概ね「1事業年度」のことで、多くは1年間です。また、事業年度の最後の日が通常は決算日(=貸借対照表日)となります。

貸借対照表は、決算時点でのその企業の「資産」と「負債及び純資産」のバランスを表しており、損益計算表は、その会計期間における企業の収益と費用と利益の動きを表したものです。

そして、貸借対照表と損益計算表は相互に関連しており、一方から他方へのつながりを理解することが重要です。

財務三表とは

財務三表とは、決算時点で作成される企業の財務状況や業績を分析するための3つの表であり、「損益計算書」「貸借対照表」に「キャッシュフロー計算書」を加えたものを言います。

キャッシュフロー計算書とは、損益計算書と同じ期間における「お金の動き」にフォーカスした計算書です。損益計算書も収益や費用を表しますが未決済のものもありますので、キャッシュの流れはキャッシュフロー計算書で確認します。

大企業においては、これらを利害関係者に公開し、株主においては時期以降の投資の判断材料とし、債権者においては安全性を確認します。

重要なことはこれらの表は会計ルールに則り、表示される科目などが定型的であるため、企業間比較や歴年での比較がしやすいということです。規定のルールで作成しているかどうかは、会計監査などでチェックします。

財務三表何がわかるか?
貸借対照表決算時点の企業の資金調達方法や財政状況がわかります。
損益計算書その期間の収益の大きさや利益の生み出し方がわかります。
キャッシュフロー計算書その期間に現預金がどのような理由でどれだけ動いたのかわかります。

では、PLとBSについてもう少し詳しく見てみましょう。

PL=損益計算書の役割

損益計算書でわかるのは先述のとおり、「経営成績」です。この経営成績を計算するためには、会計期間に発生した収益とその収益に対応する費用がすべて必要になります。損益計算書では、売上高との密接度が近い費用から差し引くことによって、段階的に利益や損失を把握します。

もし、収益から費用を差し引いた利益だけが損益計算書に示されると、経営の規模がわかりません。同じ1億円の利益であっても、「収益10億円-費用9億円」なのか、「収益3億円-費用2億円」なのかでは扱う資金も取引先も大きく異なり、正しく経営成績を示すことはできません。

したがって損益計算書では、収益も費用も「総額」で示すことによって取引の規模がわかるようになっています。

BS=貸借対照表の役割

貸借対照表は、向かって右(貸方)と左(借方)とを対照比較して資金の状態を示します。
右(貸方)には、企業が「どのように資金を調達しているのか」を示しています。返さなくてはいけないもの(負債)がどれだけあり、返す必要のないもの(純資産)はどれだけあるのかがわかります。

そして、左(借方)には、その調達した資金を「どのように事業に活かしているのか」を資産として示しています。
貸借対照表の右と左の合計値が、必ず一致するようにできているのが貸借対照表です。

<貸借対照表のイメージ>

賃借対照表のイメージ

PLの見方や押さえる項目は?

企業において収益とは、売上高などのことであり費用や損失を差し引く前のものです。また、費用とはその収益に対応するものでなければなりません。この対応には、直接的に収益と対応するものもあれば、期間的な対応をするものもあります。

ここでは損益計算書における収益・費用・利益について詳しく見ていきましょう。

収益を知るための見方や押さえる項目

損益計算書における収益・利益は3つに分けられます。

  • 営業収益:企業の本業から得られる収益で、売上高などで示されます。
  • 営業外収益:企業の本業以外から得られる収益で、例えば受取利息や配当金などがあります。
  • 特別利益:企業の本業以外から得られた「利益」であって、突発的・臨時的なもののことです。

なお、特別利益だけは「利益」であることに注意しましょう。損益計算書上においては、上から順に営業収益、営業外収益、特別利益の順です。なかでも営業収益は損益計算書のトップに表示される項目であり、最重要項目と言えます。

費用を知るための見方や押さえる項目

損益計算書において費用は収益に対応する考え方です。損益計算書における費用・損失は4つに分けられます。

  • 売上原価:販売業などでは商品の仕入原価、製造業では製造原価となります。
  • 販売費及び一般管理費:商品や製品を販売するためにかかった販売費用や、会社全体を管理するためにかかった費用です。
  • 営業外費用:企業の本業以外でかかった費用や営業活動を支える金融費用などを言います。
  • 特別損失:企業の本業以外で発生した「損失」であって、突発的・臨時的なもののことです。

なお、特別損失だけは「損失」であることに注意しましょう。

会計上はまとめて費用とされることが多いのですが、厳密には費用と損失は異なります。費用はそれを消費することにより、収益獲得につながるものを言います。例えば、従業員の給与は費用ですが、それを支払うことでその従業員は売上獲得に貢献(労働を提供するという意味で)していると言えます。

これに対して、損失は収益獲得につながらないものを言います。例えば、災害により在庫品の一部を破棄した場合、費用でなく、損失となります。この場合の「商品廃棄損」は売上には貢献していません。

利益を知るための見方や押さえる項目

利益とは収益から費用を差し引いた残りであり、損益計算書において利益は5つに分かれます。詳しくは次項で解説しますが、損益計算書の5つの利益をまとめると次のようになります。

損益計算書の利益何がわかるか?
売上総利益本業で得られた利益で、売上高からその売上に直接要した原価(売上原価)を差し引いたもの
営業利益①から、さらに売上原価以外の販売費・一般管理費を差し引いたもの
経常利益①から、さらに売上原価以外の販売費・一般管理費を差し引いたもの
税引前当期純利益②から本業以外で発生した収益や費用を加減したもの
⑤当期純利益③から突発的・臨時的に発生した利益や損失を加減したもの

経営状態をチェックするために知りたい5つの利益

損益計算書における5つの利益について、損益計算書の上から順に見ていきましょう。

売上総利益

売上総利益とは粗利益(あらりえき)とも呼ばれ、その企業の「稼ぐ力」を表します。売上総利益は次の式で計算します。

売上総利益 = 売上高 - 売上原価(製造原価)

なお、売上総利益の値がマイナスになる場合には、そのまま売上総利益のマイナスとして表示するほか、売上総損失として表示します。

売上総利益が売上高のうちに占める割合のことを、売上総利益率(粗利率)と言い、経営指標とされます。

経済産業省の2022年経済産業省企業活動基本調査 によると、2021年度の産業別の売上高、売上総利益及び売上総利益率は次のとおりです。業界によって売上総利益率は大きく違うことがわかります。

産業別(単位:億円)売上高売上原価売上総利益売上総利益率
卸売業1,959,6491,706,195253,45313%
小売業806,802568,019238,78330%
クレジットカード業、
割賦金融業
31,3381,51229,82795%
物品賃貸業102,64786,74315,90415%
学術研究、
専門・技術サービス業
107,07688,58018,49517%
飲食サービス業39,43220,50518,92848%
生活関連サービス業、娯楽業23,72013,8639,85742%
個人教授所79345533843%
サービス業
(その他のサービス業を除く)
121,99490,51431,48026%
サービス業
(その他のサービス業)
75,21843,41631,80242%
その他の産業158,291113,98244,30928%

出典:2022年企業活動基本調査速報|経済産業省をもとに作成

営業利益

営業利益とは売上総利益から、さらに「販売費および一般管理費」を差し引いて計算し、企業が本業で稼いだ利益を表します。

したがって、次の計算式になります。

営業利益 = 売上総利益 - 販売費および一般管理費

売上を上げるためには、売上原価以外にも人件費、広告費、光熱費などの費用がかかります。これらの費用は間接費とも言われ、収益と期間的な対応をします。

売上総利益から販売費および一般管理費を差し引くことにより、売上高から直接的な費用と間接的な費用が差し引かれることになり、本業で稼いだ「営業利益」が計算できます。

なお、営業利益の値がマイナスになる場合には、そのまま営業利益のマイナスとして表示するほか、営業損失として表示します。

経常利益

経常利益とは営業利益に営業外収益を加え、これから営業外費用を差し引いて求めます。
計算式で表すと次のようになります。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

経常利益は、企業が行う通常の業務において「経常的に得ている」利益という意味であり、具体的には受取利息、有価証券売却益等の営業外収益や支払利息有価証券売却損等の営業外費用などがあります。

なお、経常利益の値がマイナスになる場合には、そのまま経常利益のマイナスとして表示するほか、経常損失として表示します。

企業にもよりますが、特別損益に計上するほど金額が大きくない一過性の営業外収益や費用を計上することもあります。

税引前当期純利益

税引前当期純利益と、経常利益に特別利益を加え、これから特別損失を差し引いて求めます。計算式で表すと次のようになります。

税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

「税引前」の「税」とは、法人税等(法人税、法人住民税、事業税等)のことであり、これら税金の計上分を含んだものが税引前当期純利益になります。

税引前当期純利益の値がマイナスになる場合には、そのまま税引前当期純利益のマイナスとして表示するほか、税引前当期純損失として表示します。

なお、会計と税務に一時的なズレがある場合は、法人税等の金額を一定のルールにより期間配分し、税引前当期純利益と法人税等の額を対応させる(これを税効果会計と言います)ことがあります。

当期純利益

当期純利益とは、その会計期間の最終的な成果を表すもので、次の計算式で求めます。

当期純利益 = 税引前当期純利益  - 法人税等

当期純利益の値がマイナスになる場合には、最終的な成果であるため、多くは当期純損失として表示します。
当期純利益は、企業の事業だけでなく経営環境も含めた企業の実態がわかります。

PLとBSの違いは?

損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)は企業にとって重要な財務諸表です。初めて見た人には同じように見えるかもしれませんが、それぞれの重要な働きを押さえておきましょう。

似ているが役割が違う

貸借対照表が貸方と借方に左右に分かれているため、左右を確認しながら見ますが、損益計算書はまずは上から下に並べられた収益や費用を確認します。

先述のとおり、貸借対照表は決算時点の企業の財政状態がわかり、損益計算書は経営成績がわかると言っても具体的な財務諸表を見ないとピンとこないかもしれません。そこで、同じ企業について数年分の貸借対照表や損益計算書を並べて見ると、その数年分の経営状態がわかってきます。

あまり細かいことを気にせず、単位も百万円単位など大きな数字の推移を追うようにすればそれぞれの表に示された特徴的なことが見えてきます。

まずは、数年分の損益計算書を横断的に眺めるのがよいでしょう。

どちらも経営状態の把握のために重要なツール

貸借対照表と損益計算書は、どちらが重要ということではなくそれぞれ作成された目的が異なるため、それぞれが機能を補完し合って成り立つものです。

また、発生主義に基づく会計をしますので、実際のお金の流れについてはキャッシュフロー計算書で確認できます。中小企業ですとキャッシュフロー計算書まで作成しなくても、期中に運用する資金繰り表などで確認できれば大きな問題はありません。

経営状態の把握のためにまずはPLをマスターしよう

貸借対照表と損益計算書がどちらも初見である場合には、まずは損益計算書を見てみましょう。もし損益計算書にマイナス値や○○損失などと書かれている場合には、業績がよくないことがわかります。

損失の原因として「売上高が少ないから」「費用が多いからか」などについては、それ以前の損益計算書と比べて見ましょう。興味のある業界について、数年分の財務諸表を比べていると自ずから見えてくるものがあるはずです。


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