- 作成日 : 2022年11月13日
開業届を提出すると副業が会社にバレる?
もっと稼ぎたいという理由から、個人事業主として副業を始めたい方も多くなっています。そういった方の多くは、開業届を税務署に提出する必要があるのかどうか知りたいのではないでしょうか。特に内緒で副業をしている場合、開業届を出すことや確定申告などで会社にバレるのかどうかが気になるところです。今回は開業届で副業が会社にバレる可能性、および開業届提出のメリット・デメリットをご紹介します。
目次
開業届を提出すると副業が会社にバレる?
開業届とは、事業を開始したときに所轄の税務署に提出する書類です。開業届でどのような事業を行うか、屋号、事務所の新設などを報告します。
事業の開始の事実があった日から1カ月以内に提出の必要がある開業届ですが、会社員が副業を始めた場合、絶対に出さなければならないものではありません。「独立して継続的に同じ種類の取引を行う」ことが「事業」として扱われるためです。つまり、「気が向いたときに中古品をフリマで売っている」「年1回程度、ハンドメイド作品を販売している」といった副業は事業としては扱われず、開業届提出の対象とはなりません。
なお、開業届を提出しただけでは税務署から会社に連絡が行くわけではないため、副業がバレる恐れは低いといえますが、税金が関わってくると話は別です。住民税額が上がってしまうことにより会社側に副業の事実が明らかになる可能性が出てきます。
会社に勤務していると、ほとんどの場合、住民税は給与からの天引きです。これを「特別徴収」といいます。副業による所得が20万円を超えると本業の給与所得と合わせて確定申告をする必要があります。確定申告の結果は市区町村に連携され、さらに会社に住民税の通知がいくため、会社側は年末調整時の所得と異なっていることがわかります。住民税は前年の所得金額で税額が決まりますが、副業で収入があると給与から天引きされる住民税額が上がり、会社側から副業など他の収入があることを疑われてしまうのです。
開業届を提出するメリット・デメリット
もし、開業届を出さずに副業で所得を得た場合、「雑所得」扱いになることもありますが、開業届を提出すると、所得は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」を選択できるようになります。開業届を提出するメリットとデメリットについても把握しておきましょう。
開業届を提出するメリット
開業届を提出するメリットには次のようなものがあります。
青色申告ができる
青色申告は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」に認められている制度です。青色申告を選び、複式簿記で作成した書類を確定申告の際に提出すると、最大65万円(電子申告の場合や電子帳簿保存を利用した場合。税務署への郵送・持参で申告の場合は最大55万円)の所得控除が受けられます。なお、青色申告を行うには、別途、「青色申告承認申請」の手続きが必要です。
身内への給与を経費扱いにできる
開業届を提出していれば、白色申告の場合は給与の一部を「事業専従者給与」、青色申告の場合は全額を「青色申告事業専従者給与」として経費扱いにできます。節税効果が期待できますので、副業を家族と一緒に始めるという方はぜひ利用したい制度です。この場合、開業届ではなく税務署に「青色事業専従者給与に関する届出」を提出することによって可能となります。
損失の繰越しができる
事業所得、不動産所得など、対象の所得で赤字が出た際、総所得金額から損失分を控除ができます。
また、青色申告であれば損失の繰越しも可能です。損益通算で控除しきれない損失がある場合は、赤字を3年間繰り越せます。繰り越した赤字分の金額は翌年以降の所得から控除可能です。
開業届を提出するデメリット
開業届を出すことにはデメリットもあります。こちらについても押さえておきましょう。
確定申告の際に手間がかかる
開業届を提出し、その際に青色申告を選択すると、「青色申告特別控除」として最大65万円(電子申告の場合や電子長保存を利用した場合。郵送・持参の場合は最大55万円)の控除が受けられ、節税効果が期待できます。ただし、青色申告を行う際は複式簿記で会計処理を行わなければならないので、白色申告の単式簿記と比較すると手間がかかる点がデメリットです。
失業手当がもらえない
失業手当とは、「離職の日より前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヵ月(※)あり、就職しようという意思があるにもかかわらず就職できない人」が一定期間受け取れる手当です。
開業届を提出していると、離職後に再就職していなくても自営業者としての収入源があるとみなされ、失業手当の対象とはならないので気を付けてください。
※倒産など、自分の意志ではなく会社都合で離職した場合は「特定受給資格者」とみなされ、離職の日より前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6ヵ月以上あれば失業保険の受給資格が得られます。
※離職日の翌日以後に事業を開始等した人については、失業手当の受給期間に算入しない特例を申請することができます。
以上、開業届を提出することのメリット・デメリットをご紹介しました。こちらの記事ではさらに詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
会社員の副業でも確定申告は必要!
副業で収入を得る場合でも、その年の所得金額が20万円を超える範囲でなければ、確定申告をしなくても構いません。
しかし、副業を始めるにあたり、所得が20万円以下、もしくは赤字であっても確定申告をしたほうがよいといえます。その理由を3つご紹介しましょう。
損益通算ができるから
副業で赤字が出た場合、給与等も含めた総所得金額と赤字分を損益通算できます。給与所得が500万円で赤字が300万円の場合、損益通算して所得を200万円とすることができるのです。この方法により、総所得金額を減らすことができるため、節税も可能になります。
赤字の繰越しができるから
青色申告を選択した場合、控除しきれなかった赤字を繰越し、翌年以降、3年間は黒字部分と相殺できます。これは確定申告を行わないとできないことです。
純損失の繰戻し還付も選択できるから
青色申告では、所得から控除しきれなかった赤字を3年間繰越しできます。しかし、繰越しだけではなく、赤字を前年に繰戻し、支払った税金から還付を受けるといった選択も可能です。
繰戻しを選択する際は「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出してください。
開業届だけでは会社にバレることはない!ぜひ提出を!
会社員が副業で個人事業主となる場合、開業届を提出するだけでは会社に副業開始がバレることはありません。もし会社側に事実が明るみになるとしたら、所得が上がることで、給与から特別徴収される住民税額が上昇するところからでしょう。
なお、開業届を提出し毎年の確定申告を行うことで、副業の赤字を総所得金額と相殺できる「損益通算」が利用できます。また、青色申告であれば、損益通算で赤字が上回っていた場合でも確定申告の翌年から3年間は赤字の繰越しも可能です。純損失を繰戻して前年度の所得から控除し、還付金受け取りを選択することもできます。
以上のメリットを考えると、副業を始める際は開業届を提出し、確定申告を行う方がお得といえます。
なお、副業分の経理や確定申告書作成が大変と感じる方のために、クラウド上で利用できる経理・会計ソフトもあります。経理の専門知識がない方でも簡単に利用できるソフトです。副業を始める際は、このようなソフトの導入も検討してはいかがでしょうか。
よくある質問
開業届を提出すると会社にバレる?
開業届を提出しても会社に連絡がいくわけではないため、バレるとは限りません。詳しくはこちらをご覧ください。
会社員の副業でも確定申告は必要?
その年の副業での収入が20万円以下の場合は不要ですが、節税の観点からは収入がいくらであっても確定申告する方がお得といえます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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