- 作成日 : 2025年1月30日
レンタカー業(自家用自動車有償貸渡業)には許可が必要!開業までの流れも解説
レンタカー業(自家用自動車有償貸渡業)を始めるには、運輸局での許可申請が必要です。円滑な手続きのためには、許可の要件を満たし、申請書類をそろえておきます。
本記事では、レンタカー業の許可の要件や開業までの流れ、無許可で営業する場合のリスクを中心に解説します。
目次
レンタカー業を開業するには許可が必要
レンタカー業を始めるには、道路運送法第80条に基づき国土交通大臣の許可を得なければなりません。ここではレンタカー業にまつわる概要について解説します。
そもそもレンタカー業(自家用自動車有償貸渡業)とは
レンタカー業とは、自家用の自動車を有償で貸し出す事業のことです。道路運送法上の正式名称を自家用自動車有償貸渡業といいます。
レンタカー業を開業するには国土交通大臣の許可が必要
レンタカー業の開業にあたり、国土交通大臣の許可が必要です。事務手続きにおいては、主たる事務所を管轄する運輸支局長に許可の申請を行い、許可を受けた後でなければ、レンタカー業用の自動車は登録できません。
レンタカー業の許可を申請するための要件
レンタカー業の営業許可を取得するには、複数の要件を満たすことが必要です。許可申請の要件について解説します。
レンタカー業の許可を申請する人が欠格事由に該当しないこと
欠格事由とは、申請に必要な資格を満たさないことです。レンタカー業の申請者と役員については、以下に該当しないことが条件となっています。
- 1年以上の懲役または禁錮の刑に処され、執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない
- 一般旅客自動車運送事業や自家用自動車の有償貸渡しなどの許可の取り消しを受けてから2年を経過していない
- 自家用自動車の有償貸渡しなどの許可取り消しによる行政手続法の通知があり、処分の日や処分をしないことの決定の日までに廃止の届出をして2年を経過していない
- 自家用自動車の有償貸渡しなどの監査が行われた日から聴聞決定予定日までに廃止の届出をして2年を経過していない
- 成年と同一の能力を有さない未成年者で、法定代理人が上記1~4のいずれかに該当する場合
- 法人の役員が上記1~5のいずれかに該当する場合
まとめると、懲役や禁錮といった刑事罰を受けた者や運送業・レンタカー業で許可の取り消し処分などを受けた者は、処分や執行の終了から2年以内には開業できないということです。
レンタカーに使用可能な自動車や車庫を保有していること
レンタカー業の運営には、レンタル用の自動車の保管場所の確保も必要です。レンタル用であっても、保管場所として、車庫証明を取得しなければなりません。車庫証明を取得するには、自動車の保管場所(駐車場)は、事務所(営業所)直線距離で2キロ以内の距離に置くことが求められます。
自動車保険の補償が一定の要件を満たしていること
自動車を他者に貸し出している場合でも、自動車事故の責任は、貸出人であるレンタカー業者です。事故の相手が十分な補償を受けられるよう、営業許可の要件において、以下の補償額以上の自動車保険に加入することが定められています。
対人保険 | 8,000万円以上/1人あたり |
---|---|
対物保険 | 200万円以上/1件あたり |
搭乗者保険(搭乗者が対象の人身傷害保険も含む) | 500万円以上/搭乗者1人あたり |
引用元:国土交通省 中部運輸局|レンタカー事業を経営する方へ
整備責任者等を定めること
レンタカー業の許可を得るには、整備管理者あるいは整備責任者を設置しなければなりません。整備管理者になれるのは、整備士資格を所持していて、実務経験2年以上あり、地方運輸局長が実施する選任前研修を受講している人です。
整備管理者は、一定以上の車両を貸し出す場合に設置しなければなりません。レンタカーの場合、定員10人以下かつ総重量8トン未満の車両(※ここでは乗用、トラックなど)については、10両以上所有するときに設置することが必要です。8トン以上のトラックを貸し出す場合は5両以上、定員11人以上のバスを貸し出す場合は1両から整備管理者の設置義務があります。一定以下の規模のときは、資格要件のない整備責任者の設置のみで問題ありません。
自家用マイクロバスの貸し出しはさらなる要件を満たす必要があること
自家用マイクロバス(定員11人以上29人以下)を貸し出したい場合は、さらなる要件を満たさなければなりません。
自家用マイクロバスの貸出業として行ったことがない場合は、レンタカー事業において2年以上の経営実績がないと認められません。また、貸渡自動車の使用禁止以上の処分を2年間受けていないことも要件に含まれます。
レンタカー業の許可を取得して開業するまでの流れ
レンタカー業の開業の流れを簡単に紹介します。
運輸局への申請書類を作成・提出する
レンタカー業の許可申請は、主たる事務所を管轄する運輸支局長に対して行います。許可申請にあたり、下記の書類の提出が必要です。
- 自家用自動車有償貸渡許可申請書
- 貸渡約款および貸渡料金を記載済みの書類
- 事務所別車種別配置車両数一覧表
- 貸渡しの実施計画を記載した書類
- 宣誓書
上記のほか、申請者や申請する法人の身分を証明する書類も必要です。法人の場合は、履歴事項全部証明書を提出します。提出先は、レンタカー業を開業する営業所を管轄している運輸支局の窓口です。
運輸局から許可を取得する
レンタカー業の許可申請の受付後、申請を受理した運輸支局で審査が行われます。審査後は、運輸支局から許可についての連絡があります。審査状況によって許可の時期は前後しますが、1カ月程度が目安です。運輸局の窓口を訪ねて、許可証を受け取ります。
レンタカー事業者証明書の交付申請を行う
許可証が交付された後は、登録免許税の支払いが必要です。許可日より1カ月以内に登録免許税として9万円を納付します。納付後、領収書を貼り付けて「登録免許税領収証書届出書」を運輸局の窓口に提出します。手続き完了時に発行されるのは、「レンタカー事業者証明書」です。レンタカー業の許可自体に有効期限は定められていませんが、レンタカー事業者証明書の有効期限は5年と定められています。営業所の変更手続きなどで必要な書類のため、有効期限前に更新の手続きを行いましょう。
車両の登録を行う
レンタカー業で貸し出す車両の登録を行います。すでに所有している車両についても、自家用車からレンタカーへの用途の変更になるため、番号変更の手続きが必要です。自動車の保管場所を移動させる場合は、警察署で新たに車庫証明を取得します。レンタカーの登録では、先に取得したレンタカー事業者証明書も必要な書類の一つです。
レンタカー業を無許可で開業した場合の罰則
レンタカー業は、道路運送法によって国土交通大臣の許可が義務付けられた事業です。無許可で営業した場合は、100万円以下の罰金と、該当する自動車の使用禁止処分などの罰則が設けられています。
レンタカー業で起業・開業する際のポイント
許認可申請については、行政書士が主要業務としてサービスを提供しています。レンタカーの許認可取得において不明な点や相談したい点がある場合は、専門家である行政書士に相談しましょう。
また、レンタカー業で事業効率を上げるには、レンタルできる車両を複数台確保しておくことが重要です。しかし、車両の取得には、まとまった資金が必要になります。レンタカー業の規模に応じて、日本政策金融公庫などの金融機関からの融資を検討することもあるでしょう。融資を受けるには、開業後の事業の指針や将来性を示す「事業計画書」の作成が必要です。
▼レンタカー業の事業計画書の書き方やテンプレートはこちら
レンタカー業の開業では許可が必要
レンタカー業を開業するには、事業所の所在地を管轄する運輸支局にて許可申請が必要です。なお、レンタカー業の許可を得るには、欠格事由や自動車保険などの複数の要件を満たす必要があります。許可申請を円滑に進めるためにも、要件を十分に満たしたうえで、許可取得や開業のための手続きを進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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