• 作成日 : 2024年10月31日

歯科技工士の事業計画書の書き方は?テンプレートをもとに記入例を解説

歯科技工士は、専門性の高い職種であるため、独立開業の際には専用設備や精密機器の購入など、高額な初期投資が必要となります。創業時には、これらの設備費や運転資金を融資で対応するのが一般的です。この記事では、歯科技工士の事業計画書の作成方法や、資金調達を成功させるためのポイントを詳しく解説します。

歯科技工士の独立開業に必要な事業計画書とは

歯科技工士の事業計画書は、独立開業時に必要となるビジネスの設計図です。特に金融機関などから融資を受ける際には、提出を求められるでしょう。具体的には、技工物(詰め物や入れ歯、かぶせ物、インプラント)の種類と提供の詳細、ターゲットとする歯科分野とその市場規模、詳細な競合分析などを明確にします。

さらに、設備投資や材料費、技工士としてのスキルアップにかかる費用など、独自の経営資源や課題を踏まえた資金計画も重要です。事業計画書を綿密に策定することで、事業としての方針や方向性がより明確になります。

歯科技工士が事業計画書を作成するまでの手順

以下のような手順で事業計画書を作成することで、より内容の精度を高めることができます。

1. 歯科技工士としての事業・サービス内容を明確にする

まずは提供する技工物の種類やサービス内容を明確にしましょう。

2. ニーズや競合など市場調査とデータ分析を行う

ターゲットとする歯科医院のニーズや地域の競合状況を調査し、市場分析を行います。

3. 歯科技工士として開業するために必要な設備や費用を算出する

歯科技工士として使用する設備や材料のリストアップを行い、初期投資や運転資金の見通しを立てましょう。

具体的な設備はどのような事業を行うかで異なりますが、以下の環境要件が歯科技工所の構造設備基準として定められています。詳細は管轄の自治体の案内をご確認ください。

  • 設備および器具などが整備されており清潔に保守されている
  • 不潔な場所から明確に区別されている
  • 防火および安全対策が十分に取られている
  • 出入口および窓は閉鎖できる
  • 照明および換気が適切な基準で、清潔な環境で歯科技工作業が行える
  • 防塵、防湿、防虫、防鼠のための設備を有する(歯科技工作業に支障がなければその限りではない)
  • 廃水、廃棄物の処理設備、器具を備えている など

4.収支計画、事業としてのミッション策定

最後に、収益予測や経費計算に基づいて収支計画を作成し、持続的な経営ができるよう戦略を立てます。この際、収益予測や将来的な戦略は理想論ではなく、データに基づいて実現可能な内容にすることが重要です。

歯科技工士の事業計画書に使える無料テンプレート

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歯科技工士の事業計画書の書き方・記入例

歯科技工士の事業計画書には、創業動機、具体的な職歴・実績、取扱商品の詳細を正確に記載する必要があります。ここでは事業計画書の各項目の記入例と重要なポイントをご紹介します。

創業動機・目的

創業動機の欄には「なぜ歯科技工士として独立するのか」「歯科技工士としてなにを成し遂げたいのか」を明確に示しましょう。例えば、「歯科医院で12年間勤め、歯科技工のコンテストで優秀賞を受賞するなど、高い評価をもらえるようになってきた。現在の勤め先である○○デンタルクリニックの協力も受け、磨いた技術をより活かすため、独立開業を行うこととした。」というふうに、経歴や動機をわかりやすい内容にまとめてみましょう。

職歴・事業実績

職歴には、過去に勤務した歯科医院の名称、役職、経験年数などを年次ごとに具体的に記載します。

「○年○月~ ○○デンタルクリニックに就職」というように履歴書や職務経歴書と同様の書き方で問題ありません。また、コンテストや学会などで優秀な成績を修めた経歴がある場合はそれも記載しましょう。

取扱商品・サービス

歯科技工士として提供する商品・サービスには、義歯や差し歯(セラミックやインプラントを含む)の作成や修理などを記載します。

これらのサービスは主に歯科医院向けであるため、セールスポイントや販売ターゲットも歯科医院を対象とすることを明確にしましょう。また、受賞歴や学会での活動歴、技術力を活かした高品質なサービスの提供計画を立てることで、他社との差別化にもつながります。

取引先・取引関係

取引先・取引関係の欄には、販売先・仕入先・外注先ごとに取引先名とシェア、掛取引の割合と回収・支払いの条件を個別に記載します。

「Aクリニック」「取引先1」といった曖昧な表記ではなく、具体的な歯科医院の名称や、取引シェアの見込みを明確に示しましょう。

また、締め日や回収日をしっかりと記載し、最後に人件費の締め日と支払い日、ボーナスの支払い月も明確に記入します。

従業員

従業員数を具体的に記載します。家族従業員とパート従業員が混在している場合は、それぞれの人数を分けて記載し、法人の場合は常勤役員の数も明記しましょう。将来的に従業員の増員や技工士の育成も、事業計画の一環として検討することが重要です。

借入の状況

借入状況の項目では現在の借入額や年間返済額、借入の用途を明確にします。例えば、「○○銀行○○支店 住宅 借入残高2000万円 年間返済額110万円」と記載しましょう。

必要な資金と調達方法

事業に必要な資金には、設備投資や運転資金が含まれます。例えば、事務所の物件取得費や内装工事費、専用器具の購入費用として総額4,800万円が必要な場合、用途・見積先・金額を項目ごとに記載し、資金を調達する方法を具体的に示します。

複数の方法で資金調達を考えている場合は、以下のように調達方法と借入予定の金額が分かるように記載してください。

自己資金:1,600万円

親、兄弟、知人、友人からの借入:400万円

日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入:2,800万円

事業の見通し

事業の見通しでは、売上の予測や経費の見積もりを明確に示します。例えば、創業当初の月間売上を500万円、1年後には700万円と予測した場合、別の欄にその見通しを立てた根拠を記入します。

売上増加の根拠としては、従業員増加や顧客数増加による売上増加や技術向上による単価向上、原価見直しによる収益増加などを挙げることが一般的です。

歯科技工士が事業計画書を作成するポイント

歯科技工士が事業計画書を作成する際には、業界特有の要素をしっかりと反映させることが重要です。一般的な事業計画と異なり、歯科技工士ならではの技術的なスキルや取引先の特性、そして設備や材料について詳細に記載しましょう。ここでは、計画書作成時に特に注意すべきポイントをご紹介します。

創業動機と目標の明確化

歯科技工士としてなぜ独立開業を選んだのか、どのような技術力や経験を活かしてビジネスを展開していくのかを明記しましょう。歯科技工士としての専門性や、これまでに培ってきた経験が創業の強みとなります。また、今後の目標や事業の方向性も具体的に示すことで、長期的な成長ビジョンが評価されやすくなるでしょう。

取扱商品・サービスの詳細

歯科技工士が提供する具体的な商品やサービス内容を事業計画書に明記することが必要です。例えば、義歯やクラウン、ブリッジといった歯科医療の中核を担う製品を提供する場合、その品質や技術力が事業の強みとなります。

また、修理サービスやオーダーメイド技工物の提供など、競合との差別化を図るポイントも加えましょう。商品やサービスに関連する受賞歴や認証がある場合は、それもアピール材料として活用できます。

取引先と市場分析

歯科技工士の事業は主に歯科医院との取引が中心となるため、取引先の確保が計画書の鍵となります。計画書には、すでに取引がある歯科医院や、新規の取引先候補を具体的に挙げることで、売上の見通しが立てやすくなります。

また、地域の歯科技工所の競合状況や市場規模、今後の需要予測も詳しく分析し、競争力を持つポイントを強調しましょう。

設備・材料の計画

歯科技工士としての事業を行っていくためには専門的な設備や材料が必要となります。事業計画書には具体的な設備投資額や材料費を明記し、その資金をどのように調達するかを記載します。

例えば、義歯やクラウンを作るための専用機器、口腔内をスキャンして業務を効率化するCAD/CAMシステムなど、業務上必要な設備の購入費を正確に計算しましょう。

歯科技工士の独立開業に必要な資金の目安

歯科技工士の開業資金は、物件や設備の有無、そして新規や中古の機材を利用するかなどによって大きく変動します。中小企業庁が運営している情報サイト『J-NET21』の業種別開業ガイド歯科技工士のページでは、開業にかかる費用として、不動産費、内装費、機材費などを合わせ、約1,720万円を見込んでいます。

ただし、コストを抑える方法もあります。例えば、自宅で開業する、中古の設備を購入する、消耗器具や消耗備品を安く仕入れるなどといった工夫により、開業資金を抑えることも可能です。ご参考までに一度何にいくらかかるのかを計算し、具体的な開業プランを立てることをおすすめします。

事業計画をもとに綿密な計画とリスク管理をしたうえで歯科技工士として独立しよう

歯科技工士は専門性の高い職種であるため、初期費用の負担が大きい分、スムーズに融資を獲得し、安定した経営を継続するためには、綿密な事業計画書の策定が必要です。事業計画書は、事業に対する姿勢や実現可能な計画、将来性について詳細に評価されるため、重要な書類です。

また、融資面談時には事業計画書についての質問が多くされるため、市場分析、活動エリアの選定、収益予測などをデータに基づいてしっかりとプランニングすることが大切です。今回ご紹介したポイントを参考に、事業計画書を作成してみましょう。


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