- 更新日 : 2025年8月20日
日本に起業家が少ない理由は?経営者として成功するための方法を解説!
科学技術・学術政策研究所がまとめた資料によると、2019年時点の先進各国の開業率はイギリスが13.5%、フランス10.9%、アメリカ9.1%、ドイツ8%、日本4.2%。日本の開業率はイギリスの3分の1、アメリカの半分以下と圧倒的に低いことがわかります。また、企業価値10億ドル(約1,300億円)以上のユニコーン企業の数も、アメリカの249社に対して日本は4社。
本記事では日本に起業家が少ない理由について、起業家として成功するポイントなどとともに解説します。
目次
日本に起業家が少ない理由は?
OECDの国際比較によると、日本のベンチャーキャピタル投資額の対GDP比は0.03%で、G7諸国の中ではイタリアに次いで低い数字です。また、2020年度のベンチャーキャピタル投資件数の日米比較では、アメリカの1万2,300件に対して日本は1,200件、投資金額はアメリカが16.7兆円、日本は1,500億円とアメリカの1%未満です。
日本でベンチャーキャピタル投資が盛んではない理由や、日本に起業家が少ない理由は何でしょうか。
起業家を育成する教育制度が十分ではない
第一に考えられるのは、起業家を育成する教育制度が十分ではないことです。経済産業省が行った調査で、起業に関心がある人に「日本の起業家教育は十分に行われているか」を聞いたところ、60%以上が「不十分」または「やや不十分」と答えています。一方、「十分である」と答えた人はわずか1.7%でした。「どのような教育制度を希望するか」という問いに対しては、「伝記や体験談、社会経験のような形で起業家と接点を持たせること」「インターンシップや簿記、金融、マーケティング等の実務的なことを教育するべき」という回答が多く、実務的な教育制度が求められていることがわかります。
安定的な雇用を求める意識が高い
次に考えられるのは、日本人の安定的な雇用を求める意識の高さです。経済産業省の調査で「我が国の開業率が低い理由として考えられるもの」で、若者の回答で最も多かったのが「大企業への就職等、安定的な雇用を求める意識が高いため」でした。起業のリスクを取れる若者の32.9%が安定的な雇用を求めているとなると、アメリカのような起業社会の実現は難しいかもしれません。また、若者の31%が「起業した場合に、生活が不安定になることに不安を感じるため」と回答しています。
セーフティーネットが整備されていない
起業に失敗した際のセーフティーネットが整備されていないことも、理由として考えられます。実際に、シニア層の36.7%が「個人保証の問題等、起業に失敗した際のセーフティーネットが整備されていないため」と答えており、若者の25.6%が「雇用の流動性が少なく、失敗した時の再就職が難しいため」と答えています。「失敗すると再起が難しい」と認識されている状態では、起業へのチャレンジを促すのは難しいでしょう。
日本で起業する方法は?
ところで、日本で起業する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。起業する仕事の内容や業種、ビジネスの規模にもよりますが、一般論としては「個人事業主として起業する」と「法人として起業する」の2つがあります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、起業する環境や事業内容などを鑑みて、ベターなほうを選んでください。
個人事業主として起業する
コンサルタントやWebライター、ネットショップオーナーなどの「身一つで始められる仕事」で起業する際は、個人事業主として起業するほうがよいでしょう。開業届を出すだけで仕事を始められ、法人設立のコストもかかりません。自宅をオフィスにすれば賃料も不要です。人を雇わなければ、人件費もかかりません。一方で社会的信用を得にくい、人材の採用が難しい、大型の資金調達が難しいといったデメリットがあります。
法人として起業する
最初からチームを組んで仕事をする場合や一定の規模の資金調達を行う場合は、法人として起業するほうがよいでしょう。特にベンチャーキャピタルからの出資を目指す場合は、法人として起業することが必須です。また、将来IPO(株式上場)を目指す場合は、株式会社を設立する必要があります。
法人として起業するメリットとしては、社会的信用を得やすい、人材を採用しやすい、融資や出資などの資金調達がしやすいなどが挙げられます。
日本で起業するための資金調達方法は?
起業に資金が必要になる場合、どこから調達すべきでしょうか。最初からチームを組んで法人で起業する場合はある程度の資金が必要になりますが、その場合はどうすればよいのでしょうか。ここでは、「自己資金を投じる」「日本政策金融公庫から創業融資を借り入れる」「ベンチャーキャピタルから投資を受ける」について説明します。
自己資金を投じる
自分で貯めたお金や退職金などで得たお金を投じる方法で、実際に多くの起業家が自己資金を投じて起業しています。コンサルタントやWebライターなどの身一つで始められる仕事で起業した人の中には、起業コストゼロの「0円起業」を果たした人もいます。また、日本政策金融公庫から資金を借り入れる場合も、一定の額の自己資金が求められます。0円起業を目指すのでなければ、ある程度の額の自己資金を用意したほうがよいでしょう。
日本政策金融公庫の創業融資を活用する
自己資金以外に資金が必要な場合に考えられるのが、日本政策金融公庫の創業融資を活用することです。日本政策金融公庫には、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。融資限度額は7,200万円(4,800万円)で、まとまった資金を調達できます。
※日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、令和6年3月31日で取扱いを終了しています。
ベンチャーキャピタルから投資を受ける
起業に必要な資金の調達には、ベンチャーキャピタルから投資を受けるという方法もあります。特に将来IPOを目指している本格的なスタートアップ企業の資金調達方法として、検討をおすすめします。
ベンチャーキャピタルから投資を受ける際に注意したいのは、日本のベンチャーキャピタルの多くは起業時の資金調達には前向きではないことです。日本のベンチャーキャピタルの多くは、起業後に一定の売上が上がり始めた「成長期」に投資する傾向があります。起業時の資金である「シードマネー」は、自己資金が投じられるケースがほとんどです。
日本で起業に成功するためのポイントは?
中小企業庁が2017年に発表した『中小企業白書』によると、起業後5年以内に市場から退出する企業の割合は18.3%です。5社に1社程度が起業から5年以内に失敗している計算ですが、失敗しないためのポイントは何でしょうか。以下の3つのポイントを押さえることで、起業に成功する可能性を高められます。
ビジネスのバリデーションを行う
第一のポイントは、ビジネスのバリデーションを行うことです。ビジネスのバリデーションとは、ビジネスが成立する妥当性を検証することです。自分が提供する製品やサービスに対する需要を確認し、ビジネスとして成立するかどうかを事前にチェックする必要があります。ビジネスのバリデーションを行わずに起業することは、魚群探知機で魚の存在を確認せずに漁をするようなものです。特にB2Cの製品やサービスを提供する場合は、ビジネスのバリデーションをしっかり行う必要があります。
バリューを生み出す
第二のポイントは、バリューを生み出すことです。人はモノやサービスに価値があると判断すると、その対価としてお金を支払います。つまり、自分が提供するモノやサービスに価値があると判断してもらえる間は、その対価としてのお金をもらい続けることができるということです。逆にいえば、自分が提供するモノやサービスに価値がないと判断されると、お金をもらえなくなります。自分が提供するモノやサービスに常に価値を付加し続けて、提供することが求められるのです。
リーンスタートアップで経営する
第三のポイントは、リーンスタートアップで経営することです。リーン(Lean)は「無駄のない」という意味で、リーンスタートアップとはできるだけコストをかけずに起業することです。特にオフィスの家賃や人件費などの固定費は、できる限り抑えるべきです。
多くのスタートアップ企業が設立当初より相応のコストをかけて起業しますが、資金が枯渇して経営破綻しています。リーンスタートアップで経営してランニングコストを下げ、できるだけ早くキャッシュフローを改善しましょう。
日本で起業して経営者を目指しましょう
日本に起業家が少ない理由について、起業家として成功するポイントなどとともに解説しました。リモートワークの拡大や副業容認のトレンドの広がりなど、我が国の労働環境は以前よりもフレキシブルになっています。その中で、我が国でも起業にチャレンジしようという機運の高まりが期待されます。日本にも多くのビジネスチャンスが残されているので、特に若い世代の人には日本で起業して経営者を目指すことをおすすめします。
よくある質問
日本に起業家が少ない理由は?
日本に起業家が少ない理由として、起業家を育成する教育制度が十分ではない、日本人は安定的な雇用を求める意識が高い、起業に失敗した際のセーフティーネットが整備されていない、などが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
日本で起業に成功するためのポイントは?
日本で起業に成功するためのポイントとしては、ビジネスのバリデーションを行う、バリューを生み出す、リーンスタートアップで経営する、が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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