• 更新日 : 2023年10月23日

経営環境とは?変化への企業対応事例も紹介!

経営環境とは?変化への企業対応事例も紹介!

経営環境とは、自社を取り巻く環境のことで、政治・経済などの状況や社会情勢など、多くの要素があります。経営に成功するためには、フレームワークを用いて経営環境を正しく理解し、変化に適切に対応することが大切です。今回は、経営環境とは何か、環境経営との違いや、日本の経営環境の変化、変化に対応している企業例などを解説します。

経営環境とは

経営環境とは、企業を取り巻く、政治や経済、社会などの状況、情勢のことです。内部環境外部環境があり、外部環境はさらにマクロ環境とミクロ環境に分けられます。

経営環境には非常にさまざまな要素があります。自社や市場の現状などを理解するためには、経営環境を正しく分析することが必要です。

ここでは、経営環境とよく似た環境経営との違いと、経営環境を分析する方法について解説します。

環境経営との違い

環境経営とは、地球温暖化や大気汚染、森林破壊などの環境問題に取り組んで社会的責任を果たしながら、自社の企業価値も高める経営のことです。

環境経営の「環境」は、いわゆる自然環境のことを指します。

一方、経営環境の「環境」は、自然環境のみならず、経済や政治など、企業を取り巻く状況のことです。

経営環境と環境経営は、まったく別の意味であることを理解しましょう。

経営環境の分析方法

経営環境を分析する際は、フレームワークを利用するのが効果的です。

フレームワークを使うと、経営環境を抜け漏れなく洗い出せ、客観的な分析が実現します。組織内での共通言語になるのもメリットです。

経営環境の分析方法としては、以下のようなフレームワークがあります。

  • PEST分析
  • 5フォース分析
  • 3C分析
  • SWOT分析

PEST分析は、外部環境を以下の4つに分けて分析する手法です。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

外部環境をマクロ的に分析する際に活用できます。

5フォース分析は、経営環境を以下の5つの要素に分けて分析する手法です。

  • 競合他社
  • 新規参入企業
  • 代替品
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力

市場や競合の様子などを分析し、「収益性が見込めるか」「収益性を高めるためにはどのような戦略をとるべきか」などを検討する際に役立ちます。

3C分析は、経営環境を以下の3つの要素に分けて分析する手法です。

  • Customer(顧客・市場)
  • Competitor(競合)
  • Company(自社)

事業を成功に導くための、マーケティング施策の方向性を決める際に活用できます。

SWOT分析は、内部環境と外部環境を、プラス要因とマイナス要因に分け、以下の4つの要素ごとに分析する手法です。

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

自社の強みを活かせる戦略を策定する際に役立つフレームワークです。

日本の経営環境の変化

経営環境は絶えず変化します。経営環境の変化に応じて、事業計画や戦略も柔軟に変更することが大切です。そのためには、情報感度を高め、さまざまな情報をキャッチアップすることが求められます。

ここでは、2023年に経営者が押さえておくべき経営環境の変化を、PEST分析における以下の要素ごとに見ていきましょう。

  • 政治的環境要因
  • 経済的環境要因
  • 社会的環境要因
  • 技術的環境要因

政治的環境要因:Politics

政治的環境要因の中でも理解しておきたいのが、以下の2つです。

  • 米中対立の激化
  • ロシアのウクライナ侵攻

中国が台頭し、米国の影響力が相対的に低下したことで、米中関係には緊張が走っています。米中対立は今なお激化しており、自由貿易の制限につながっているのがポイントです。

さらに、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻も、国際秩序を揺るがす重大なできごとです。ロシアとウクライナは、エネルギー資源や鉱物、食料の主要な輸出国であるため、食料やエネルギー価格の高騰も引き起こしています。

経済的環境要因:Economy

重要な経済的環境要因は、以下の2つです。

  • 円安の進行
  • 原材料やエネルギー価格の高騰

円安の進行は、輸入品価格を上昇させるため、原材料に輸入品が多い飲食店や食品業界などに特に影響を与えています。

また、世界的な人口増加や気候変動、急速なエネルギー需要の高まりなどを受け、原材料やエネルギー価格が高騰しているのもポイントです。多くの企業が商品の価格改定を余儀なくされています。

社会的環境要因:Society

重要な社会的環境要因は、以下のとおりです。

  • 少子高齢化・生産年齢人口不足による人手不足
  • 気候変動や災害リスクの高まり
  • 脱炭素やカーボンニュートラルの流れ
  • アフターコロナにおけるライフスタイルや働き方の変化

少子高齢化により、多くの企業が深刻な人手不足問題を抱えています。優秀な人材の獲得はもちろん、生産性向上を実現するための取り組みも欠かせません。

また、気候変動や災害リスクの高まりを受け、クラウド環境を活用したBCP対策や、災害時の資金確保手段の検討など、企業には対応が求められています。

さらに、脱炭素カーボンニュートラルの流れが進んでおり、SDGsに関する取り組みの重要性が増しているのもポイントです。環境にやさしい商品や、社会課題の解決に取り組む企業のサービスを選ぼうとする、エシカル消費も広がっています。

アフターコロナにおける、ライフスタイルや働き方の変化も見逃せません。テレワークの普及により、オンラインコミュニケーションの浸透や地方移住者の増加といった、さまざまな変化が生じています。

技術的環境要因:Technology

技術的環境要因の中でも、以下の2つについてはチェックしましょう。

  • AI技術の進展
  • DXの重要性の高まり

近年では、AI技術が急速に進展しています。ChatGPTや画像生成ツールなど、さまざまなAIツールが次々と登場しており、AIをビジネスに活用しようとする動きも活発です。AIによって、労働力不足問題の解決や生産性の向上、顧客満足度の向上などが期待されています。

DXの重要性が高まっていることも、重要な経営環境の変化です。各企業にもDXへの対応が求められています。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、DXに対応できないと、2025年にさまざまな問題に直面する、という「2025年の崖」問題が指摘されています。これを機に、多くの企業がDXの重要性を認識し、取り組むようになりました。

参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」

経営環境の変化への企業対応例

多くの企業が中長期ビジョンを掲げ、経営環境の変化に対応する姿勢を見せています。最後に、重視している経営環境や社会課題を明示し、社会課題の解決に向けて取り組んでいる3つの企業例を見ていきましょう。

  • キリンホールディングス株式会社
  • オムロン株式会社
  • 東洋紡株式会社

経営環境の変化にどのように対応するか、自社の価値をどのように発揮するのか、戦略を立てる際の参考にしてください。

キリンホールディングス株式会社

飲料事業や医薬事業などを手がけるキリンホールディングス株式会社(以下、キリン)は、「キリングループ・ビジョン2027」を掲げています。そして、自社のビジョンに関わる経営環境として挙げているのが、以下の3つです。

  • 新型コロナ感染流行による消費行動の変化
  • ミャンマー政変等地政学リスクの高まり
  • ウクライナリスク長期化による急激なコスト上昇

これらの経営環境の変化を受け、キリンが価値を提供するために重視しているのが、コア技術である「発酵・バイオテクノロジー」です。食・医・ヘルスサイエンスの3つの領域において、コア技術を活かして社会的価値・経済的価値を生み出そうとしています。

出典:キリンホールディングス「トップメッセージ」

オムロン株式会社

電気機器メーカーであるオムロン株式会社が策定しているのが、長期ビジョン「Shaping The Future 2030」です。その中で、新たな市場と事業を創造するために優先して対応すべき経営環境を、以下の3つに定めています。

  • 高齢化:健康寿命の延伸
  • 気候変動:カーボンニュートラルの実現
  • 個人の経済格差の拡大:デジタル化社会の実現

それぞれに対してオムロンが創出できる社会価値は、以下のとおりです。

  • 健康寿命の延伸:あらゆる人が健康で豊かな自立した人生を送るためのヘルスケアシステム
  • カーボンニュートラルの実現:安心・安全・便利な暮らしと自然環境の両立を実現するエネルギーシステム
  • デジタル化社会の実現:あらゆる制約から解放され、楽しく創造的で、かつ持続可能な社会を実現するモノづくりやインフラ

そして、オムロンのドメインを以下の4つに設定し、上記の社会価値を提供できるよう取り組んでいます。

  • インダストリアルオートメーション
  • ヘルスケアソリューション
  • ソーシャルソリューション
  • デバイス&モジュールソリューション

出典:オムロン「長期ビジョン『Shaping The Future 2030』」

東洋紡株式会社

繊維や高機能製品を幅広く手がける東洋紡株式会社は、「サステナブル・ビジョン2030」を策定しています。2030年の社会変化・トレンドとして挙げているのが、以下の4つです。

  • 安全・人権や社会正義への対応の標準化
  • 医療アクセス・健康増進のニーズ拡大・多様化
  • 人口動態変化・「人」中心のイノベーション・都市化の加速
  • 脱炭素・資源循環・天然資源の制約

そして、解決したい社会課題を5つ定め、それぞれに具体的な目標を設定しています。

従業員のウェルビーイング&サプライチェーンの人権
  • 全ての現場でゼロ災害達成
  • 2025年度までに健康経営優良法人「ホワイト500」の取得
  • 従業員エンゲージメントスコア:70%以上
  • など

健康な生活&ヘルスケア
  • 感染症診断薬等の提供を通じて貢献する検査回数:1,000万回/年
  • 透析膜の提供を通じて貢献する透析患者数:25万人
  • 生化学検査等の原料市場シェア:30%
  • など

スマートコミュニティ&快適な空間
  • DXを支える商品群の売上高拡大:2020年度比1.5倍
  • 車室内空気清浄フィルターの販売:累計120万台
  • 音・熱マネジメントによる電動車の快適車室空間の創出
  • など

脱炭素社会 &循環型社会
  • GHG排出量 Scope1、2削減率:46%以上(2013年度比)
  • 新規ソリューション分野(浸透圧発電、風力発電用の洋上ケーブル・絶縁樹脂、 水素関連材料など)への参入
  • 事業活動からの廃棄物最終処分率:1%未満
  • など

良質な水域・大気・土壌&生物多様性
  • VOC回収装置の処理風量:70億N㎥/年
  • 膜による海水淡水化:1,000万人分の水道水相当
  • フードロス削減に貢献する高機能フィルムの販売量:2020年度比4倍
  • サステナブル食品への参入
  • など

定量的な目標を明確に定め、社会課題の解決に向けて積極的に取り組んでいるのがポイントです。

出典:東洋紡株式会社「サステナブル・ビジョン2030」

経営環境を正しく理解して変化に対応しよう

経営環境とは、政治や経済、社会など、企業を取り巻く環境のことです。経営環境には多くの要素があり、激しく変化します。多様な情報をキャッチアップし、フレームワークを活用して、経営環境を客観的に分析しましょう。そのうえで、自社の強みをどのように発揮できるか、変化にどのように対応するか、戦略を策定して経営を進めることが大切です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事