• 更新日 : 2024年8月29日

出資金とは?メリット・デメリット、返済の必要性、会計処理について解説

「出資金」とは、ある事業や取り組みのために出資者が提供するお金のことです。返済の必要がないというメリットと出資者に対する見返りが必要になるというデメリットを持つ、資金調達の方法の1種でもあります。

出資での資金調達は、資金繰りの観点からは効果的ですが、リスクもあります。今回は出資金のメリットやデメリット、返済の必要性などについて詳しく解説していきます。

出資金とは?

出資金(読み方:しゅっしきん)は、会社や組合などの事業者・組織に対して、出資者が事業運営のために拠出する資金を指します。この資金は事業活動の原資として使われ、出資先のものですが、出資者に対して配当金などの見返りを要するケースもあります。

ただし、出資に対する考え方や意味合いは、資金調達を行う主体によって若干の違いがあります。「株式会社に対する出資金」「協同組合などに対する出資金」に分けると以下のように説明できます。

株式会社への出資金

株式会社に対する出資は、株式の引き受けにより実行します。株式会社が株式を発行して、これを出資者が買い、対価として支払った金銭が資本金資本準備金となり会社の財産になるのです。

そして株式会社に出資をする方の多くは当該会社の経営者や投資家です。株式を保有するということは細分化された会社の所有権を保有するということであり、会社の意思決定に関与できます。これは議決権という形で与えられ、出資した金額の大きさに比例するのが原則ですので、会社経営を目的に出資する場合は保有割合に意識する必要があります。

また、出資者は配当金などをリターンとして受け取ることができます。経済的な利益を目的に出資する投資家の方は、このリターンの大きさに着目しています。

協同組合などの出資金

協同組合とは、個人あるいは事業者などが共通する目的のために自主的に集まり、組合を構成する組合員のために行う組織をいいます。

例として中小企業者や勤労者から組織される中小企業等協同組合(中協)を挙げることができます。ある地区内で事業を行う小規模事業者であって一口以上の出資をしていることなどを条件に組合員となることが認められます。

株式会社の場合は投資としてのニュアンスが強く利益の大きさが重視される一方で、中協の場合は「経済的に立場の弱い者たちが相互に助け合うこと」が大きな目的であり、出資はそのための手段に過ぎません。

議決権に関しても、出資額に応じて議決権が与えられる株式会社とは異なり、基本的には組合員1人につき1つの議決権を持ちます。

出資と融資・投資との違い

「出資」と似た言葉に、「投資」や「融資」があります。

このうち出資と投資は特に近い意味合いを持っており、出資を含む広義の言葉が「投資」であるとも説明できます。いずれも将来のリターンを期待して第三者に資金を与えることをいいますが、特に「出資」は株式の発行により資金を提供するなど少し限定的な用語といえるでしょう。

一方の融資は、返済義務がある点で出資や投資と大きく性質が異なります。借り入れをしたい者に対する資金の提供を意味していますので、貸借対照表上も「負債」として扱われます。

出資金のメリット

出資金として資金を調達するメリットは、次のように出資を受ける側と出資をする側で異なります。

【出資を受ける側】返済義務がない

出資を受けたとしても、企業はその分の金銭を返済する必要がありません。借り入れをしたときは利子も含めて返済しないといけませんが、この返済の負担がないのは事業者にとって大きなメリットになります。

もし出資者から「やっぱり出資金を返してほしい」といわれても、必ずしもその主張に応じる必要はありません。通常、返還を行うのは両者の間に合意がある場合に限られていますし、その他の例外的なシチュエーションでなければ返還を行う必要はありません。

【出資をする側】配当金を受けることができる

出資をする側には「配当金を受け取ることができる」というメリットがあります。

例えば株式会社の場合、株主総会の決議により1株当たりの金額を定め、多くの株式を持っている方(多くの出資金を出している方)ほど多くの配当金を受け取れる仕組みになっています。

多くの配当金が受け取れるのは出資先の会社が好調であることを前提としますが、うまくいけば、配当金をさらに出資に回すことで雪だるま式に出資総額を増やすことができ、多くのリターンを得られるようになります。

出資金を受けるデメリット

出資金として資金を調達するデメリットについても、次のように出資を受ける側と出資をする側で内容が異なります。

【出資を受ける側】出資者からの経営介入

多くの方が出資をしてくれることによって、多くの事業資金を得えられるのはよいことですが、その分「外部からの経営への介入が強くなってしまう」というデメリットも生じます。

例えば株式会社の場合、出資に応じた株式が割り当てられ、出資者にはその株式の保有割合に応じた議決権が与えられます。つまり多く出資をした人ほど株主総会での意思決定に対し強い発言権を持つことになるのです。

もし経営者より出資者の保有割合の方が高くなってしまったら、出資者の意見に逆らうことができなくなり、思うように経営方針を決められなくなります。

1人の出資者が過半数を持つほどの出資をしていなくても、その方に同調する複数人を合わせて半数を超えてくると経営に支障が出てくる恐れがありますので、むやみに出資を受け入れるべきではありません。

【出資をする側】出資額を回収できないリスク

出資をしてリターンが得られるのは、事業がうまくいっている場合です。事業に失敗して業績が悪化しているときは、配当金が支払われないこともあるため「出資をすればお金がもらえる」と単純に考えないことが大事です。

最悪の場合、倒産によって出資した額がまるまる返ってこないこともあります。

出資金を受ける方法

出資金を受けるタイミングとしては「会社を設立するとき」と「増資をしたいとき」の大きく2つに分けることができます。出資を受ける手続きやその際の注意点を、このタイミング別に説明していきます。

出資の手続きについて

会社設立時に出資を受ける場合、設立手続に対応する発起人が出資の内容を決めます。どれだけ発行するのか、いくら払い込みが必要なのか、そしていくらを資本金に計上するのか、これらの事項を決定しておきます。

そして株式を引き受ける方が、所定の銀行などにおいて出資の履行(金銭の払い込み)を行います。

  • 発起人以外も出資をする「募集設立」では、登記申請時に株式払込金保管証明書が必要になる。
  • 金銭以外の出資もできる。例えば不動産や有価証券などを「現物出資」して株式を引き受けることも可能で、この場合は現物の引き渡しなどによって出資を履行する。

すでに設立済みの会社であれば、第三者に新株を発行する第三者割当増資の方法などにより出資を受けることができます。この場合、取締役会があるときはそこで発行の決議を行い、株主総会での特別決議で承認を得る必要があります。

その後、出資をしてくれる方からの出資金の払い込み、新株の発行、登記申請、株主名簿への記載など手続きを進めていきます。

出資の種類別の注意点について

会社設立時の出資でも、設立後の出資でも、株式会社においては議決権割合の変化に注意が必要です。多くの方に出資してもらうことで多額の資金を調達できますが、経営陣の議決権割合が少なくなってしまうと会社の意思決定がうまく進められなくなります。そのため会社方針を決めていく人物らで少なくとも過半数の議決権を維持することを意識しましょう。

また、出資をしてくれる方には個人投資家だけでなくベンチャーキャピタル(VC)と呼ばれる投資会社もあります。VCからの支援を受けることができれば経営ノウハウの共有など、多方面でのサポートが期待できますが、経営に対する口出しを受ける可能性も高くなるので、出資者の性質や出資の条件などもよく考えて取り組むようにしましょう。

出資金を受けたときの勘定科目と仕訳

株式会社が出資金を受けた場合、調達した資金は「資本金」として計上します。そこで設立時に100万円の出資金を受けたとすれば、次のような形で処理を行います。

借方貸方
現金1,000,000円資本金1,000,000円

※出資金の1/2未満については資本金として計上しないことも可能。その場合「株式払込剰余金」や「資本準備金」などの勘定科目を使用する。

増資をする場合も同様です。振り込みにより出資金100万円を受けた場合は次のように仕訳ができます。

借方貸方
普通預金1,000,000円資本金1,000,000円

出資金の返済が必要となる場合

出資金については原則として返済の必要がありませんが、次のように例外的に返済を要する場面もあるため要注意です。

  • 解散をしたとき
    会社財産を整理した後の残余財産は株式の保有比率に応じて分配する。ただし会社の債務を返済した後に分配されるため、倒産状態にあるときは出資分が返済できないこともある。
  • 株式買取請求
    株式の買い手が見つからない場合や第三者に対する譲渡承認請求が認められなかった場合などで、株主は会社に対して自らの持ち分を買い取るよう請求できる。

なお、協同組合においては脱退するときに持ち分に応じた払い戻しが受けられます。原則として返還の必要がないため出資金をそのまま返還するわけではなく、その一部を払い戻すことになります。

出資金以外の資金調達方法

知名度が高い、あるいは大きな成長性がアピールできなければ多くの出資金を集めることは難しいでしょう。

そこで出資金以外の調達方法についても把握しておいて、別の方法も検討すること、もしくは併用して必要資金を集めることも検討しましょう。

例えば次のような調達方法があります。

  • 銀行融資
    → 銀行からお金を借りる、資金調達の一般的な方法。審査により返済能力があると判断される必要がある。
  • 公的融資
    → 日本政策金融公庫などからお金を借りる方法。比較的低金利で融資を受けられるが、一定以上の自己資金が必要。
  • 社債
    → 投資家がお金を貸し付けて、企業は定期的に利息を支払い、満期日に元本を償還する方法。
  • 資産売却
    → 保有する不動産などの資産を売却して資金を調達する方法。
  • 補助金・助成金
    → 事業内容に応じて国や地方自治体から資金援助を受ける方法。返済不要であるが、資金使途が制限され、受給後の事業報告などが必要になることもある。

経営者の個人的な経歴や事業の状況によって最適な手段は異なりますので、自社に合った方法を考えましょう。

出資金が得られなかった場合も想定しておく

出資金を十分に集めることができれば、返済の負担がなく事業活動を続けることができます。議決権割合には注意が必要ですが、毎月の返済が不要になるのは融資の場合に比べて大きなメリットであり、事業の継続性向上にも寄与することでしょう。

ただ、中小企業が出資により多くの資金を集めるのは簡単なことではありません。そこで出資金が受けられない可能性も考慮して計画を立てることが大切で、出資の準備を進めると同時に「融資による調達」や「事業を縮小したパターン」も考えておくようにしましょう。

そうすることで柔軟な対応ができ、早々に閉業する事態も避けやすくなります。


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