• 作成日 : 2025年1月30日

エステサロンの開業に必要な許可とは?保健所への届出や開業届について解説

エステサロンの開業は、夢を実現すると同時に、法律や規制の理解が不可欠です。保健所への届出や税務署への開業届提出など、手続きはサービス内容によって異なります。適切な手続きを怠ると、罰則や営業停止などのリスクが発生するでしょう。本記事では、営業許可の必要性や、具体的な届出の流れ、確定申告のポイントについて解説していきます。

エステサロンの開業時に保健所への営業許可は必要?

エステサロンの開業を検討している方にとって、保健所への営業許可申請は大きな関心事の一つです。結論から言えば、エステサロンを開業する場合、一般的には保健所への届出や営業許可は必要ありません。これは、エステサロンが医療法第1条の2第2項に規定する「医療提供施設」に該当しないためです。

ただし、サービス内容によって例外があります。例えば、医療レーザー脱毛や美容外科的処置、HIFU(ハイフ=高密度焦点式超音波)などといった医療行為に該当する施術を行う場合、医療法に基づく医療機関としての許可が必要です。この場合、医師免許を有するスタッフと医療設備が求められます(医療法第1条の5)。

エステサロンの開業時に保健所への届出が必要なケース

エステサロンの開業では、サービス内容によって保健所への届出が必要となる場合があります。特に、脱毛・シェービングやまつ毛エクステなど特定の施術を提供する場合、関連法規を守るための確認が不可欠です。

脱毛・シェービングサロンを開業する場合

脱毛やシェービングのみを行うエステサロンの場合、基本的に保健所への届出は不要ですが、以下の場合は例外となり、届出が必要となります。

1. 美容ライト脱毛の場合

日本では、除毛および減毛を目的とした皮膚に負担をかけない光脱毛は、医療行為に該当しません。ただし、光脱毛でも高出力の機器を使用する場合、施術内容によって医療行為とみなされる可能性が生じるため、提供するサービスが法律の範囲内に収まっているかを必ず確認しましょう。

美容ライト脱毛として開業するには、医療行為と誤解を招かない広告表現を避け、施術内容の詳細説明が必要です。景品表示法(特定商取引法第6条)に基づき、効果を誇張した広告や契約内容の説明不足がないよう、注意しましょう。

2. 医療レーザー脱毛の場合

医師法第17条に基づき、クリニックでの医療レーザー脱毛は医師や、医師の指示を受けた正看護師が対応できる医療行為とされ、エステサロンで提供することは違法です。医療機関として運営する場合は、医療法に基づく施設基準を満たし、保健所への届出が必要となります。

3. シェービングサービスの場合

カミソリを用いる剃毛、いわゆるシェービングは理容師法第6条第2項に基づき、理容師免許を有する者のみが提供できます。そのため、エステサロンでシェービングを行う場合は、理容所としての開設届が必要です。この届出は保健所に行い、店舗設備基準(洗面設備や換気設備の設置など)を満たすことが求められます。東京都江東区では、以下の手引きを公開していますので、ご参考までご覧ください。

東京都江東区|理容所・美容所 開設の手引き~構造設備・衛生管理の基準~

まつ毛エクステサロンを開業する場合

まつ毛エクステンションサロンを開業する場合は、必ず保健所への届出をしなくてはなりません。開業の詳細については、以下の通りです。

1. 美容師免許の取得が必須

まつ毛エクステの施術は、美容師法第2条に基づく美容行為とされています。そのため、施術者は必ず美容師免許を取得している必要があります。さらに、美容所としての保健所への届出もしなくてはなりません。届出の際には、施設の図面や管理美容師の配置計画が求められます。

2. 衛生管理の徹底

まつ毛エクステは目元への直接的な施術であり、トラブル防止のため衛生管理が重視されます。使用する器具の消毒や衛生環境の整備が求められ、美容所としての施設基準(換気設備や照明設備など)も保健所で確認されます。

エステサロンの開業届の提出は必要

エステサロンを開業するには、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)の提出が必要です。ここでは、記入例や未提出の場合のリスクを具体的に解説します。

エステサロンの開業届の書き方・記入例

ここでは、開業届の書き方とともに具体的な記入例を紹介しましょう。

1. 提出先と提出期限

開業届は、所得税法第229条にのっとって、事業を開始した日から1カ月以内に、所轄の税務署に提出する必要があります。提出は窓口・郵送・e-Taxで可能です。

2. 記入の基本項目

主な記入項目は以下のとおりです。

氏名・住所:個人事業主の氏名、現住所を記載

事業の名称:「エステサロン○○」など具体的な事業名

事業の種類:「サービス業(エステティックサービス)」と記載

青色申告の選択:青色申告を希望する場合、開業届と併せて「青色申告承認申請書」を提出

3. 注意点

記入ミスを防ぐため、税務署の窓口や公式ホームページで記入例を確認してください。開業届の取得は無料で取得・提出可能です。

エステサロンの開業届を出さないとどうなる?

では、税務署に開業届を提出しなかった場合、罰則などはあるのでしょうか。

1. 法律上のリスク

開業届が未提出でも特に罰則を課されることはありません。しかし、開業届を提出しない場合、所得税法第232条に基づき、青色申告ができなくなり、税務上の優遇措置(最大で65万円控除など)を受けることができません。

2. 税務調査のリスク

開業届が未提出の場合、税務署から事業内容の詳細確認が入る可能性があります。特に、大規模な収入が発生する際に、無申告課税(無申告加算税や延滞税)を課されることがあるかもしれませんので、注意が必要です。

3. 事業主としての信用に影響

金融機関からの融資を受ける際や取引先との契約時に、開業届が証明書として求められることがあります。未提出の場合、事業の信用力に影響を与えるため、開業届の準備を入念に行いましょう。

さらに詳細な内容については、下記の記事を参照してください。

エステサロンの開業後は確定申告も忘れずに

エステサロンを開業した後、事業主として必ず行わなければならないのが、確定申告です。正しい手段で申告を行うことで、適正な納税を果たすだけでなく、今後のビジネスの発展にもつながります。

確定申告の必要となる基準と申告期限

確定申告が必要となる具体的な基準は、専業としてエステサロンを経営している場合、年間の所得金額が48万円を超えていれば確定申告をします。また、副業でエステサロンを営んでいる場合は、サロンの年間所得が20万円を超えていれば確定申告が必要です。なお、確定申告の基準となる金額は単なる売上や収入額ではありません。収入から必要経費を差し引いた所得額という点で注意が必要です。

エステサロンを個人事業主として開業した場合、原則として確定申告が必要となります。所得税法第120条に基づき、毎年2月16日から3月15日までの期間に前年の所得について申告を行わなければなりません。

確定申告のメリットと申告方法

確定申告を適切に行い、青色申告を選択することで、最高65万円までの特別控除が受けられます。また、事業用融資や住宅ローンの申込み、各種助成金や補助金の申請に必要な所得証明書を取得可能です。このほか、国民健康保険料の減額や免除の手続きができます。確定申告の方法は、以下の手順を踏むことが一般的です。

  1. 事業経費や収入に関わる書類(領収書など)を準備する。
  2. 「収支内訳書」(白色申告)または「青色申告決算書」(青色申告)を作成する。
  3. 「確定申告書」を作成し、必要書類を添付して税務署に提出する。

国税庁が提供するe-Taxを利用すれば、オンラインで申告書の作成から提出まで行うことができます。

確定申告を怠った場合のリスク

確定申告を行わなかった場合、以下のようなペナルティやデメリットが生じる可能性があります。

  1. 追徴課税と罰則
    確定申告をしない場合、税務署から無申告加算税や延滞税が課されることがあります。特に、意図的な所得隠しが発覚した場合、重加算税が適用されます。
  2. 社会的信用の低下
    未申告や納税遅延は、金融機関からの融資審査や取引先との契約に悪影響を及ぼす可能性があります。
  3. 確定申告期間外の手続き負担
    期限を過ぎた申告は、税務署で追加の手続きが発生し、余計な時間やコストがかかります。

エステサロンの安定経営をしたいなら、まずは適切な手続きを理解しよう!

エステサロンの開業には、サービス内容に応じて保健所への届出が必要な場合があります。また、税務署への開業届の提出は必須であり、適切な時期に確定申告を行うことも重要です。これらの手続きを正しく行うことで、さまざまなビジネス上のメリットも得られます。

これらの手続きを正しく理解し、事業運営の基盤を整えることが、安定したサロン経営の第一歩です。法令を守りつつ、顧客に安心と信頼を提供するための準備を始めましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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