• 更新日 : 2023年8月23日

法人化後の社会保険について|いつから必須?費用はいくら?

法人化後の社会保険について|いつから必須?費用はいくら?

個人事業主が法人成りをして会社設立をした際、注意したいことのひとつに社会保険があります。法人は、原則として社会保険に加入しなければなりません。では、法人化後いつから社会保険に加入する必要があるのでしょうか。また、社会保険の加入でいくらの費用がかかるのでしょうか。ここでは、法人化後の社会保険について詳しく解説します。

そもそも社会保険とは?

社会保険とは、従業員が安心して働くことができるための保険制度で、原則、強制加入が必要な公的の保険制度です。

社会保険制度は公的な団体が運営し、公務員・会社の従業員などが加入します。病気やケガ、失業などの万が一の事態があった場合に、保険金が給付される制度です。社会保険には、大きく分けて次の5つの種類があります。

  • 健康保険:病気やケガなどをした場合(業務外)の医療保険制度
  • 厚生年金保険:将来、年金が受給できる公的年金制度
  • 労災保険:業務中に病気やケガなどをした場合、一定の給付を受けられる保険制度
  • 雇用保険:失業時に失業保険などの給付を受けられる保険制度
  • 介護保険:介護が必要な場合に介護サービスが受けられる保険制度

狭義では、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つを社会保険と呼び、労災保険と雇用保険の2つを労働保険と呼ぶこともあります。社会保険は、原則として従業員と法人がそれぞれ一定割合で負担を分担します。

社会保険の運営者はさまざまです。企業や団体で運営しているものもあれば、協会けんぽのように公的な団体が運営しているものもあります。どの運営者の社会保険に加入するのかは、法人が決めることができます。

法人化した場合いつから社会保険に入らないといけない?

法人が加入する社会保険には、いくつかの種類があります。ここでは社会保険の種類ごとに、法人化した場合いつから社会保険に入らなければならないのか見ていきましょう。

健康保険、厚生年金保険の場合

法人化した場合、健康保険と厚生年金保険に加入する必要があります。その際、会社が加入することと、役員(社長)や従業員が加入することをそれぞれ届け出ます。どちらも、会社設立や加入者の発生の事実から「5日以内」に会社所在地を所轄する年金事務所に届け出る必要があります。

労働保険(労災保険と雇用保険)の場合

労働保険は、従業員のための社会保険です。そのため、法人化した会社で社長などの役員のみが仕事に従事している場合は、労働保険に加入する必要はありません。

役員以外の従業員を雇用した場合は、保険関係成立の手続きを済ませた後に、労働保険の適用を受ける会社になったことの届け出(雇用保険適用事業所設置届)と労働者を雇用した旨の届け出(雇用保険被保険者資格取得届)をハローワークに提出します。

届け出の提出期限は、以下のとおりです。

  • 保険関係成立届:保険関係が成立した日の翌日から10日以内
  • 雇用保険適用事業所設置届:保険関係が成立した日の翌日から10日以内
  • 雇用保険被保険者資格取得届:被保険者となった日の翌月10日まで

介護保険の場合

介護保険は、40歳以上の人が被保険者となる社会保険です。健康保険に付随する保険であるため、健康保険の手続きをしている場合は、原則として手続きが不要です。

子ども・子育て拠出金の場合

子ども・子育て拠出金とは、子育て支援に充てられる税金のことです。上で紹介した5つの種類には挙げていませんが、全額が会社負担となる拠出金であり、厚生年金保険料と一緒に徴収されます。そのため厚生年金保険の手続きをしている場合は、特に手続きする必要はありません。

会社設立時の社会保険加入の手続きは、次の記事で詳しく解説しています。こちらをご参照ください。

個人事業主が法人化すると社会保険はどう変わる?

次に、個人事業主が法人化した場合に、社会保険がどう変わるのかを見ていきましょう。

健康保険

わが国では、国民は全員何らかの健康保険に加入する義務があります。個人事業主の場合は国民健康保険に、法人化した場合は協会けんぽなどの健康保険に加入します。

・国民健康保険料

国民健康保険料は、個人事業主や学生など健康保険に加入できない人が対象です。加入する際は、各自治体で手続きを行います。

納める保険料は前年度の所得に応じて決まりますが、個人単位ではなく世帯単位の所得金額が基準となります。保険料は全額が個人事業主負担です。

・健康保険

協会けんぽなどの健康保険は、法人などに雇用される一定の従業員などが加入する社会保険です。全国健康保険協会(協会けんぽ)や企業などの健康保険組合が保険者となります。

納める保険料は、標準報酬月額(給料の額で決定される)に基づいて計算されます。保険料は、会社(事業主)と従業員で折半して納めます。また、被扶養者の保険料は納付不要です。

厚生年金保険

日本の年金制度は、2階建てになっています。1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金です。

・国民年金保険

国民年金保険は、個人事業主や学生など厚生年金保険に加入できない人が対象となります。

納める保険料は年度によって金額が決まっており、どの人でも一律です。扶養制度がないため、個人ごとに保険料の全額を納める必要があります。将来の給付は、1階部分のみです。

・厚生年金保険

厚生年金保険は、法人などに雇用される一定の従業員などが加入する社会保険です。納める保険料は標準報酬月額(給料の額で決定される)に基づいて計算され、会社(事業主)と従業員で折半して納めます。また、扶養されている配偶者の保険料は納付不要です。

将来の給付は、基礎年金を含む老齢厚生年金になります。

法人化した際の社会保険料はおおよそいくら?

個人事業主と、法人化した場合の社会保険料の金額は異なります。法人化した場合の社会保険料の金額は、健康保険、厚生年金ともに次の計算式で求めます。

社会保険料=標準報酬月額×保険料率

上記で計算した金額を、事業者と従業員で折半をして負担します。

保険料率は、加入している健康保険組合や都道府県などによって異なります。協会けんぽ(東京都)における令和5年3月からの保険料率は、以下のとおりです。

  • 健康保険料率(介護保険なし):10.00%
  • 健康保険料率(介護保険あり):11.82%
  • 厚生年金保険料率:18.30%

例えば、標準月額500,000円、介護保険なしの場合の社会保険料は以下のようになります。

  • 健康保険料=標準報酬月額500,000円×健康保険料率10.00%=50,000円

    →会社・従業員それぞれの負担額:50,000円×1/2=25,000円

  • 厚生年金保険料=標準報酬月額500,000円×厚生年金保険料率18.30%=91,500円

    →会社・従業員それぞれの負担額:91,500円×1/2=45,750円

  • 社会保険料の負担額(1/2ずつ)=25,000円+45,750円=70,750円

参考:令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)|協会けんぽ|全国健康保険協会令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

法人化した際の社会保険の手続き

法人化した際の社会保険の代表的な手続きは、次のようになります。

健康保険・厚生年金保険新規適用届

「健康保険・厚生年金保険新規適用届」は、会社が社会保険に加入する際に必要な届け出です。会社設立の発生の事実から「5日以内」に、会社所在地を所轄する年金事務所に届け出る必要があります。

「健康保険・厚生年金保険新規適用届」には、次の書類を添付する必要があります。

  • 法人(商業)登記簿謄本(原本)
  • 法人番号指定通知書等のコピー

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」は、役員(社長)や従業員が社会保険に加入する際に必要な届け出です。従業員雇用の発生の事実から「5日以内」に会社所在地を所轄する年金事務所に届け出る必要があります。

添付書類は原則、必要ありませんが、特別なケースでは添付書類が必要になることもあります。

健康保険被扶養者(異動)届

「健康保険被扶養者(異動)届」は、健康保険に加入する人に、社会保険の扶養家族がいる場合や、扶養家族が増えた場合などに必要な届け出です。

法人化した場合、従業員などに社会保険の扶養家族がいる場合は、その発生の事実から「5日以内」に、会社所在地を所轄する年金事務所に届け出る必要があります。

法人化したら社会保険の手続きを忘れずに

社会保険とは、従業員が安心して働くことができるための保険制度で、原則として強制加入が必要となる公的保険制度です。法人化すると、必ず社会保険に加入しなければなりません。

社会保険には、大きく分けて「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」があります。それぞれの社会保険で、加入の手続きや期日などが異なります。忘れずに、社会保険の手続きを行いましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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