- 作成日 : 2024年8月29日
貸別荘を経営するには?許認可や費用、手続き、成功のコツを解説
所有している別荘や住宅を使っていない間に貸別荘にすれば、副収入を得ることも可能です。また、ホテルや旅館と比較して低コストで開業・運営できるため、物件を購入して貸別荘を開業される方もいらっしゃいます。
この記事では、貸別荘経営の基礎知識・種類・開業までの流れ・ポイントを詳しく解説していきます。
目次
貸別荘の経営とは?
貸別荘経営とは所有している別荘や住宅を自分が使用していない期間、旅行者や短期滞在者に貸し出すビジネスのことです。
利用者に一棟貸し切りで提供するため、ホテルや民宿とは違ってプライバシーを守りながら自由に過ごせる点が人気です。例えば、観光地や避暑地にあるログハウスやリゾート地のヴィラなどがあります。
一般的な一軒家の他にも、二世帯住宅やメゾネットタイプの物件のように世帯ごとに独立した空間が楽しめる連棟タイプ、複数の利用者と共同で使うコンドミニアムタイプなどがあります。
貸別荘の経営に向いている人
貸別荘経営は以下のような方におすすめです。
- 不動産運営や投資に興味がある
- 定期的なメンテナンスやゲスト対応が苦にならない
- 観光地やリゾート地に別荘を保有している
- 集客やマーケティングについて知識がある
- 初期費用を抑えながら新しいビジネスを始めたい
- 信頼できて不動産に詳しいビジネスパートナーがいる
貸別荘の運営には法規制への対応や税務処理も伴うため、これらの手続きをしっかりと管理できる能力、あるいは専門家に外注できるリソースの余裕も必要です。
貸別荘の種類
貸別荘経営にはさまざまなビジネスモデルが存在し、代表的な例として、民泊、賃貸、旅館の3種類が挙げられます。
民泊は個人宅の一部を提供する形式で、地元の生活を体験できる点が魅力です。賃貸は長期滞在を前提とした一軒家やアパートを貸し出す形式で、プライバシーを重視したい旅行者に適しています。旅館は伝統的な日本の宿泊施設で、和室や温泉があるのが特徴です。
以下で形態ごとのメリットと特徴について詳しくご紹介していきます。
民泊
民泊には実は法令上の明確な定義はありませんが、個人が所有する家やアパートの一部を旅行者に貸し出すスタイルが一般的です。
民泊の魅力は、宿泊者が地元の生活や文化を体験できる点にあります。一般的に都市部で多く見られ、短期間の滞在に適しています。運営には地域の条例や法規制に従う必要があり、適切な許可を取得することが求められます。
民泊はホテルや旅館と比較すると低コストで運営可能で、その分宿泊料金も抑えることができ観光客にとってもリーズナブルな宿泊先となる点が魅力です。
賃貸
賃貸型の貸別荘は、数日だけではなく1か月~長期間の滞在を前提として一軒家やアパートを貸し出す形式です。避暑地、観光地やリゾート地に多く見られ、家族やグループでの旅行に適しています。
賃貸物件はホテルなどの宿泊施設と比較してダイニングやお風呂などのプライバシーが確保されているため、他の旅行者と接点が少なく静かな環境で過ごすことができます。物件にもよりますが家具や家電が完備されていることが多く、最小限の荷物で快適に過ごせるという利点があります。
旅館
旅館形式の貸別荘は、伝統的な日本家屋を活用している、温泉や浴場施設が充実しているなどの特徴があります。
旅館業法の許可が必要で、民泊や賃貸タイプの貸別荘よりも施設の衛生管理やサービスの質が重要視される傾向にあります。特に和風建築の貸別荘は海外の観光客からは、プライバシーを確保しながら異文化体験ができる特別な宿泊施設として人気があります。
貸別荘経営のメリット
ここからは貸別荘経営を行う3つのメリットについて詳しくご紹介します。
利用していない期間に収益を得られる
貸別荘経営の大きなメリットとして、物件を使用していない期間に収益が得られる点が挙げられます。特に観光地やリゾート地に立地する貸別荘はシーズンやイベント時に高い宿泊料金を設定でき、家族やグループでの長期滞在需要も狙えます。
使う頻度が低い建物であっても維持費や管理費、税金などのコストがかかりますが、貸別荘として有料で貸し出せば、その収益でこれらのコストをまかなうことも可能です。
建物の管理・維持ができる
人に別荘を貸すことで、建物の品質維持・品質管理につながります。誰もいない状態が長く続くと、ほこりが溜まったり、カビが生えたりして内部が汚れてしまいます。また、知らない間に腐食が進んでいて、大規模な補修が必要になることもあり得ます。
定期的に人に貸すとなると、日々の掃除や換気、定期メンテナンスが必要となり、それが建物の劣化の防止、資産価値の維持につながります。
税制上の負担軽減につながる
貸別荘を経営することで、以下のような税制面でのメリットが得られます。
定期的にレンタルしてくれる人がいるようであれば、実質利益の繰り延べをしている状態になるので、事業的にもプラスに働くことがあります。ただ、不動産の経費計上は複雑なので入念に調べておきましょう。
貸別荘経営のデメリット
貸別荘経営には使用頻度の低い物件を収益化できることから人気がありますが、その一方で以下のようなデメリットも存在しています。
手続きや費用がかかる
貸別荘経営は別荘がある人ならすぐにできるわけではありません。貸別荘として事業をするためには旅館業法に基づく許可取得が必要です。旅館業許可を得るには時間と費用がかかり、知識がない状態で申請を行うのは難しいでしょう。一般的には、行政書士などの専門家に申請代行を依頼します。
その他にも広告宣伝費や管理費、清掃費などの運営費も考慮する必要があります。初期投資と運営コストを適切に見積もり、綿密な資金計画を立てなければなりません。
宿泊客の対応や清掃管理
貸別荘を運営する場合、宿泊客への対応や使用前後の清掃などが必要です。具体的には宿泊客のチェックイン・チェックアウトの対応や、トラブル・クレーム対応などが挙げられます。自分たちで対応する場合は24時間対応の体制が求められ、労力と時間がかかります。
さらに、宿泊後の清掃やメンテナンスも重要で、プロフェッショナルな清掃サービスの利用や、定期的な点検が必要です。これらの作業も、ゲストの満足度を維持し、リピーターを確保するためには必要不可欠です。
収益化に工夫が必要
収益を最大化するためには、料金設定や集客に工夫が必要です。シーズンや平日、週末の料金差を設けて稼働率を高めるといった価格戦略、SNSやオンラインプラットフォームを活用した効果的なマーケティングが必要となります。
さらに、追加サービスの提供が必要となることもよくあります。例えば、 食事の提供、設備品の拡充(音響・ネット・調理器具など)、現地のガイドなどを提供するオーナーも多いようです。
貸別荘経営の許認可や手続き・費用
貸別荘を経営するには旅館業許可などが必要で、営業種別に合わせた手続きが求められます。
例えば、旅館やホテルとして貸し出す場合は「旅館・ホテル営業」の認可を得る必要があり、1か月以上の長期間貸し出す場合は「下宿営業」の認可を得なければなりません。
なお、民泊として別荘を貸す場合、旅館業許可ではなく「住宅宿泊事業」の届け出が必要です。以下で、旅館業認可を得るための具体的な手続きと費用について詳しく解説します。
都道府県知事の許可が必要
貸別荘を経営するためには旅館業法に基づき、都道府県知事の許可を得なければなりません。これは地域の公衆衛生や安全を確保するための決まりで、許可を得るためには宿泊施設として最低限守るべき基準を満たす必要があり、適切な設備や管理体制を整えることが求められます。
また、許可取得には審査や現地調査が行われるため、一定の期間と手間がかかります。
旅館業許可申請に必要な書類
旅館業許可を申請するためには、法律で定められた書類の作成・提出が必要です。
【事前相談時に必要な書類】
- 付近周辺見取り図
- 建物配置図
- 各階平面図、立面図など
【申請時に必要な書類】
- 営業許可申請書
- 構造設備概要書
- 申告書
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 定款(法人の場合)
必要な書類の詳細は市区町村の役所などで確認できます。申請後は、保健所や消防署などの関係機関による現地調査が行われます。
貸別荘経営にかかる費用
貸別荘経営には初期費用と運営費用がかかります。以下でそれぞれの費用について具体的な例を挙げて解説します。
初期費用
貸別荘経営における初期費用には物件購入費用、リフォーム費用、家具や家電の購入費用などがあります。
例えば、物件購入費用には物件の取得費用に加えて仲介手数料や登記費用が含まれます。リフォーム費用には内装の改修や設備のアップグレードが必要です。家具や家電の購入費用は、宿泊客が快適に過ごせるようにするための必要な投資となります。
運営費用
運営費用には光熱費、清掃費、広告費、保険料などが含まれます。光熱費は別荘の使用頻度に応じて変動します。清掃費は宿泊客が入れ替わるごとに発生する費用です。
広告費は貸別荘の集客を目的としたインターネット広告やパンフレット作成費用などが挙げられます。保険料は火災保険や賠償責任保険など、万が一の事態に備えるために必要な費用です。
貸別荘経営を始める流れ
貸別荘経営を始めるには、まず物件選びと購入から始まります。物件を選定したら、次に必要な許認可や登録手続きを行います。営業種別に合わせた許可が必要ですが、申請窓口は自治体によって異なるので別荘がある市区町村の役所などに問い合わせてみましょう。
また、営業認可以外にも保健所への申請や、消防署の防火管理適合証の取得も必要です。
必要であればリフォームや家具の準備を行い、運営できる体制を整えます。最後に、宿泊予約サイトへの登録や集客活動を開始し、営業を開始します。
必要な許認可・登録
貸別荘経営には、以下の許認可や登録が必要です。
- 営業許可:旅館業認可や住宅宿泊事業などの認可を得る必要があります。窓口は各自治体の行政、観光協会、保健所などがあります。
- 防火管理適合証:消防署で取得します。
これらの手続きを経ることで、法的に正当な営業が可能となります。
貸別荘経営の注意点
貸別荘経営において注意しておきたい点、あらかじめ知っておきたいポイントをご紹介します。
貸別荘の営業が可能か確認する
場所によっては別荘を他人に貸すことを禁止されている場合があります。昔ながらの高級住宅街や避暑地など、不特定多数の人間が出入りすることを禁じているエリアも少なくありません。分譲規約など、その土地のルールをしっかりと確認しましょう。
認可が得られないケースがある
別荘の立地、構造、設備などによっては営業許可が得られないケースがあります。例えば別荘の周囲100m以内に公共の設備がある場合は旅館業認可が得られません。投資やビジネス目的で別荘を購入する際は、周囲の施設もしっかり確認しましょう。
貸別荘の経営を成功させるポイント
貸別荘事業の費用を抑えて安定的な経営するために補助金などを活用するという方法もあります。
貸別荘経営は、「事業再構築補助金 」の対象となります。事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換などを行う中小企業、あるいは中堅企業を補助する補助金制度です。従業員数に合わせて1,500万円~最大6,000万円の補助が受けられます。
しっかりと事業計画を作成し採択されなければなりませんが、貸別荘事業でも数多くの採択事例があります。
貸別荘経営は目的・計画を明確にしよう
今回は貸別荘経営について詳しく解説しました。使う頻度の少ない別荘を旅行者などに貸し出すことで収益が得られることから、インバウンド市場が拡大する昨今ではかなり注目を集めています。
本文でもご紹介したように別荘を貸し出すには目的に応じた営業認可を取得する必要があり、補助金制度を活用するためには事業計画が採択されなければなりません。綿密な計画を立てて準備を進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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