• 更新日 : 2024年9月6日

動物病院を経営するには?独立に必要な資金・費用、課題、売上アップのコツ

動物病院を経営する方法は、個人事業主と法人のどちらかです。本記事では、動物病院経営に必要な資格・免許や費用、売上アップのコツなどについて解説します。

動物病院経営を検討中の人は、ぜひ参考にしてください。

動物病院を経営するには?

動物病院の開業は、個人事業主か法人かのどちらかです。

個人事業主を選ぶケースで多いのが、小規模な動物病院を経営したい場合でしょう。はじめに個人事業主を選んで、経営規模を拡大したいときに法人成りするケースもあります。

個人事業主で開業したほうがよいケースの一例は、以下のとおりです。

  • 小規模な動物病院を経営したい
  • コストを抑えたい
  • 会計処理や手続きの負担を減らしたい

個人事業主の場合は、法人に比べて資金集めや従業員集めで不利な側面もありますが、規模の小さい病院を経営する予定であれば、影響は少ないでしょう。

また、個人事業主は社会保険に加入する義務がありません。個人事業主の届出をする際に費用もかからないため、コストが押さえられます。

そのほか、個人事業主のほうが法人より会計処理が簡易的なものでよいため、必要な手続きも少なくなります。

一方で、誰かと協力をして動物病院を開業する場合、動物病院を経営していくうえで多くの資金を集めたい場合は、法人のほうがよいでしょう。

法人で開業したほうがよいケースには、次のような例が挙げられます。

  • 多くの資金を集めたい
  • 社会的な信用を集めたい
  • 節税したい

動物病院を経営していくうえで多くの資金を集めたいのであれば、銀行などから融資を得やすい法人のほうがよいでしょう。社会的な信用も法人のほうが得られるため、集客もしやすくなります。さらに、個人事業主よりも最高税率が低く、経費として計上できる費目も多くあるため、節税につながります。

動物病院経営に必要な資格・免許

次に、動物病院経営に必要な資格や免許について解説します。

資格・免許としては、獣医師免許が必要です。国家資格を取得するためには、獣医学部を卒業し、国家試験に合格する必要があります。

動物病院の開業に必要な書類は、次の3つです。

  • 動物取扱業届出書
  • 診療施設開設届
  • エックス線装置設置届

動物取扱業届出書

動物を入院させたり預かったりする場合に必要な届出書。都道府県へ提出し許可を得る必要があります。手続きは、最寄りの保健所で行います。

診療施設開設届

動物病院開業には、獣医師免許を持っている人が都道府県知事に対して診療施設開設届を10日以内に提出する必要があります。

あわせて、「診療所の平面図」「獣医免許の写し」「法人の場合は約款の写し」が必要です。

エックス線装置設置届

動物病院でエックス線装置を使用する場合に提出が必要です。設置届の書類にはエックス線装置の製作者名と型式、使用する台数や使用用途を記載して提出してください。

放射線診療装置を導入する場合は、放射性同位元素装備診療機器や診療用高エネルギー放射線発生装置などの設置に関する申請書も必要です。

動物病院の年収はどのぐらい?

動物病院の開業医の平均年収は約500万円前後といわれています。ただし、病院によってそれぞれであるため、注意しましょう。なかには、年収500万円に届かない獣医師もいるほか、1,000万円を稼ぐ人もいるようです。

動物病院は、立地や患者の数などによって、得られる収入が変わります。獣医師としてのスキルや知識はもちろん、経営者としての目線や考えを持つことも重要です。

また、少子化による人口減少にともない、ペットの数も減少傾向にあります。一方で、獣医師や動物病院の数は増加傾向にあり、市場が飽和状態にある状況です。動物病院をやみくもに開業するのはリスクをともなうことでもあるため、具体的な将来設計を検討したうえで進めるようにしましょう。

参考:獣医大学Pettie 獣医の給料と年収

動物病院開業・経営に必要な資金・費用

動物病院開業・経営に必要な資金・費用について解説します。

初期費用

動物病院の開業には、一般的に初期費用として3,000万~4,500万円の資金が必要です。自己資金としては開業資金の20%くらいあると安心できるでしょう。

3,000万円と仮定した場合の内訳は、以下のとおりです。

  • 医療器具・機器:2,500万円
  • 不動産費用(賃貸物件):200万円
  • 内外装リフォーム費用:200万円
  • 広告宣伝費:100万円程度
  • 2ヶ月ほどの運転資金

費用の工面として、銀行からの融資も検討できるでしょう。ただし、開業後も設備投資や運転資金が必要になるため、融資は自己資金の5倍くらいに抑えておいたほうがよいでしょう。

ランニングコスト

初期費用のほかに、動物病院を運営するうえでのランニングコストとして、医療機器のメンテナンス、施設維持費、水道代・電気代などの費用も必要になります。

資金調達方法

動物病院を開業する際の資金調達方法には、次の4つの方法があります。

  • 金融機関からの融資
  • 自治体の融資制度の利用
  • 日本政策金融公庫からの融資
  • 親族・知人からの借り入れ

銀行では、新規事業の開業資金の融資を受けられます。その際は、具体的なプランを提出し、必要に応じて保証人を指定したり担保を用意したりする必要があります。

自治体による融資制度の活用もひとつの手です。融資に向けて厳しい条件を提示される場合もあるため、内容を確認したうえで申し込むようにしましょう。

ほかにも、日本政策金融公庫から開業資金として融資を受ける方法もあります。上限7,200万円までです。

資金調達方法として、親族や知人からの借り入れもあります。

動物病院開業・経営の流れ

動物病院開業・経営の流れを紹介します。おおまかな流れは、次のとおりです。

  1. 創業計画の立案
  2. 資金調達
  3. 不動産の取得
  4. 内装や設備の整備
  5. 広告宣伝と従業員の募集
  6. 各種届出の提出

まずは、詳細な創業計画を立てます。その際は、事業の全体像(市場分析、収支予測、提供サービス・内容など)を明確にしておくことが重要です。

次に、開業にあたって必要な資金をどのように集めるかを計画します。前述したような資金調達から、自分にあった方法を選びましょう。あわせて、動物病院を開業する場所も選定します。動物病院が繁盛するかは、アクセスの良さや競合の有無などが非常に重要なカギになります。慎重に選ぶようにしましょう。

続いて、動物病院内の内装や設備の整備に着手します。内装デザインや設備投資は、動物病院のサービス品質に直接影響するものです。ペットと飼い主が快適に過ごせる空間作りを心がけましょう。

広告による動物病院の開業のアナウンスと従業員の募集も重要です。広告宣伝を通じて、病院の知名度を高めて集客に努めましょう。また、質の高いサービスを提供するためには、経験豊富なスタッフの募集も欠かせません。

最後に、開業に必要な届出や許可申請を行います。なかには、複雑なものもあるため、必要に応じて専門家に依頼するなども検討するとよいでしょう。

動物病院開業・経営に役立つテンプレート

動物病院の開業で必要な事業計画書や定款の作成は、テンプレートを利用すると便利です。動物病院開業・経営に役立つテンプレートはこちらを参考にしてください。

動物病院の事業計画書・創業計画書はこちら

動物病院の経営課題

動物病院を開業するうえで、動物病院の抱える経営課題を把握しておくことは重要です。

医療機器が高い

医療機器が高いことは、大きな課題のひとつです。動物病院を開業する際には医療機器を購入しなければなりません。飼い主にとって、ペットは家族の一員です。動物病院に求められる設備の機能性も、必然的に高くなるでしょう。

高機能の設備を導入すれば、それだけ費用もかかります。しかし、新規開業では、どの程度売上が期待できるかわかりません。その点、高額な医療機器用を充実させることは難しいともいえます。

集客力アップが難しい

安定した経営には、集客が欠かせません。宣伝方法には、テレビCM・ネット広告・SNS・チラシなどがあります。これらを駆使して宣伝し、集客アップに努めましょう。

その際に注意しなければならないのが、「獣医療広告ガイドライン」です。獣医療広告ガイドラインとは、獣医療に関する広告の制限および、その適正化のための監視指導に関する指針を指します。動物の命の尊厳を守るためのルールが定められた、ガイドラインです。

宣伝は、獣医療広告ガイドラインに沿った形で行う必要があります。違反した場合には免許取り消しの恐れも出てくるため、十分注意しましょう。

市場が縮小している

市場が縮小していることも動物病院を経営するうえでの課題です。一般社団法人ペットフード協会の「令和5年全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の飼育頭数は2013年に8,714千頭だったものが 2023年には6,844千頭に減っています。また、世帯飼育率も12.85%だったものが9.10%まで減っています。

このように、徐々に市場は縮小しており、今後もその傾向が続くと予想されるでしょう。今後は新規顧客の獲得が今以上に難しくなる恐れがあり、動物病院経営において大きな課題のひとつといえるでしょう。

参考:一般社団法人ペットフード協会 令和5年 全国犬猫飼育実態調査 主要指標サマリー

動物病院経営で売上を伸ばす方法

最後に、動物病院経営で売上を伸ばす方法について解説します。

他の動物病院と差別化する

売上を伸ばすためには、他の動物病院と差別化することが重要です。とくに動物病院は需要が限られているため、診療エリアの選定がとても大切になっています。

開業前にしっかりと調査をして、動物病院の需要が高いエリアを探したり、競合となる病院がないかどうかも確認したりしておきましょう。

SNSなど効果的な集客を行う

集客は安定的な経営には不可欠です。集客を増やすのであれば、SNSの活用を検討しましょう。活用しやすいSNSは、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookの3つです。それぞれの活用法は次のとおりです。

  • X:動物病院の日常を毎日更新しフォロワーと接点を持つ
  • Instagram:動物の写真を投稿したり、通院で元気になった動物の様子を投稿したりして病院のアピールにつなげる
  • Facebook:飼い主が抱える問題に着目した記事を掲載し読んでもらう

ホスピタリティ精神で接する

当然のことではありますが、ホスピタリティ精神で飼い主やペットと接することが重要です。ホスピタリティ精神とは、飼い主一人ひとりに対して、その人が求めることやその人のためになるものを提供することを指します。

言い換えると、飼い主をただ満足させるだけでなく、飼い主の期待を越えることを目指すということです。そうすることで、またお世話になろう、この動物病院がいいよと人に紹介したくなるなど、他の動物病院との差別化にもつながるでしょう。

リピーターを増やす

新規の来院数を増やすだけではなく、既存の通院してくれている飼い主を大切にすることも重要なことです。いま通院してくれているから次回も来院してくれると考えるのは、甘い考えだと思ったほうがよいでしょう。

なかでも、スタッフの対応は、次回以降の来院を決める際に大きく影響するものです。いくら表面的には集客できていても、スタッフの教育ができていないと継続的な集客につながらず、経営も苦しいものになります。

付加価値の高い診療を実現する

他の動物病院と差別化するうえでは、高度な診療技術や専門的な治療法を導入し付加価値の高い診療を実現することも有効です。それにより、診療単価を上げられ、経営の安定につながります。

その他、動物病院独自のペット用品やサプリメントの販売なども効果的です。

予約システムなど効率化する

売上を伸ばすことも重要ですが、普段の業務を効率化してコスト削減などに努めることも大切です。そのうえで、予約システムの導入は大きな手助けとなるでしょう。

予約システムを導入すれば、書き間違いや聞き間違いなどの人為的ミスが発生しないため、動物病院の業務効率化が図れます。また、予約や顧客の情報がデータ化され、紙や資料を管理するスタッフの工数を低減でき、費用削減にも効果的です。

予約システムの導入は、顧客側にもメリットがあります。オンラインで予約の確認や変更を簡単に行えるため、顧客の利便性向上にも役立つほか、来院後の待ち時間の短縮やスムーズな受付により、満足度も高められるでしょう。

売上アップのコツを押さえて動物病院の経営を軌道に乗せよう

動物病院の開業は、個人事業主か法人かのどちらかです。それぞれメリットが異なるため、自分の経営したい動物病院がどういったものなのかを整理したうえで決めましょう。

動物病院開業には、獣医師免許はもちろん必要な届出もあります。今回紹介した流れを踏まえて、不備のないように準備をしっかりと進めてください。

また、動物病院にはさまざまな経営課題があります。売上アップのコツを押さえて、ぜひ動物病院の経営を軌道に乗せてください。


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