• 作成日 : 2025年2月12日

法人化するときに有限会社は新設できない?会社形態を選ぶポイントを解説

個人事業主からの法人化する際、「有限会社」を選択できません。整備法の施行によって新規で設立ができなくなっているからです。そのため、現在は株式会社や合同会社などの会社形態を選択して法人化する必要があります。

本記事では、法人化によって検討をするときに知っておきたい重要なポイントをここで確認しておきましょう。

法人化するときに有限会社は新設できない

有限会社は、小規模な組織向けに設計された法人形態で、株式会社よりも設立や運営が容易であるというのが特徴です。しかし、2006年5月1日の会社法施行によって新たに設立することはできなくなっているため、現在は既存の有限会社のみが「特例有限会社」として存続しています。

有限会社とは

有限会社とは、「有限会社法」という法律に基づいて設立された法人形態です。最低資本金が300万円と、当時の株式会社(1,000万円以上)と比べて少額で済み、株主総会や取締役会といった機関設計も簡素化されているのが特徴です。そこで小規模事業者でも法人化しやすい会社形態として、多くの事業者に活用されてきました。

有限会社が廃止された理由

有限会社制度が廃止された主な理由は、以下の通りです。

  • 最低資本金制度が撤廃され、株式会社も1円から設立できるようになったこと
  • 株式会社でも柔軟に機関設計できるようになり、小規模会社でも運営しやすくなったこと
  • 国際的に見て有限会社制度を持つ国が少なく、制度の簡素化が求められたこと

これらの事柄によって、有限会社と株式会社の区別を維持する必要性が薄れ、制度の一本化が図られました。

特例有限会社とは

特例有限会社とは、「2006年の会社法施行以前から存在しており現在も存続している有限会社」を指しています。法改正前に設立されていた有限会社に限り「有限会社」という商号を使い続けることが認められています。

ただし、特例有限会社も希望すれば株式会社への移行(定款変更)が可能です。この場合、商号から「有限会社」を外し、「株式会社」に変更する必要があります。なお、反対に株式会社から特例有限会社に変更することはできません。

有限会社の代わりに設立できる会社形態

有限会社の設立ができなくなっている現在、会社設立をするなら以下の4つの会社形態から選択する必要があります。

  1. 株式会社
  2. 合同会社
  3. 合資会社
  4. 合名会社

それぞれの会社の特徴とメリットをよく理解し、ご自身の始めようとしている事業形態に合った選択をすることが重要です。

詳細はこちらのページでご確認ください。以下では、簡単にそれぞれの会社の特徴・メリットを紹介していきます。

株式会社

株式会社は法人化するにあたって、一般的な会社形態です。株式会社を選択することには、次のようなメリットがあります。

  • 株式発行による資金調達ができる
  • 所有と経営の分離が可能
  • 事業承継がしやすい
  • 取引先からの信用が得やすい

一方で、設立手続きが他の会社形態と比べると多岐にわたっており、管理コストなども比較的高額になる傾向です。株式会社として必ず設置しなければならない機関は、株主総会と取締役の2つであり、取締役会および監査役の設置も必須ではなく任意です。ただし、設置する場合、運営の手間も考慮する必要があるでしょう。

合同会社

合同会社(LLC)は株式会社に次いで採用されている会社形態です。株式会社より設立や運営が簡易的で、個人事業主が法人化する際にもよく選ばれています。主なメリットは次の通りです。

  • 設立手続きが比較的簡単
  • 維持費用が安価
  • 柔軟な内部自治が可能
  • 出資額の範囲内で有限責任

合同会社は、株式会社と同じく有限責任社員のみの編成ですが、株式会社よりも意思決定を柔軟に行うことができます。

合資会社

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員が混在する会社形態です。そのため最低でも設立時の社員が2人は必要です。

主なメリットは次の通りです。

  • 設立手続きが簡単
  • 維持費用が安価
  • 利益分配が柔軟
  • 有限責任社員からの資金調達が可能

個人事業主が一人で法人化したいという場合、合資会社は適していませんが、個人事業主の方が無限責任社員として「別の方に出資をしてもらうが責任の範囲を限定したい」というケースでは合資会社を選択することも可能です。ただ、今日では合資会社のニーズは限られているため、設立件数も株式会社や合同会社に比べてかなり少ないのが現状です。

合名会社

合名会社は、すべての社員(出資者)が無限責任を負う会社形態です。個人事業主として活動中という方が一人で合名会社を立ち上げることができます。ただし、合名会社は、株式会社や合同会社とは異なり、出資額に限らず社員個人が会社債務について請求を受ける可能性があるため、注意が必要です。

合名会社を立ち上げる主なメリットは、合資会社や合同会社と同様、株式会社と比べて設立のコストや手間が少なく、会社のランニングコストや自治の自由度が高い点です。なお、合名会社も社員が無限責任を負うことからリスクが高いため、法人化の会社形態としてあまり選ばれていません。

法人化するときに会社形態を選ぶポイント

会社形態の選択は、事業の将来性や成長戦略にも影響を与える重要な決定事項です。そこで、以下5つのポイントを総合的に考慮して自社に適切な会社形態を探していきましょう。

事業規模と将来の展望

現在の事業規模はもちろん、将来の事業展開も見据えた会社形態の選択が重要です。小規模なスタートアップとして始める場合でも将来的な上場を目指すのであれば、最初から株式会社として設立することが賢明でしょう。

一方、フリーランスとしての活動をそのまま法人化する場合や、家族経営の小規模事業を想定している場合は、合同会社として始めることで柔軟な運営と低コストを実現できます。

資金調達の柔軟性

会社形態を選ぶ際に、事業拡大として必要な資金の調達方法も重要な基準となります。持分会社(合同会社や合資会社、合名会社)では、銀行からの融資で資金を調達することが可能ですが、株式発行による資金調達はできません。株式会社であれば株式を使ってさまざまな形で資金調達を遂行できます。上場すればより広く投資家からの出資を募ることもできるでしょう。

意思決定のスピード

会社の重要事項に関する意思決定の方法は会社形態によって異なります。持分会社では重大な意思決定について社員全員の同意が求められることもありますが、定款を使うことで意思決定に柔軟性を持たせることも可能です。社員間の結びつきも比較的強く、迅速に手続きを進めやすい傾向があります。

株式会社は所有と経営が分離されていることもあるため、経営者とは別の株主という存在にも意識を向けなくてはなりません。大きな決定事項については株主総会を開催して決議を採る必要があり、定款の変更など特に重大な事柄については特殊決議と呼ばれるより厳しい要件を満たさなくてはなりません。

ただ、株式会社であっても唯一の経営者が唯一の出資者であれば所有と経営も分離しておらず、迅速に意思決定を行うことは可能です。

(※形式的には株主総会の決議が必要となるためその分手間はかかる)

出資者の責任範囲

会社の債務に関して出資者が負う責任の範囲も、重要な検討ポイントです。

  • 株式会社:全株主が出資額の範囲内で有限責任
  • 合同会社:全社員が出資額の範囲内で有限責任
  • 合資会社:無限責任社員と有限責任社員が混在
  • 合名会社:全社員が無限責任

会社形態によってこのような違いがあります。責任の範囲については株式会社と合同会社は同等であり、出資者からすればリスク回避がしやすいでしょう。一方、合資会社や合名会社においては無限責任社員がいるため、会社が債務を弁済し切れなかったときに債権者から直接請求を受ける可能性があります。

有限責任しか持たない場合でも融資のときに経営者保証(※代表者が会社の連帯保証人になること)の契約を交わすことがあるため、代表者に負担が回ってきます。

事業承継のしやすさ

将来の事業承継を見据えて会社形態を考えることも重要です。持分会社の場合、持分を譲渡するために、原則として社員全員の承諾が必要です。株式会社でも定款で定めることで株式の譲渡制限をかけることはできますが、原則として譲渡は自由とされています。そのため、株式会社であれば後継者への引き継ぎも比較的進めやすいと言えるでしょう。どの会社形態であっても、個人の財産との区別が明確ではない個人事業主と比べると事業承継はスムーズです。

有限会社以外から最適な会社形態を探そう

法人化の際に有限会社を選び、新設することはできません。そこでこれから会社を立ち上げて事業を始めようとしている方、個人事業を法人化しようとしている方は、①株式会社、②合同会社、③合資会社、④合名会社の中から最適な会社形態を探す必要があります。

(※「会社」以外の法人、例えば一般社団法人や一般財団法人もある)

それぞれ社員が負う責任の範囲や組織運営の方法などに違いがあるため、どのような組織を目指すのか、どのように事業を展開していきたいのかなど、ご自身の方針と照らし合わせて最適な会社形態を探してみましょう。


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