- 作成日 : 2023年5月26日
優秀な経営者は資格に基づく客観的視点を持つ!役立つ資格の見つけ方
日本では、経営者や社長が必ずしも資格を持つ必要はありません。しかし、経営戦略や税務・労務、資金調達など、企業をマネジメントする上で役立つ資格を経営者が持つことは、会社運営で有利に働く場合が多いです。
ここでは、経営者が資格を持つ理由やビジネスに使える資格、経営に興味がある大学生にもおすすめの資格について解説します。
目次
経営者が資格を持つ理由
はじめに、経営者が資格を持ったほうがよい理由について見ていきましょう。
日本では会社経営に資格が必要なわけではない
日本では、会社経営に資格は必要ありません。法人であれば、資本金を用意し、法務局で設立登記などを行えば、会社を設立して経営を行えます。個人事業主であれば、税務署に開業届を提出することで、個人事業を経営できます。
それでも、経営者が資格を持つことは無駄ではありません。なぜなら、経営を行う上で様々なメリットを得られるからです。
経営状況の判断には資格が役立つ
経営者にとって重要なのは、現状に合った経営戦略を立てることです。経営戦略を立てるためには、いま儲かっているのか、どの経費が多くかかっているのか、資金繰りに問題がないのかなど、経営状況を正しく判断する必要があります。
しかし、経営状況の判断には一定の知識が必要です。財務や会計などの資格を取得すると、財務諸表などから会社の経営状況を正しく把握するのに役立ちます。
取引先を判断する際にも資格が役立つ
経営者にとって重要な仕事のひとつに、資金繰りがあります。資金がショートすれば、支払いが遅れるだけでなく、取引先など第三者からの信用も失います。
資金繰りを回す上で重要なのが、売掛金の入金です。計画通り入金があれば、資金繰りも正しく回ります。特に、新しく取引を始める会社については、その会社の経営基盤がしっかりとしているのか、売掛金の入金に遅れが出る可能性はないのかなどを、判断する必要があります。
取引先を判断するためには、相手の経営状況などを判断する必要がありますが、その際にも、経営者に資格があれば役立ちます。
会社経営のための資格とはどんなもの?
自社の経営判断や取引先の判断などに、資格は役立ちます。
では、会社経営のための資格には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な資格をご紹介します。
簿記や会計に関する資格
簿記や会計に関する資格があれば、日々の取引の帳簿付けをしたり、財務諸表を作成したりできるようになります。
簿記や会計に関する資格として、例えば、日商簿記検定や税理士科目である簿記論・財務諸表論などがあります。日商簿記検定の2級や3級であれば、数か月程度の勉強で取得できる場合もあります。
財務や会計から経営状況を分析する資格
財務や会計の資格があれば、財務諸表を正しい経営状況の分析に生かせます。財務や会計の資格として、税理士やファイナンシャルプランナーなどが挙げられます。
実務やマネジメントに関する資格
実務やマネジメントに関する資格があれば、企業内部の統制や管理に関する知識を活用し、事業をスムーズに進めることが可能です。実務やマネジメントに関する資格には、ビジネス実務法務検定やビジネスマネジャー検定などがあります。
ビジネス実務法務検定とは、ビジネスで必要な法律の知識を習得するための資格です。また、ビジネスマネジャー検定とは、管理職(マネジャー)を育てるための資格で、マネジメントに必要な総合的な知識を習得できます。
労務や保険などの会社の問題点を改善する資格
労務や保険などの会社の問題点を改善する資格があれば、従業員の労働環境を整えてエンゲージメントを高めることに生かせます。
労務や保険などの会社の問題点を改善する資格には、社会保険労務士やメンタルヘルス・マネジメント検定などがあります。
MBAや中小企業診断士など
MBAや中小企業診断士の資格も、経営者が持っておきたい資格のひとつです。
MBAとは、厳密にいうと資格ではありません。アメリカや日本などの大学院で、経営学の修士課程を修了すると与えられる学位です。日本では、経営学修士号や経営管理修士号と呼ばれます。MBAの知見があれば、企業統治やリスクマネジメントなどに役立ちます。
経営に興味がある大学生にもおすすめの資格
経営などの資格は、経営者だけでなく、経営に興味がある大学生にもおすすめです。資格を取得すると、ビジネスの知見を深めたり、就職や起業に役立てたりすることができます。
大学生にもおすすめの経営に関する資格には、次のものがあります。
FP((ファイナンシャルプランナー))
FP(ファイナンシャルプランナー)とは、家計にかかわるお金のことから税金、教育資金や年金まで「くらしとお金」についての幅広い知識を得られる資格です。FPとして独立して働くだけでなく、銀行などの金融機関や一般企業でその知識を生かした仕事をすることも可能です。
FPの資格には、日本FP協会のものと国家検定のものがあります。日本FP協会のものには「CFP資格」と「AFP資格」の2つがあります。また、国家検定にはFP技能士(1~3級)があります。
一般的には、日本FP協会の資格のほうが上位とみなされ、AFP資格を取得するためには、2級FP技能士の合格が必須です。
証券アナリスト
証券アナリストとは、証券投資や企業評価について深い知識を取得できる資格です。証券アナリストの資格を得るためには、財務に関する知識からマクロやミクロ経済、ポートフォリオマネジメントなど、経営に役立つ様々な知識を身につける必要があります。
証券アナリストは幅広い知識があるため、証券会社や銀行だけでなく、一般企業にも多く就職しています。
証券アナリストになるには、証券アナリスト試験に合格する必要があります。証券アナリスト試験は、第1次レベル試験・第2次レベル試験の2段階選抜となっています。しかし、第1次レベル試験に進むためには、公益社団法人日本証券アナリスト協会が実施している通信教育講座に申し込む必要があります。
簿記
簿記とは、その名の通り、日々の取引を帳簿に記すための知識のことです。日々の取引を帳簿に記すためには様々なルールがあり、簿記ではそのルールを勉強します。
簿記の資格には、日商簿記検定や全経簿記検定などいくつかの種類があります。一般的に、簿記の資格といえば、日商簿記検定を指すことが多いです。日商簿記検定には、いくつかのランクがありますが、就職に有利になるのは日商簿記検定2級からです。
簿記の知識がない人は、まず日商簿記検定3級から勉強し、日商簿記検定2級に進みます。日商簿記検定1級は極めて高度な会計知識が必要なため、難関な資格となっています。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業に起きている経営課題に対し、診断・助言を行える国家資格です。中小企業診断士の資格を生かして独立することはもちろん、企業に所属して活躍することもできます。
中小企業診断士になるためには、中小企業診断士第1次試験に合格し、中小企業診断士第2次試験の合格と実務など(一定の養成課程を経ることも可)をこなす必要があります。
税理士
税理士とは、税の専門家である国家資格です。税務の代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士しかできない独占業務です。そのため、税理士には一定数の仕事が確保されています。税理士の資格があれば、独立したり、企業に所属したりして活躍できます。
税理士になるためには、税理士試験で5科目の合格が必要となります。科目は1度合格すると、期限などがないため、数年かけて5科目合格を目指すのが一般的です。
公認会計士
公認会計士とは、企業が公表する財務情報を第三者の立場から正当性があるかどうか監査・審査する国家資格です。財務情報の監査は、公認会計士の独占業務です。
特に大企業からの依頼が多く、公認会計士になれば、一定の収入が期待できます。公認会計士は独立・開業する人もいれば、企業に所属して活躍している人もいます。
公認会計士になるには、公認会計士試験に合格する必要があります。公認会計士試験には短答式試験と論文式試験があり、どちらも合格する必要があります。短答式試験に合格すると、論文式試験に進めます。また、試験合格後に一定の実務経験も必要となります。
どんな資格でも役に立つのか?
ご紹介してきた通り、資格には様々なものがあります。では、経営者はどの資格を得ても役立つのかというと、そうではありません。
業種や仕事内容によって、必要な資格は異なります。例えば、簿記や会計、財務などの資格であれば、どんな業種であっても必要なため、取得しておけば役立ちます。
しかし、なかには、仕事に関連が低く、勉強しても効果が薄い資格もあります。資格の取得を考えている場合は、まず何の資格を勉強すればよいのか適切に判断する必要があるので、注意してください。
有意義な資格があれば会社経営も安定する!
経営者が資格を持つことで、経営状況や取引先の判断などに役立ちます。そのため、会社経営も安定し、業績の向上や会社の成長につながるでしょう。
しかし、資格の中には仕事との関連性が低く、勉強しても効果が薄いものもあります。資格の取得を考えている場合は、会社にとって有意義な資格を見極めることが重要です。
よくある質問
小規模店舗を経営するときにも資格は役立ちますか?
はい。小規模店舗を経営するときにも資格は役立ちます。ただし、仕事に関連の薄い資格については、あまり役立たない可能性もあります。まずは、小規模店舗の経営に効果の高い資格を見極めることが重要です。詳しくはこちらをご覧ください。
起業したい大学生は、たくさん資格を取っておいたほうがよいですか?
取得すべき資格の数は、資格の種類や起業したい仕事によって異なります。どの業種でも役立つ資格もあれば、その業種にのみ役立つ資格もあります。資格の数よりも、中身を重視して選んだほうがよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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