• 更新日 : 2023年10月25日

靴修理屋の独立・開業は難しい?開業資金や手続き、成功のコツを解説

靴修理屋の独立・開業は難しい?開業資金や手続き、成功のコツを解説

靴修理の仕事は安定して需要があり、景気にも左右されにくく、独立開業のメリットがあります。小規模のスペースで開業でき、粗利も高めです。

本記事では、靴修理の開業方法や必要な知識・技術、開業を成功させるポイントを解説します。開業に関する不安や疑問を解消するきっかけになりますので、ぜひチェックしてみてください。

靴修理での開業は難しい?

靴は人が毎日使用する身近で必須のアイテムであり、常に修理の必要性があります。そのため、靴修理サービスは安定した需要があり、景気にも左右されにくいのが特徴です。

安価な靴を使い捨てるという行動が増えている一方で、良い靴を修理しながら長く使うという習慣も根づいています。環境問題に対する意識の高まりから、新しい靴を購入するより修理を選ぶ方も少なくありません。靴修理サービスのマーケットは、今後も安定して推移すると予想され、独立・開業するメリットは高いといえるでしょう。

靴修理での独立・開業は儲かる?年収の目安

靴修理で独立・開業する場合、想定の月間売上は以下の計算式で算出できます。

(単価)×(1日の来店人数)×(営業日数)=(月売上)

例えば、 単価1,000円で1日の来店数を20人と想定する場合、30日間の売上は60万円です。このうち売上原価(修理に必要な材料)が売上の5%〜20%程度と考えると、「(売上)−(売上原価)」により求めた売上総利益は48万〜57万円です。

売上には変動があり、単価の変動は大きくありませんが、来店数は変動しやすい要素です。出店を予定する場所の通行量を調べ、より多くの方が通行する時間帯に営業することで多くの来客を見込めます。

靴修理で働く正社員の平均年収は約356万円程度で、月収にすると30万円程度です。独立・開業して立地条件などに恵まれれば、それよりも高い年収が期待できるでしょう。

靴修理の開業に必要な知識や技術

靴修理の開業に特別な資格は必要ありませんが、サービスを提供する上で靴を修理する知識や技術は最低限必要です。

ここでは、靴修理に必要な知識や技術、役に立つ資格を紹介します。

必要な知識や技術

靴修理で独立・開業するには、次のような知識・技術の習得が必要です。

  • 靴の細かい設計
  • 靴の解体方法
  • さまざまな材質に関する知識
  • 修理に使用する道具の使い方
  • 縫製技術
  • 接着技術

これらの知識や技術を身につけておけば、顧客の依頼に応じて質の高いサービスを提供できます。

靴修理の一つひとつの工程を理解し、丁寧に施工できる技術も求められます。靴の構造だけでなく、靴の素材や靴ひもなどの知識も必要です。

また、靴を長く保つためのお手入れ方法などを、顧客にわかりやすくアドバイスできるコミュニケーション力も求められます。

役に立つ資格

靴修理で開業する際に役立つ資格もあります。以下の資格を取得しておくと、靴修理の高い技術を持つこと証明できます。他社と差別化し、信頼性も高まるでしょう。

  • 靴修理技師
  • レザーソムリエ

靴修理技師は靴を修理する専門家で、1級から3級まであり、靴修理に関する幅広い知識が問われます。レザーソムリエは初級と中級があり、皮革や革製品について一定の知識を持つ人を育成するための資格です。

靴の修理屋として独立・開業するメリット・デメリット

靴修理は少ないスペースと器具で開業でき、在庫のリスクが低いなどのメリットがあります。一方、専門知識と高い技術が求められる点は、ハードルが高いといえるでしょう。

ここでは、靴修理として独立・開業するメリット・デメリットを解説します。

小規模のスペースと最低限の器具で開業できる

靴修理の店舗は場所をとらず、3〜5坪程度のスペースで開業できる点がメリットです。最低限の修理器具を揃えれば手軽に開業でき、手間がかかりません。開業資金や開業の固定費を抑えられるのも大きなメリットといえるでしょう。1人または少人数で営業できるため、人件費も抑えられます。

靴修理は店舗を構えず、車に修理道具を積んで移動型のサービスを展開することも可能です。さらに初期費用を抑えられ、顧客の要望に応じたサービスを提供できるため高い需要も期待できます。

在庫のリスクが低い

靴修理で提供するのは基本的に修理サービスのため、商品を大量に仕入れて在庫を抱える必要がありません。仕入れは靴の修理に必要な道具や部品、材料などで、場所を取らないものばかりです。

長期間保管しても劣化しにくく、材料の性質上、不良在庫や不足などの事態が発生する心配もほぼありません。

小売業など、商品を大量に仕入れて保管場所を必要とする業種と比較すると、大きなメリットといえるでしょう。

粗利が高い

靴修理は粗利が高いのもメリットです。粗利とは、商品を販売して得られる利益のことで、売上高から仕入れにかかった原価を差し引いて求めます。粗利率は業種や規模により異なり、 一般的な目安は飲食業で50%前後、小売業や製造業で20〜30%前後とされています。

靴修理に必要な材料のコストは低めであるため、修理サービスの価格に対して粗利が高く、一般的な粗利率は70〜80%と高い数字です。粗利率が高いのは、靴修理の価値が商品に依存せず、専門技術の提供にあることが大きな理由といえます。

専門知識と高い技術が必要

靴修理にはデメリットもあります。靴修理の価値は専門技術に依存しているため、専門知識と高い技術が欠かせません。未経験で始める場合、開業までには時間がかかります。靴修理の職人として一定期間実務に携わり、経験を積むことが必要になるでしょう。

靴修理は技術だけでなく、素材の知識や靴を長持ちさせるためのメンテナンス方法など、幅広い知識が求められます。独立・開業するためには、積極的に学ぶ姿勢も必要になるでしょう。

靴修理の開業方法

靴修理を開業するには、独立型とフランチャイズ型という2つの方法があります。

詳しくみていきましょう。

独立型

個人事業主や法人として独立し、靴修理屋を開業する方法です。技術の習得や設備・資材の準備、立地の選定といった開業準備はすべて自分で行います。経営の自由度は高いものの、事業運営も自分で行う必要があり、経営や経理の知識も必要です。

独立型で開業するには、靴専門店で実務経験を積むか、靴修理の専門学校に通うといったプロセスが必要になるでしょう。

フランチャイズ型

フランチャイズに加盟して独立・開業する方法です。フランチャイズとは、本部となる親企業に加盟店がロイヤリティ(対価)を支払い、経営ノウハウやブランド名、看板を使う権利を得て事業を行うビジネスシステムです。知名度やノウハウを使って靴修理を開業できるため、初めて事業を立ち上げる際のさまざまなリスクを抑えられます。

一方で、加盟金や毎月のロイヤリティの支払いが発生する点はデメリットです。また、マニュアル通りに運営しなければならないため、経営の自由度が低いという問題もあります。

靴修理の開業に必要な手続きや費用

靴修理をフランチャイズ型で開業する場合、開業に必要な手続きや加盟金・ロイヤリティなどの費用はフランチャイズの企業ごとに異なります。

独立型で開業する場合は、個人事業主と法人によって手続き・費用が異なるため、事前によく把握しておきましょう。

ここでは、独立型の開業で必要な手続きや費用を解説します。

個人事業主の場合

個人事業主で開業する場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を管轄の税務署に提出します。靴修理に限らず、すべての個人事業主が新たに事業を開始したときに必要な手続きです。届出は、開業後1ヶ月以内に行う必要があります。

個人事業主が開業届を提出する大きなメリットは、確定申告青色申告を利用できることです。青色申告は最大65万円の特別控除ができるなど節税効果が高いため、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出するのが一般的です。青色申告での確定申告を行いたい場合は、必ず期限内に開業届と青色申告承認申請書を提出するようにしましょう。

法人の場合

法人を設立する場合、次のような一連の設立手続きが必要です。

  • 会社概要を決める
  • 会社印を作成する
  • 定款を作成する
  • 定款の認証を受ける
  • 資本金を払い込む
  • 登記を申請する

法人設立では、まず社名や所在地、資本金など会社の基本事項を決定します。次に法人用の実印を作成し、会社を運営するうえでのルールをまとめた定款を作成して認証を受けます。

資本金の払い込みと登記申請を終えたら、法人の設立が完了です。登記など複雑な手続きがあるため、難しい場合は司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

靴修理の開業に活用できる助成金・補助金

靴修理の開業では、助成金・補助金を受給することもできます。補助金は経済産業省が主催するものが多く、事業に関するものがメインです。助成金は雇用に関する内容が多く、主に厚生労働省が主催しています。

どちらも原則として後払いですが、受給できれば開業の助けになるでしょう。

ここでは、靴修理に利用できる助成金・補助金を紹介します。

事業に関する補助金

靴修理の開業では、主に以下の補助金を受給できます。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金

小規模事業者持続化補助金は、販路の拡大や業務効率化の取り組みに対して支払われる補助金です。広告費用や外注費など、幅広い分野で利用できます。

IT導入補助金は、ITツールの導入などに対して申請できる補助金です。ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上に役立つ設備投資を支援する補助金であり、靴修理の店舗でも利用できます。

雇用に関する助成金

靴修理の開業で利用できる主な助成金は、以下のとおりです。

  • 雇用調整助成金
  • キャリアアップ補助金
  • 両立支援等助成金

雇用調整助成金は、事業活動を縮小するときに従業員の雇用維持を図るため、休業手当などに対して給付される助成金です。キャリアアップ助成金は、非正規雇用を正規雇用にする、もしくは有期契約を無期契約に変更するなどの便宜を図った事業主に支給されます。

両立支援等助成金は、従業員の仕事・家庭を両立させるための支援を行う事業主に支給する助成金です。主に、従業員の育児・介護休業をサポートする取り組みが対象です。

靴修理の開業・経営の成功ポイント

靴修理の開業に成功するには、立地にこだわるなどいくつかのポイントがあります。ここでは、靴修理の開業を成功させる6つのポイントを解説します。

立地・出店場所にこだわる

靴修理は、店舗を構える立地・出店場所が重要です。ターゲットとする客層やサービス内容を定め、適した立地・出店場所を決めましょう。

一般的に、靴修理に向いているのは次のような条件の場所です。

  • 百貨店・スーパー・ショッピングセンターなどが集まる場所
  • 地下街や商店街、繁華街の路面
  • 地下鉄駅近くや駅構内など

これらに該当する場所で、ターゲット層が多いエリアを絞り込むとよいでしょう。靴修理は靴の修理だけでなく革製品の手入れや合鍵の作成など扱う業務の幅が広く、場所に応じてターゲットの幅を広げることもできます。

顧客のニーズを理解する

靴修理の開業を成功させるためには、顧客のニーズを理解することが大切です。顧客の求めるサービスを提供することで顧客満足度を高め、リピートをしてもらえます。

顧客のニーズを把握する方法には、市場調査やアンケートがあげられます。靴修理についてどのようなサービスを求めているのか、満足できる点や改善して欲しいことなどを調査し、把握することで、より良いサービスにつなげることができるでしょう。

専門的な修理の技術を身につける

靴修理では専門的な技術の習得が欠かせません。高いスキルがあれば顧客は満足し、信頼を獲得して次の利用につなげられます。満足した顧客は周囲にも勧めてくれる可能性があり、新規顧客の獲得にもなるでしょう。

専門技術は日々研鑽し、スキルアップしていくことも大切です。調査で明らかになった顧客のニーズに合わせ、サービスの質を上げることが他社との差別化にもつながります。

広範囲なサービスを提供する

靴の修理だけでなくサービスを増やせば、顧客を増やせます。靴修理以外で提供できるサービスに、次のようなものがあげられます。

  • 靴磨き
  • 靴の汚れ・色のケア
  • バッグなど革製品の修理
  • 時計の修理・電池交換
  • 傘の修理
  • 合鍵作成
  • 名刺作成
  • 印鑑作成

サービスの幅を広げれば、顧客層も広がり、新規顧客を獲得できます。靴修理のついでに他の依頼を受けることもできるでしょう。

SNSなどで効果的に集客を行う

積極的な集客を行うことも大切です。SNSの利用や地域への広告など、適したマーケティング方法を考えましょう。

特に、SNSはコストをかけず、広い範囲にアピールできます。独立・開業する前からSNSのアカウントを作り、認知度アップを図りましょう。他社と差別化できる要素があれば、積極的にアピールしてください。地域の顧客へのアピールには、チラシやDMを使った広告が効果的です。

経理・経営の知識をつける

靴修理で独立・開業したら、経営者として経理や経営の知識も必要です。事業を運営するためには、売上を上げて利益を得なければなりません。そのためには、修理技術だけでなくお金の知識が求められます。お金の流れを理解し、適切に管理しながら黒字経営を続けるために資金計画を立てることが必要です。

独立する前に、財務管理や経営管理に関する知識を身につけておくとよいでしょう。

靴修理は専門知識・技術をしっかり身につけよう

靴修理は景気に左右されない仕事で、常に一定の需要があります。専門知識や技術をしっかり身につければ、独立・開業して高い売上を上げることが可能です。

靴修理は小規模のスペースと最低限の修理器具で開業でき、粗利が高く在庫のリスクも低いというメリットがあります。

開業方法には独立型とフランチャイズ型があるため、どちらが自分に向いているかよく検討して選びましょう。


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