• 作成日 : 2024年12月9日

親会社とは?種類や子会社への責任、会計処理のポイントを解説

企業関連の情報では「親会社」「子会社」という用語をよく目にします。しかし、なんとなく理解していても、親会社、子会社の定義を知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、親会社にスポットを当て、定義や種類を紹介します。子会社との関係や負うべき責任、会計処理のポイントも合わせて押さえましょう。

親会社とは?

親会社とは、他の企業に対し、資金提供などを行い、経営の管理・支配を行っている企業のことです。なお、管理・支配されている企業は「子会社」と呼ばれます。

また、親会社となるには、子会社の株式の過半数を保有しなければなりません。100%保有している場合、親会社は「完全親会社」となります。

親会社の種類

親会社の種類について確認しましょう。

持株会社と親会社は同じ意味?

持株会社」という言葉を聞いたことはないでしょうか。持株会社とは、他社を支配する目的で株式を保有することです。親会社と同じ意味になります。

純粋持株会社

純粋持株会社とは、事業を行わず、子会社の株式所有だけを目的とした持株会社です。子会社の配当金が純粋持株会社の収入になります。

事業持株会社

事業持株会社とは、子会社の株式所有と併せて、自らも事業を営む持株会社のことです。収入源は子会社の配当および自社の売上となっています。

中間持株会社

中間持株会社とは、親会社の下で同じような事業を行う企業をまとめる持株会社です。以下の持株会社は、中間持株会社にあたります。

  • 花王グループカスタマーマーケティング株式会社:花王グループの傘下。販売を行う複数の子会社を持つ
  • ソニーフィナンシャルホールディングス:ソニー株式会社の傘下で金融系企業(ソニー生命など)を統括する

金融持株会社

金融持株会社とは、銀行や保険会社、証券会社等の金融機関の株式を所有する持株会社のことです。役割としては、自ら事業を行わない「純粋持株会社」と似ていますが、子会社が金融機関に特化している点から、金融持株会社の名がついています。

例えば、ゆうちょ銀行やかんぽ生命を持つ「日本郵政」、みずほ銀行やみずほ信託銀行を持つ「みずほフィナンシャルグループ」は金融持株会社です。

親会社と子会社の関係

親会社と子会社の関係について確認しましょう。

親会社と子会社の定義とは?

「親会社」そして「子会社」は会社法で定義されています。

親会社

株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。(会社法第2条4)

子会社

会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。(会社法第2条3)

なお「法務省令で定めるもの」とは、議決権の過半数の保有などのことです。

子会社にメリットはあるか?

親会社には「子会社からの配当金が入る」「子会社を使って事業拡大できる」などのメリットがあります。子会社側の主なメリットも把握しておきましょう。

  • 資金不足に陥る心配が少ない
  • 親会社のブランド力が使える
  • 福利厚生が充実する
  • グループの流通システムが使えるとコスト削減ができる
  • 親会社の販路等が利用できる場合がある

子会社となることで、コスト削減やブランド力強化ができます。

親会社の役割や責任

親会社になることにはメリットがありますが、責任も生じますので押さえておきましょう。

グループ全体の経営戦略の策定

親会社にはグループ全体の経営戦略を策定する責任があります。子会社の経営方針を決定するのも親会社です。

グループ全体の資金の調達と資本の配分

親会社は子会社から配当金等の形で資金を吸い上げます。この資金が親会社の収入となりますが、集めた資金を子会社へ再度配分するのも親会社の役割です。力を入れたい事業に集中投資する場合、それを見極める責任もあります。

子会社の経営活動の支援と統括

資本だけでなく、人的支援、営業支援を行うのも親会社の役割です。また、その結果の統括を行う必要もあります。

グループ全体の人事戦略の策定

グループ全体の人事戦略の策定も行います。親会社からの子会社への出向、グループ再編等で適材適所に人材配置することも親会社の役割です。

グループ全体のシナジーを最大化

親会社だけ、もしくは特定の子会社だけの利益を考えるのではなく、グループ企業全体が協力し、良い相乗効果を生み出す手助けをするのも親会社の責任です。

グループ全体のリスク管理

リスク管理も重要です。例えば、子会社で不祥事が発生した場合、グループ企業全体に大きなダメージが生じます。また、経営不振に陥る子会社が発生しないよう、資金面、人材面から支えることも必要です。

業績や会計の管理

グループの業績や会計管理を行うという役割もあります。例えば、グループが連結決算となった場合、会計処理方法を統一する必要があります。さらに、子会社が作成する財務諸表の収集を行わなければなりません。

親会社になるメリット

親会社になるメリットは、以下の通りです。

  • 競争力の向上
  • 事業のリスク分散
  • ブランド力の向上
  • 節税対策

競争力の向上

企業のグループ化で事業の拡大が図れます。子会社の人材や販路を活用できるため、競争力の向上も期待できるでしょう。

事業のリスク分散

新たな事業に挑戦したい場合、親会社のみで行うと、失敗等の大きなリスクがあります。問題が発生した場合の風評被害も心配です。しかし、子会社で新規事業を行うことで、失敗しても被害が親会社まで届かないというメリットがあります。リスク分散のためにも子会社を持ち、グループ化しておいた方がよいでしょう。

ブランド力の向上

複数の子会社を持ち、それぞれの業績を伸ばしていくことでグループのブランド力を高められます。

節税対策

子会社からの配当金を受け取っても源泉徴収の対象外です(配当金の限度額はあります)。さらに益金不算入の対象です。また、子会社に親会社の事業を移すことで、税負担が軽減できる場合もあります。

親会社になるデメリット

親会社になることには、以下のデメリットもあります。

  • 法人の管理コストの増加
  • コンプライアンスの維持
  • 子会社の赤字補填の必要性
  • 連結会計の複雑さ

法人の管理コストの増加

子会社を設立する場合、金銭面だけでなく、手続きに関わる労力や時間もかかります。さらに、設立後は管理コストも発生します。子会社を設立してもすぐに利益が出ないことも考えられるため、コスト増に耐えられる親会社の体力も必要です。

コンプライアンスの維持

グループとして複数の企業を管理する場合、コンプライアンス維持が難しくなる可能性もあります。子会社の不祥事で親会社の名前が出るケースもありますので、注意が必要です。

また、異なる企業風土の会社がグループに入ることも考えられます。グループの文化や仕事の仕方を知ってもらう努力も必要です。

子会社の赤字補填の必要性

親会社はグループ全体の利益を考える必要があります。もし、子会社で赤字が出た場合、連結決算に悪い影響があるため、赤字補填を行います。万が一、赤字が続き、改善が難しい場合、子会社の清算や売却も検討しなければなりません。

連結会計の複雑さ

グループ会社で連結決算を行う場合、親会社と子会社で会計方針を統一する必要があります。また、上場企業の場合、連結決算後、45日以内に情報開示を行います。スケジュールに間に合うよう、子会社の会計処理の進捗チェックも行わなければなりません。連結会計が複雑になり、会計業務に関わる従業員の負担が増す恐れがあります。

親会社の会計処理のポイント

親会社の会計処理で注意したい点を把握しましょう。

親子会社間の会計処理は統一させる

繰り返しになりますが、連結決算する親会社と子会社の会計処理は統一させましょう。連結決算を適用しない場合も、原則として、統一します。

子会社と統一させなくてもよい会計処理についても確認しておこう

親会社と子会社の会計処理は原則として統一しますが、統一しない場合もあるため、紹介します。

  • 子会社が上場企業で独自の会計方針があるなど、合理的な理由がある場合、会社と監査人で協議を行って統一しないケース
  • 資産の評価方法及び固定資産の減価償却の方法は事務処理の経済性を考慮して統一しないケース

親会社とは何かを理解したうえで、必要な会計処理を確認しよう

親会社として子会社を持つことで販路や事業の拡大が期待できます。また、ブランド力の向上も見込めるというメリットもあります。ただし、親会社になると、リスク管理コスト増、子会社に赤字が出た場合の補填が必要になる等のデメリットもあります。

また、親会社と子会社の会計処理は原則統一させることになります。子会社の会計スケジュールの把握と処理の進捗把握といった業務も発生するため、これらについても理解しましょう。


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