- 更新日 : 2024年6月28日
合同会社の設立を税理士に依頼する費用・顧問税理士は必要?
合同会社は、設立や経営に要する費用が株式会社より少なく済むことが多いため、小規模の企業設立時に検討されることが多い傾向にあります。
では合同会社設立を選択した場合、その設立を税理士に依頼する流れはどのようになるのでしょうか。また、設立後には税理士に顧問を依頼した方がよいでしょうか。依頼時の費用相場なども併せて紹介します。
目次
税理士とは?
税理士は「税金の専門家」との認識が一般的ですが、実際にはもっとさまざまな業務を行っています。
まずは税理士が行う主な業務と、その中に会社設立に関するものがあるかを説明します。
税理士の役割と業務について
税理士は国家資格であり、原則として年に一度行われる税理士試験に合格することで資格を得られます。
税理士法は、第2条で税理士の業務につき次のように定義しています。
- 申告や納税などの税務を代理・代行する「税務代理」
- 申告書など、税務関係の書類を作成する「税務書類の作成」
- 税務に関する「相談業務」
これら三つの業務は「納税義務者の信頼にこたえ……納税義務の適正な実現を図る」という税理士の使命(税理士法第1条)の根幹となるものといえます。
しかし、税理士が上記以外の業務を行えないということではありません。上記の三つの業務は、むしろ税理士の資格を持たない者は行ってはならない税理士の「独占業務」を述べているのです。
では、税に関する専門家である税理士が、他にどのような業務を実際に行っているかを挙げてみます。
などがその一例です。
「企業」「経営」に関する業務が意外と多いことが分かります。
顧問税理士を置いている会社では、税務申告だけでなく会計業務なども依頼することが多くなりますが、これはすなわち税理士が顧問先の経理に関する情報を総合的に判断することができるということです。
会社の経営者は会社の業務に関しては専門知識を持っていても、「お金」関連は詳しくなく、税理士頼りかもしれません。会社の現状や将来への投資、新規業務への挑戦に必要な資金調達など、会社経営に詳しい税理士であれば的確なアドバイスを行うことが可能となるのです。
このように、経営者にとって税理士は頼れるパートナーとなる存在です。ただし税理士業務は上記のように多岐にわたるため、あくまでも会社経営に関する業務を専門とする税理士に依頼することが大切です。
税理士に合同会社の設立手続きを委託できる?
会社の設立手続きもまた税理士業務の一つとなるため、合同会社の設立を依頼することは可能です。
会社設立手続は多岐にわたります。後述のように設立の登記申請は司法書士の業務であり、税理士にはできません。税理士は税務が専門業務であるため、会社設立に関する税務関係の届出や税務相談などが受託業務になります。ただし、税理士が会社設立の相談窓口となることもあり、その場合、登記関係は司法書士、労働社会保険関係は社会保険労務士など、外部に委託するのが一般的です。
税理士に合同会社の手続きを委託するメリット
会社を設立する際、会社経営を専門とする税理士に相談および手続き依頼をすることは、以下にあげるようなさまざまなメリットがあります。
- 会社形態についてアドバイスをもらえる
年間の合同会社の設立数は、株式会社の3分の1ほどでそれなりに多いうえ、近年は会社数全体に占める割合も増えてきつつあります。しかし、株式会社でなく合同会社にすることを選択するのであれば、経営面、経理・資金面におけるメリット・デメリットを知っておくことが必要です。経験豊富な税理士であれば、双方のメリット・デメリットを業務の経験で得た知識も併せてアドバイスができるため、納得したうえで会社形態を選択することができます。
- 資金調達の支援をしてもらえる
会社を設立し実際に業務を行うための資金調達は重要課題ですが、これらの支援を行ってくれるのもまた税理士の役割です。金融機関に融資を頼むときに欠かせない「事業計画書」ですが、融資元が納得できるような内容の計画書作成も、知識豊富な税理士であれば可能です。
また、公的な助成金や補助金の情報やアドバイスを得ることもできます。
- 設立後の会社経営についての助言がもらえる
会社は設立して終わりでなく、経営を安定させ、事業継続・拡大していくことが求められます。税理士なら設立後の経営について、会計処理や節税方法などのアドバイスを設立手続き時から受けることができるため、気持ちに余裕を持って業務を開始できるでしょう。
なお、小規模であることが多い合同会社設立にあたっては、特に中小企業支援事業に詳しい国の認定を受けた「認定支援機関」である税理士に依頼することをお勧めします。
司法書士との違い
合同会社は「法人」ですから、設立登記が必要です。登記申請は司法書士の独占業務ですから、税理士が代行することはできません。逆にいえば登記さえ済ませば合同会社の設立は完了するため、司法書士へ設立手続きを依頼するケースも多いでしょう。
しかし、税金関係の届け出は税理士しかできません。もちろん会社設立に詳しい司法書士であれば、登記以外のアドバイスや情報提供もある程度はしてくれるかもしれませんが、司法書士はお金・税務の専門家ではないことを理解しておきましょう。
行政書士との違い
会社設立時に行政書士が業務として行うのは、設立会社が許認可を必要とする業種であった場合の、当該申請および届け出の代行です。
また、設立登記申請に必要な定款作成および公証役場での定款認証も行えます。
ただ、定款作成、認証は司法書士も行えるうえ、電子定款認証に対応している司法書士であれば印紙代が節約できるため、許認可不要の業種であれば、あえて行政書士に会社設立を依頼する必要はなさそうです。
もっとも、会社設立を専門とする行政書士であれば、助成金や補助金に詳しいうえ、司法書士や税理士と提携し、サービスをワンストップで行えるといったメリットはあるでしょう。
社会保険労務士との違い
会社設立時の社会保険労務士の業務は、年金事務所への社会保険関連届出や、労働基準監督署への労務関係届出などです。
合同会社は「法人の事業所」にあたり、社会保険への加入は義務であるため手続きが必須ですが、従業員がいなければ労働基準監督署の届け出は不要です。
したがって、会社設立手続きを直接依頼するということはあまりないでしょうが、まとまった人数の従業員を雇用する予定であれば、人材に関わる手続きについては、社会保険労務士に依頼すると安心です。
税理士に合同会社設立を依頼する際の費用相場
それぞれの士業が合同会社設立に果たす役割は以上のようになりますが、互いに独占業務があるため、どの専門家に依頼しても、独占業務に関しては原則他の士業と提携して手続きを行うことになります(一人で複数の資格を持っている専門家もいます)。
その中で税理士に依頼することを選択するのは、やはり資金面や経理面でのアドバイス、支援を求めてといった場合となるでしょう。
合同会社設立を税理士に依頼したときの費用相場ですが、3つのパターンに分かれます。
① 設立手続きのみを依頼する
会社設立手続きで必要な税理士の業務は、税務署への税金関係の届け出など税務関係の書類作成、申請代行です。この業務のみを依頼した場合の税理士費用は2万円~5万円ほどという事務所が多いようです。
② 設立に関し、資金調達や経営的なアドバイスも併せて依頼する
手続き費用と合わせ、いわゆるコンサルタント料金が加算されます。何をどの程度アドバイスしてもらうかで費用は上下するため一概には言えませんが、資金調達だと、着手金+成功報酬(融資を受けた額の1~2%)が一般的です。
ただ、コンサルティングは長い目で経営に関わってもらうことが大切なため、単独依頼でなく、③のパターンになることが多いと思われます。
③ 設立後の顧問契約と併せて依頼する
会社設立後に顧問税理士として契約することを条件に設立手続きを依頼するパターンです。
事務所によっては顧問契約を条件に設立手続きを無料で行うところもありますし、そこまでいかなくとも割引を行うというところが多いようです。
なお、顧問契約費用については後ほど詳しく述べます。
税理士に合同会社設立を依頼した際の流れ
合同会社を設立する方法は、株式会社の場合とそれほど違いはありません。自身の会社を合同会社とすること、そしてどのような会社にするかの概要を決めたら記載すべき内容を盛り込んだ定款作成、出資金の払い込み、そして法人登記を申請するというのが大まかな流れです。登記が完了すれば速やかに税務署や管轄自治体などに必要な届けを提出します。
以上の工程を税理士に依頼した場合の流れはどうなるでしょうか。順を追って見ていきましょう。
何をどこまで依頼するかを確認する
先述したように、合同会社設立に必要な手続きは各士業にそれぞれ独占業務があるため、全てを税理士のみで行えるわけではありません。そこで、まず依頼予定の税理士に、他士業との提携、兼業などで全ての必要な手続きをワンストップで行えるかを確認します。
また、設立時の助言、税務および会計に関する相談などの要不要、設立後の顧問を依頼するかについても相談しつつ検討し、最終的な費用の見積もりを出してもらいます。
必要書類の準備
税理士に全ての手続きを依頼した場合、必要書類はほぼ税理士サイドが準備してくれ、依頼者は作成された定款などの書類の確認や署名捺(なつ)印を必要に応じて行う程度です。
会社形態や経営、会計などのアドバイスを受けることで、会社のビジョンがより明確になりますが、方向性が多少変わるということもあるかもしれません。設立会社がよりよい形になるよう、経営者自身も情報取得などできることに取り組みましょう。
なお、法人印(実印)は登記を司法書士がオンラインで行う場合、設立時に必ず必要というわけではありませんが、設立後の業務遂行などに欠かせないものですから、銀行印、角印と併せてこの時期に経営者側で作成しておくことをお勧めします。
手続き完了
設立登記、各所への届け出が全て終われば合同会社設立の手続き完了となり、税理士に所定の費用を支払います。顧問を依頼していれば、税理士との付き合いは今後も続きます。
なお、法人としての取引に使う口座の開設は経営者自らで行いましょう。
合同会社に顧問税理士は必要?
合同会社に顧問税理士が必要かどうかは、会社の事情にもよるでしょう。少なくとも合同会社には税理士を置かなければならないという法律はありません。
しかし、特に設立に関し経理上の助言をもらったり、資金調達をお願いしたりと、税理士が心強い存在である、経営者自身で会計管理をすることが困難であるなどで、設立後の顧問を依頼する人は多いのではないでしょうか。
顧問税理士がいれば、会計記帳や複雑な法人税などの申告、インボイスの対応、その他税務関係の業務一切を担ってもらえ、経営者は自社の業務に集中できます。ちょっとした疑問や相談も気軽にできるので安心です。さらに、経営を続けていくうちに登記変更や許認可の関係で他の士業が必要になった場合でも、会社経営を専門とする顧問税理士であればスムーズに連携できるでしょう。
合同会社に顧問税理士をつける場合の費用相場
合同会社が税理士に顧問を依頼した場合の費用は、会社の規模や依頼する業務内容によって変わります。
顧問料の一般的な相場としては、
・年間売り上げが~1,000万円…月10,000円~30,000円程度
・年間売り上げが1,000万円~3,000万円…月20,000円~50,000円程度
となっています。
これに加えて記帳の代行も依頼するのであれば、月5,000円~が加算されます。
年間の決算業務も別途費用が10万円~12万円程度かかるため、トータルの年間費用は
単純計算で28万円~80万円ほどとそれなりに幅が出てきます。
合同会社設立の依頼は会社経営に詳しい税理士に!
合同会社の設立手続きは、株式会社に比べると手間や費用がかからないものの、やはり全てを一人で行うのは大変です。設立時に会社経営に詳しい税理士の助けを受けることで、設立後の経営について指針を得られたり、資金の調達が容易にできたりする可能性があるので、まずは相談だけでも試みてみてはいかがでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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