• 作成日 : 2024年6月12日

産業廃棄物運搬業の事業計画書の書き方とは?テンプレートを基に解説

産業廃棄物収集運搬業の許可は、主事業としてはもちろん、例えば建設業を行う際に自己の事業活動で発生した不要物を処理するときなどにも必要になることがあります。この記事では産業廃棄物収集運搬業の特殊性と共に、事業計画書が必要な場面やその書き方を、テンプレートと併せて解説します。

産業廃棄物運搬業の概要

産業廃棄物とは、「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となった物」たる廃棄物のうち、事業活動により生じ、かつ廃棄物処理法および政令で規定された20種類のものの総称です。具体例として廃油、プラスチックくず、がれき、木くずなどが挙げられます。事業活動で発生するこれらの廃棄物は、量が多く、また環境汚染の恐れがあるため、許可された業者しか取り扱うことができません。

産業廃棄物処理関連の許可には「産業廃棄物収集運搬業」と「産業廃棄物処分業」の2種類があり、産業廃棄物収集運搬業はさらに「積替え・保管を含まないものと含むもの」に分かれます。この記事で取り上げる「産業廃棄物運搬業(以下、単に「運搬業」とします)は、は「産業廃棄物収集運搬業許可(積替え又は保管なし)」といい、最も一般的かつ許可要件がそこまで厳しくないものとなります。

産業廃棄物運搬業の事業計画書とは?

産業廃棄物運搬業の許可取得における事業計画書の目的

運搬業を事業として行うためには、まず事務所の所在地を管轄する自治体の許可を取得しなければなりません。その許可申請の際提出する書類の一つとして「事業計画書」が必要となります。

事業計画書は原則として、各自治体で定められた様式に従い、通常は「事業の全体計画」「運搬施設(自動車など)の概要」「収集運搬業務の具体的な計画」「環境保全措置の概要」「運搬車両の写真」を提出します(石綿など特に運搬に注意が必要な廃棄物を扱う場合はさらに追加書類が必要です)。これらは、「どのような」申請者が「どのような」廃棄物を「どれくらい」「どのように」「どこからどこまで」運搬するかを記載し、法に従い正しく収集運搬を行う事業者であることを自治体に示すことを目的としています。

また、実際に運搬業が始められることを証明するため、必要な資金の調達方法について記載した書類の提出が求められます。こちらも事業計画書に含まれるでしょう。

金融機関からの融資を受けるための事業計画書

運搬業を始める際、必要な資金を融資で賄いたいのであれば、金融機関などへも事業計画書を提出し、融資を申し込むことになります。

運搬業許可の申請には資金の調達方法を示すため資金調達方法を記載しなければなりません。したがって、まずは融資を受けるための事業計画書を準備することになりますが、内容に矛盾が生じないよう、二つの計画書を並行して作成してもよいでしょう。

もっとも、最初に述べたように、元々建設業を営んでいた中で出てきた産業廃棄物を自前で処理場に運搬するため、新たに運搬業許可を取得する事業者ならば、許可のために必要な設備は運搬車両1台くらいで済むかもしれません。ある程度の資金が確保できていれば、融資は不要、当然こちらの事業計画書の作成も不要となります。

産業廃棄物運搬業の事業計画書のひな形、テンプレート

参考として大阪府ホームページの該当ページを紹介しておきます。多少様式は変わるかもしれませんが、どの自治体でも求められる内容はほぼ同じです。
「事業計画」にあたる部分はキ~セとなります。

参考;大阪府ホームページ

金融機関に提出する事業計画書のテンプレートはこちらになります。

産業廃棄物運搬業の事業計画書の書き方とは?テンプレートを基に解説

産業廃棄物運搬業の事業計画書の書き方・記入例

運搬業許可申請時に提出する事業計画書は、管轄自治体の様式や記入例をご参考ください。ここでは融資を受ける際に必要な事業計画書の書き方について説明します。

創業の動機・目的

地域性や、運搬業者の需要が高いことなどを具体的に述べ、新たに運搬業を立ち上げる必要性をアピールします。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、法の目的を、廃棄物の適正な処理と「生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」としているので、創業の目的に環境に対する配慮を盛り込むのもよいでしょう。
既に行っている事業があれば、その利便性を図るためというのも立派な目的となります。

職歴・事業実績

これまでの職歴と、既存事業がある場合はその実績を、産業廃棄物に関連するか否かを問わず正直に記載します。
なお、許可申請時に提出する職歴には、無職の時期も加え、1日の空きもなく記載することが求められています。

取扱商品・サービス

法で規定される20種の産業廃棄物のうち、どの種類の廃棄物を、どれくらいの量運搬する予定かを記載します。石綿などを扱う場合は、運搬時に環境保全のため講ずる措置も記載しておきましょう。

取引先・取引関係

まずは、既存事業や、これまで就いていた仕事のコネクションなどで、確実に運搬の依頼が見込めることへのアピールが重要です。事業の安定性や継続性は融資を行う際の大きな判断材料になります。

従業員

事業の規模に即した従業員数を記載します。

借り入れの状況

他の金融機関などからの借入金があればすべて記載します。借入があっても、毎月返済が滞りなく行われていれば、必ずしもマイナス材料とはなりません。

必要な資金と調達方法

一から運搬業を立ち上げるのであれば、事務所や運搬車両の準備、人員の確保、運転資金など、相当な資金が必要になります。自己資金で賄える額、親族など金融機関以外で調達可能な額がある程度あることが望まれます。

事業の見通し(月平均)

融資を受ける際のもっとも重要な項目の一つです。根拠をしっかり示して記載しましょう。設立1年目と、その結果を見据えての2年目以降では見通しの内容も変わりますが、着実に予測しうる収支となるようにします。

産業廃棄物運搬業の事業計画書成功のポイント

融資は、継続性と将来性がある事業に対し行われます。事業計画書は、特に次の項目に注意して作成しましょう。

顧客企業との取引関係が安定しているか

運搬業を、全く顧客の当てもなく始めようとする事業者はいないでしょう。これまでの職歴や既存事業などで培った取引先があることが、事業の安定を導きます。
顧客は多いに越したことはないですが、大企業であれば1件でも十分かもしれませんし、いくら多くてもいずれもつい最近取引を開始したばかりの相手ばかりでは、必ずしも安定しているとは言えません。

新規取引先の開拓はどうか

前の項目と矛盾するようですが、いくら顧客が大企業であっても、そことの関係のみに安心していては、万一のときに共倒れになりますし、そもそも事業としての発展性は見込めません。取引先の開拓はもちろん、技術や知識、設備などのアップデートを怠らない姿勢が大切です。

運搬の仕組み化やコスト削減への取り組み

運搬業をして利益を上げるには、売り上げの増加だけでなく作業の効率化を図り、コストを削減することが欠かせません。費用を抑えることばかりを考えると従業員の負担が増えてしまうため、結果としてコスト削減につながるような仕組みを構築することが経営者としての腕の見せ所になります。専門家の意見を求めてもよいでしょう。

また、環境保護のために独自性のある取り組みがあれば、併せて記載します。さまざまな方向からのアピールが大切です。

客観的な売り上げ予測・価格設定をする

売り上げの予測、事業の見通しは希望的観測でなく地に足をつけた数値で行います。価格も地域の相場を確認し、妥当となるように設定します。新規の顧客を取り込むため極端に安価に設定することは、ビジネスを危険にさらす可能性がありますし、その地域の価格バランスを崩す危険がありますから避けましょう。

産業廃棄物運搬業の事業計画書作成は、その特殊性に注意

産業廃棄物運搬業を行うためには自治体の許可が必要です。事業計画書は許可を得るため、そして融資を受けるためにそれぞれ作成することになりますが、許可の要件として必要な資金が調達できることが前提となるため、まずは融資のための計画書を作成しましょう。


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