• 作成日 : 2024年10月4日

スタートアップの資金調達方法は?6つの段階や注意点を解説

スタートアップ企業の資金調達として、ベンチャーキャピタルによる出資や銀行からの融資など、さまざまな方法があります。資金調達を成功させるには、スタートアップ企業の成長段階を考慮することが重要です。この記事では、スタートアップ企業に向いた資金調達方法やスタートアップ企業の成長段階などについて解説していきます。

スタートアップ企業が資金調達をすべきケース

国内のスタートアップの資金調達額は上昇傾向にあったものの、2023年には減少に転じました。資金調達額が減少した要因として、いくつか考えられますが、スタートアップ企業への資金流入が世界的に減少したことも指摘されています。

スタートアップ企業が資金調達をするタイミングとしては、研究開発に力を入れたいタイミング、事業の急成長が期待されるタイミング、IPOのタイミングなどが考えられます。

スタートアップ企業の資金調達方法

スタートアップ企業はどのような方法で資金調達をしているのか、ここでは代表的な方法のメリット・デメリットを紹介します。

アセットファイナンス:自社の資産をもとに資金調達

アセットファイナンスとは、企業が保有する資産を売却して資金調達をする方法です。必要ない資産を売却する方法、不動産をリースバック(売却して賃借契約を結ぶ方法)することで資金調達する方法があります(※ファクタリングもアセットファイナンスに含まれますが、別途紹介するためここでは取り上げていません)。

アセットファイナンスの特徴は、負債を増やすことなく資金調達ができることです。ただし、売却できる資産がないと利用がスムーズにできないなどの問題もあります。

特徴メリット
  • 資産を利用して資金調達できる
  • 企業の信用度があまり影響しない
デメリット
  • 売却可能な資産がないと利用できない
  • 利息や手数料がかかる可能性がある
返済義務なし

ファクタリング:売掛金を現金化して資金調達

ファクタリングは、業者に企業の売上債権(売掛金など)を買い取ってもらうことです。資産の売却になるため、アセットファイナンスの一種といえます。

ファクタリングで重視されるのは、売却する売上債権を発行した取引先の信用度です。売却する企業の経営状況はあまり影響しないため、スタートアップで資金繰りに問題がある状況でも資金調達しやすいメリットがあります。また、償還請求権のないファクタリングについては、取引先が倒産してもさかのぼって請求が行われないため、貸倒れリスクの回避にもつながります。

特徴メリット
  • 資金調達を早期に実現できる可能性がある
  • 会社の信用情報に影響しない
デメリット
  • 手数料がかかる
  • 売掛債権の信用度によっては買い取ってもらえない
返済義務なし

出資:株式を交付して資金調達

出資とは、個人や法人などから資金の提供を受けることです。株式会社の場合、株式を交付して資金を調達します。

出資を受けることによる資金調達のメリットは、金融機関からの融資のように返済義務が課せられないことです。ただし、投資家などは企業の成長による配当などを期待して出資するため、特に第三者から出資を受ける際には、会社自体に成長性などの魅力が備わっていないと引き受けてもらえない可能性もあります。また、出資を受けることにより、株式や議決権の割合が変動すると、会社の経営権に問題が生じるデメリットも生じるでしょう。

特徴メリット
  • 返済の必要がない
  • 多額の資金調達ができる可能性がある
デメリット
  • 経営権に影響が生じる可能性がある
  • 配当を考慮する必要がある
返済義務なし

融資:金融機関からの借入

日本政策金融公庫などの政府系金融機関や民間の銀行などからお金を借りて資金調達をする方法です。スタートアップ企業の成長段階などによっては、多額の資金を調達できる可能性があります。

ただし、融資では金融機関での審査で返済可能性なども考慮して融資額が決定されるため、想定よりも融資を受けられない可能性もあります。審査に時間を要することから、入金までに時間がかかりやすいのもデメリットです。

特徴メリット
  • 返済を計画的に行える
  • 多額の資金を調達できる可能性がある
デメリット
  • 入金までに時間がかかる場合がある
  • 利息の負担が生じる
返済義務あり

社債:債券を発行して資金調達

社債とは、会社が発行する債券のことです。金融機関からの融資とは異なり、企業が直接的に募集を行って資金調達をします。借入金の一種で、出資とは異なり返済義務があるのが特徴です。

社債の償還期間(返済期限)や利率については企業が自由に設定できます。そのため、コストの調整などが可能です。ただし、償還期限や利率が投資家のニーズに合わないと、募集を行っても思うように引き受けてもらえないなどのリスクも存在します。また、一度に多額の資金調達を行う場合は、返済が重複して返済負担が事業の足かせになる可能性もあるため、十分に計画を立てた社債発行が必要です。

特徴メリット
  • 償還期間や利率を自由に設定できる
  • 大規模な資金調達に適している
デメリット
  • 利息の支払いなどが必要
  • 一括返済は償還時に負担がかかる
返済義務あり

助成金や補助金

助成金や補助金は、国や地方自治体が政策的目的などから実施している制度です。特定の助成金や補助金の申請要件を満たした企業が採択されれば、支給要件を満たした場合や対象の経費を支出した場合に助成金や補助金が支給されます。

助成金や補助金のメリットは、基本的に返済の必要がないことです。助成金や補助金を活用して、効率よく設備投資や研究開発などに資金を回すことができます。

デメリットは、申請要件や支給要件が複雑で、制度によって細かな定めがある点です。申請時には、さまざまな書類の提出が求められるため、書類作成の手間などもかかります。また、補助金については、申請しても採択されずに受給できない可能性があることにも注意が必要です。

特徴メリット
  • 効率よく設備投資などができる
  • 事業の成長や生産性向上に役立つ助成金や補助金もある
デメリット
  • 事務コストがかかる
  • 申請要件などが細かく定められている
返済義務基本的になし

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、仲介業者を通して、不特定多数の個人などから資金を調達する方法です。支援の見返りとして商品やサービスを提供する購入型、基本的にリターンのない寄付型、融資型、株式投資型、ファンド型などがあります。

クラウドファンディングのメリットは、少額からの募集ができるため、他の方法がうまくいかなくても資金調達の可能性があることです。また、購入型では、支援者の商品やサービスに対する反応もわかるため、マーケティング効果も期待できます。デメリットは、クラウドファンディングの種類によって、目標額に達しないと資金調達ができないことや、資金調達額に対して手数料が発生する可能性があることです。

特徴メリット
  • 複数の資金調達方法がある
  • マーケティング効果がある
デメリット
  • 目標額に届かないと成立しない
  • 手数料が発生する
返済義務種類による

RBF

RBF(Revenue-Based Financing)は、将来の売上高に基づいて資金調達を行う方法です。従来の融資とは異なり、売上の一定割合を返済として支払う仕組みです。将来の売上高の予測によって調達できる資金が決まります。

RBFのメリットは、事業の成長可能性が期待されるスタートアップ企業と相性がよいことです。将来の予想売上高を基準に資金調達ができるため、魅力的な事業であれば、事業を開始したばかりでも資金を集められる可能性があります。

デメリットは、将来の売上予測が反映されることです。そのため、売上が予想を下回った場合、返済負担が大きくなるリスクがあり、事業計画が不安定な段階では慎重に検討する必要があります。

特徴メリット
  • 担保や保証が必要ない
  • 将来性が期待されるほど調達できる資金も多額になる
デメリット
  • 売上が伸びないと返済が厳しい
  • 成長の見込みがない段階では難しい
返済義務あり

スタートアップ企業の5つの段階ごとの資金調達方法

スタートアップ企業における投資の段階を、シード期、シリーズA、シリーズB、シリーズC、シリーズDの5つに分けることができます。それぞれどのようなタイミングになるのか、どのような資金調達方法が適しているのか解説します。

シード期

シード期は、事業のアイデアや大枠は決まったものの、まだ事業を開始していない段階です。事業が実現できていないことから、資金調達が難しい面があります。ただし、会社の立ち上げ段階であって、それほど資金を必要としないことから、方法によっては目標額を素早く調達できる可能性もあるでしょう。

シード期に向いた資金調達方法は、VC(ベンチャーキャピタル)などからの出資やクラウドファンディングです。VCとは、成長性が期待される未上場企業に出資を行う投資会社を指します。他にも、日本政策金融公庫などから創業融資を受ける方法も考えられるでしょう。

シリーズA

シリーズAとは、スタートアップ企業が事業を開始したばかりのタイミングをいいます。シリーズAでは、リリースしたばかりのサービスや商品の売上を上昇させて経営を軌道に乗せるため、マーケティングや設備投資に力を入れる必要があります。シード期に比べると多額の資金調達が必要です。

シリーズAでの主な資金調達方法には、VCからの出資や個人投資家であるエンジェル投資家からの出資が考えられます。アーリー期(アーリーステージ)といわれることもあります。

シリーズB

シリーズBは、ビジネスが軌道に乗ってきた段階であり、シリーズAでの資金調達によりビジネスが成長して認知されるようになってきた段階のことです。アーリー期(アーリーステージ)やミドル期(ミドルステージ)と呼ばれるときもあります。

シリーズBで求められるのは、ビジネスのさらなる成長と黒字化です。認知拡大に努めつつ、ビジネスを安定させることが重視されます。資金調達方法としては、出資のほか、金融機関からの融資が検討できるでしょう。

シリーズC

シリーズCは、ビジネスの黒字化に成功して事業が大きく拡大した段階です。レイター期(レイターステージ)といわれることもあります。シリーズCになると、ビジネスの多角化や海外展開などが視野に入ってくるでしょう。状況によってはM&Aによる事業拡大も想定されるため、多額の資金調達を必要とすることもあります。なお、シリーズCの主な資金調達方法は、VCからの出資や金融機関からの融資です。

シリーズD

シリーズDは、企業がほとんど成長を終え、次の経営戦略を立てるべき段階です。レイター期(レイターステージ)やイグジット期(イグジットステージ)と呼ばれるときもあります。

シリーズDで具体的に検討することになるのが、M&A(買収など)やIPO(新規上場)です。M&AやIPOを成功させるには、企業価値を高めておく必要があります。企業価値の向上のために、資金調達が行われるのです。

スタートアップ企業の資金調達における注意点

スタートアップ企業が資金調達をしたいタイミングで、思うように資金が集まらないこともあります。なぜ資金調達に失敗してしまうのでしょうか。スタートアップ企業が資金調達で注意するべき失敗のケースを紹介します。

アピールが不十分なケース

革新的なビジネスを展開するスタートアップ企業であっても、VCなどの有力な調達先がないと資金調達に失敗してしまう可能性があります。資金調達のパートナーが見つからない要因の一つとして、商品やサービスの魅力を十分にアピールできていないことが挙げられるので、十分に戦略を立ててアピールを行い、資金調達先を確保できるようにすることが重要です。

収益化の見込みが立たないケース

スタートアップ企業の失敗例として、当初の想定どおりに収益化が実現できないことで、調達した資金を有効に活用できず、資金繰りが悪化するケースが挙げられます。例えば、アプリ開発の事業で、無料版のダウンロードは増えたものの、有料版を購入するユーザーが少ないためにマネタイズできないなどです。収益化に成功しないことには、事業を継続できません。顧客のニーズなどもしっかり把握したうえでの計画的な収益化が必要です。

想定した資金調達がかなわないケース

スタートアップ企業がビジネスに失敗する理由として、資金不足が挙げられます。資金不足の理由の一つに、資金調達がうまくいかず、投資の目標金額に達することができないケースが想定されるでしょう。スタートアップ企業に向けの資金調達方法は複数存在します。想定よりも調達できる資金が下回る可能性も考慮して、資金調達方法は複数検討しておくとよいでしょう。

長期的な視点で資金調達できていないケース

スタートアップ企業が資金調達に失敗するケースとして、長期的な視点での調達ができていなかったことが考えられるでしょう。スタートアップ企業が事業拡大のために設備投資などに資金を回せるようにするには、成長が阻害されない資金調達方法を検討する必要があります。返済義務のある方法は、スタートアップ企業の成長段階によっては成長の妨げになるので、長期的な視点で資金調達の計画を立てましょう。

スタートアップ企業は成長段階に合わせた資金調達をしよう

スタートアップ企業が成長するまでの過程として、複数の段階が存在します。スタートアップ企業が資金調達を成功させるには、成長段階に適した資金調達を行うことが重要です。今回紹介した資金調達方法を参考に、スタートアップ企業の資金調達を検討してみましょう。


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