• 作成日 : 2024年11月21日

事業承継の相談先ガイド!無料支援や法律相談など相手や選び方を解説

事業承継の相談先には、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会・商工会議所などの公的な機関のほか、専門家なども考えられます。事業承継は誰に相談するのがベストなのでしょうか。事業承継の相談ができる機関別の特徴や選び方などを紹介します。

事業承継の相談先一覧

事業承継について相談できる機関は、以下の表のように複数あります。主な相談先について、特徴やメリット・デメリットを紹介します。

相談先相談費用特徴
事業承継・引継ぎ支援センター基本は無料国が設置した公的機関
商工会・商工会議所基本は無料中小企業者などをサポート
税理士・公認会計士1万円程度

(無料のケースもある)

税務や会計面での相談に強みがある
弁護士数万円程度

(無料のケースもある)

相続や贈与など法律面での相談に強みがある
司法書士事務所による登記関係の相談に強みがある
行政書士数万円程度

(無料のケースもある)

許認可関係の相談に強みがある
経営コンサルタント事務所による事業承継コンサルタントなら幅広い相談ができる
M&Aの仲介会社数万円程度

(無料のケースもある

企業間のM&Aに強みがある

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が各都道府県に設置する公的な相談機関です。親族内や従業員に承継するための事業承継計画策定のサポート、第三者承継のための譲受企業の紹介、後継者不足の企業と創業を目指す起業家との引き合わせなどのサポートを行っています。

事業承継・引継ぎ支援センターを利用するメリットは、基本的に無料でサービスを利用できることです。相談やマッチングなどは無料で利用できます。一方、デメリットは、マッチングなど地域によって格差があることです。認知度が高くないことから、候補先の登録が多くなく、希望するマッチングが実現しない可能性があります。

商工会・商工会議所

商工会は、商工会法を根拠に町村などに置かれる中小企業庁管轄の公的機関です。商工会議所は、商工会議所法を根拠に市などに置かれる経済産業政策局管轄の公的機関です。いずれも、中小企業や小規模企業者向けに幅広い支援を行っています。

商工会や商工会議所では、後継者不足などに悩む中小企業者への事業承継や引継ぎ支援を行っています。参考になるガイドブックの案内や相談機関の紹介を受けることが可能です。

商工会や商工会議所への相談は、基本的に無料でできます。中小企業者や小規模事業者が気軽に相談しやすいのがメリットです。デメリットは、事業承継に関する情報を得られても、具体的な相談には向かないことです。紹介を受けた相談機関などでないと対応できない内容もあります。

税理士・公認会計士

税理士は税務の専門家で、公認会計士は会計監査の専門家です。税理士は中小企業者や個人事業主向け、公認会計士は大企業向けなどに事業を展開していることが一般的です。税理士や公認会計士には、相続などによる株式の評価や税金、事業承継における会計処理などの相談ができます。

事業承継を税理士や公認会計士に相談するメリットは、事業承継で発生する相続税や贈与税などの手続きについてサポートを受けられることです。事業承継での納税猶予の手続きなども相談できます。デメリットは、税理士や公認会計士によって得意としている分野が異なることです。事業承継の実績が不足する場合などでは、期待する相談結果が得られない可能性もあります。

弁護士

弁護士は、法律の専門家です。法律関係に強みがあるため、株式承継のための遺留分の対策、事業承継の際の遺産相続トラブルへの対策、契約書の作成、売却候補の企業の調査などを依頼できます。事業承継の相談にかかる費用は数万円程度が相場です。

弁護士に事業承継の相談をするメリットは、事業承継でトラブルになりやすい相続や贈与などについて法的な面で相談ができることです。トラブル回避に必要な対策なども対応してもらえます。事業承継に強みのある弁護士でないと、期待する相談結果を得られない可能性がある点です。

司法書士

司法書士は、身近な法律家で、登記や供託の専門家です。司法書士には、相続などの法律関係の相談ができるほか、事業承継で財産を移転する場合の不動産の移転登記の相談などができます。相談のみの場合は費用が発生しないこともあります。(※司法書士事務所で対応は異なります。)

司法書士に事業承継の相談をするメリットは、土地や建物の所有権の移転についてしっかり相談できることです。事業承継で財産の移転がある場合に役立つでしょう。法律にも精通しているため、株式の相続などに関する相談にも対応しています。デメリットは、候補先のマッチングや財産の評価などの面を十分に相談できない可能性があることです。

行政書士

行政書士は、官公庁に提出する書類の作成や手続きの代行、行政不服手続きの代行などの専門家です。作成に携わる書類の多くは許認可に関係しているため、許認可が必要な事業の承継にかかわる相談ができます。相談料は数万円程度が相場です。

行政書士に事業承継の相談をするメリットは、許認可に強みがあることです。許認可が必要な飲食業や建設業、運送業、人材派遣業、宿泊業、不動産業、通信販売業などの事業承継に役立ちます。デメリットは、事業承継に詳しい行政書士が多くないことです。必要とするサポートの内容によっては、ほかの専門家への相談が必要になることもあります。

経営コンサルタント

経営コンサルタントとは、企業の抱える課題について解決策を提案する仕事です。経営コンサルタントの中には事業承継に特化したコンサルタント(事業承継コンサルタント)もあり、事業承継について幅広い相談ができます。報酬の設定は経営コンサルタントごとに異なり、相談のみでは費用が発生しないケースもあります。

経営コンサルタントに事業承継についての相談をするメリットは、事業承継に必要な契約や手続きなどについてサポートを受けられることです。承継後の後継者への支援なども期待できます。デメリットは、実際にコンサルティングを依頼する場合、他の専門家への依頼と比べてコストがかかる可能性があることです。契約によっては、月額報酬制などで継続してコストが発生することもあります。

M&Aの仲介会社

M&A仲介会社は、企業間の事業承継を仲介する事業者です。M&Aを成功させるために、M&Aの相談やマッチング、成約に向けての調整、契約締結などをサポートしています。M&A仲介会社への相談は1万円程度が相場です。正式な依頼をする場合は相談料がかからないケースもあります。

M&A仲介会社に事業承継を依頼するメリットは、特に企業間の事業譲渡や承継に強みがあることです。M&Aの相手先の選定やM&Aの進行、M&Aを成功させるための契約条件などについて相談できます。デメリットは、対企業での事業承継を強みとしているため、親族内や従業員への事業承継には対応してもらえない可能性があることです。

事業承継の種類別のおすすめ相談先

事業承継の方法別に、おすすめの相談先を紹介します。

親族内承継を行う場合

親族内の事業承継全般については、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会・商工会議所などへの相談が考えられます。いずれも中小企業者などを中心に、事業承継について広くサポートを行っているためです。

事業承継にあたり、他相続人とのトラブル回避の相談をしたい場合は弁護士、相続税や贈与税について不安がある場合は税理士・公認会計士などに相談するのがよいでしょう。財産の移転について登記の相談をしたい場合は、司法書士への相談が適しています。

社内事業承継(自社の役員や従業員)を行う場合

社内事業承継で事業承継全般について相談したい場合は、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会・商工会議所、経営コンサルタントへの相談などが適しています。事業承継の実績がある経営コンサルタントであれば、株主構成や後継者の選定、後継者の育成などの相談も可能です。

社内事業承継は、親族内承継と比較して、相続税や贈与税の負担が重くなる可能性があるため、税理士・公認会計士への相談もおすすめです。税負担を軽減するための特例の適用などについての相談ができます。

M&A(第三者企業に承継)を行う場合

M&Aを実現させるには、すでに譲渡先が決まっている場合を除き、候補先の選定から着手しなければなりません。候補先とのマッチングについては、紹介サービスのある事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、あるいはM&Aの仲介を専門としたM&A仲介会社への相談などが考えられます。

事業承継について全般的な相談をしたい場合は、経営コンサルタントへの相談も検討できるでしょう。

事業承継の相談先の選び方

事業承継の相談先を選ぶ際のポイントを3つ紹介します。

事業承継の実績があるか

事業承継に特化していない専門家については、事業承継にあまり詳しくないケースも存在します。納得のいく相談を実現するためには、相談先の事業承継の実績に注目してみましょう。事業承継の実績があれば、実務的な面など、より具体的な相談ができることが期待できます。

相談内容を得意としているか

事業承継について相談したい内容が明確な場合は、相談内容への対応を得意としている機関に相談するようにしましょう。例えば、事業承継に伴う株式の相続についてトラブル回避の相談をしたい場合は、弁護士への相談などが適しています。事業承継について的確な答えを求めている場合は、あらかじめ相談内容について十分に洗い出しておくことも必要です。

相談が無料か、報酬体系が明確か

事業承継に関する報酬は、体系が複雑になっていることもあります。成果報酬型、月額固定型など事業者によって異なるため、できるだけ報酬が明確に提示されているところを選ぶようにしましょう。相談料については、公的な機関を除き、事業者ごとに設定が異なります。相談料は無料で、実際に依頼する場合に費用が発生する仕組みであれば相談がしやすいのでしょう。

相談時に用意した方がいいもの

事業承継は、以下の手順で行います。

  1. 承継する会社の財産の把握
  2. 承継方法の選定
  3. 事業承継に関する制度の把握
  4. 事業承継の手続き開始

事業承継の相談をする場合は、どの段階について相談したいのか明確にしておきましょう。そのうえで、具体的に相談したい内容があれば、すべて洗い出しておくことが重要です。相談したい内容を明確にすることで、どの相談先に相談するべきかが明らかになります。

事業承継の相談先は機関ごとに特徴がある

事業承継の相談ができる機関は複数あります。事業承継について広く相談できる機関もあれば、特定の事項について詳細な相談ができる機関もあります。事業承継に関する不安や悩みを解決するには、相談したい内容に適した機関を選択することが重要です。今回紹介した相談先別の特徴などをヒントに、現時点での悩みに対応できる相談先を選択しましょう。


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