• 更新日 : 2023年9月11日

PPMとは?プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントを経営に活かした事例も解説

PPMとは?プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントを経営に活かした事例も解説

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)をご存じですか?1970年にボストン・コンサルティング・グループの創設者ブルース・ヘンダーソン氏が発表した経営管理スキームは、誕生から半世紀以上たった今日も世界中の企業で活用されています。本記事は、PPM分析を経営に活かすメリットやPPM分析の方法、PPM分析を活用した企業事例などを含めて基本を解説します。

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは?

PPMは、自社の製品やサービスをポートフォリオとして取り扱い、それぞれの市場成長率と市場占有率(市場シェア)に応じて4つのカテゴリーに分類するものです。

一般的には、マトリクスの縦軸に市場成長率を、横軸に市場占有率を置き、自社の製品やサービスを以下の4つのカテゴリーのいずれかにポジショニングします。

  • 花形(Star)成長率・高、占有率・高
  • 金のなる木(Cash Cow)成長率・低、占有率・高
  • 問題児(Question Mark)成長率・高、占有率・低
  • 負け犬(Pet)成長率・低、占有率・低

PPMを経営に活かすメリットは?

PPMのポートフォリオとは、もともとは「書類かばん」という意味で、投資の世界における投資銘柄の組み合わせを表す言葉です。通常は、どの銘柄の株式を何株保有し、どのタイミングで売却するかといった検討や判断を行うためのベースとするものです。PPMは、自社のプロダクト(製品・サービス)を、投資の世界におけるポートフォリオと同様に、その取り扱いについての検討や判断をするためのベースとします。なおPPMには、一般的に以下のメリットがあります。

経営リソースを最適活用できる

PPMの第一のメリットは自社の経営リソースを最適活用できることです。PPMでは、4つに分類したカテゴリーのそれぞれにおいて最適な経営判断を行うための方針が示されます。例えば、市場成長率も相対的市場占有率も低い「負け犬」に属している事業の場合、基本的には市場からの撤退を促します。PPMを用いることで、自社の経営リソースを収益性の高い事業へ集中投資できます。

事業のスクラップアンドビルドができる

PPMのメリットとして事業のスクラップアンドビルドができることも挙げられます。多くの企業においては、たとえ自社の事業が「負け犬」カテゴリーに属していたとしても、なかなか市場からの撤退という判断がされにくい傾向にあります。PPMを用いることで自社の事業のポジションが明確になり、「投資」または「撤退」といった大局的な経営判断を行うことが可能です。その結果、事業のスクラップアンドビルドが進むことになります。

PPM分析の方法は?

では、実際にPPM分析を行うにはどうすればいいでしょうか。PPM分析を行うには、それぞれの事業における「市場成長率」と「市場占有率」を把握する必要があります。

市場成長率を計算する

まずは市場成長率の計算です。市場成長率は、「(直近の市場規模-前年の市場規模)÷前年の市場規模」で計算します。例えば、直近の市場規模が1100億円、前年の市場規模が10000億円であった場合、(1100億-1000億)÷1000億で0.1となり、市場成長率は10%となります。市場規模の算出方法については、民間の市場調査会社が公開しているデータや、財務省が公表している「法人企業統計調査」などを参照するとよいでしょう。

市場占有率を計算する

続いて市場占有率の計算です。市場占有率には「絶対的市場占有率」と「相対的市場占有率」がありますが、PPMでは「相対的市場占有率」(Relative Market Share)を使います。「相対的市場占有率」は、「自社の市場占有率÷トップ企業の市場占有率」で計算します。例えば、自社の市場占有率が15%で、トップ企業の市場占有率が50%の場合、15÷50で0.3となり、相対的市場占有率は30%となります。

自社の事業のポジションを確認する

「市場成長率」と「市場占有率」が計算できたらポジショニングです。「市場成長率」と「市場占有率」をもとに以下の4つのカテゴリーにポジショニングします。

  • 花形(Star)成長率・高、占有率・高市場成長率・市場占有率ともに高く、文字通り花形の事業です。このカテゴリーにおいては、市場占有率をいかに維持できるかが戦略的なテーマとなります。
  • 金のなる木(Cash Cow)成長率・低、占有率・高市場成長率は低いものの、市場占有率が高い事業です。市場は成熟期にあり、低い投資で高いリターンが得られる領域です。一方で、市場全体は衰退傾向にあり、いずれは撤退も視野に入れざるを得ない可能性があります。
  • 問題児(Question Mark)成長率・高、占有率・低市場成長率は高いものの、市場占有率が低い事業です。市場全体が急速に伸びているものの、収益性確保のための十分な市場占有率が確保できていない事業です。追加の投資を行い、より多くの市場占有率が確保できるかがポイントになります。
  • 負け犬(Dog)成長率・低、占有率・低市場成長率・市場占有率のいずれも低い、文字通り「負け犬」の事業です。市場が縮小基調にあり、十分な収益が確保できていない場合、撤退を検討すべき対象となります。

競合他社の事業のポジションと比較する

自社の事業のポジショニングができたら競合他社の事業のポジションと比較します。一般的には、マトリクス上に売上高に応じたバブル(円形)を描画して、視覚的に比較できるようにします。競合企業が複数存在する場合、企業ごとにバブルを色分けすると比較しやすくなります。

競合他社の事業のポジションと比較の上、各カテゴリーの事業において市場占有率を拡大できるのか、追加投資によりさらなる収益が確保できるのかといった大局的判断を行います。

PPM分析による企業事例

1970年の発表以来、PPMは世界中の多くの企業に採用され、経営の現場で活用されてきました。事業を市場成長率と市場占有率の二軸で分類することはわかりやすいとされている一方で、経営管理スキームとしては単純化され過ぎているといった課題も抱えています。しかしPPMは、特に多くの事業ユニットを抱えている企業においては、それぞれの事業の長期的な戦略を策定する上で十分に有効です。実際に、多くの優良企業がPPMを今なお活用しています。

ソニー

家電メーカーとして創業したソニーは、その歴史の中でさまざまな事業をスクラップアンドビルドして自己再生を繰り返し、時代や経営環境の変化に巧みに応じてきた優良企業です。直近のソニーのPPMは、次のようになるでしょう。

  • 花形 「ゲーム&ネットワークサービス」
  • 金のなる木「音楽」「映画」
  • 問題児「金融」「イメージング・プロダクツ&ソリューション」
  • 負け犬「モバイル・コミュニケーション」

ソニーは、長らくパソコンブランド「VAIO」事業を展開してきましたが、すでに分社して事実上市場から撤退しています。「VAIO」事業は、ソニーにとって典型的な「問題児」事業であったといえるでしょう。

サントリー

大手飲料メーカーのサントリーもさまざまなブランドや事業をスクラップアンドビルドしてきた企業として知られています。サントリーは、特に長年「問題児」であったビール事業に積極的に投資して、「金のなる木」に転換させたことで知られています。直近のサントリーのPPMは、次のようになるでしょう。

  • 花形 「BOSSなどの清涼飲料水」
  • 金のなる木 「ウイスキー」「ビール」
  • 問題児「発泡酒」「第三のビール」
  • 負け犬「サブウェイ」

サントリーは、長らくアメリカのサンドイッチチェーン大手「サブウェイ」事業を手掛けてきました。しかし、日本のサンドイッチ市場は市場成長率が低く、「サブウェイ」事業は典型的な「負け犬」事業でした。案の定、サントリーはこれまでに「サブウェイ」事業から完全に撤退しています。

PPMで事業のスクラップアンドビルドを進めよう

以上、PPM分析を経営に活かすメリットやPPM分析の方法、企業事例などを含めて基本を解説しました。PPMの要諦を一言でいうと、「事業のスクラップアンドビルドを進める」ことになるでしょう。特に複数の事業を展開する場合、企業リソースを効率的に投入するという意味においては、事業のスクラップアンドビルドは企業が存続するために必須となります。PPMを活用し、事業のスクラップアンドビルドを進めてください。

よくある質問

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは?

PPMは、1970年にボストン・コンサルティング・グループの創設者ブルース・ヘンダーソン氏が発表した経営管理スキームです。自社の事業を市場成長率と市場占有率に応じて4つのカテゴリーに分類・分析するものです。詳しくはこちらをご覧ください。

PPM分析の方法は?

PPM分析の方法は、①市場成長率を計算し、②市場占有率を計算し、③自社の事業のポジションを確認し、④競合他社の事業のポジションと比較する、です。市場成長率と市場占有率を計算し、ポジショニングします。詳しくはこちらをご覧ください。


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