- 作成日 : 2025年3月11日
運転代行業の個人事業主になるには?開業手続きから確定申告まで解説
これから個人事業主として、運転代行業を始めようと検討している方もいるでしょう。運転代行業を開始するにはいくつかの手続きが必要であり、抜け・漏れなく進めることが必要です。
本記事では運転代行業の個人事業主として開業するための手続き、必要な資金の目安、確定申告などについて解説します。
目次
運転代行業の個人事業主になるには?
運転代行業の個人事業主として開業するには、以下4つの手続きが必要です。
- 自動車運転代行業の認定を受ける
- 使用する随伴車の自動車を購入、整備する
- 損害賠償保険に加入する
- 開業届を提出する
各ステップを順番に解説していきます。
1.自動車運転代行業の認定を受ける
運転代行業をスタートするには、まず公安委員会の認定を受けることが必要です。各種要件を満たしているかを確認し、安全運転管理者認定の申請を行います。
警察による審査が行われ、許可されれば認定証が交付される流れです。申請をしてから認定証の交付まで30日程度かかるため、余裕をもって手続きをしましょう。
具体的な申請手順については次の章で解説しますので、そちらもご覧ください。
2.使用する随伴用の自動車を購入、整備する
運転代行業を行うためには、随伴用の自動車を用意しなくてはなりません。随伴用の自動車とは、利用客を目的地に送り届けた後、代行業者の事務所あるいは駐車場などに戻るために使う車のことです。
随伴用自動車は、公安委員会が規定した車体表示をする必要があります。具体的には、取り外し不可能なペイントやステッカーを用いて、以下4つを表示させます。
- 認定番号
- 認定された都道府県公安委員会の名称
- 自動車運転代行業者の名称あるいは記号
- 「代行」「随伴用自動車」の文字
3.損害賠償保険に加入する
自動車運転代行業では、利用客の車を運転する際の事故や損害に備えて、損害賠償責任保険に加入することが義務となっています。たとえ依頼人が保険に加入していたとしても、代行運転中に事故が起きた場合、依頼人の自動車保険は利用不可能です。
運転代行業者は、国土交通省が定める基準以上の保険への加入が必須です。具体的には、損害賠償額が対人で8,000万円以上、対物・車両が200万円以上となっています。
万が一の事態に備えて、可能な限り手厚い保険に加入することがおすすめです。
4.開業届を提出する
開業届を提出しなくても、確定申告は可能です。しかし、個人事業主として青色申告をするには、開業届と青色申告承認申請書を提出しなくてはなりません。
青色申告は最高で65万円の特別控除を受けられるため、所得税や住民税の軽減に役立ちます。無駄に高い税金を支払わなくて済むよう、運転代行業でも青色申告をすることがおすすめです。
開業届・青色申告承認申請書は、税務署に用紙が準備されており、その場で記入・提出できます。また、郵送やe-Taxでの提出も可能です。
確定申告の方法や流れに関しては後ほど解説しますので、そちらもご覧ください。
公安委員会による自動車運転代行業の認定手続きの流れ
公安委員会から、運転代行業としての認定を受けるための手続きを解説します。
1.欠格要件を確認する
欠格要件とは、認可を与えるうえで相応しくないとされる態度・行動のことです。自動車運転代行業の認定申請をする前に、まずは定められた「欠格要件」に該当していないことを確認しましょう。
欠格要因は、具体的に以下のとおりです。
- 禁固刑以上の刑に服した人
- 心身のトラブルにより、自動車運転代行業を適正に行えない人
- 成年被後見人、あるいは破産手続き開始後に復権をされていない人
- 未成年で営業を認可される事情のない人
- 国家公安委員会が暴力的不法行為などを疑うに足る人
- 基準に沿った損害賠償保険や共済に加入不可能な人
- 運転代行業関連の法律・道路運送法・道路交通法などに違反して罰金刑となり、執行を終えて2年経ってない人
- 2年以内に、自動車運転代行業の営業停止命令や営業廃止命令に違反した人
たとえば、運転免許を取り消されたことがある人、過去に犯罪歴がある人などは、認定申請をしても拒否される可能性があります。
2.認定申請書や添付書類を提出する
欠格要件に該当しないことを確認できたら、申請書類を準備します。認定申請書以外に、住民票や医師の診断書、損害賠償責任保険の契約書なども必要です。
認定書には、申請者または法人の氏名(名称)・住所、営業所の名称・所在地、安全運転管理者の氏名・住所などを記入していきます。安全運転管理などに関しては、要件をクリアしていることを示すため、運転経歴証明書や自動車運転免許証の写しなども必要です。
認定申請書以外に添付する書類に関しては、申請を行う都道府県警の公式サイトで確認しましょう。
3.自動車運転代行業の安全管理者等を認定する
認定申請書や添付書類の提出先は、事業所のある所在地を管轄する警察署です。警察署は申請書の内容を審査し、欠格要件に当てはまっていないか、書類に不備がないかを確認します。
警察署の審査に無事通過すると、認定証が交付されますので内容を確認しましょう。認定書には認定番号・認定期間が記載されており、正式に自動車運転代行業ができるようになります。
運転代行業を開業するために必要な資金
自動車運転代行業を始めるために必要な資金について、初期費用と運転資金に分けて解説します。
初期費用
運転代行の開業に必要な初期費用は、トータルでおよそ60万~240万円程度です。費用の内訳は、車両代、車両設備費、認定証の申請費、広告宣伝費などが挙げられます。
運転代行業では店舗とする物件や大型設備がいらないため、実店舗型のビジネスと比較すると初期費用は安めです。その代わりに、随伴車として使う車両が必須で、さらに随伴車用の料金メーターやメーター用プリンター、行灯なども必要となります。
開業前には公式サイトやSNSアカウントを開設することや、集客するための宣伝広告費なども必要です。
運転資金
運転代行業で必要な運転資金は、1ヶ月あたりおよそ15万~50万円です。主な費用の内訳は、ガソリン代、駐車場代、保険代、人件費、広告宣伝費などが挙げられます。
運転代行業の場合、運転資金は随伴車関連の費用がほとんどを占めます。物件の賃貸料や材料の仕入れ費用などがいらないため、他の業種より運転資金も低めです。
運転代行業の個人事業主の年収
運転代行業として開業すると、どの程度の年収が見込めるのでしょうか。働く時間や営業日数によって異なるため一概には言えませんが、おおよそ250万~530万円、平均で320万円程度です。
運転代行業では、以下のような料金設定が標準的です。
初乗り3km未満の場合は2,000~2,500円、3km以降は1kmごとに300円前後加算
【売上】
単価:5,000円
1日当たりの想定顧客数:5組
ひと月あたり稼働日数:23日
総売上:57万5,000円
【経費】
人件費:10万~20万円
諸経費:5万~10万円
ガソリン代:4万円
経費合計:19万~34万円
月収:57.5−(19~34)= 38.5~23.5万円
以上より想定年収は、282~460万円程度となります。ただし、300万円に届かないドライバーも多く、運転代行で稼ぐのは簡単ではありません。
運転代行業の個人事業主がもらえる助成金・補助金
開業資金を準備するのに、助成金や補助金を活用するのもおすすめです。運転代行業でも利用できる制度に関して、現時点では応募を締め切っている案件が多いため、過去に実施された制度の例を紹介します。
福井県:【自動車運転代行事業者向け】交通事業者等への緊急支援事業補助金
福井県で行われた、原油価格高騰の影響により経営に大きな影響が生じている自動車運転代行事業者を支援する制度です。1台当たり1万2,500円を補助する制度で、2024年1月15日~2月9まで公募が行われました。
補助金を受給するには、適切な損害賠償措置を講じていること、運転代行業を継続する意思があること、県税の滞納がないことなどの条件が設けられています。
山形県山形市:山形市タクシー事業者及び自動車運転代行業者支援給付金
山形県で2024年3月22日~5月24日まで募集されていた、給付金の案件です。タクシーや自動車運転代行の経営での負担軽減とともに、経営継続の後押しを行うことを目的に実施されました。
給付額は10万円+登録車両1台あたり1万円で、上限は40万円です。令和6年3月1日時点で代行運転自動車保険に加入している車両が対象でした。
運転代行業の個人事業主は確定申告が必要
運転代行業を含め、個人事業主で1月1日〜12月31日までの年間所得が48万円を超える人は確定申告が必要です。
確定申告は、申告に必要な書類を準備し、確定申告書をパソコンなどで作成し、提出する流れです。個々のステップについて解説していきます。
なお、確定申告のやり方は以下の記事でも解説しているので参考にしてください。
確定申告書を作成する
確定申告の場合、第一表と第二表を必ず提出する必要があります。第一表は個人事業主の基本情報をはじめ、収入金額や所得金額などについて記載する書類です。第二表は、第一表に記載した各項目について、詳細な内訳を記載していきます。
確定申告書の作成方法は、主に以下の4つです。
パソコンをある程度使える方なら、確定申告ソフトまたは確定申告書作成コーナーを利用すると、効率よく作成ができるためおすすめです。
確定申告書を提出する
作成した確定申告書の提出方法は、以下の4つです。
- 税務署へ持ち込む
- 郵送する
- 税務署の時間外収集箱に投函する
- 電子申告(e-Tax)で送信する
控除の面でもっともおすすめなのは、e-Taxです。青色申告でe-Taxを利用すると、最大65万円の特別控除を受けられるため、その分所得税や住民税の負担を減らせます。
e-Tax以外の提出方法の場合、優良な電子帳簿保存の条件を満たさないと、特別控除額は最大55万円と低くなることに注意が必要です。
確定申告書の提出期限
確定申告の期間は、毎年2月15日~3月15日あたりです。ただし、3月15日が土・日・祝日の場合は延長されます。
2024年度分の確定申告の期間は、2025年2月17日(月)〜3月17日(月)までです。期限が近くなると税務署が混雑するなどの影響があるため、できるだけ早めの準備・早めの提出がおすすめです。
運転代行業の個人事業主が経費にできる勘定科目
不必要に高い税金を支払わずに済ませるには、確定申告で適切に経費を計上することがポイントです。運転代行業の場合に経費計上ができる勘定科目を紹介します。
車両関連費用
運転代行業の主な費用は車両に関するものが多く、ガソリン代、車両の維持費、駐車場代などがあります。これらは事業を営むのに必要な経費であり、原則として経費にできます。
ガソリンの勘定科目は、燃料費や車両費などが使われることが多いです。駐車場代は、車両費や地代家賃などの勘定科目を使うのが一般的です。
どの勘定科目を使うか、厳密に決まっているわけではありませんが、一度使い始めた勘定科目は毎年使うようにしましょう。
保険料
運転代行業では、自動車保険料も経費として扱えます。法人として経営する場合は法人契約をするため、任意保険の保険料は高額になります。
法人を設立しており、11等級以上の車両をすでに保有している方は、セカンドカー割引の制度があり、比較的安く加入することが可能です。
自動車保険の勘定科目は、車両費あるいは損害保険料として計上可能です。
人件費
運転代行業では、随伴車両と運転代行するドライバー2人の給料や時給が必要です。1人は事業主だとしても、最低でもう1人分の給料が発生することになります。
シルバー人材などを使い、人件費があまり高額にならないように工夫している事業者も多いです。ただし、高齢者であることによる事故などには十分な注意・配慮が必要となります。
人件費に使われる勘定科目は、給与手当、専従者給与、役員報酬などがあります。
運転代行の個人事業主として事業を成功させよう
運転代行業の個人事業主として開業する方法、必要な資金の目安、経費などについて解説しました。運転代行業を始めるにはいくつかの手続きが必要で、公安委員会からの認定も必要なため、必要書類を準備してスムーズに進めましょう。
また、運転代行業の方も確定申告が必要です。適切に費用を計上して、不必要に高い税金を支払うことのないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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