- 作成日 : 2024年7月31日
開業届や必要書類はどこに出す?提出先は?個人事業主向けに解説
個人事業主が事業を開始するとき、所得税法では「開業届」の提出が義務付けられています。本記事では開業届について、いつ、どこで、どこに提出すればよいのか解説します。記載から受理されるまでの流れを中心に、提出する添付資料やその他の届出書も紹介しますので、開業届で悩んでいる方は参考にしてください。
目次
開業届はどこに出す?必要なものは?
「開業届」は個人事業主が事業を開始する際、いつ、どこで、どのような事業を始めるかを届け出るために作成する書類です。提出先は、事業主個人の自宅がある場所を所轄する税務署であり、提出方法は以下の3通りです。
オンラインで出す場合
国税庁が提供しているe-Taxを利用して、開業届を作成・提出する方法です。まずは、オンライン提出に必要なパソコンやインターネット環境、マイナンバーカードやカードを読み込むICカードリーダライタ等の環境を準備しましょう。次に、e-Taxソフトをインストールして開業届を作成し、オンラインで提出してください。
郵送で出す場合
税務署の窓口や国税庁HPなどから開業届の用紙を取得し、手書きで記載したものを郵送で税務署に提出する方法です。郵送で提出する場合の注意点は、開業届の控え(コピー)を必ず手元に残しておくという点です。
国税庁HPから用紙をプリントアウトし使用するケースのように、複写式ではない用紙を使うと届出書の控えが残りません。個人事業主の場合、金融機関から融資を受ける際や、保育園の入園審査などで開業届の控えの提出を求められることがあるため、控えを忘れずに残しましょう。
税務署に持ち込みで出す場合
自宅住所を所轄する税務署の窓口に、開業届を直接持参する方法です。届出書を手渡しで直接提出できるので、オンラインや郵送よりも確実に手続きできます。このケースでも郵送で提出する場合と同様に、開業届の控え(コピー)を必ず手元に残しておきましょう。
開業したときに、開業届以外に提出する書類と提出先
個人事業を開業するにあたって、開業届のほかにも提出しなければならない届出や、提出することができる届出があります。
所得税の青色申告承認申請書
所得税では「青色申告制度」と呼ばれる税法上の優遇制度があります。「青色申告特別控除(最高65万円)」「青色事業専従者給与」「貸倒引当金の計上」「純損失の繰越し(繰戻し)」などの各種特典を受けることで、納税額を抑えられる有利な制度です。
青色申告制度を受けるためには、事業開始日から2ヶ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。ただし、1月1日から1月15日までに開業した場合はその年の3月15日が提出期限になるため注意しましょう。
参考:A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁、所得税の青色申告承認申請書
青色事業専従者給与に関する届出書
青色申告の承認を受けている個人事業主の場合、事業主の家族に対して支払った給料や賞与を事業の必要経費に算入することができます。開業と同時に給料等を必要経費に算入する場合は、事業開始日から2ヶ月以内に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければなりません。
なお、青色申告承認申請書と同様に、1月1日から1月15日までに開業した場合はその年の3月15日が提出期限になるため注意しましょう。
参考:A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁、青色事業専従者給与に関する届出書、変更届出書
所得税の棚卸資産の評価方法の届出書、所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
所得税では、棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法が法律で定められています(法定評価方法、法定償却方法)。ただし「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書、所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することで、自社の実情に合わせた評価方法や償却方法を選択することもできます。
参考:A1-18 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続|国税庁、所得税の棚卸資産の評価方法の届出書、所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
事業開始と同時に従業員を雇用し、給料や賞与を支給する場合「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出しなければなりません。
参考:A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
消費税課税事業者選択届出書
原則として新規開業の場合、初年度は消費税の納税義務が免除されます。しかし、令和5年10月から施行された「インボイス制度」に対応する適格請求書を事業開始と同時に発行したい場合は「(消費税)課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者になる必要があります。
なお新規開業の場合、提出期限の特例により課税事業者となる年の12月31日までに提出すればよいこととされています。
参考:D1-4 消費税課税事業者選択届出手続|国税庁、消費税課税事業者選択届出書
事業開始等申告書
個人事業を開始する際には、税務署(国)のほかに都道府県に対しても開業する旨の届出書である「事業開始等申告書」を提出しなければなりません。当該申告書の様式や提出期限は都道府県によって異なるため、各窓口に確認するようにしましょう。
参考:事業を始めたとき・廃止したとき|東京都主税局、事業開始等申告書(個人事業税)
開業届を作成・提出・受理されるまでの流れ
次に、「開業届」の作成から受理されるまでの流れを解説します。
事業開始日等の決定
事業を始めるにあたって、事業開始日や事業を営む場所等を決定します。なお、事業開始日がいつの日付を指すのかについては、開業準備を始めた日やお店をオープンした日など、自身が決めた日付を事業開始日として差し支えありません。
開業届の作成
オンライン申請によるデータ入力、あるいは郵送や窓口持参するための書面作成などの方法で開業届を作成します。書面で作成する場合は作成終了後の開業届を必ずコピーし、税務署に提出する届出と同じ控えが残るようにしましょう。
開業届の提出
オンライン・郵送・窓口持参のいずれかの方法により、開業届を提出します。オンライン提出の場合、正しく送信されているか必ず結果を確認するようにしましょう。郵送による提出の場合、確実に郵送されたことを確認するためにも、配達記録郵便で出すことをおすすめします。
開業届の受理
記載内容の間違いや記載漏れ等がない限り、開業届が税務署で受理されたとしても、一般的に特別な通知や連絡はありません。郵送による提出や窓口持参の提出であれば、受理された証拠として控えに収受印をもらうことも可能ですが、令和7年1月からは申告書や届出書への収受印の押印も廃止となります。
「開業届」の提出はお忘れなく
所得税では開業届の提出が義務となっていますが、提出を怠っても特別なペナルティがないため、うっかり忘れてしまうケースもあります。しかし開業届は、個人事業主が確かに事業を行っていることを証明する大切な書類です。本記事を参考にして、確実に提出しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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