- 作成日 : 2024年9月6日
町内会は法人化できる?メリット・デメリット、手順や会計・税金を解説
町内会は法人化により団体名義の登記ができ、社会的信用が高まるというメリットがあります。名義変更などの手続きも不要になり、安定した運営ができるのも利点です。ただし、法人化した際は課税される場合があり、運営が煩雑になるというデメリットもあります。
本記事では、町内会の法人化によるメリットや問題点、手続きの流れなどを解説します。
目次
町内会は法人化できる?
町内会などの自治会は、法人化が可能です。法人化により団体名義の登記ができ、トラブルを防止できるなどのメリットがあります。
ここでは、町内会の法人化について解説します。
町内会の法人化とは?
町内会の法人化とは、手続きにより法人格を取得し、町内会名義で不動産登記ができるようになることです。
法人格のない町内会は登記が認められず、代表者が個人名義で登記しなければなりません。そのため、相続の際にトラブルが起こることもあります。しかし、法人化すれば不動産を法人名義にでき、そのような問題を解消できます。
1991年には、自治会・町内会などが所有する建物や土地などを町内会等の名義で登記ができないことで問題が起こっていることを受け、地方自治法の一部が改正されました。
一定の要件を満たした場合は「地縁による団体」として法人格を取得できるようになっています。
法人の種類
法人にはさまざまな種類があり、町内会が法人化する場合は、次の4つの法人が考えられます。
- 認可地縁団体
- NPO法人
- 一般社団法人
- 株式会社、合同会社
認可地縁団体とは、地方自治法等に定められた要件を満たし、必要な手続きを経て法人格を得た団体のことです。一般的に、町内会の法人化では認可地縁団体が選ばれています。
NPO法人は「特定非営利活動法人」とも呼ばれ、社会貢献活動を主な目的とする法人です。NPO法で定められた活動以外を行う場合は設立できません。
一般社団法人とは、営利を目的としない非営利法人のことです。社員が2名以上いれば設立でき、設立手続きも比較的容易にできることが特徴です。
株式会社と合同会社は営利を目的とした団体であり、営利活動を行わない町内会には適さないでしょう。
町内会が法人化できる条件
町内会の法人化では、一般的に認可地縁団体が選ばれます。地縁団体の認可を受けるための要件は、地方自治法で定められています。
ここでは、町内会が法人化するための要件をみていきましょう。
地縁団体であること
地縁団体の認可を受けるためには、地縁団体の定義にあてはまることが必要です。地縁団体とは、市区町村内の一定の区域に住所を有する者による地域的なつながりによって作られた団体を指します。
一定の区域に住所を有すること以外に、加入に性別・年齢などの条件があったり、スポーツや趣味など特定の活動目的があったりする団体は、地縁団体とはいえません。
地縁による団体の区域は、住民にとって客観的で明らかになっていることが必要です。「客観的に明らか」とは、河川や道路等で区域が区切られているなど、構成員以外からみても明確な境界のある状態を指します。
地域的な共同活動を行っていること
地域的な共同活動を行うことを目的とし、現に活動していることも認可の要件です。
地域的な共同活動とは、一例として次のような活動を指します。
- 区域における集会施設の維持・管理
- 清掃等の環境整備活動
- 高齢者の慰問等の社会福祉活動
- スポーツ大会
- レクリエーション活動
法人化の要件を満たすためには、過去2年以上の活動実績が必要とされています。
規約を定めていること
地縁団体としての認可を受けるためには、団体の目的や構成員の資格等を規定する規約を定めていることも必要です。
法律で義務付けられ、必ず定めなければならないのは次の項目です。
- 目的
- 名称
- 区域
- 事務所の所在地
- 構成員の資格に関する事項
- 代表者に関する事項
- 会議に関する事項
- 資産に関する事項
規約の定めはこれらの項目が必須ですが、さらに追加の項目を定めることは禁止されていません。
市区町村長の認可を受けること
地方自治法の定める一定の要件に該当したら、必要書類を揃えて市区町村長の認可を受けることで、認可地縁団体として法人化が完了します。
なお、当初の認可の目的は、地縁による団体が法人格を取得し、団体名義で不動産登記ができるようにすることでした。そのため、認可を受けるには「現に不動産等を保有または保有予定のあること」が必要とされていました。
しかし、2021年に制度が見直されており、不動産保有の有無に関わらず、地域的な共同活動を円滑に行う目的であれば認可を受けられるようになっています。
町内会を法人化するメリット
町内会を法人化することで、町内会名義で登記できるようになるなど、多くのメリットがあります。
ここでは、法人化によるメリットについて詳しくみていきましょう。
町内会名義で資産を管理できる
法人化により、町内会名義の土地や建物を登記・管理できることがメリットです。
個人名義にしている場合、代表者が変わるたびに登記を変更しなければなりません。また、相続の際に争いが起こる要因になります。
法人名義の登記をすることで煩雑な登記手続きが不要になるとともに、さまざまなトラブルを回避できるでしょう。安定した町内会の運営ができるようになります。
社会的信用が高くなる
法人化により、社会的信用が高まるのもメリットです。信用が高まれば、国や自治体の補助金を受けやすくなり、外部の支援者からの寄附を集めやすくなるでしょう。
補助金や寄附を多く集められるようになれば、より活発に地域活動ができるようになり、活動範囲も広げることが可能です。その結果、地域の発展にも貢献できます。
代表者の負担が軽減される
法人格を持たず、個人の集まりとして町内会を運営する場合、責任の所在が代表者や役員に集中します。リスクを避けるため、代表や役員を引き受ける者がいないという事態にもなるでしょう。
法人化することで責任の所在は法人になり、代表に集中する責任を軽減できます。その結果、安心して町内会の運営ができるようになり、活動の活性化にもつながるでしょう。
町内会を法人化するデメリット・問題点
町内会の法人化により、デメリットや問題点もあります。
ここでは、法人化のデメリットを詳しく解説します。
課税される場合がある
法人格を取得した町内会は、国や自治体に納める各種税金が発生します。法人税や法人住民税などの課税対象となり、毎年事業年度終了後の一定期間内に申告を行わなければなりません。
ただし、事業の内容が町内会の活動のみで、収益事業を行っていない場合は減免措置を受けられます。その場合は減免申請を行う必要があり、手続きが必要です。
いずれにしろ、法人化しなければ発生しない手間や労力が必要になる点はデメリットです。
設立手続きや運営が煩雑
法人化するためには、法が定める要件を満たし、必要書類を揃えて手続きをしなければなりません。時間や手間がかかり、専門家に依頼しなければならないケースもあります。
また、法人化したあとの運営も煩雑です。法人として各種の書類作成や事務手続きが必要になり、適切な財産管理も求められます。登記の問題は回避できますが、団体運営をしっかり行う必要があることは認識しておきましょう。
町内会の法人化に関する会計・税金の基礎知識
町内会の法人化により課税される場合があることに触れましたが、法人化によって会計や税金がどう変わるのか、基礎的なことを確認しておきましょう。
法人の資産を管理し経費を支出する活動は、役員会の定める方法により会長(代表者)が行うことが適切です。ただし、会の活動上重要な資産を処分する際は、総会の議決を必要とすることが望ましいでしょう。
また、法人格を取得すると、町内会には地方税・国税が課税されます。課税される税金は、次のとおりです。
税の種類 | 収益事業を行わない場合 | |
---|---|---|
国税 | 法人税 | 非課税 |
登録免許税 | 課税 | |
地方税(市区町村税) | 法人住民税(市町村民税) | 減免措置 |
固定資産税 | 減免措置 | |
地方税(都道府県税) | 法人住民税(道府県民税) | 減免措置 |
法人事業税 | 非課税 | |
不動産取得税 | 減免措置 |
収益事業を行わない場合に減免措置がある税金は、それぞれ、税務署や自治体に申請手続きが必要です。
町内会の法人化の手順
町内会の法人化は、まず計画を立て、手順に沿って行うことが大切です。
ここでは、法人化の流れと必要書類について解説します。
法人化の流れ
法人化を行う大まかな流れは、次のとおりです。
- 町内会で法人化に関する話し合いを行う
- 自治体に相談する
- 規約案などを作成する
- 総会で法人化について議決を行う
- 申請に必要な書類を作成・提出する
- 自治体で審査が行われる
- 認可が告示される
- 代表者あてに認可の通知が届く
- 法人格を取得する
法人化するにあたって、まずは町内会で話し合いをします。資産を保有する場合は団体名義にする不動産の所有者を把握し、名義変更の同意を取得するなどの手続きが必要です。
規約を作成する前に自治体の担当職員に相談し、事前協議を行いましょう。規約案を作成したのちに総会を招集し、次の事項を決定します。
- 認可申請することの承認
- 代表者の選出
- 規約の制定・承認
- 代表者・構成員の選任
- 保有資産の確定
必要書類を揃えたら、自治体の自治振興課(名称は自治体によって異なる)に提出します。
自治体では提出書類の確認と認可要件の審査が行われ、認可・告示が行われるという流れです。告示によって町内会は法人格を取得し、規約に定める目的の範囲内において権利を有し、義務を負います。
なお、審査から告示までは、一般的に2週間〜1ヶ月程度かかるでしょう。
必要書類
地縁団体の認可申請には、主に次のような書類の準備が必要です。
- 認可申請書
- 規約
- 総会議事録の写し(議長および議事録署名人の署名または記名・押印があるもの)
- 構成員の名簿(世帯単位ではなく個人名での名簿)
- 保有資産の目録
- 団体の活動状況を示す書類
- 申請者が代表者であることを証明する書類
- 区域図
地域ごとに申請の必要書類は変わるため、必ず町内会のある地域の自治体に確認をしてください。
町内会の法人化のあとに必要な手続き
町内会が地縁団体として認可されたあとに行う主な手続きは、次のとおりです。
- 印鑑登録・印鑑登録証明書の交付手続き
- 認可地縁団体証明書の交付
- 不動産の登記(必要な場合のみ)
- 税関係の手続き
- 財産目録・構成員名簿の作成
- 団体の運営
まず、印鑑登録証明書の交付を受けるために、団体名義での法人印の印鑑登録手続きを行います。印鑑登録証明書は、不動産の登記手続きや、団体で自動車や不動産を取得するときに必要です。
また、必要に応じて、認可された法人であることを証明する認可地縁団体証明書の交付を受けます。証明書は、不動産の登記や銀行口座の開設などで必要になる場合があります。
不動産を新たに取得する場合や、団体名義に変更する場合は、不動産登記が必要です。
前にお伝えした税関係の手続きも行いましょう。収益事業を行わない場合、減免措置を受けるために各窓口に申請します。
地縁団体は、毎年度の終了時に財産目録を作成し、事務所への備え置きが義務付けられています。さらに、構成員名簿を備置し、変更するごとに更新しなければなりません。年1回の通常総会の開催も必要です。ただし、総会を開催せず、書面または電磁的方法で決議することも可能です。
団体運営では、告示事項や規約など、変更に伴う手続きが義務付けられています。規約の変更は総会の承認が必要であり、告示事項を変更する場合は変更の届出を行い、自治体の告示を受けなければなりません。
町内会の法人化に関する注意点
町内会は認可地縁団体の認可を受けたあとも、認可地縁団体であり続けるために要件を満たす運営が必要です。総会の開催や役員の選出、構成員名簿の更新といった手続きが増えるため、適切に対応していかなければなりません。
法人化した町内会の構成員についても注意が必要です。構成員は住民個人であり、年齢や性別を問いません。未成年者や外国人も含まれます。
また、構成員に法人は含まれない点に注意してください。法人等の組織は本来意思表明ができず、直接的な地域活動はできないためです。ただし、団体に対して支援を行う「賛助会員」として位置付け、活動に参加してもらうことはできます。
町内会の法人化で安定した団体運営を行おう
町内会の法人化は、自治体に申請して認可地縁団体となるのが一般的です。法人化により資産を町内会名義に登記でき、安定した組織運営ができるようになります。法人格取得で社会的信用が高まり、補助金や寄付金も受けやすくなるでしょう。
ただし、法人化は設立の手続きが煩雑であり、設立後も適切な事務手続きが求められます。法人格取得後の運営についてもよく確認し、町内会での話し合いを踏まえながら法人化を進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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