• 作成日 : 2023年12月13日

定款の目的変更とは?定款変更する流れや登記の手続きをひな形を基に解説

定款の目的変更とは?定款変更する流れや登記の手続きをひな形を基に解説

定款の目的変更とは、会社の事業内容を変更し、それを定款に反映させることをいいます。そのためには株主総会での特別決議、変更登記などの手続きが必要となります。

そこで当記事では、この手続きのために必要な情報をまとめ、どのような手順で変更をすればいいのか、登記申請書の書き方などについても解説していきます。

定款の目的の変更とは?

定款は会社にとって最上位に位置する規則です。組織運営や役員の権限に関する具体的なルールがここに規定されることもありますが、より根本的な内容、例えば「商号」や「本店の所在地」といった情報もここで定めます。

これらに並んで記載の欠かせない事項に「目的」があります。

定款への記載事項である「目的」とは、簡単にいうと、会社の事業内容を意味します。会社が何の目的で存立しているのか、何をするために存在しているのか、それを事業内容として表現するのです。

そのため「定款を作成する目的」などと、定款そのものの目的を意味しているわけではない点に留意しましょう。

目的を変更・見直しするケース

定款の「目的」の変更が必要になるのは、主に次のようなケースです。

  1. 「目的」に掲げていなかった事業を新たに始めたいケース
  2. 「目的」に掲げていたもののその事業を行っていない、または行う必要がなくなったケース
  3. 許認可が必要な事業をしたいが「目的」の書き方が問題で審査に落ちたケース

こういった状況にある会社は「目的」の変更を行う必要があるでしょう。

「目的」は、原則的には当該法人の権利義務の範囲を表すものですので、ここに挙げられていない事業内容について活動をすることはできないのです。そのためこれまでとまったく異なる分野で新事業を始めるとき、既存の定款の内容でカバーできないのであれば「目的」を新たに記載しないといけません。

上の②に関しては放置していても違法ではありませんが、会社の実態と合致していないことから対外的な信頼が薄れるおそれも少なからずあるといえます。この状態を是正するために変更を行うこともあります。

③の観点は非常に重要です。労働者派遣事業や介護事業、その他さまざま許認可が必要な事業がありますが、その審査では定款の「目的」が見られます。要件を満たす形で記載がされていないと許認可が得られず事業を開始できません。

定款の目的を変更する方法

定款を単なる社内規程と同列に扱うことはできません。そこで、上層部だけで勝手に判断してその内容を変更することは法律上禁じられています。

少なくとも株主総会の特別決議にて承認を得る必要があります。

普通決議ではなく特別決議が必要と法定されていることにも、定款の重要性が表れています。特別決議の場合は株主の半数を超える賛成があるだけでは不十分であり、2/3以上の賛成が必要なのです。

※手続きや決議要件の詳細は後述します。

なお、通常は株主総会を開催する前に取締役などの上層部による協議が行われていると思われます。「目的」の変更の必要性、どのような内容に変更するのか、その変更に異議はないか、株主総会の招集と開催のこと、などさまざまな事項を話し合うことになるでしょう。

定款の目的変更後は登記申請が必要

株主総会の特別決議を経てようやく定款の「目的」を変更できるのですが、その事実を外部に示す必要があります。そのために変更登記を行います。

定款の記載事項すべてが登記を要するわけではありませんが、特に社外の利害関係者に示す必要のある事項については登記すべきことが法定されているのです。「目的」もその1つですので、法務局に対して登記申請をしないといけません。

また、変更登記については期限や必要書類、費用が次のように決められています。

「目的」の変更登記の期限定款変更の効力が生じた日から起算して2週間以内
変更登記の必要書類登記申請書
株主総会議事録
株主リスト
変更登記にかかる費用3万円

登記義務を果たさないときは代表者に対する制裁として100万円以下の過料が科されることもありますし、期限内に確実に手続きを行うようにしましょう。

定款の目的変更をする流れ、必要な手続き

定款の「目的」を変更するときは、まずその内容を検討すること、そして上述の通り株主総会で決議を行うとともに議事録の作成も行いましょう。その上で登記申請書を作成して提出。変更内容が記載された議事録をその後大事に保管します。

この手続きの流れ、詳細を以下で説明していきます。

変更する目的の決定

なぜ「目的」を変更するのか、その理由に応じて変更後の内容を検討しないといけません。単純に活動範囲を広げるのであれば、その内容に合った記載を追加すればよいのです。

しかし許認可を得る必要があるときは、表現・使用する文言などに注意が必要です。何と記載する必要があるのか、行政書士司法書士など許認可取得を取り扱っている専門家に相談するなどして解決しましょう。

なお、狭く定義してしまうと後になって再度変更手続きが必要になるかもしれません。そこで、ある程度幅を持たせた表現にしておくこと、最後に「前各号に附帯する一切の事業」の文言を入れておくなどして対処しましょう。

株主総会で目的変更案を決議

変更するとの方針、変更後の内容についての検討が進めば、株主総会の招集手続きを進めます。開催日時と場所を定めて、所定の期間を設けて通知を出します。原則は「期日の2週間前までの発送」ですが、会社によってはより短い期間でよいとされていることもあります。

そして特別決議においては次の要件を満たさなければいけません。

  • 議決権の過半数を持つ株主が出席すること
  • 出席した株主の議決権のうち、2/3以上の賛成を得ること

この要件を満たさないときは「目的」の変更もできません。

株主総会の議事録を作成

株主総会においては議事録の作成も欠かせません。これは単なるメモや記録のような存在ではなく、定款変更を証明するための証拠として機能します。

また、登記申請における添付書類とされていますので、議事録がないと変更登記ができません。

法務局に登記変更の申請

特別決議を経て定款を変更し、議事録も作成できれば、株主リストも添えて変更登記を行います。このとき申請書の作成も必要です。

申請書の書き方については以下で詳しく説明しています。

株主総会議事録を保管

定款変更の手続き後は、その決議を行ったときの株主総会議事録を大事に保管しないといけません。

定款のデータなどを書き換えたとしてもそれ自体が証明になるのではなく、この議事録が存在していることで変更した事実が証明されます。

そのため、どこをどのように変更したのか、わかりやすい形で作成しておくようにしましょう。

定款変更(目的変更)のひな形、テンプレート

定款変更をするとき、その変更内容が登記事項であったときは、定款の内容と登記されている内容にずれが生じてしまいます。そのため「目的」のように定款への記載事項かつ登記事項とされている情報に関しては必ず変更登記をしないといけません。

そして変更登記をするには添付書類とともに、作成した「株式会社変更登記申請書」を出さなくてはなりません。

記載例のあるこちらのテンプレートをご参照いただければイメージがつかめるかと思います。

目的を変更したときの変更登記申請書の書き方

「目的」を変更したときの、変更登記申請書の書き方を以下に整理しました。前項のテンプレートと併せて参照し、手続きの際にチェックしていただければと思います。

項目記載方法等の説明
会社法人番号「〇〇〇〇-〇〇-〇〇〇〇〇〇」の形式で記載
商号定款と一致する会社名を記載し、フリガナも上に付す。
本店会社の住所を記載する。
登記の事由ここには「目的の変更」と記載。専用の用紙をダウンロードすればすでに記載されているため追記すべきことはない。
登記すべき事項変更後の目的を定款と一致する形で記載する。変更した部分だけではなく、変更された後の目的すべてを記載する。
なお、ボリュームがある場合などには「別紙の通り」として、登記すべき事項をオンライン申請、QRコード付き書面申請によって別途データで送ることも可能。
登録免許税「金30,000円」を記載。収入印紙、または領収証書で納付する。
添付書類①株主総会議事録、②株主リストの添付が必須。司法書士などに申請を代行してもらうときは③委任状も必要。
日付や申請人等の情報日付と、①申請人(会社)の住所と商号、②代表取締役の住所と氏名、そして登記所に提出している印鑑を押す。
代理人による申請であれば③代理人の住所や氏名・名称を記載し、印鑑を押す。
最後に連絡先となる電話番号を記載。

代理人による申請をするかどうか、変更後の内容を別紙に記載するかどうかによって記載の仕方が変わってきます。代理人に依頼するときは登記のプロである司法書士に任せるのが一般的です。

「目的」の変更であればそれほど記載するボリュームが大きくならないと予想されますので、わざわざ別紙にする必要もないかもしれません。

電子定款を変更する場合のルール

株式会社を設立するとき、書面(紙)で定款を作成する以外に、PDF形式のデータで定款を作成する方法もあります。後者の定款は「電子定款」と呼ばれ、データのまま公証役場で保管されます。

収入印紙が不要になるなど、作成時には書面の定款との違いもありますが、その後変更をするための手続きやルールに違いはありません。

株主総会で特別決議を経て、変更登記を行うことで定款変更の手続きを完了させられます。そもそも書面の定款であっても原始定款を変更後書き換えるわけではなく、議事録と一緒に保管しておくだけで問題ありません。

さらに、公証人の認証を受けるのも原始定款のみで、変更後の定款については認証を受ける必要がありません。

目的(事業内容)の変更には定款変更の手続きが必要

定款の「目的」は会社にとっての事業内容を意味しますので、今後活動の幅を広げたり変えたりするときは、定款変更の手続きを忘れないようにしましょう。また、株主総会の特別決議により定款変更ができた後は、変更登記の申請も必須です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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