- 作成日 : 2025年1月10日
運送業の資金調達方法7選!融資に通るコツや資金繰りの改善方法を解説
運送業では、売上が入金されるまでの期間が長いことや利益率が低いことなどを理由として、資金繰りが悪化しやすい環境にあります。運送業で資金調達する方法は、日本政策金融公庫からの融資や助成金・補助金の活用などです。
本記事では、運送業の資金調達方法について解説するとともに、融資に通るコツや資金繰りの改善方法も紹介します。
目次
運送業の資金調達方法7選
運送業とは、貨物自動車運送事業のことを指します。他人からの依頼に応じて、運賃をもらって荷物を車両で運ぶ事業のことです。
運送業では、利益率が低いことや売上が入金されるまでの期間が長いことなどを理由として、資金繰りが悪化しやすい環境にあります。資金繰りが回らなくなると、従業員への支払いや銀行への返済などができなくなる恐れがあります。最悪の場合、事業継続が不可能になることも考えられるでしょう。
倒産を回避するうえでも、資金繰りを維持することは重要です。ここでは、運送業の資金調達方法を紹介します。
①日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫から融資を受ける方法があります。日本政策金融公庫は、政府100%出資の金融機関です。
日本政策金融公庫の融資制度は、民間の金融機関から融資を受けにくい事業者を支援する仕組みとなっており、銀行など民間融資を受けたくても審査が厳しく通らないという場合でも借入れできる可能性があります。
運送業を開業する予定の場合や開業後間もない場合は、日本政策金融公庫がおすすめです。
②助成金・補助金
助成金や補助金を活用する方法もあります。国や自治体では、中小企業や経営が悪化している企業を対象に助成金や補助金の制度を設けています。
助成金や補助金を活用するメリットは、返済の義務が発生しないことです。ただし、金額が少なめのため、助成金や補助金だけで資金繰りを改善するのは難しいかもしれません。融資とあわせて利用すると良いでしょう。
③信用保証付き融資
信用保証付き融資とは、信用保証協会から保証を受けることで銀行などの審査に通りやすくする仕組みです。信用保証協会に保証料を支払う必要がありますが、返済できない場合に借金を肩代わりしてくれます。資金調達をきっかけに事業が軌道に乗ってきて、銀行から融資を受けたいときなどに利用すると良いでしょう。
また、信用保証付き融資は、銀行・信用金庫などが窓口となるため、つながりを深めることにもつながります。ただし、経営や信用に問題がある場合、信用保証協会から断られることもあるため、注意しましょう。
④銀行からのプロパー融資
プロパー融資とは、銀行独自の責任で資金を貸し付ける仕組みのことです。返済されなかったときのリスクは銀行が負います。プロパー融資のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 融資限度額がない
- 低金利で融資を受けられる
- 信用保証協会を通さないため、保証料が発生しない
- 融資実行までの時間が短い
その一方で、審査は厳しく、業績や実績、財務状況などの項目で高い信用力があると認められなければ、貸し付けてはもらえません。
⑤信用金庫からの融資
信用金庫からの融資も検討できるでしょう。信用金庫とは、地域の発展に重きをおいている地域密着型の金融機関です。
信用金庫から融資を受けるメリットは、一般的な銀行に比べて審査に通りやすい点が挙げられます。ただし、一般的な銀行に比べて金利が高く、融資を受けられても少額になるケースも多いことです。
⑥ノンバンクのローン
ノンバンク融資とは、クレジットカード会社やビジネスローン会社、信販会社などの貸金業者からの融資を指します。審査がそれほど厳しくないことや審査にかかる時間が短いこと、即日融資が可能なケースもあることなどがメリットです。
また、日本政策金融公庫や信用金庫などの融資制度を受けられなかった場合でも借り入れできる可能性が高いでしょう。
ただし、金利が高めであるほか、経営者保証を求められる場合があることなどはデメリットです。
⑦ファクタリング
前述したように運送業では、売上金の回収までに時間がかかるためファクタリングの活用も向いています。ファクタリングとは、回収前の売掛金を売却して現金に変換する資金調達法です。
ファクタリングを活用するメリットは、即日で資金調達できることです。一方で手数料が高めに設定されやすいほか、なかには悪徳業者が存在するため、利用する際には十分注意しましょう。
なぜ運送業はゆとりのある運転資金が必要なのか?
運送業には、ゆとりのある運転資金が必要な理由を解説します。主な理由は、以下の4点です。
- 売上が入金されるまでの期間が長い
- 利益率が低め
- 車両や車庫の維持費
- 燃料費の高騰する可能性
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
売上が入金されるまでの期間が長い
売上が入金されるまでの期間が長いという、運送業界ならではの理由が挙げられます。売掛金の回収期間は1ヶ月後が一般的ですが、運送業界の場合、2~3ヶ月と長めに設定されているところも多くなっています。
また、運送業の場合、手形取引をしているところが多いため、売掛債権を回収するまでに時間を要するというのが実情です。売上は好調にもかかわらず、売掛金の回収が先なため、その間の資金繰りに陥るというケースもあります。
利益率が低め
運送業では、利益率が低めであることも影響しています。建設業界と同じく、運送業でも下請から孫請などへ仕事が発注される仕組みです。下請へと行くほどマージンが差し引かれるため、受け取る報酬も少なくなります。
結果的に入金されるお金や手元に残る現金が少なくなるため、資金繰り悪化につながるというわけです。
車両や車庫の維持費
車両や車庫の維持費にお金がかかることも、資金繰り悪化を招く一因です。トラックという機械を扱う以上、定期的な点検やメンテナンス、車検、自動車保険への加入なども必要になります。それらの費用は削れないため、ゆとりのある資金繰りが求められます。
燃料費の高騰する可能性
自動車が商売道具の運送業において、燃料費の高騰も大きな問題です。ガソリン価格は常に変動しており、将来の値動きを予測することは困難です。運送業においては、その時々の価格を受け入れるほかありません。ガソリン代が安ければ資金繰りも安定するかもしれませんが、近年のように高騰し続ければ資金繰りは悪化の一途をたどることになります。
運送業の資金調達時の自己資金の目安
自己資金がない状態で創業融資を受けるのは、難しいと考えましょう。自己資金の要件が設定されていない融資制度もあるため、事業計画の内容次第では、融資審査に通過できる可能性もあります。
ただし、自己資金がなかったり少なかったりする状態では、希望通りの融資金額は受けられない可能性が高いです。なお、必要とされる自己資金の割合は、通常融資では売上の3分の1程度といわれています。
融資を希望するのであれば、この金額を念頭に置いて計画を立てましょう。
運送業の融資はどのタイミングが良い?
では、運送業において融資を受けるのに適したタイミングはあるのでしょうか?タイミングごとに紹介します。
金融機関は運送業許可の取得を基準として融資を判断します。そのため、運送業許可を取得する前だと、融資を受けられない、もしくは受けられる可能性が低いと考えておきましょう。
融資を申し込むのであれば、取得見込みが立ったタイミングから準備を始めると良いでしょう。許可が交付された時点で申し込めるようにしておくとスムーズです。
ただし、融資を受けるには事業計画書の作成や書類収集などが必要になるため、計画的に進めるようにしましょう。
運送業の融資を成功させるポイント
運送業の融資を成功させるポイントを2つ紹介します。
- 自己資金をできる限り多く準備する
- 事業計画書を入念に作成する
希望通りの融資額を融資してもらえるように、ポイントを押さえておきましょう。
自己資金をできる限り多く準備する
自己資金をできる限り多く準備することが大切です。自己資金とは、借入以外に自分で用意した資金のことです。融資審査の際は、自己資金割合が重要な審査基準の1つになります。
前述したように、売上の3分の1程度を目安に考えましょう。
事業計画書を入念に作成する
事業計画書を入念に作成することも、融資を成功させるには重要です。運送業向けの事業計画書では、経験に基づく収益性を伝えられるかがポイントです。以下のような内容を伝えられるようにしましょう。
- 過去の経験から開業後に活かせるノウハウや人脈がある
- 収益性のある事業計画を立てている
運送業の事業計画書のひな形・無料テンプレート
事業計画書を作成するといっても、どんなことを書けば良いのかわからないという人もいるでしょう。その場合は、以下からテンプレートをダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
運送業の事業計画書・創業計画書のテンプレート・作成例はこちら
運送業の資金を調達する際の注意点
運送業において資金調達する際の注意点は、以下の2つです。
- 資金の使途を明確にする
- 適正な額を調達する
資金調達を行う際は、資金の使途を明確にしておくことが大切です。銀行の融資審査において、資金使途は重要な要素のひとつです。補助金・助成金でも、制度の目的に合致した使い道でなければ、交付を受けられません。
また、資金調達を行う際は、必要な金額を正確に見積もることも重要です。必要以上の資金を調達してしまうと、返済負担が大きくなり、事業の安定性を損なう可能性があります。
運送業での資金繰りを改善するコツ
運送業での資金繰りを改善するコツを紹介します。
資金繰り表の作成
資金繰りを改善するためには、資金繰り表の作成が有効です。資金繰り表とは、企業における一定期間の収支と支出を可視化した表を指します。小さな変化を逃さないためにも1ヶ月ごとに作成するようにしましょう。
なお、資金繰り表には実績資金繰り表(過去の実績をもとに作る)と、予定資金繰り表(将来の資金繰りを予想して作る)の2種類があります。資金繰り悪化の原因を探るのであれば、実績資金繰り表の作成がおすすめです。
資金繰り表のテンプレートは、以下からダウンロードできます。ぜひ参考にしてください。
経費の見直し
経費の見直しを行うことで、資金繰りの改善が可能です。どのような経費を削減できるか検討するうえでも、資金繰り表の作成が欠かせません。経費項目をできるだけ細かく作って、記録しておくようにしましょう。
売掛金の回収サイクル短縮
売掛金の回収サイクルを短縮する方法もあります。運送業は入金までの期間が長いため、期間短縮を交渉することで資金繰りの見直しにつながります。
新たな取引先の開拓
売掛金の回収までに時間がかかっている場合は、大口取引ではなく小口取引を増やすことも検討しましょう。大口取引の場合は代金が一括で入金されるため、入金を待つ間に運転資金が底をついてしまう恐れもあります。
小口取引であればこまめに代金が入金される可能性もあるため、資金ショートのリスクを低下できるでしょう。
会計管理ソフトの利用
資金繰り表の作成には、会計管理ソフトの利用が効果的です。会計管理ソフトを活用することで得られるメリットには、以下のようなことが挙げられます。
- 業務の効率化が期待できる
- ミスや不正行為の防止になる
- 事業の状況を把握しやすくなる
- 手軽に資金繰り表が作成できる
自分にあった資金調達方法を選ぼう
運送業では、売上が入金されるまでの期間が長いほか利益率が低いため、資金繰りが悪化しやすい環境にあります。事業を継続するうえでも、ゆとりのある運転資金が必要です。
運送業における資金調達方法としては、日本政策金融公庫からの融資や助成金・補助金の活用、銀行からのプロパー融資などがあります。自分にあった資金調達方法を選んで、ゆとりのある資金繰りを実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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