- 更新日 : 2024年10月10日
飲食業の開業資金を抑えるコツは?自己資金の目安や助成金・融資について解説
飲食店の開業資金には物件取得費や内装工事費、広告費、厨房機器費などが必要です。この記事では飲食店の開業に必要な自己資金の目安および、開業資金を抑えるポイント、役立つ補助金や助成金、融資の借り方を解説します。
飲食店の開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食業の開業資金に必要な主な費用
飲食店を始めたいと考えているのであれば、まずは開業に必要な主な費用を押さえ、資金を集めることが肝心です。ここでは、飲食店の開業に必要な初期費用および用意しておくべき運転資金を解説します。
飲食店の開業に必要な初期費用
飲食店の開業に必要な初期費用は、1,000万円程度といわれます。もちろん、開業する店の規模や営業スタイル等によって必要な資金額は異なりますが、日本政策金融公庫が実施する「新規開業実態調査(2023年度版)」によると、開業費用の平均値は1,027万円、中央値は550万円です。
一般的に、飲食店の開業には設備投資費が嵩み初期費用が高くなりがちなことを考えても、1,000万円程度の資金は必要であるといえるでしょう。飲食店の開業に必要な具体的な費用は、以下のとおりです。
- 物件取得費(保証金、礼金、仲介手数料、前家賃)
- 内装工事費
- 厨房機器費
- 空調設備費
- 備品(食器、調理器具、ユニフォーム)
- 広告費
初期費用で大きな割合を占めるのが、物件取得費です。飲食店の物件取得では、家賃10ヶ月分の保証金が必要といわれます。つまり家賃が20万円の物件では、200万円の保証金を用意しなければなりません。そのほかに礼金、仲介手数料、前家賃がそれぞれ1ヶ月分ずつかかることを考えると、家賃の12ヶ月分以上の資金を用意しておく必要があるでしょう。
運転資金も用意しておく
開業直後から、安定した利益を得ることは簡単ではありません。そのため、少なくとも6ヶ月分の運転資金を用意しておくと安心といわれます。運転資金として必要な資金には、以下が挙げられます。
- 家賃
- 光熱費
- 人件費
- 食材費
- 広告費
運転資金は、お店の広さやスタッフの人数などによって大きく変わります。店舗を開業するにあたっては、開業資金だけでなく数ヶ月分の運転資金を賄えるかも、しっかりと確認しましょう。
飲食業の開業資金を抑えるためのポイント
手元の資金が少ない方や、開業後の運転資金にできるだけ備えたい方は、開業資金を抑えるポイントを知っておくと安心です。ここでは、開業資金を抑える6つのポイントを解説します。出費を抑える方法を確認し、無理のない開業を目指しましょう。
キッチンカーなどから始める
物件取得費や家賃を抑えるのであれば、キッチンカーから始めるのも1つの方法です。キッチンカーであれば物件の賃貸や内装工事、備品にかかる費用を抑えられます。
キッチンカーでの開業は車両費や車両改造費がかかるものの、一般的に店舗を構えるよりは安いと考えられます。また駐車場代は必要ですが、家賃よりは安く抑えられるでしょう。
加えてキッチンカーで働ける人数は、1人もしくは2人程度です。そのため、運転資金となる人件費の削減も目指せます。
「居抜き」物件などを探す
飲食店を開業するための初期費用のうち、物件取得費と並んで多くを占めるのが内装工事費です。内装工事費を抑えるには、居抜き物件の活用も選択肢です。
居抜き物件であればもともとの内装を再利用できるため、工事費の軽減につながります。イスやテーブル、食器といった備品も中古品やアウトレット品を利用すれば、さらに初期費用を抑えられるでしょう。
DIYで内装工事を節約する
費用をかけずに好みのデザインの店舗づくりを目指すのであれば、DIYによる内装工事も選択肢です。内装のなかでも壁や床、照明器具の交換といったリフォームは、DIYでも対応しやすいため、チャレンジしてみましょう。ただし、DIYでの工事は業者に依頼するよりも日数がかかるケースが多いため、計画的に進めることが肝心です。
なお電気や水道、ガスといった配管工事は資格をもつ専門家に依頼してください。柱や梁、階段、窓や玄関は建物の構造に関わる重要な部分なので、手を加えないようにしましょう。
テイクアウト専門店として開業する
開業資金および運転資金の両方を抑えるには、テイクアウト専門店も選択肢となります。テイクアウト専門店であれば、ダイニングフロアが不要なため狭い店舗でも営業が可能で、家賃を抑えられます。
テイクアウト専門店であればイスやテーブル、食器などの備品費がかかりません。また、フロアスタッフといった人件費も削減できるでしょう。
集客や広告を自分でする
集客や広告も、開業費の軽減を目指せるポイントです。ホームページやWeb広告を活用すれば、費用を抑えた集客を目指せます。
中でもSNSは無料で利用できるものが多く、費用をかけずに情報発信が可能です。オープンの日や営業時間、定休日、メニュー、料理や店内の写真の掲載、キャンペーンのお知らせなどにぜひ積極的にSNSを活用しましょう。
国や自治体の助成金を活用する
適用対象の補助金や助成金がある場合は、開業資金の一部として積極的に活用したいところです。補助金や助成金は国や自治体が事業者に対して給付するお金です。
補助金や助成金は、申請を行って審査に通った事業者へ支払われます。そのため、資金の受け取りまでは時間がかかることは覚えておきましょう。具体的な補助金や助成金については、後述します。
飲食業の開業時に必要な自己資金の目安
開業資金を集めるには融資や補助金、出資などさまざまな方法がありますが、スムーズな開業と安定した経営を目指すのであれば、ある程度の自己資金を用意することも重要です。
ここでは、用意するべき自己資金の目安と、自己資金に含まれる具体的な資金を解説します。
用意するべき自己資金の目安
日本政策金融公庫が行った「2023年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達額は平均1,180万円で、うち自己資金の平均は280万円との結果が出ています。つまり、開業資金のうち約23%(280万円÷1,180万円)を自己資金として用意している方が多いようです。
事業をスタートするには、一般的に30~50%程度の自己資金を用意すると安心ともいわれます。融資を受ける際に自己資金の額が確認されることを考えても、開業にあたってはある程度の金額を用意したいところです。
自己資金に含まれるもの
ここからは、自己資金に含まれる具体的な資金の種類を解説します。
自分名義の預貯金
自分名義の預貯金は、自己資金として認められます。タンス預金やお金の流れが明確でない預貯金は、自己資金に含まれません。自分名義であることを主張するには、通帳に収支を記録しておくことが重要です。
退職金
開業にあたり会社を辞める場合は、退職金も自己資金にできます。融資の申し込みをする場合は、退職金の源泉徴収等で金額等を明示しましょう。
なお、すでに受け取った退職金はもちろん、今後受け取る予定のものも含まれます。退職金の受け取り前に融資の申し込みをするときは、会社に依頼し金額や支払い時期が記載された書面の発行を受けてください。
みなし自己資金
事業を開始するためにすでに支払った資金や資産の売却により受け取ったお金、親兄弟などから贈与された返済義務がないお金は、みなし自己資金とされます。ほかにも、みなし自己資金として認められる支払いの一例は、以下のとおりです。
- 機械設備
- 商材
- 店舗を借りるための保証金、敷金
- フランチャイズ加盟金
- 会社設立費用
みなし自己資金として認められるには、支払いの事実が証明できなければなりません。そのため領収書や払込証明書、請求書などをしっかりと保管しておくことが重要です。
飲食業の開業に役立つ助成金・補助金
ここでは、飲食店の開業に役立つ補助金および助成金を詳しく解説します。開業から経営が安定するまでの資金計画の1つとして、ぜひ活用を検討しましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、業務の効率化やセキュリティ強化のためにITツールなどを導入する資金を補助する制度です。最大450万円の補助が受けられるため、開業にあたりソフトウェアの購入やクラウドの利用等を検討しているのであれば、申請を検討してみましょう。
なお、ホームページやECサイトの制作費は補助の対象外です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは中小企業や個人事業主を対象とする補助金で、販路の開拓や生産向上を目指した取組における経費の一部を支援します。最大補助金額は200万円で広告費や新商品開発費、資料購入費、委託外注費、機械装置等に使用できます。
第16回は電子申請のみで、申請期間は12日と超短期でした。申請を希望する方は、スケジュールを事前にしっかり確認しましょう。
参考:中小企業庁 「第16回小規模事業者持続化補助金<一般型>」の公募を開始しました
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金です。最大補助金額は、成長分野進出枠(通常類型)が7,000万円、成長分野進出枠(GX進出類型)は最大1.5億円です。
事業再構築補助金の申請準備には、1ヶ月程度かかります。補助金の利用を希望する方は、計画的に申請準備を進めましょう。
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練または出向といった一時的な雇用調整を実施し、従業員の雇用を維持した場合に助成されるお金です。
休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金に相当する額に、中小企業であれば3分の2、大企業であれば2分の1の助成率を乗じて得た額が支給されます。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは契約社員や嘱託社員、パートタイム労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇改善に取り組んだりした事業者に支給される助成金です。
有期雇用労働者を正社員として登用したときには、最大80万円の助成金が支払われます。賞与または退職金制度を導入した場合は、最大で40万円(賞与および退職金制度を同時に導入したときは最大16万8,000円を加算)が支給されます。
参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
飲食業の開業時に融資を受けるには?
開業資金の内訳の多くを占めるのが、金融機関などからの融資です。日本政策金融公庫 「2023年度新規開業実態調査」によると、開業資金のうち平均で約65%(金融機関からの借入平均額768万円÷開業資金平均額1,180万円)を金融機関などからの融資により調達することが多いようです。
開業資金の借入方法の一例としては銀行などの金融機関のローン、および日本政策金融公庫の新規開業資金、制度融資が挙げられます。それぞれの概要を確認し、自分のお店に合ったものを選びましょう。
金融機関のローン | 日本政策金融公庫の新規開業資金 | 制度融資 | |
---|---|---|---|
概要 | 一般的な金融機関のローンもあるが、事業実績がない開業資金としてはビジネスローンが選択肢となる | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方向けの融資 | 地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携する融資制度 |
借入上限 | 数百万円程度 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | 各自治体による |
金利 | 高い | 低め | 低め |
融資までの日数 | 短い(最短即日) | 2週間程度 | 各自治体による (数ヶ月) |
参考:日本政策金融公庫 2023年度新規開業実態調査、日本政策金融公庫 新規開業資金
飲食業の開業時の融資を成功させるポイント
飲食店の開業に必要な融資を成功させるには、返済能力を明確にアピールすることが重要です。ここでは融資を成功に導く事業計画書の作成方法とテンプレートを解説します。
事業計画書を入念に作成する
融資を申し込むにあたっては、お店のコンセプトやビジネスの具体的なプランを記載した事業計画書を作成し、新事業がビジネスとして期待できることを伝えることが重要です。事業計画書に記載すべき主な内容は、以下のとおりです。
- 新規ビジネスの具体的なプラン
- 創業の動機
- 収支計画
- 人員計画など
事業計画書を作成する際には、ビジネスの計画性と将来性が伝わる内容を意識してください。
飲食店の事業計画書のテンプレート一覧
魅力的で不備のない事業計画書を作成するには、テンプレートを活用するのも1つの方法です。飲食店開業に向けた事業計画書の詳細およびテンプレートを確認したい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
開業に必要な費用や資金調達方法を確認し、スムーズな飲食店開業を目指そう
飲食店の開業に必要な資金額は、一般的に1,000万円程度といわれます。そのうちおよそ30%程度を自己資金、65%程度を融資で賄っている方が多いようです。そのほか補助金や助成金も、開業に必要な資金の調達方法の1つです。
融資には金融機関からの融資のほか、日本政策金融公庫が扱う新規開業資金、制度融資などがあります。借入限度額や金利、借入までの日数などを確認し、自分のお店に合ったものを選びましょう。
融資を受けるには、返済能力をアピールできる事業計画書を作成することが重要です。融資の利用を検討している方は、テンプレートなどを活用し不備のない魅力的な事業計画書の作成を目指してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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