- 更新日 : 2022年10月7日
個人事業主の売上とは?いくらから税理士に依頼する?消費税申告も解説!
個人事業主の中には、自身で経理業務や確定申告を行う方も多いです。売上のごまかしはペナルティの対象になります。正しい会計処理のために、売上や年間にかかる税金などについて理解しましょう。また、売上が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になり、税務署の調査の対象になる場合もあります。
この記事では、個人事業主の売上について解説し、法人化・税理士に依頼するタイミングなども紹介します。
目次
個人事業主の売上とは?
個人事業主における売上の定義や計上タイミングについて、正しく理解している方は意外と多くありません。実は、売上と入金はイコールではなく、売上を計上するタイミングは個人事業主が選択できるのです。ここでは、そもそも個人事業主の売上とは何か、売上と入金の違いや売上の計上タイミングについて解説します。また、売上にかかる税金の計算方法も解説します。
売上と入金の違いは?
売上と入金はイコールではありません。そのため、入金があったからといって売上として処理できるとは限らないのです。
入金は、取引先からお金を振り込まれたり、直接お金を受け取ったりすることを指します。一方、売上は「代金を受け取る権利が発生した時」に計上するものです。
そのため、現預金の入金があったタイミングではなく、売上が発生した時に売上として処理する必要があります。
売上を計上するタイミングは?
前述のとおり、売上を計上するタイミングは、「代金を受け取る権利が発生した時」です。しかし、権利の発生タイミングは解釈が分かれます。実は、具体的にいつ売上を計上するかは、事業主が選択できるのです。
例えば、商品を販売するビジネスの場合は、商品を発送したタイミング(出荷基準)・納品したタイミング(納品基準)・販売先の検品が終了したタイミング(検収基準)のいずれかで売上を計上できます。
また、制作を受注して納品するビジネスの場合は、納品したタイミング(引渡基準)・受注先の検品が終了したタイミング(検収基準)のいずれかで計上可能です。
無形のサービスを提供するビジネスの場合は、サービスを提供したタイミング(役務完了基準)・検品が終了したタイミング(検収基準)のいずれかで計上できます。
このように、売上を計上するタイミングは会社が選択できるのが特徴です。しかし、取引の度にタイミングを変えることはできません。取引先ごとに適切な計上タイミングを選択することが一般的で、一度選択した基準は毎年継続して採用しましょう。
売上にかかる税金の計算方法は?
個人事業主には、所得税・住民税・消費税・個人事業税の納付義務があります。このうち、所得税と住民税はすべての個人事業主に課せられている税金です。ここでは、個人事業主の売上にかかる所得税の計算方法を解説します。
所得とは、売上(収益)から経費を差し引いた額のことで、所得税は、この所得にかかる税金のことです。所得税は以下のように計算できます。
なお、税率は後述のとおり、所得金額に応じてそれぞれ定められています。
個人事業主の年間売上が1,000万円を超えるとどうなる?
個人事業主の年間売上が1,000万円を超えたあたりから、以下のような変化が起こります。
- 所得税の金額が増える
- 2年後から消費税の課税事業者となる
- 経理業務に時間がかかる
- 税務署の税務調査の対象となるケースもある
売上が1,000万円を超えるということは、それだけ事業規模も拡大しているということです。その分経理まわりの業務が煩雑になり、税理士への依頼や法人化を検討するべきタイミングといえます。
所得税の金額が増える
所得税は、累進課税制度、つまり、所得が多ければ多いほど支払う税金も増える仕組みです。5%から45%の、7段階の税率が定められています。
税率は、所得金額ごとに以下のとおりです。
1,949,000円まで | ||
3,299,000円まで | ||
6,949,000円まで | ||
8,999,000円まで | ||
17,999,000円まで | ||
39,999,000円まで | ||
このように、所得が900万円を超えると税率が33%になり、所得税が増えることがわかります。
2年後から消費税の課税事業者となる
消費税を納める時期は、基準期間の課税売上高(消費税がかかっている売上高)が1,000万円を超えているかどうかで決まります。この基準期間は2年前です。つまり、ある年の課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後から課税事業者となり、消費税を納める義務が生じます。1,000万円を超えたからといってすぐに課税事業者になるわけではありませんが、将来的に消費税の納税義務が生じるため、注意が必要です。
参考:売上高が1,000万円を超える場合(消費税について)|国税庁
経理業務に時間がかかる
事業規模が拡大すれば、それだけ領収書の管理や従業員の給与計算・年末調整など、経理業務の手間も増えます。売上が1,000万円を超えているということは、それだけ事業規模が拡大しており、仕事がかなり忙しいというケースが多いです。そこに煩雑な経理業務が加わると、バックオフィス業務に時間がかかり、かなりの負担になります。
税務署の税務調査の対象となるケースも
課税売上が1,000万円を超えて、消費税の課税事業者になると、税務署による税務調査の対象になる場合もあります。税務調査とは、法人や個人が適切に申告納税しているかを国が調査することです。1,000万円を超えたからといって必ずしも調査の対象になるわけではありません。しかし、税務調査の対応には時間がかかり、精神的にも負担が大きいです。個人事業主1人で対応するのは容易ではないため、注意が必要です。
個人事業主の売上が伸びてきたら税理士に依頼すべき?
個人事業主にとって、売上が一定の額を超えたら必ず税理士を雇う必要がある、というわけではありません。しかし、上記のように1,000万円を超えると、その分経理業務が増えたり、税務調査の対象になったり、消費税や所得税について考慮する必要性が高まったりします。そのため、「売上が1,000万円を超えたら税理士を雇うタイミング」と判断するとよいです。
経理業務を税理士に依頼することで、その分本業に集中できます。本業に割けるリソースが増えるため、更なる事業規模の拡大も見込めるのです。もちろん、税理士に依頼するとその分費用が発生します。費用相場は月2〜3万円、多くて20万円ほどです。また、確定申告の代行を依頼する場合は、10〜15万円ほどが相場です。経理業務を税理士に依頼するか内製化するかは、依頼にかかる費用と外注によって浮くリソースを勘案して決めましょう。
個人事業主の売上が伸びてきたら法人化を検討すべき?
事業が拡大し、売上が伸びている場合は、法人化することも1つの方法です。個人事業主には所得税、法人には法人税が課せられますが、一定ラインを超えると法人税のほうが安くなります。
前述のとおり、所得税は7段階で、900万円を超えたところから税率が33%になります。一方、中小法人の場合、法人税は所得が800万円以下だと15%、それを超えると23.2%となります。地方税を考慮する必要もありますが、利益が900万円を超えると法人税のほうが安くなると判断できます。そのあたりが、法人化を検討するタイミングといえます。
そのほかにも、社会的信用が得やすい点や社会保険に加入できる点など、法人化にはメリットがあります。個人事業主の法人化について、詳細は以下の記事をご覧ください。
個人事業主が税金対策で売上をごまかしたらどうなる?
売上のごまかしは、法人税法第159条等における「偽りその他不正な行為」に該当します。脱税とみなされ、税務調査の対象となり、ペナルティが課せられるので注意しましょう。
主具体的には、過少申告課税が課せられます。過少申告課税とは、確定申告を提出した後、申告した税金が実際に支払うべき金額よりも少なかった場合に追加で課せられる税金のことです。修正後に増加した税額の10%分を支払う必要があり、結果的に多くの税金を支払うことになります。また、脱税は刑法の対象であり、10年以下の懲役または1千万円以下の罰則を科される場合もあるため注意が必要です。
個人事業の売上を理解し、正しい会計処理と税金対策を!
この記事では、個人事業主の売上について、定義や計上タイミング、税金の計算方法などを解説しました。また、売上が1,000万円を超えたあたりから生じる変化や、経理業務を税理士に依頼するタイミング、法人化を検討するべきタイミングについて解説しました。売上が1,000万円を超えるほど事業が拡大すると、会計処理も煩雑になります。本業に集中するためにも、経理業務を税理士に依頼したり、便利な会計処理ソフトを活用したりすることがおすすめです。
よくある質問
個人事業主の売上とは?
代金を受け取る権利が発生した時に計上するもので、入金とは異なります。売上の計上タイミングには、出荷基準・納品基準・引渡基準・検収基準などがあり、取引先ごとに適切なものを選びましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主の年間売上が1000万円を超えるとどうなる?
2年後から消費税の課税事業者となります。また、所得税額の増加や、経理業務が煩雑になるなどの変化もあります。さらに、税務調査の対象になる場合もあり、税理士への依頼や法人化の検討がおすすめです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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