- 更新日 : 2023年10月23日
経営戦略とは?種類・事例・作り方を解説
経営戦略とは、経営目的や経営目標を達成するための方針や計画全般を指します。近年、企業を取り巻く経営環境の移り変わりが早いため、経営戦略をしっかりと立てることが大切です。
本記事では、経営戦略を理解できるように、経営戦略の種類や作り方を解説しています。また、実例も紹介しているため、ビジネスを進める際の参考にしてください。
目次
経営戦略とは?
一般的に、経営戦略とは、企業が自社の経営目的や経営目標を達成するために策定する方針や計画を指します。
そもそも、戦略とは戦いに勝つための方法や策略のことです。経営に限らず、スポーツや買物など、さまざまな分野で戦略が立てられています。
ここから、経営戦略の必要性や、経営戦術・経営計画の違いについて確認していきましょう。
経営戦略の必要性
経営戦略は、企業が成長・発展を続けるために欠かせません。なぜなら、自社の課題を明確にして進むべき方向性を示す経営戦略を立てることで、企業は変化に対して柔軟に対応できるようになるためです。
とくに、技術革新やグローバル化など変化が目まぐるしい現代社会において、競争に打ち勝つための経営戦略が必要になるでしょう。
経営戦略と経営戦術・経営計画の違い
上位の概念である戦略がマクロ的かつ中長期に渡るのに対し、下位の概念である戦術はミクロ的かつ短期的なものになることが一般的です。経営戦術は、経営戦略を成功させるために必要な方法や手段を指します。
経営計画は、経営戦略に基づき決める計画のことです。経営戦術も経営計画も、経営戦略に従って遂行するものと理解しておきましょう。
なお、経営戦略よりも上位に位置するものとして、企業の目的や方向性を掲げる企業理念があります。
経営戦略の種類
経営戦略には、レベルに応じて以下の3種類があります。
- 企業戦略
- 事業戦略
- 機能別戦略
各戦略について、解説します。
企業戦略
企業戦略とは、企業全体としてどのような事業領域の中で活動をするのかを決める戦略のことです。企業戦略は3つの中で最初に決める戦略で、設定することにより企業の成長を見通したり、どこに重点的に人やお金を分配するか判断できるようになります。
企業戦略の具体例は、以下のとおりです。
- 資源の分配
- 事業領域の定義
- グループ戦略の策定
なお、全社戦略・全体戦略・成長戦略を企業戦略の代わりに使うこともあります。
事業戦略
事業戦略とは、企業が個々の事業分野でどのように活動するのかを決める戦略のことです。事業戦略では、企業戦略で配分した経営資源の中で、より詳しい施策や計画を立案します。
事業戦略の具体例は、以下のとおりです。
- 市場や競合の分析
- 自社の分析
- ビジネスモデルの策定
持株会社の場合、一般的に経営戦略は親会社が立て、事業戦略は子会社や関連会社が立てます。また、会社の手掛ける事業がひとつの場合、基本的に企業戦略と事業戦略の内容は基本的に同じです。
機能別戦略
機能別戦略とは、現場(営業・マーケティング・生産・財務・人事など)の機能に対して立てる戦略のことです。事業戦略で決めた目標に従い、機能別戦略を立てます。
機能別戦略の具体例は、以下のとおりです。
- 営業戦略
- マーケティング戦略
- 生産戦略
- 財務戦略
- 人事戦略
機能別戦略は、部署ごとに立てる場合と、専門とする内容ごとに立てる場合があります。
経営戦略の作り方
経営戦略は、以下の流れに沿って作ることが一般的です。
- ミッション・ビジョン・バリューの明確化
- 外部環境と内部環境の分析
- 戦略オプションの立案と戦略の決定
それぞれの概要を詳しく解説します。
ミッション・ビジョン・バリューの明確化
経営戦略を作るにあたって、ミッション(Mission)・ビジョン(Vision)・バリュー(Value)、の3つを明確にすることがポイントです。この作業を、それぞれの頭文字をとってMVVモデルと表現することがあります。
ミッションとは、企業が果たすべき使命や、存在意義のことです。ミッションでは、何をする企業なのかを明確にします。
ビジョンとは、中長期的な目標のことです。ミッションと異なり、ビジョンは状況に応じて変更することがあります。
バリューとは、ミッションやビジョンを達成するための価値観のことです。バリューが従業員の行動指針になることもあります。
外部環境と内部環境の分析
客観的な立場から自社の状況を把握するために、外部環境と内部環境の分析も必要です。外部環境は社会や市場、競合他社など自社を取り巻く外部の状況で、内部環境は経営資源のように自社の内部状況を指します。
外部環境や内部環境の分析に使う手法のひとつが、SWOT分析です。SWOT分析では、Strength(自社の強み)やWeakness(自社の弱み)、Opportunity(市場機会)・Threat(脅威)を分析します。
StrengthとWeaknessは内部環境をチェックする項目です。Strengthの具体例として自社の技術力やブランド力の高さ、Weeknessの具体例として販売コストがかさむなどが挙げられます。
OpportunityやThreatは外部環境をチェックする項目です。Opportunityの具体例として景気の拡大、Threatの具体例として市場の縮小や競争の激化などが挙げられます。
なお、競合他社のWeaknessが自社のStrengthだったり、他業界のOpportunityは自社が属する業界のThreatになることもあるでしょう。
戦略オプションの立案と戦略の決定
ミッション・ビジョン・バリューの明確化や外部環境と内部環境の分析を通じて自社の目標を定めたら、戦略オプションを立案します。戦略オプションとは、企業が抱える課題を解決したり、目標を達成したりするための方法です。
まず、考えられる戦略オプションを洗い出します。その後、戦略オプションを実行した場合の反応を検討し、定めた評価軸に従って戦略を絞り込む作業が必要です。
最後に、絞り込んだ戦略の中から実行すべき戦略を決定します。中小企業が経営戦略を立案する際の流れについては、以下の記事を参考にしてください。
経営戦略の実例
さまざまな企業が、独自の経営戦略を立ててビジネスを展開しています。ここでは、ファーストリテイリング(ユニクロ)や、小松製作所の経営戦略について確認していきましょう。
ファーストリテイリング(ユニクロ)の経営戦略
ファーストリテイリングは、ユニクロやジーユーなどのアパレルブランドを展開する企業です。
ファーストリテイリングの経営戦略のひとつに、SPA戦略があります。SPAとはSpeciality store retailer of Private label Apparelを略した「製造小売業」を意味する言葉です。
SPAでは、商品の企画・製造・物流・販売までをすべて自社でおこないます。そのため、SPAでは余計なマージンが取られず、低コストで販売できる点が強みです。
なお、ファーストリテイリング以外に、スウェーデンのH&MやスペインのZARAなどもSPAを採用するブランドとして知られています。
小松製作所の経営戦略
小松製作所は、建設機械・鉱山機械・産業機械などの事業を展開する企業です。
小松製作所の経営戦略として、積極的なグローバル展開が挙げられます。小松製作所は早くから海外に目を向けており、他の建設機械メーカーに先駆け、1955年にはすでに海外輸出をしていました(アルゼンチン向け)。
現在も海外に多くの生産・販売拠点を構えており、建設機械・車両の海外売上比率は約86%です(2019年度)。
参考:コマツ コマツヒストリー
参考:コマツ コマツはグローバル企業?
経営戦略に関する関連用語
経営戦略を立てるにあたって、以下の関連用語も理解しておかなければなりません。
- コア・コンピタンス
- イノベーション
- サステナビリティ
- デジタルトランスフォーメーション
各用語の意味を解説します。
コア・コンピタンス
コア・コンピタンスとは、企業活動において他社に真似できない核となる能力(強み)のことです。コア・コンピタンスに該当するためには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 顧客になんらかの利益をもたらす能力
- 競合他社が真似されにくい商品を提供する能力
- 複数の市場にアプローチできる能力
ただし、一度コア・コンピタンスとして認められても、市場環境の変化とともに見直しが必要になることがあります。
イノベーション
本来、イノベーションは「革新」や「刷新」を意味する言葉です。近年ビジネスシーンでは、組織やビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会を変革することの意味で使われています。
ヨーゼフ・シュンペーターによると、イノベーションの具体例は以下の5種類です。
- プロダクト・イノベーション(新しい生産物の創出)
- プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)
- マーケット・イノベーション(新しい市場・販路の開拓)
- サプライチェーン・イノベーション(新しい資源・供給源の獲得)
- オーガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現)
なお、シュンペーターは、イノベーションの提唱者として知られています。
サステナビリティ
サステナビリティ(持続可能性)は、ビジネスにおいて「環境・社会・経済」の観点で地球環境を壊さずに、良好な経済活動を維持する意味で使われる言葉です。サステナビリティを目指して経営することをサステナビリティ経営(サステナブル経営)と呼びます。
企業がサステナビリティ経営を目指すことで、イメージが向上する点や、新たなビジネスチャンスにつながる点がメリットです。
デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)とは、デジタル技術を導入して業務効率化を図り、社会や生活の形までも変えることです。英語の頭文字をとってDXと表現することもあります。
デジタルトランスフォーメーションは、政府も積極的に進めようとしている政策です。経済産業省は2018年9月に発表した資料において、日本企業がデジタル化に取り組まなければ競争力を失い、2025年から2030年にかけて年間12兆円もの経済的損失を被ると予測しています。
参考:経済産業省 「デジタル・トランスフォーメーション」DXとは何か? IT化とはどこが違うのか?
経営戦略を学ぶのにおすすめの本
経営戦略を学ぶための書籍は何冊もあります。とくに、以下はこれから経営戦略を学ぶ人が理解しやすい本です。
- 良い戦略、悪い戦略
- 経営戦略全史
それぞれの内容を簡単に紹介します。
良い戦略、悪い戦略
「良い戦略、悪い戦略」は、「戦略の大家」として知られるリチャード・P・ルメルトが著した書籍です。本書には、豊富な企業事例を通して「良い戦略」を立てるための思考法や実行法が解説されています。
「軍事的戦略」の内容も含まれていますが、企業戦略を立てる上で参考になるでしょう。すでに経営戦略を立てたことがある方も、誤った(悪い)戦略になることを防ぐために読んでおきたい一冊です。
経営戦略全史
「経営戦略全史」は、K.I.T.虎ノ門大学院MBAプログラムの主任教授(発表当時)である三谷宏治が著した書籍です。本書には、20世紀初頭から現在に至るまで、約100年に及ぶ戦略がまとめられています。
あらゆる戦略を俯瞰的に学べるため、自社にふさわしい経営戦略を見つける手掛かりになるでしょう。ストーリー形式でまとめられているため、読書する機会が少ない方でも手軽に学べます。
経営戦略を立てて企業間の競争に勝つ
経営戦略とは、企業が自社の経営目的や経営目標を達成するために策定する方針や計画のことです。経営戦略には、レベルに応じて企業戦略・事業戦略・機能別戦略の3種類が存在します。
技術革新やグローバル化など変化が目まぐるしい現代社会だからこそ、企業間の競争に勝つために経営戦略が必要です。書籍や事例を参考に、自社の経営戦略を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
コインランドリー経営は儲かる?開業費用やメリット・デメリットを解説!
コインランドリー経営は利回りが比較的高く、土地の活用や節税にもつながるなど、メリットが多いです。自分で経営するパターンとフランチャイズに加盟するパターンがあり、失敗しないよう、土地選びや設備投資など経営のポイントを理解しましょう。 今回はコ…
詳しくみるケアハウス経営の収益性を知りたい!需要や補助金など経営課題を解説
ケアハウスは、高齢者に向けて生活支援サービスや介護サービスを提供する施設です。安定した収入を見込みやすいケアハウスの開業・経営は、急増する介護サービス需要にも対応できる社会貢献性の高いビジネスです。今回は、ケアハウス経営は儲かるのか、経営状…
詳しくみる公共経営・公共施設経営とは?成功事例4つも
近年、あらゆる地方自治体において公共経営・公共施設経営の取り組みが推進されつつあります。公共経営とは利益獲得を目的としない公共的組織にビジネス・マーケティングといった経営の概念や手法を取り入れるという考え方です。そして、公共施設経営は公共施…
詳しくみる経営指針とは?企業事例5つも紹介
経営理念や経営方針といった「経営指針」を定めている企業は数多くあります。会社を設立するにあたって、絶対的登記事項である「目的」とは別に経営指針を謳う理由とは何でしょうか。今回は、経営指針の読み方や、経営指針の実例を紹介しながら解説していきま…
詳しくみる脱毛サロンの経営は難しい?開業から失敗を防ぐコツ、儲かるポイントを解説
脱毛サロンの経営は特別な資格がなくてもスタートできるため、開業人気が高まっています。脱毛サロンを立ち上げて軌道に乗せるには、失敗を防ぐコツや儲かるポイントを押さえることが肝心です。 この記事では脱毛サロンの開業に必要な費用および開業の流れ、…
詳しくみるESG経営とは?メリットや企業事例について解説!
ESG経営とは環境や社会に配慮しながら企業統治に取り組み、健全で持続可能な発展を目指す経営手法のことです。 ESG経営の取り組みは投資家の評価を高め、企業イメージを向上させるなどのメリットがあります。 本記事ではESG経営を行う目的や注目さ…
詳しくみる